◆発行=晶文社
◆四六判・上製ジャケット装
◆装丁=坂川栄治+藤田知子
 (13回配本以降=藤田知子)

被告の女性に関しては
F・アイルズ
壜の中の手記
G・カーシュ
ウィッチフォード毒殺事件
A・バークリー
探偵術教えます
P・ワイルド

歌うダイアモンド
H・マクロイ 

ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎
A・バークリー 

海を失った男

T・スタージョン 
ヨットクラブ
D・イーリイ

廃墟の歌声
G・カーシュ
絹靴下殺人事件
A・バークリー

死を呼ぶペルシュロン
J・F・バーディン
 
誰でもない男の裁判
A・H・Z・カー

月が昇るとき
グラディス・ミッチェル

プリーストリー氏の問題
A・B・コックス
最後の審判の巨匠

レオ・ペルッツ

大尉のいのしし狩り
デイヴィッド・イーリイ

クライム・マシン
ジャック・リッチー


※本体価格(税別)表示



被告の女性に関しては
As for the Woman (1939)

フランシス・アイルズ
白須清美訳 解説=真田啓介

2002年6月刊 2000円 [amazon]
表紙/立体制作=大森せい子


肺の病を得て海辺の町に保養にやって来た学生アランは、滞在先の医師の妻イヴリンと親しくなる。自信家の医師に反撥をおぼえながら、イヴリンに惹かれ始めたアランは、やがて彼女との関係にはまっていくが、その先には思わぬ事件が待ちかまえていた……。優柔不断な青年の揺れ動く心理と不可解な女の性を辛辣なユーモアをまじえて描いて、人間の 「性格」 の謎を追究したアイルズ=バークリーの到達点ともいえる傑作。「わたしの評価では、これは 『殺意』 よりも上である」 (若島正氏)

フランシス・アイルズ (1893-1971)
イギリスの探偵作家。ユーモア作家として 「パンチ」 誌などで活躍した後、“?”名義で 『レイトン・コートの謎』(国書刊行会)を発表。以後、アントニイ・バークリー名義で 『毒入りチョコレート事件』 『試行錯誤』 (以上、創元推理文庫)、『第二の銃声地下室の殺人』 『ジャンピング・ジェニイ』 (国書刊行会) 他の独創性あふれる探偵小説、フランシス・アイルズ名義で 『殺意』 『レディに捧げる犯罪物語』 (以上、創元推理文庫) 等の殺人者の心理に重きをおいた作品を発表。黄金時代ミステリの頂点を極めるとともに、以後のミステリの流れにも大きな影響を与えた。
 ◆アイルズ/バークリー作品リスト

シリーズ開始からいきなりの変化球である。一説には、これが不評だったために筆を折った、とも云われているバークリー=アイルズ最後の作品。いわゆる 「探偵小説」 ではない。しかし、『殺意』 『犯行以前』 の読者には、きわめて納得のいく到達点のはず。状況に翻弄され、自らの性格から苦境にはまっていく主人公をえがくアイルズの筆は、恐ろしいほど的確かつ鮮やかに急所を突く (アランの 「痛い」 言動の数々に、身に覚えのある男性読者も多いのでは)。知的で優柔不断な青年の皮肉な悲喜劇を堪能された読者には、同時代の普通小説、イヴリン・ウォー 『大転落』、オルダス・ハックスリー 『恋愛対位法』 (ともに岩波文庫) を是非お奨めしたい。

この世に3篇しかないアイルズの最後の作品がついに日本語で読める! しかも60年以上も前の小説だが、全然古びていない。堂に入った風俗描写、この上なく繊細で、しかもいつに変わらず通俗的な人間心理の解剖、絶妙の意地悪なユーモア。邦訳に心から感謝する。――中条省平氏評(「ダ・カーポ」2002/10/16号)

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ウィッチフォード毒殺事件
The Wychford Poisoning Case (1926)

アントニイ・バークリー
藤村裕美訳

2002年9月刊 2000円 品切 [amazon]
装画=影山徹


ロンドン近郊の町ウィッチフォードで発生した毒殺事件に興味をもったシェリンガムは、早速現地へ乗り込んだ。事件はフランス出身のベントリー夫人が、実業家の夫を砒素で毒殺した容疑で告発されたもので、状況証拠は圧倒的、有罪は間違いないとのことだったが、これに疑問を感じたシェリンガムは、友人グリアスン、お転婆娘のシーラと共にアマチュア探偵団を結成して捜査に着手する。物的証拠よりも心理的なものに重きを置いた 「心理的探偵小説」 を目指すことを宣言した記念すべき第2作。

アントニイ・バークリー (1893-1971)
イギリスの探偵作家。ユーモア作家として 「パンチ」 誌などで活躍した後、“?”名義で 『レイトン・コートの謎』(国書刊行会)を発表。以後、バークリー名義で 『毒入りチョコレート事件』 『ピカデリーの殺人』 『試行錯誤』 (以上、創元推理文庫)、第二の銃声地下室の殺人』 『ジャンピング・ジェニイ(国書刊行会)、『最上階の殺人』 (新樹社) 他の独創性あふれる探偵小説、フランシス・アイルズ名義で 『殺意』 『レディに捧げる犯罪物語』 (以上、創元推理文庫) 、『被告の女性に関しては』 (晶文社近刊) の登場人物の心理に重きをおいた作品を発表。黄金時代ミステリの頂点を極めるとともに、以後のミステリの流れにも大きな影響を与えた。

◆アントニイ・バークリー作品リスト

シェリンガム・シリーズ第2作は、19世紀末に起きたフローレンス・メイブリック事件を下敷きにしたもの。バークリーの犯罪実話への関心が色濃く反映されている。しかし、小説そのものはけっしてシリアスなものではなく、この作家らしい軽快なユーモアにあふれている。シェリンガムの探偵ぶりも相変らず横紙破りだが、アマチュア探偵たちの微笑ましい活躍には思わず頬が緩んでしまうだろう。従来の探偵小説への批判、事件関係者の戯画的な描写や二転三転するストーリー展開は、まぎれもなくバークリー印 (ブランド)。

2003本格ミステリ・ベスト10 第6位

本格ミステリの定石を裏側から眺めるような発想にこの作家の皮肉屋としての面目躍如たるものがある。――三橋暁氏評(本の雑誌2002/12月)

本書の主眼は関係者たちの心理的アリバイとでもいうべきものを調べ、「犯人でありえなかった者」を除外していく心理的探偵法にある。(中略) 真相披露の演出は鮮やかに決まっている。――杉江松恋氏評 (ミステリマガジン2002/12月)

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ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎
Roger Sheringham and the Vane Mystery (1927)

アントニイ・バークリー
武藤崇恵訳 解説=真田啓介

2003年4月刊 2000円 品切 [amazon]
装画=影山徹


ロジャー・シェリンガムは〈クーリア〉 紙の編集長から、ラドマス村で起きた転落死事件の調査を依頼される。事件は散歩に出かけたヴェイン夫人が、断崖の下で死んでいるのが発見されたというもので、当初は事故死と見られていたが、夫人の死体が握りしめていたボタンから、俄然殺人事件の疑いが浮上していた。すでに現地では、スコットランド・ヤードきっての名刑事モーズビー警部が捜査を開始していた。そこへ乗り込んだシェリンガムは、僅かな手がかりから見事な推理を展開、事件解決を宣言するが、つづいて第二の事件が……。従来の探偵小説への痛烈な諷刺にあふれたユーモア探偵小説。

◆バークリー作家紹介

このミステリーがすごい!2004 第14位
2004本格ミステリ・ベスト10 第3位


70年前の作品が 「新しい」 とは不思議なことだ。(中略) この小説は、最後の一行にたどり着いたときの 「驚き」 に真髄がある。ここにいたるまでの悠々たる語り口こそ探偵小説なのだ。――野崎六助氏評 (日本経済新聞6/1)

英国ユーモア・ミステリのファンとしては、垂涎の一冊だ。冒頭のひねたやりとりを読んだだけで、期待感はもう極限まで高まる。――杉江松恋氏評 (ミステリマガジン7月号)

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絹靴下殺人事件
The Silk Stocking Murders (1928)

アントニイ・バークリー
富塚由美訳


2004年2月刊 2200円 品切 [amazon]
装画=影山徹


新聞社に寄せられたロンドンに出たまま消息を絶った娘の行方を探す牧師の手紙に動かされ、ロジャー・シェリンガムが調べてみると、彼女は数週間前に絹のストッキングで首を吊って死んでいたことが判明する。しかし、最近同様の事件が続発していることを知ったシェリンガムは、殺人事件の疑惑を抱き、モーズビー首席警部と協力して調査を開始する。若い女性ばかりを狙う猟奇絞殺魔ははたして存在するのか? バークリーの才筆はここでもこのテーマに強烈な一ひねりを加えている。

◆バークリー作家紹介

2005本格ミステリ・ベスト10 第4位

ミステリ作家バークリーの慧眼は、この初期作品でも光っている。――三橋暁氏評(ミステリマガジン5月号)

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プリーストリー氏の問題
Mr. Priestley's Problem(1927)

A・B・コックス
小林晋訳

2004年12月刊 2200円 [amazon]
装画=上杉忠弘


「君はキャベツだ! カブだ! ペポカボチャのカタツムリ野郎だ!」 友人からこう評されるくらい、活気のない人生を送っていたプリーストリー氏だが、ある夜、見知らぬ美女に助けを求められ、日頃の習慣を破って、いざ冒険に乗り出したまではよかったが、予想外の事態が次々に発生、殺人犯として件の美女と手錠でつながれたまま逃げまわるはめに……。スラップスティックな笑いと洒落たロマンス。ユーモア作家A・B・コックス=アントニイ・バークリーの面目躍如、スクリューボール・コメディの逸品。

A・B・コックス (1893-1971)
イギリスの探偵作家。ユーモア作家として 「パンチ」 誌などで活躍した後、“?”名義で 『レイトン・コートの謎』を発表。以後、アントニイ・バークリー名義で 『毒入りチョコレート事件』 『試行錯誤』 (以上、創元推理文庫)、『第二の銃声地下室の殺人』 『ジャンピング・ジェニイ』 他の独創性あふれる探偵小説、フランシス・アイルズ名義で 『殺意』 『レディに捧げる犯罪物語』 (以上、創元推理文庫) 等の殺人者の心理に重きをおいた作品を発表。黄金時代ミステリの頂点を極めるとともに、以後のミステリの流れにも大きな影響を与えた。 
◆アイルズ/バークリー/コックス作品リスト

一種の冗談からはじまる発端から、大騒ぎに発展していく展開、(中略) 軽い筆致とテンポの良さで読ませて飽きさせない。――鎌田三平氏評(ダカーポ3/2号)

起こらなかった殺人の話で、『或る夜の出来事』 のような凝りに凝ったスクリューボール喜劇でもある。悪ふざけがすぎるとの評もあるだろうが、才人バークリーならではのユーモアは絶品の一語。――中条省平氏評(ダカーポ3/2号)

騙し騙され、二転三転する巧みなストーリー展開に、ページを繰る手とニタニタ笑いが止まらない。――佳多山大地氏評(ダ・ヴィンチ3月号)

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月が昇るとき
The Rising of the Moon (1945)

グラディス・ミッチェル
好野理恵訳


2004年9月刊 2400円 [amazon]
装画=松本圭以子


サイモンとキースの兄弟は町にやって来たサーカスを楽しみにしていた。しかし開幕の日の朝、ナイフで切り裂かれた綱渡りの女性の惨殺死体が発見されたのを皮切りに、同様の手口の犯行が続発。年の離れた兄ジャックにかけられた容疑を晴らすため、サイモン少年は骨董屋で出会った不思議な老婦人の助けを借りて事件の真相を探ろうと決心する。その特異な風貌の老婦人こそ、数々の難事件を解決してきた心理学者ミセス・ブラッドリーだった。『ソルトマーシュの殺人』 で、オフビートな探偵小説の作者として、本邦でも俄然注目を集め始めたグラディス・ミッチェルの代表作である本書は、切り裂き魔のグルーサムな連続殺人を13歳の少年の目を通して描き、不思議な詩情をたたえた傑作である。

グラディス・ミッチェル (1901-1983)
イギリスの作家。70冊以上の長篇本格ミステリを発表、「黄金時代最後の作家」 とも呼ばれたミッチェルだが、その作品はときに過激なユーモアに満ち、マイクル・イネスとともに英国ファルス派を代表する巨匠でもある。ポケミス初期の 『トム・ブラウンの死体』 以降、長篇翻訳は途絶えていたが、『ソルトマーシュの殺人』 の紹介によって、あらためてミステリ・ファンの注目を集めつつある。

少年の視点から事件を眺めるという手法が、瑞々しい効果を生んでいる。幻想的な描写を織り込むなど、饒舌でオフビートなこの作家の魅力が随所にちりばめられた佳作。――三橋暁氏評(本の雑誌12月号)

ハイ・ブロウな笑いが欲しい方にぜひお薦めしたい。――杉江松恋氏評(ミステリマガジン12月号)

→知られざる巨匠たち
→グラディス・ミッチェル作品リスト

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壜の中の手記
The Oxoxoco Bottle and Other Stories

ジェラルド・カーシュ

西崎憲・大岐達哉・駒月雅子・吉村満美子・若島正訳
解説=西崎憲

2002年7月刊 2000円 [amazon] [bk1]
装画=木村晴美

角川文庫版(収録作に異同アリ)

アンブローズ・ビアスの失踪という米文学史上最大の謎を題材に不気味なファンタジーを創造し、MWA賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)を受賞した名作 「壜の中の手記」 をはじめ、無人島で発見された奇怪な白骨に秘められた哀しくも恐ろしい愛の物語 「豚の島の女王」、ジャングル奥地に棲息する軟体人間の驚くべき正体を明かす 「骨のない人間」、18世紀英国の漁師の網にかかった極彩色の怪物の途方もない物語 「ブライトンの怪物」他、思わず 「そんなバカな!」 と叫びたくなる、異色作家カーシュの奇想とねじれたユーモアにみちた傑作群。
ジェラルド・カーシュというのがこんなにすごい作家とは、思っていなかったんですね。これはほんとに、奇跡のように生まれた作品だと思いました。 ――北村薫氏 (「豚の島の女王」 評より)
【収録作品】 豚の島の女王/黄金の河/ねじくれた骨/骨のない人間/壜の中の手記/ブライトンの怪物/破滅の種子/カームジンと 『ハムレット』 の台本/刺繍針/時計収集家の王/狂える花/死こそわが同志/解説 ジェラルド・カーシュあるいは夢幻の紳士 (西崎憲)
ジェラルド・カーシュ (1911-1968)
イギリスの小説家。用心棒、パン屋、レスラー、新聞記者などの職を転々としながら文筆生活に入り、ミステリ、SF、怪奇小説、ファンタジーなど、幅広いジャンルにまたがる夥しい作品を発表した。奔放な想像力と独創的なアイディア、特異なスタイルをもったその短篇には、〈危険なヴィジョン〉のハーラン・エリスンも注目し、傑作選を編んでいる。のちにアメリカに移住し、54年には市民権を得た。邦訳短篇集に 『オカルト物語』 (大陸書房)、『冷凍の美少女』 (ソノラマ文庫)があるが、いずれも絶版。初期 〈EQMM〉 や 〈奇想天外〉 誌ではお馴染みの名前でもあった。
 ◆カーシュ著作リスト

早川書房 〈異色作家短篇集〉 を勝手に受け継ぐつもりで送り出したカーシュ傑作集。ルキアノス 『本当の話』 以来のほら話の系譜を20世紀に甦らせた奇特な作家である。面白い、途方もない物語が好きな人なら、とにかく読んでみてほしい。「御代は見てのお帰り」 的な、いかがわしい魅力が一杯に詰まった作品集であり、そうした奇想が、ときに作者が (おそらく) 予想もしていなかった高みへと突き抜けていく、奇跡のような瞬間に立ち会うこともできるだろう。

このミステリーがすごい!2003 第6位
週刊文春 傑作ミステリー・ベスト10 第5位
SFが読みたい 2003 第10位


収められた12作は、サスペンス、SF、ホラーなど、バラエティに富んでいるが、いずれも個性的な人物が登場し、創意に満ちた逸話が、饒舌な語り口で物語られる。その味わいは独特のもの。(中略) これぞ珠玉の作品集である。――吉野仁氏評 (朝日新聞2002/7/19夕刊)

人間の愚かさを笑い飛ばさずその愚かさの核を見極め、きちんと怒り、そしてひっそりと泣くこと。安易な死とは似て非なる、いわばさみしい覚醒を知っているからこそ、カーシュの作品のいくつかは、ただ面白かったでは片づけられない震えを獲得しえたのだろう。――堀江敏幸氏評(朝日新聞2002/8/25)

子供の頃、例えばバミューダ・トライアングルの謎とか、ホープ・ダイヤモンドの呪いとか、(中略) 古今東西の怪奇実話を紹介した本に夢中になったことのある人は少なくないだろう。そんな読者にお奨めしたいのが、英国の異色作家ジェラルド・カーシュの短篇集 『壜の中の手記』 である。――千街晶之氏評 (週刊文春2002/8/1号)

四の五の言わず読めばいいんである。もう、ぜぇーったい愉しめること請け合いなんだから。(中略) 様々な作風を備えた天才作家の実相を垣間見せてくれるこの短篇集は、必ずや日本におけるカーシュ再評価の先鞭をつけてくれるに違いない。――豊崎由美氏評(ダカーポ2002年9月号)

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廃墟の歌声

ジェラルド・カーシュ
西崎憲・狩野一郎・駒月雅子・好野理恵・吉村満美子訳

2003年11月刊 1800円 [amazon] [bk1]
装画=木村晴美


『壜の中の手記』 が好評を博した異色作家カーシュの傑作集第2弾。16世紀のフランスに生まれ、4世紀ものあいだ戦場から戦場へと渡り歩いてきた不死身の男、神の怒りにふれて滅んだという古代都市アンナンの廃墟に巣くう不気味な生物、ハンガリーの荒野にそびえる 「乞食の石」 の秘密、魔法の魚のお告げとアーサー王の埋もれた財宝、といった奇想天外な物語の数々に、稀代の天才詐欺師にして大泥棒 (あるいは世界一の大ほら吹き) カームジンの冒険譚など、作者の多彩な才能を示す作品群。

【収録作品】 廃墟の歌声/乞食の石/無学なシモンの書簡/一匙の偶然/盤上の悪魔/ミス・トリヴァーのおもてなし/飲酒の弊害/カームジンの銀行泥棒/カームジンの宝石泥棒/カームジンとあの世を信じない男/重ね着した名画/魚のお告げ/クックー伍長の身の上話/解説


◆西崎憲 「もしカーシュに会ったなら」
◆カーシュ作家紹介
◆カームジン氏御紹介

不気味で怪しい物語のなかに、人間という貧弱な生き物のそこはかとない哀しみが漂っている。だからこそ、いつまでも心に残るのだ。――吉野仁氏評(ミステリマガジン2月号)

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探偵術教えます
P. Moran, Operative (1947)

パーシヴァル・ワイルド
巴妙子訳 解説=霞流一 

2002年11月刊 2000円 品切 [amazon]
装画=ソリマチアキラ


探偵術の通信講座を受講中のお屋敷付き運転手P・モーランは、すっかり名探偵気取り、学習内容を実地に移してみたくてたまらない。ところが尾行の練習に選んだ相手が 「たまたま」 麻薬密売人で、あやうく殺されかけたり、古今の名作探偵小説をお手本に紛失ダイヤ探しに乗り出しては、 依頼人のコレクションを滅茶苦茶にしてしまったりと、シロウト探偵の暴走が毎回とんでもない騒動をひきおこす爆笑ユーモア・ミステリ集。

【収録作品】 P・モーランの尾行術/P・モーランの推理法/P・モーランと放火犯/P・モーランのホテル探偵/P・モーランと脅迫状/P・モーランと消えたダイヤモンド/P・モーラン、指紋の専門家/解説 木綿のハンカチーフのように (霞流一)/パーシヴァル・ワイルドについて
パーシヴァル・ワイルド (1887-1953)
アメリカの作家・劇作家。一幕劇の大家として活躍する傍ら、ユニークな着想と軽妙なユーモアにみちたミステリを発表。従来、法廷ミステリの古典 『検屍裁判』 (東京創元社、絶版)で知られていたが、〈クイーンの定員〉の1冊で、近年紹介されたギャンブラー探偵ビル・パームリー物の短篇集 『悪党どものお楽しみ』 (国書刊行会) も評判を呼んだ。

◆ワイルド著作リスト
◆パーシヴァル・ワイルド/ユーモア・ミステリの達人

このミステリーがすごい!2004 第10位
2004本格ミステリ・ベスト10 第6位


洒落たユーモア・ミステリにして、高度に洗練された探偵小説のパロディでもあるオールタイム・ベスト級の傑作だ。――佐神慧氏評(ジャーロ2003春号)

とりわけ本格ファンには効き目もあらたかな清涼剤。重厚な大作を食した後に、ぜひ一服。
――佳多山大地氏評(ミステリマガジン2003/3月) ※同氏のe-novels 週刊書評は【全文】

三谷幸喜の書くコメディに通じるおかしさがある。――平田俊子氏評(群像2003/3月)

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クライム・マシン
The Crime Machine and Other Stories

ジャック・リッチー
好野理恵・藤村裕美・駒月雅子・谷崎由依訳 

2005年9月刊 2400円 [amazon] [bk1]
装画=ソリマチアキラ

※文庫化・新編集 (河出文庫 2009)

殺し屋リーヴズの部屋を訪れた男は、自分はタイム・マシンであなたの犯行を目撃したと言った。最初は一笑に付したリーヴズだが、男が示す証拠に次第に真剣になっていく。このマシンを手に入れればどんな犯罪も思いのままだ……。奇想天外なストーリーが巧みな話術で展開していく 「クライム・マシン」、ありふれた “妻殺し” 事件が思わぬ着地点に到達する、MWA賞受賞作 「エミリーがいない」 をはじめ、華麗な推理と失敗を繰り返す迷探偵ターンバックル、異常な怪力の持ち主で夜間しか仕事をしない私立探偵カーデュラの連作など、オフビートなユーモアとツイストに満ちたクライム・ストーリーで人気を博した短篇の名手、ジャック・リッチーの代表作17篇を収録したオリジナル傑作集。

【収録作品】 クライム・マシン/ルーレット必勝法/歳はいくつだ/日当22セント/殺人哲学者/旅は道づれ/エミリーがいない/切り裂きジャックの末裔/罪のない町/記憶テスト/こんな日もあるさ/縛り首の木/カーデュラ探偵社/カーデュラ救助に行く/カーデュラの逆襲/カーデュラと鍵のかかった部屋/デヴローの怪物

ジャック・リッチー (1922-1983)
アメリカの作家。生涯に350篇以上の作品を残した短篇のスペシャリスト。ヒッチコックのお気に入りでもあった。無駄を徹底的にそぎ落とした簡潔なスタイルは、クイーン、バウチャー、ウェストレイク、プロンジーニなど、作家の間にも賞賛者が多い。これまで 《ヒッチコック・マガジン》 《ミステリマガジン》 《EQ》 等の専門誌やアンソロジーで相当数の邦訳があるが、まとまった形の紹介は本書が初めて。つづく 『10ドルだって大金だ』 『ダイアルAを回せ』 (河出書房新社) も好評を博した。
◆ジャック・リッチーの小宇宙


このミステリーがすごい!2006 第1位
週刊文春 ミステリーベスト10 第2位
2006本格ミステリ・ベスト10 第7位


短編ミステリーのお手本 (中略) プロの技は、長編よりも短編にこそ現れるという、格好の見本がここにある。――逢坂剛氏評(讀賣新聞12/11) 【全文】

こんな面白いミステリの短篇を書いていた作家がいたとは知らなかった。――川本三郎氏評(週刊ポスト11/4号)

飛び切りクールで粋な作品集が出た。(中略) ミステリを読む愉しみってこういうことだよなぁ、ということを再認識させてくれる一冊だ。――川出正樹氏評(ミステリマガジン12月号)

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歌うダイアモンド
The Singing Diamonds and Other Stories (1965)

ヘレン・マクロイ
好野理恵・今本渉・霜島義明・吉村満美子訳
解説=千街晶之

2003年1月刊 2400円 
品切 [amazon] [bk1]
装画=野呂和史
創元推理文庫版(2015)

清朝末期の北京を舞台に、ロシア公使夫人の謎めいた失踪事件を異国情緒たっぷりに描いて、名作の誉れ高い 「東洋趣味 【シノワズリ】」 を筆頭に、女教師の分身が奇怪な事件を召喚する怪奇ムード満点の 「鏡もて見るごとく」(長篇 『暗い鏡の中に』 の原型)、UFOの目撃者が次々に怪死を遂げる 「歌うダイアモンド」、深層心理というテーマに真正面から取り組んだ 「カーテンの向こう側」 他、〈クイーンの定員〉 にも選ばれた名短篇集の珠玉の傑作8篇に、15年前の事件に決着をつけるため帰ってきた男が再び殺人事件に遭遇、サスペンスと謎解きを融合させた力作中篇 「人生はいつも残酷」 を併録。

【収録作品】 まえがき (ブレット・ハリデイ)/東洋趣味 【シノワズリ】/Q通り十番地/八月の黄昏に/カーテンの向こう側/ところかわれば/鏡もて見るごとく/歌うダイアモンド/風のない場所/人生はいつも残酷/解説 不安の詩神 (千街晶之)
ヘレン・マクロイ (1904-1992)
アメリカの探偵作家。早くからその文才を発揮、十代で文芸・美術評論や創作を発表し始める。1938年に精神科医ウィリング博士を探偵役とした 『死の舞踏』 で探偵小説家デビュー。『家蠅とカナリア』 『暗い鏡の中に』 などの傑作を発表。50年代に入るとサスペンス色を強め、『ひとりで歩く女』 『幽霊の2/3』 『殺す者と殺される者』 などで新境地を示した。のちに本格物に回帰し、後期の代表作に 『割れたひづめ』 (国書刊行会)がある。短篇では本格物からSFまで幅広いジャンルを手がけ、多彩な才能を披露した。一時期、ハードボイルド作家ブレット・ハリデイと結婚していたこともあり、1950年にはMWAの会長に就任している。

◆へレン・マクロイ作品リスト

週刊文春ミステリー・ベスト10 第7位
このミステリーがすごい!2004 第8位
2004本格ミステリ・ベスト10 第4位


マクロイのすべてが詰まった珠玉の作品集。――深町眞理子氏評(讀賣新聞3月16日)

本作品集は、マクロイの手になる短篇のマスターピースをほぼ網羅している。(中略) 個々の作品の充実ぶりは尋常ではない。――三橋暁氏評 (ミステリマガジン4月号)

read→鏡もて見るごとく

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海を失った男
The Man Who Lost the Sea

シオドア・スタージョン
若島正編
(訳=若島正・今本渉・大森望・霜島義明・吉村満美子)


2003年7月刊 2500円 [amazon]
装画=森流一郎


白痴の少女の美しい手に魅入られた青年ランは、その手を我が物とするために少女の家に移り住むが……異形の愛を描いてエロスとタナトスの極致に到達した絶品 「ビアンカの手」、頭と左腕を残して砂に埋まった男の内的世界を追求して圧倒的な 「海を失った男」、交通事故で妻を亡くした男が、墓地で出会った不思議な男に墓を “読む” 術を習う 「墓読み」 の三名作に、「成熟」 「三の法則」 「そして私のおそれはつのる」 他、本邦初紹介の傑作中短篇を収録した不滅のスタージョン・クラシックス。

【収録作品】 ミュージック/ビアンカの手/成熟/シジジイじゃない/三の法則/そして私のおそれはつのる/墓読み/海を失った男/編者あとがき (若島正)
シオドア・スタージョン (1918-1985)
アメリカのSF作家。長篇 『夢見る宝石』 『人間以上』 (ハヤカワ文庫) はSFファン必読の古典的名作。ミステリ・ファンにはクイーン 『盤面の敵』 の代作者としても知られている。しかし、その真髄はむしろ中短篇にあり、『一角獣・多角獣』 (早川書房/異色作家短篇集)、『奇妙な触合い』 (ハヤカワSFシリーズ) などに収められた作品は、ジャンルを問わず多くの読者を虜にしてきた。そこにあふれる異形の愛と異様な感動は、まさにスタージョンにしか書けない独自の世界である。現在再評価が進むアメリカでは、短篇全集が刊行中。

古書市場でベラボーな高値を呼んでいる 『一角獣・多角獣』 ばかりが注目されがちだが、スタージョンには未紹介の傑作がまだまだ数多く残されている。今回の選集は、どんなものでも翻訳されるブラッドベリあたりに比べて 「スタージョンの短篇集はわずか数冊しか出ていないし、それもほとんどが絶版である。まったくいい加減にしてくれと言いたくなる」 という若島氏が、自ら 「若島好み」 の傑作を精選したベスト・セレクション。
本書に続いて大森望編 『不思議のひと触れ』 (河出書房新社) が出て、『時間のかかる彫刻』 (創元SF文庫) が復刊 (旧題 『スタージョンは健在なり』)、スタージョン・リヴァイヴァルは決定的なものとなった。2005年には長篇 『ヴィーナス・プラスX』 (国書刊行会)、 短篇集 『輝く断片』 (河出書房新社) も 【追記:その後、『一角獣・多角獣』 もついに復刊された】。


このミステリーがすごい!2004 第9位
SFが読みたい 2004 第3位
2003ベスト翻訳アンケート(eとらんす) 第3位

編者の言葉
大森望氏の紹介(bk1)

名作 「ビアンカの手」 をようやく読むことができたのは、この腹立たしいほどつまらない世の中でも、数少ない素晴らしい出来事の一つだ。――中原昌也氏(SPA! 9/9)

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ヨットクラブ
Time Out (1968)

デイヴィッド・イーリイ
白須清美訳

2003年10月刊 2600円 [amazon]
装画=磯良一
※改題文庫化 (河出文庫 2010)


人生に倦んだ富豪たちのひそかな罪深き愉しみを描いて、MWA最優秀短篇賞に輝いた名作 「ヨットクラブ」、規律正しい教育を理想に掲げる寄宿制学校の恐るべき実態が明らかにされる 「理想の学校」、何年も互いに口をきかない夫婦が招き入れた客たちが思わぬ結末を呼び寄せる 「夜の客」、 自分が神であることを “知った” 男が始めた新事業 「G.O'Dの栄光」他、日常の裏側にひそむ現代の不安と恐怖を、ブラック・ユーモアに満ちた鋭い筆致で抉り出す、異才デイヴィッド・イーリイの傑作群。

【収録作品】 理想の学校/貝殻を集める女/ヨットクラブ/慈悲の天使/面接/カウントダウン/タイムアウト/隣人たち/G.O’D.の栄光/大佐の災難/夜の客/ペルーのドリー・マディソン/夜の音色/日曜の礼拝がすんでから/オルガン弾き/解説 もうひとりの異色作家――デイヴィッド・イーリイの奇妙な世界

デイヴィッド・イーリイ (1927- )
アメリカの作家。父親は原子力委員会の初代委員長デイヴィッド・イーライ・リリエンソール。新聞記者から作家に転身、「ヨットクラブ」 (1962) でMWA最優秀短篇賞を受賞、〈コスモポリタン〉 〈プレイボーイ〉 〈EQMM〉 などの雑誌で、現代的なテーマを特異なスタイルで描く短篇の名手として活躍した。『憲兵トロットの汚名』 『蒸発』 『観光旅行』 (以上、早川書房) などの長篇でも、奇抜な設定、不条理な状況が生み出すサスペンスが際立っている。カーシュ同様、《異色作家短篇集》 に当然、収録されて然るべき作家のひとり。
◆デイヴィッド・イーリイ著作リスト
◆デイヴィッド・イーリイの奇妙な世界

週刊文春ミステリー・ベスト10 第10位
このミステリーがすごい!2004 第11位
ミステリチャンネル・闘うベストテン2003 第1位
SFが読みたい 2004 第15位

◆NHK-BS2 《週刊ブックレビュー》

生にまつわる不条理でいっぱい――朝日新聞12/14

この作家がダールやエリンにも匹敵する短編小説のマエストロであることに、改めて気づかされる。――三橋暁氏評(本の雑誌1月号)
イーリイがここまですごい短篇作家だったとは。’03年最大の驚愕本。――大森望氏評(本の雑誌1月号)

著者の放ったブラックユーモアの矢は、40年もの長い射程を持ちえて、さらに矢尻の鋭さを増していたというべきだ。――佳多山大地氏評(ダ・ヴィンチ2月号)

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大尉のいのしし狩り

デイヴィッド・イーリイ
深町眞理子・宮脇孝雄・白須清美・吉村満美子・狩野一郎訳

2005年6月刊 2400円 [amazon]
装画=磯良一

『ヨットクラブ』 が好評を博した異色作家イーリイの傑作集第2弾。現代文明を棄て昔ながらの生活に帰ろうと、片田舎の古い農家で若者たちが始めたコミューンの顛末 「昔に帰れ」、無人の家に灯る明かりが夫婦を追いつめていく 「別荘の灯」、MWA賞候補作の2短篇をはじめ、嫌われ者の画家をめぐる若き芸術家たちの悪ふざけが思いもよらぬ結末を呼び寄せる 「スターリングの仲間たち」、ニューヨークのど真ん中で秘密裡に実施された奇妙な実験計画 「緑色の男」 など、異常な設定、奇抜なアイデアを、抑制のきいた散文とブラックユーモアで描き出すスタイルはここでも健在。日本オリジナル編集。

【収録内容】 大尉のいのしし狩り/スターリングの仲間たち/裁きの庭/グルメ・ハント/別荘の灯/草を憎んだ男/いつもお家に/ぐずぐずしてはいられない/忌避すべき場所/最後の生き残り/歩を数える/走る男/登る男/緑色の男/昔に帰れ


異常な状況がどんどん煮詰まっていく短篇ばかり。イーリイ・タッチと呼んでいい。――松坂健氏評(ミステリマガジン9月号)
誰にでもある心理の怖さを感じさせる珠玉集だ。――福井健太氏評(ミステリマガジン9月号)


黒いユーモアの矢が運命の残酷を射貫く、異色短編の名手が描くストレンジ・デイズ――佳多山大地氏評(ダ・ヴィンチ9月号) ◆全文

戦場での不条理、日常にひそむ不安。適度な悪趣味と皮肉なユーモアで包む。イーリイ独自な持ち味のよく出た一冊だ。――野崎六助氏評(日本経済新聞7月21日夕刊)

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誰でもない男の裁判

A・H・Z・カー
田中融二・浅羽莢子・白須清美訳

2004年6月刊 2400円 [amazon] [bk1]
装画=多田順


「もし神がいるのなら、私を殺してみろ!」 無神論で有名な作家が講演中に叫んだ瞬間、一発の銃弾がその胸を貫いた。 「神の声」 に動かされたと主張する犯人に、擁護運動が盛り上がるなか、調査委員長をつとめる神父は一通の手紙に目を留めるが……。信仰と現実の相克という問題に真正面から取り組んだ異色中篇 「誰でもない男の裁判」、ふとしたはずみで娘の可愛がっていた猫を殺してしまった牧師の苦悩を描く 「黒い小猫」 など、ミステリの枠をこえた衝撃と感動をもたらす傑作中短篇を精選。

かつて、編まれるべきなのに編まれなかった、私にとっての夢のミステリ短篇集というべきものを想像してみたことがある。ストリブリング、マクロイ、イーリイ……そして、ここに、ようやく編まれたA・H・Z・カーの短篇集によって、夢の大半は現実のものとなった。『誰でもない男の裁判』――この強烈な一篇を後世に残すためという理由だけでも、この短篇集は編まれるべきだったのだ。        ――山口雅也
【収録作品】 黒い小猫/虎よ!虎よ!/誰でもない男の裁判/猫探し/市庁舎の殺人/ジメルマンのソース/ティモシー・マークルの選択/姓名判断殺人事件
A・H・Z・カー (1902-1971)
ルーズヴェルト、トルーマン大統領の顧問も務めた著名な経済学者。1950〜60年代にはEQMM (エラリイ・クイーンズ・ミステリマガジン) 短篇コンテストの常連入選作家であった。遺作となった長篇 『妖術師の島』 (1971)(早川書房) でMWA第一長篇賞を受賞。

2004週刊文春ミステリー・ベスト10 第5位
このミステリーがすごい!2005 第6位
2005本格ミステリ・ベスト10 第10位


奇妙な味が持ち味であり、その独特のテーマの選び方が、人生の深淵をのぞきこむような、不思議さと不気味さをたたえている。――三橋暁氏評(本の雑誌9月号)

「黒い小猫」 のオリジナリティに脱帽。罪悪でなく罪悪感をこれほど巧みに描いた作品は稀だ。――中条省平氏評(ダカーポ8/18号)
表題作をはじめとして短篇の神髄である皮肉、機知、軽妙、意外性等をすべて備えている。――鎌田三平氏評(ダカーポ8/18号)

表題作は神のお告げによって無神論者を殺害したと称する男の裁判の物語で、寓話のような結末が印象的である。(中略)的確な作品選択によって作者の奥深い魅力をよく切り取った短篇集である。――
杉江松恋氏評(週刊読書人7月30日)

◆A・H・Z・カー作品リスト
◆真面目な異色作家A・H・Z・カー

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死を呼ぶペルシュロン
The Deadly Percheron (1946)

ジョン・フランクリン・バーディン
今本渉訳

2004年4月刊 2000円 [amazon] [bk1]
装画=松本圭以子


「先生、俺、きっと頭が変なんです」 赤いハイビスカスを髪に挿して精神科医のオフィスに現れた青年はこう切り出した。小人に雇われているという青年の話に興味を引かれた主人公は、彼と同行してその小人に会いに行くのだが、やがて悪夢のような事件に巻きこまれてしまう。『悪魔に食われろ青尾蠅』 で注目を集めたバーディンの異様な心理的スリルに満ちた第1作。

ジョン・フランクリン・バーディン (1916-1981)
アメリカ、オハイオ州シンシナティに生まれる。10代のうちに家族を次々に失い、様々な職に就きながら自己教育と執筆をつづけ、長篇ミステリ 『死を呼ぶペルシュロン』 (46)、『殺意のシナリオ』 (47) (小学館) を発表。つづく第3作 『悪魔に食われろ青尾蠅』 (48) は、アメリカでは出版社から拒絶され、イギリスで刊行される。一部で高く評価されながら、その後完全に忘れられた作家となるが、70年代に初期三作が復刊されると、精神世界の内部を探究した心理ミステリの傑作として、爆発的な再評価を獲得、劇的な復権を果たした。

Read→ジョン・フランクリン・バーディン

自分でない自分という強烈な謎に突き動かされる主人公の姿に鬼気迫る。幻想小説とのボーダーライン上で展開される自分探しの物語は、非常にスリリングだ。前衛と紙一重ながら、ぎりぎりミステリの領域に踏みとどまる心理スリラーの大いなる収穫である。――三橋暁氏評(ミステリマガジン7月号)


日刊ゲンダイ

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最後の審判の巨匠
Der Meister des Jungsten Tages (1923)

レオ・ぺルッツ
垂野創一郎訳


2005年3月刊 2000円 [amazon]
装画=山本里士

1909年のウィーン、著名な俳優オイゲン・ビショーフは、数人の客たちを前に余興の役づくりと称して庭の四阿にこもった。しかしその後、四阿から聞こえた二発の銃声に一同が駆けつけると、拳銃を握りしめ床に倒れたビショーフは既に瀕死の状態だった。現場は密室状況にあり、自殺に間違いないと思われたが、客のひとり、技師ゾルグループは、これは殺人だ、と断言する。俳優の最期の言葉 「最後の審判」 とは何を意味するのか。ゾルグループが真犯人だという 「怪物」 の正体とは? 折しもウィーンの街では不可解な “自殺” 事件が頻発していた……。ボルヘスも惚れ込んだという、全篇、悪夢の中を彷徨うかのような異色ミステリ。

レオ・ペルッツ (1882-1957)
プラハ生まれのユダヤ系オーストリア作家。『第三の魔弾』 (1915)(国書刊行会)、『スウェーデンの騎士』 (36)、『夜毎に石の橋の下で』 (53)、『レオナルドのユダ』 (59) (エディションq) などの歴史幻想小説や、本書を始めとする探偵小説で、全欧的な人気と高い評価を得る。その作品はカフカ、マイリンクとも比肩され、ボルヘス、ベンヤミン、G・グリーン、イアン・フレミングらも愛読者だったという。近年、欧米で再評価が進んでいる。

2006本格ミステリ・ベスト10 第9位


ミステリファンならば決して読み逃してはならない一作――吉野仁氏評(小説すばる5月号)

本書のすべては、妄想と客観的事実とが反転した異様な世界像の演出に奉仕している――
千街晶之氏評(SFマガジン6月号)

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