世界探偵小説全集 第4期

国書刊行会

◆四六判変型・上製ジャケット装
◆装丁=坂川栄治+藤田知子/田中久子
     (坂川事務所)
◆装画=浅野隆広

36.レイトン・コートの謎 ☆
アントニイ・バークリー
37.塩沢地の霧 ☆
ヘンリー・ウエイド
38.ストップ・プレス 
マイクル・イネス
39.大聖堂は大騒ぎ ☆
エドマンド・クリスピン
40.屍衣の流行
マージェリー・アリンガム
41.道化の死
ナイオ・マーシュ
42.テンプラー家の惨劇
ハリントン・ヘクスト
43.魔王の足跡
ノーマン・ベロウ
44.割れたひづめ ☆
ヘレン・マクロイ 
45.魔法人形
マックス・アフォード


☆=既刊


第1期第2期第3期


※本体価格(税別)表示


お楽しみはまだまだ続く

有栖川有栖

 いよいよ 『世界探偵小説全集』 第4期が刊行される。第1期がスタートした当初、「予告された本がすべて出ますように」 と祈っていたのがまるで嘘のようだ。お楽しみは、まだまだ続くのだ。

 中国の故事によると、鄭の公子宋はご馳走にありつける気配を察すると食指 (人差し指) が動いたそうだが、今回のラインナップを見た瞬間、私のそれもぴくぴくと動いた。バークリーやマーシュといった大御所からアフォードら本邦初紹介作家の作品まで、どれもこれも面白そうだ。早く本の形になって、われの許にきたれ、と思う。

 美麗な装丁にも期待したい。映画やドラマにミステリファンの部屋が登場した時、彼もしくは彼女の本棚についつい目が引き寄せられる、という経験はないだろうか。そこにハヤカワ・ミステリが並んでいるのを確認すると、にやりとしたものだが、これからは 『世界探偵小説全集』 も揃えてほしい。それだけで 「こいつ、好きだな」 と判る。

 このような全集が読めるのは、本格ミステリが活況を呈しているからだが、ブームは必然的に、作品とファンに 〈拡散〉 をも齎らしている。かつて 「本格が好きだ」 と言えば通じた会話が、昨今は本格好きを自称する者の間ですら時として成立しない。そんな時だからこそ、本格ならではの面白さを凝縮したこの全集の意義は、ますます大きいと言えるだろう。

36.レイトン・コートの謎 
The Layton Court Mystery (1925)

アントニイ・バークリー
巴妙子訳 解説=羽柴壮一

2002年9月刊 2500円 【amazon】【bk1】

レイトン・コート館の主人、実業家のスタンワース氏が、ある朝書斎で、頭部を撃ち抜かれて死んでいるのが発見された。現場は密室状況にあり、警察の見解は自殺に傾いていたが、不可解な死体の状態や滞在客たちの怪しげな行動に、泊り客のひとりで作家のロジャー・シェリンガムは疑惑を抱き、アマチュア探偵の名乗りを上げる。友人アレックをワトスン役に指名し、自信満々で調査を開始したロジャーだったが……。当初 “?” 名義で発表され、たちまち評判を呼んだ巨匠バークリーの輝かしい出発点。

アントニイ・バークリー (1893-1971)
イギリスの探偵作家。ユーモア作家として 「パンチ」 誌などで活躍した後、“?”名義で 『レイトン・コートの謎』 を発表。以後、バークリー名義で 『ウィッチフォード毒殺事件』 『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』 『絹靴下殺人事件』(以上、晶文社近刊)、 『毒入りチョコレート事件』 『ピカデリーの殺人』 『試行錯誤』 (以上、創元推理文庫)、『第二の銃声地下室の殺人』 『ジャンピング・ジェニイ』(本全集) 他の独創性あふれる探偵小説、フランシス・アイルズ名義で 『殺意』 (創元推理文庫)、『被告の女性に関しては』 (晶文社) 等の事件関係者の心理に重きをおいた作品を発表。黄金時代ミステリの頂点を極めるとともに、以後のミステリの流れにも大きな影響を与えた。
◆バークリー著作リスト

ようやく紹介なった探偵作家バークリーのデビュー作。ベントリー 『トレント最後の事件』、ミルン 『赤い館の秘密』 の伝統をつぐ楽しいアマチュア探偵物。この事件で味をしめたロジャー・シェリンガムは、以後積極的に探偵仕事に乗り出していくことになる。後期作品の辛らつさを増したユーモアにくらべると、ここでの笑いはもっと朗らかで、シェリンガムもほとんどHMばりのドタバタを披露してくれる。気の進まないワトスン役との掛け合いも楽しい。しかし、バークリーらしいひねりのきいた展開は第1作からすでに顕著で、探偵小説的な趣向も十分に堪能できるはず。

このミステリーがすごい!2003 第8位
週刊文春 傑作ミステリー・ベスト10 第7位
2003本格ミステリ・ベスト10 第2位


……これが期待を裏切らない大傑作だった。(中略) 本書の結末も皮肉に満ちている。しかもそれが英国式フェアプレイの精神に則ったように描かれているから、爽やかなのだ。諧謔の切れ味も抜群である。――杉江松恋氏評 (ミステリマガジン2002/12月)

シェリンガムの妄想すれすれの推理が巻き起こすユーモラスな珍騒動は、想像力過多なあまり時には誤った結論へと迷走してしまう。この特異な探偵役の魅力が奈辺にあるかを改めて教えてくれる。――
千街晶之氏評(週刊文春2002/10/7)


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37.塩沢地の霧
 
Mist on the Saltings (1933)

ヘンリー・ウエイド
駒月雅子訳 解説=小林晋

2003年2月刊 2500円 【amazon】 【bk1】

海辺の村ブライド・バイ・ザ・シーで貧しいながら静かな生活を送っていた画家パンセル夫妻は、ロンドンの喧騒を離れて執筆に専念するためやってきた有名な小説家ダラス・ファインズと知り合いになる。人気作家のファインズは名うての女たらしとしてもならしていた。単調で平和な村の暮らしに次第に広がる様々な波紋。そしてある深い霧の夜、塩沢地へ姿を消した小説家は、数日後、湿地帯の穴の中で死体となって発見された。北海沿岸の荒涼たる自然を背景に、深く静かに進行する悲劇と警察の捜査活動を描き、探偵小説の可能性を追求した英国ミステリ界の実力派ウエイドの力作長篇。

ヘンリー・ウエイド (1887-1969)
イギリスの作家、准男爵。サリー州の名家に生まれ、行政・司法の重職を歴任。20冊の長篇ミステリは、黄金時代探偵小説の風格に満ち、リアルな警察捜査の描写と倒叙形式の導入、高度な社会性によって高く評価されている。他の邦訳に 『死への落下』 (現代教養文庫)、『リトモア少年誘拐事件』 (創元推理文庫) があり、本全集では半倒叙形式の 『推定相続人』 、ストレートな本格物の 『警察官よ汝を守れ』 を収録、好評を博した。現代本格ミステリの傾向を先取りしていた点でも重要な作家である。

まさに探偵小説のアルチザンという呼び名がぴったりくる作家。――三橋暁氏評(ミステリマガジン5月号)

「30年代最高のミステリー」 とも評されたサスペンス。――ダ・ヴィンチ4月号


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38.ストップ・プレス
Stop Press (1939)

マイクル・イネス
富塚由美訳 解説=若島正

2005年9月刊 2800円 【amazon【bk1】


人気探偵作家エリオットが創造した犯罪者ヒーロー 〈スパイダー〉 生誕20周年を記念して、エリオットの屋敷ラスト・ホールで開かれたパーティの最中、あたかもスパイダーが本の中から抜け出したかのような怪事件が頻発、ついにはエリオットが構想中のプロットとそっくりの事件が発生する。犯人も、動機も、被害者さえも一向につかめぬまま、大団円に向かって物語は進んでいく。全篇が壮大なプラクティカル・ジョークとも云うべきイネス畢生の大作。ジョン・アプルビイ首席警部登場。

マイクル・イネス (1906-1994)
イギリスの作家、英文学教授。シェイクスピア研究など学究生活の傍ら、『学長の死』(東京創元社、絶版)、『ハムレット復讐せよ』、『ある詩人への挽歌』(現代教養文庫)など、アプルビイ警部シリーズを中心に、40冊以上のミステリを発表。日本ではクリスピン同様、かつてはハイブラウな文学派として敬遠される傾向があったが、最近では、大人のお伽話ともいうべき英国ファルス・ミステリの愛読者も着実に増えてきたようだ。

このミステリーがすごい!2006 第8位
2006本格ミステリ・ベスト10 第4位

クラシックミステリのユニークな曲球として、惜しみない拍手を送りたい。――三橋暁氏評(本の雑誌12月号)

ミステリーを読み進める興味それ自体が主役をつとめる不思議な傑作――野崎六助氏評(日本経済新聞10月13日夕刊)


◆『ストップ・プレス』について
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39.大聖堂は大騒ぎ 
Holy Disorders (1945)

エドマンド・クリスピン
滝口達也訳 解説=真田啓介

2004年5月刊 2400円 【amazon】 【bk1】

オルガン奏者襲撃など、不審な事件がつづく地方都市トールンブリッジの大聖堂で、巨大な石の墓碑の下敷きになった死体が発見される。その大聖堂では中世に魔女狩りが行なわれた暗い歴史があった。ディクスン・カーばりの不可能犯罪と怪奇趣味に、抱腹絶倒のドタバタ追跡劇。ご存知フェン教授登場のヴィンテージ・ミステリ。

エドマンド・クリスピン (1921-1978)
イギリスの作家、作曲家。フェン教授シリーズの邦訳に 『金蠅』 『消えた玩具屋』 『お楽しみの埋葬』 (以上、早川書房)、『永久の別れのために』 (原書房) がある。かつて “ハイブラウな文学的ミステリ” として不当に敬遠されてきた観のあるクリスピンだが、実は、不可思議な謎と魅力的な名探偵、誰でも楽しめる喜劇性に満ちた、J・D・カー直系、サービス満点のミステリ作家であることが、ようやく日本の読者にも明らかになってきたようだ。毎回、フェン教授が繰り広げるお約束のスラップスティックも楽しい。本全集では 『愛は血を流して横たわる』 『白鳥の歌』 を収録。

2005本格ミステリ・ベスト10 第5位

上質のユーモアミステリーである。(中略) 謎解きのトリックも凝っていて意表を突く。――羽田詩津子氏評(京都新聞7/4他)

昨今の古典再評価の動きは、エドマンド・クリスピンのほとんどの長篇小説が日本語で読めるというすごい状況を生み出してくれた。でも、個人的にはこの作品を一番待っていたのですよ。――
三橋暁氏(本の雑誌8月号)

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40.屍衣の流行

The Fashion in Shrouds (1938)

マージェリー・アリンガム
小林晋訳

2006年9月刊 2500円 【amazon】 【bk1】

人気女優ジョージアをめぐる男たちの不可解な死。3年前に謎の失踪を遂げた元婚約者の白骨死体が発見された数週間後、現在の夫レイモンドのアフリカ飛行歓送式典の最中に事件は起こった。巧妙きわまる計画殺人に挑む名探偵アルバート・キャンピオン。女王クリスティーがその才能を羨んだという巨匠アリンガムの傑作。

マージェリー・アリンガム (1904-1966)
イギリスの作家。10代から文筆活動を開始した才媛で、最初期はバカン風の冒険小説を発表していたが、やがて主人公アルバート・キャンピオンが探偵役をつとめる本格物へと転身した。しかし、その作風は所謂パズラーとは遠く、『判事への花束』 『幽霊の死』 『霧の中の虎』 (ハヤカワ・ミステリ) などの代表作が紹介されていながら、必ずしもその魅力が十分に理解されてきたとは言い難い。セイヤーズ・ミステリの全貌が日本の読者にも明らかとなったいま、時代を先取りしたもうひとりの偉大な女性作家であるアリンガムの再評価の機運が高まっている。
◇アリンガム作品リスト

「幾人かの動揺や思惑を順次活写する筆力は素晴らしいのひとことだが、驚かされるのは、そうした人間的な物語に、全編を支配する空恐ろしい謎が徐々に姿を現す探偵小説ならではの醍醐味が、寸分の狂いなく重ねあわせられている点だ。まさに卓越した手腕といっていい」――松浦正人氏評(産経新聞2006/10/23)

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41.道化の死
Off with His Head (1956)

ナイオ・マーシュ
清野泉訳 解説=小池啓介

2007年11月刊 2500円 【amazon】 【bk1】

冬至の次の水曜日、マーディアン・キャッスルで年に一度開かれる 〈五人息子衆のモリスダンス〉 の最中、道化役の男が首を切り落とされてしまう殺人事件が発生。衆人環視のなか行なわれた残忍な不可能犯罪に、スコットランド・ヤードの名探偵アレン警視が捜査に乗り出す。民俗色豊かな色彩感あふれる背景に大胆不敵なトリック。クリスティー、セイヤーズと並ぶ人気作家マーシュの戦後代表作。

ナイオ・マーシュ (1895-1982)
ニュージーランド生まれの作家、劇作家。名門出身のロデリック・アレン警視を主人公にした32冊のミステリ・シリーズで、英国ではクリスティー、セイヤーズにつぐ〈ミステリの女王〉として人気を集めた。邦訳に 『死の序曲』 (ハヤカワ・ミステリ)、『ヴァルカン劇場の夜』 (ハヤカワ・ミステリ)、『殺人鬼登場』 (六興出版部、絶版)など。第2期の 『ランプリイ家の殺人』 で、あらためてその魅力のとりこになった読者も多いはず。

ミステリが読みたい!2009 第18位


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42.テンプラー家の惨劇
The Thing at Their Heels (1923)

ハリントン・ヘクスト
高田朔訳 解説=真田啓介

2003年5月刊 2500円 【amazon】 【bk1】


英国有数の名門テンプラー家に突如襲いかかった不気味な黒い影。人里離れた渓谷で、石楠花の咲き乱れる湖岸で、ロンドンの裏通りで、まるで一家皆殺しを図るかのように、次々に凶行を重ねていく謎の殺人者に、警察もまったく為すすべがなかった。事件ごとに現場付近で目撃される黒衣の男の正体とは? そもそも犯人の目的は何なのか? 数多の恐ろしい謎を秘め、運命の歯車は回り続ける。『赤毛のレドメイン家』と比肩されるヘクスト=フィルポッツの異色傑作。
◆解説 「フィルポッツ問答」 の冒頭部紹介

ハリントン・ヘクスト (1862-1960)
イギリスの作家。本名イーデン・フィルポッツ。ダートムア小説と総称される地方色豊かな小説で人気を博した多作家で、探偵長篇も40冊以上ある。『赤毛のレドメイン家』 『闇からの声』 (創元推理文庫) などは早くから邦訳紹介され、ベストテン級の名作として評価されてきた。ヘクスト名義の邦訳に 『誰が駒鳥を殺したか』 (創元推理文庫・絶版)、『怪物』 (ハヤカワ・ミステリ) がある。
◆作品リスト

2004本格ミステリ・ベスト10 第7位『赤毛』 の翌年の作だが、古典的探偵小説のプロットを悠揚たる語り口で描く作風は本作でも健在。推理小説の王道を読者はここに見るだろう。――

安岡真氏評 (河北新報、京都新聞他)

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43.魔王の足跡 
The Footprints of Satan (1950)

ノーマン・ベロウ
武藤崇恵訳

2006年1月刊 2600円 【amazon】
【bk1】

1855年2月8日、悪魔が英国に降り立った。デヴォン州の各地で不可思議な蹄の足跡が多数目撃されたのである。――それから約一世紀後のある雪の朝、田舎町ウィンチャムに再び悪魔の足跡が出現した。まっさらな新雪に覆われた道の中央に突如現れた蹄の足跡は、あちこち彷徨い歩きながら丘を登り、野原の真ん中にたつオークの木へと続いていた。謎の足跡を辿る一行は、そこで大枝からぶら下がった男の死体を発見する。蹄の跡は木の傍らでぷっつりと途切れ、まるで足跡の主がそこから虚空へ飛び立ったとしか思えない状況だった。しかも、問題の木には、昔魔女が縛り首になったという伝説があった。怪奇趣味満点の不可能犯罪物で熱狂的なファンをもつ幻の本格派ノーマン・ベロウ、本邦初紹介。

ノーマン・ベロウ (1902- )
イギリスの作家。密室殺人、人間消失など不可能犯罪ミステリを得意とし、1930〜50年代に20冊ほどの長篇を発表した知られざる本格派。スペインを舞台にした狼男ミステリ It Howls at NIght (37)、幽霊屋敷で行なわれた心霊実験の最中に起きた殺人を描く Ghost House (40) など、怪奇趣味濃厚な作品が多いのも特徴の1つ。知る人ぞ知る、文字通り幻の作家だったが、森英俊 『世界ミステリ作家事典/本格派篇』 の紹介で、にわかに注目を集め始めた。

2007本格ミステリ・ベスト10 第1位


怪奇ムードが漂う英国ミステリだ。(中略) 真冬の夜に読み耽るのに、ぴったりの一冊である。――有栖川有栖氏評(週刊朝日2006/2/24)

強烈な不可能興味で、読者をつかんで離さない傑作の登場である。(中略) 謎解きの醍醐味を味わいたい本格ミステリ・ファンに断然、お勧めの1冊である。――日下三蔵氏評(週刊大衆2006/3/6)
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44.割れたひづめ
Mr Splitfoot (1968)

ヘレン・マクロイ
好野理恵訳 解説=加瀬義雄

2002年11月刊 2500円 【amazon】 【bk1】

吹雪のなか車が立ち往生し、近くの屋敷に一夜の宿をもとめたベイジル・ウィリング夫妻だが、この家には、そこで眠る者は必ず翌朝には死んでいるという言い伝えのある開かずの部屋があった。その夜、ポルターガイスト騒ぎがあったあと、不吉な伝説を打ち消すため、くじで選ばれた男が問題の部屋で一夜をあかすことになったのだが、異常を知らせる呼び鈴の音に駆けつけた一同が目にしたものは……。キーティングの名作ベスト100にも選ばれたマクロイの後期代表作。

ヘレン・マクロイ (1904-1992)
アメリカの探偵作家。早くからその文才を発揮、10代で文芸・美術評論や創作を発表し始める。1938年に精神分析医ウィリング博士を探偵役とした 〈Dance of Death〉 で探偵小説界にデビュー。40年代にかけて本格ミステリ長篇を次々に発表する。この時期の代表作に、 『家蠅とカナリア』 (創元推理文庫)、 『暗い鏡の中に』 (ハヤカワ文庫) がある。50年代に入るとサスペンス色を強め、『ひとりで歩く女』 (創元推理文庫)、『幽霊の2/3』 『殺す者と殺される者』(いずれも創元推理文庫・絶版) などで新境地を示したが、のちに再び本格物に回帰、本書でみせた円熟の筆致は高く評価された。短篇では本格物からSFまで幅広いジャンルを手がけ、多彩な才能を披露している。代表作を集めた 『歌うダイアモンド』(晶文社) は名短編集として知られている。一時期、ハードボイルド作家ブレット・ハリデイと結婚していたこともあり、1950年にはMWAの会長に就任している。

◆マクロイ作品リスト

雪に閉ざされた山荘での密室殺人という魅力的お膳立てに、過去の、そして現在の人間関係の愛憎が複雑に錯綜する本格長編。――堅城紘氏評(ジャーロ2003春号)

読後に印象が強いのは、ウィリング博士の人物観察の面白さであり、いきいきと描かれる子どもたちの姿である。――三橋暁氏評(ミステリマガジン2003/2)

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45.魔法人形
 The Death's Mannikins (1937)

マックス・アフォード
霜島義明訳 解説=森英俊

2003年8月刊 2500円
【amazon】 【bk1】

「きみは魔力の存在など信じはしないだろうね」――旧友ロロの言葉にジェフリー・ブラックバーンは目をみはった。高名な悪魔学研究家ロチェスター教授の屋敷では、まるで中世の魔術が甦ったかのような怪事件が発生していた。家族のもとに送りつけられた不気味な人形は、来るべき死の予告なのか。ロロの頼みでロチェスター屋敷に乗り込んだブラックバーンの目の前で、惨劇はその幕を開ける……。怪奇趣味横溢の難事件に挑む名探偵ブラックバーンが、ついにたどり着いた真相とは? オーストラリアを代表する本格派アフォードの本邦初紹介。

マックス・アフォード (1906-1954)
オーストラリアの作家・脚本家。ラジオ・ドラマの名脚本家として30年代から活躍、夥しいミステリ・ドラマの台本を執筆した。そのかたわら発表した、数学者ジェフリー・ブラックバーンを探偵役とする本格ミステリは、数こそ少ないが魅力的な謎の設定と不可能興味にあふれた佳作ぞろいで、密室ミステリ研究家ロバート・エイディーも激賞、世界中の密室ミステリ・ファンの探求の的となっている。

2004本格ミステリ・ベスト10 第5位

オカルト、不可能犯罪、二転三転する解決と、マニアックな読者を一瞬たりとも飽かさないサービス精神の旺盛さだ。――三橋暁氏評(ミステリマガジン11月号)

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