もうひとりの〈異色作家〉イーリイ登場
【タイムアウト】

デイヴィッド・イーリイ
白須清美訳

人生に倦んだ富豪たちのひそかな罪深き愉しみを描いて、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀短篇賞に輝いた名作 「ヨットクラブ」、規律正しい教育を理想に掲げる寄宿制学校の恐るべき実態が明らかにされる 「理想の学校」、何年も互いに口をきかない夫婦が招き入れた客たちが思わぬ結末を呼び寄せる 「夜の客」、 自分が神であることを “知った” 男が始めた新事業 「G.O'Dの栄光」 他、日常の裏側にひそむ現代の不安と恐怖を、ブラック・ユーモアに満ちた鋭い筆致で抉り出す、異才デイヴィッド・イーリイの傑作集。

河出文庫 2010年1月刊 本体950円 [amazon] [bk1]
◆装画=松本里美/装丁=倉林愛子
『ヨットクラブ』(晶文社、2003) の改題文庫化。

◆『ヨットクラブ』 (晶文社版)の評
週刊文春ミステリー・ベスト10 第10位
このミステリーがすごい!2004 第11位
ミステリチャンネル・闘うベストテン2003 第1位
SFが読みたい 2004 第15位

生にまつわる不条理でいっぱい――朝日新聞2003/12/14
この作家がダールやエリンにも匹敵する短編小説のマエストロであることに、改めて気づかされる。――三橋暁氏評(本の雑誌2004年1月号)
イーリイがここまですごい短篇作家だったとは。’03年最大の驚愕本。――大森望氏評(本の雑誌2004年1月号)
著者の放ったブラックユーモアの矢は、40年もの長い射程を持ちえて、さらに矢尻の鋭さを増していたというべきだ。――佳多山大地氏評(ダ・ヴィンチ2004年2月号)

【収録作品】 理想の学校/貝殻を集める女/ヨットクラブ/慈悲の天使/面接/カウントダウン/タイムアウト/隣人たち/G.O’D.の栄光/大佐の災難/夜の客/ペルーのドリー・マディソン/夜の音色/日曜の礼拝がすんでから/オルガン弾き ◇解説=羽柴壮一

デイヴィッド・イーリイ (1927- )
アメリカの作家。父親は原子力委員会の初代委員長デイヴィッド・イーライ・リリエンソール。新聞記者から作家に転身、「ヨットクラブ」 (1962) でMWA賞最優秀短篇賞を受賞、〈コスモポリタン〉 〈プレイボーイ〉 〈EQMM〉 などの雑誌で、現代的なテーマを特異なスタイルで描く短篇の名手として活躍した。『憲兵トロットの汚名』 『蒸発』 『観光旅行』 (以上、早川書房) などの長篇でも、奇抜な設定、不条理な状況が生み出すサスペンスが際立っている。他の邦訳短編集に 『大尉のいのしし狩り』 がある。