翔泳社ミステリー

翔泳社

◆四六判・上製ジャケット装
◆装丁=坂川栄治+藤田知子
      (坂川事務所)


グラン・ギニョール
ジョン・ディクスン・カー
サヴェッジ・ナイト
ジム・トンプスン
ポジオリ教授の事件簿

T・S・ストリブリング
悪魔に食われろ青尾蠅
ジョン・フランクリン・バーディン





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ドイル傑作選 全2巻

北原尚彦・西崎憲編

翔泳社


◆四六判・上製ジャケット装
◆装丁=坂川栄治+藤田知子
      (坂川事務所)
◆装画=山田章博
ドイル傑作選T
ミステリー篇
ドイル傑作選U
ホラー・SF篇




※本体価格(税別)表示

舞台裏
《ドイル傑作集》 全5巻 創元推理文庫

グラン・ギニョール 
Grand Guignol

ジョン・ディクスン・カー 
白須清美・森英俊訳 ゲスト・エッセイ=北村薫
作品解説=ダグラス・G・グリーン

1999年4月刊 2000円 品切
装画=北見隆

美しい女性との結婚を間近に控えたサリニー公爵に届けられた一通の殺人予告。そして婚礼の夜、華やかなカジノの一室で、無惨にも首を切断された公爵の死体が発見される。しかも公爵以外部屋に出入りした人物はなく、現場は完全な密室状況であった。あたかも魔物の仕業のごとき怪事件に挑むパリ警察の名探偵バンコランの活躍。デビュー作 『夜歩く』 の原型となった傑作中篇 「グラン・ギニョール」 を初出誌から70年ぶりに発掘。戦慄の怪奇譚 「悪魔の銃」、歴史奇譚 「薄闇の女神」、掌篇 「ハーレム・スカーレム」 の本邦初訳短篇3篇と、カーが選んだベスト・ミステリを解説したエッセイ 「地上最高のゲーム」(完全版)を併録した、〈不可能犯罪の巨匠〉 の輝かしい原点。

ジョン・ディクスン・カー (1906-1977)
アメリカ、ペンシルヴェニア州に生まれる。本名とカーター・ディクスンの2つの名義を用いて、密室殺人、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点のミステリを次々に発表。本格黄金時代を代表する巨匠の一人。代表作に『三つの棺』『火刑法廷』『ユダの窓』『ビロードの悪魔』(ハヤカワ・ミステリ文庫)などがある。国書刊行会では『一角獣殺人事件』、『死が二人をわかつまで』、『九人と死で十人だ』『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』、ダグラス・G・グリーンによる評伝『ジョン・ディクスン・カー〈奇蹟を解く男〉』を刊行。
森鴎外を評した有名な譬えに《テエベス百門の大都》があります。J・D・カーに至る入口もまた、ひとつではありません。……今回の『グラン・ギニョール』は、幾つかの門から、要領よくカーの王国を垣間見られるような作りになっていて、実に楽しく読ませていただきました。表題作もシンプルな形になっているだけに、おどろおどろしさの一方にある、カーの整然たる頭の働きがよく見えて来ます。また、『地上最高のゲーム』冒頭の、いかにも彼らしい高姿勢ぶりには嬉しくなってしまいます。  
                          北村 薫(巻末エッセイより)

「グラン・ギニョール」 が本になっているのは、世界中で日本だけ。ダグラス・G・グリーン氏所有の掲載誌(大学の同人誌)のコピーを翻訳底本にしたものです。翻訳権交渉をしたとき、こんなものがよくあったね、と向こうのエージェントが驚いたほどの貴重作です。ご覧の通り、『夜歩く』 の原型ですが、パズラーにもっとも適しているのは中篇、という説もあるように、謎解き小説としては、こちらのほうがすっきりとまとまっている気がします。最後には、『夜歩く』 にはない、まさに 〈グラン・ギニョール〉 風の趣向も用意されています。また、「地上最高のゲーム」 もこの本の目玉。このエッセイは、たとえば 『黒い塔の恐怖』(創元推理文庫) にも収録されていますが、従来の邦訳はすべて、カーがベストに選んだ作品について1冊ずつ解説した後半を、ばっさり割愛した簡約版だったのです。カーのミステリ観が具体的な例をあげて展開されている好エッセイを、この機会にぜひどうぞ。

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サヴェッジ・ナイト 
Savage Night (1953)

ジム・トンプスン 
門倉洸太郎訳 ゲスト・エッセイ=馳星周

1999年6月刊 1900円 [amazon]
カバー写真=リチャード・カーン

身長5フィート、肺病病みの殺し屋リトル・ビガーは、近く開かれる裁判の重要証人の口を封じるため、ニューヨーク州の小さな田舎町にやって来た。真面目な学生を装って標的の家に下宿した彼は、美しいが自堕落な妻を誘惑、下宿で働く片脚の女や世話好きの老人など、周囲の人間を巧みに利用しながら着々と暗殺計画を進めていく。しかし、冷徹なプロの殺人者であるビガーにも予想もつかなかった展開が彼を待ち受けていた……。全篇を覆いつくす暴力と死の暗い影、歪んだ世界の歪んだ愛、そして戦慄のクライマックス。魂の暗黒を描き出すパルプ・ノワールの鬼才ジム・トンプスンの埋もれた傑作。

ジム・トンプスン (1906-1977)
アメリカ、オクラホマ州に生まれる。農場労働者、給仕、映写技師、機械工など、様々な職を経て小説家としてデビュー。強烈な暴力描写とねじれたユーモア、ときに狂気の領域にまで達した心の闇を描いて異彩をはなつ暗黒小説の巨匠。近年、タランティーノ、スティーヴン・キングらの熱狂的な支持を得て、劇的な復活を遂げた。代表作に本書の他、『内なる殺人者』 (河出書房新社)、『ゲッタウェイ』 (角川文庫)、『ポップ1280』 『アフター・ダーク』 (扶桑社) などがある。キューブリック映画 『現金に体を張れ』 『突撃』 の脚本でも知られている。

ジム・トンプスン──ただひたすらにダークなアメリカを描きつづけた。描かれるのはとち狂った世界であり、登場するのはとち狂った人物ばかり。騎士はいない。高潔な人間もいない。自己憐憫に中毒した人間もいない。友情もなく、愛もなく、誇りもない。手ざわりは荒々しく、飲みくだすには勇気がいる。しかし、触れずにはいられない。飲みこまずにはいられない。なぜなら、彼が書いたのは我々が生きている世界だからだ。……その事実を目の前に突きつけられると、わたしの心は知らず、顫えてしまう。
                         馳星周(巻末エッセイより)


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ポジオリ教授の事件簿 
Best Dr. Poggioli Detective Stories (1975)

T・S・ストリブリング 
倉阪鬼一郎訳 ゲスト・エッセイ=山口雅也

1999年8月刊 2000円 品切
装画=影山徹 

『カリブ諸島の手がかり』で絶賛を博した名探偵ポジオリ教授が帰ってきた。同シリーズに惚れこんだエラリイ・クイーンの要請によって復活した教授は、得意の心理学的推理法で奇妙な事件にいどんでいく。法律の罰しえない完全犯罪をもくろむ殺人者との対決をえがく 「ジャラッキ伯爵、釣りに行く」 「ジャラッキ伯爵への手紙」、人々が見守るなか闘鶏に蹴られて死んだ老人に端を発し、論理を超えた世界のミステリーに到達する 八十一番目の標石」、異常に低い検挙率にもかかわらず、盗まれた金はすべて持ち主のもとに戻っているという、ある地方都市の異常な状況に隠された秘密をあばく 「警察署長の秘密」 など、全11編を収録。

【収録作品】警察署長の秘密/靴下と時計の謎/ジャラッキ伯爵、釣りに行く/ジャラッキ伯爵への手紙/八十一番目の標石/七人の自殺者/真昼の冒険/個人広告の秘密/塗りかけの家 /ポジオリと亡命者/電話漁師

T・S・ストリブリング (1881-1965)
アメリカ、テネシー州に生まれる。教師、弁護士、雑誌編集者などを経て、南米、ヨーロッパを転々としながら作家デビュー。アメリカ南部を舞台にした一連の作品で注目をあび、『ストア』(32)でピュリッツアー賞を受賞。心理学者の名探偵ポジオリ教授が、カリブ海の島々で奇怪な事件に遭遇する『カリブ諸島の手がかり』(河出文庫)は、ミステリ史上に残る名短篇集として高く評価され、戦後、エラリイ・クイーンの求めに応じて、多くのポジオリ・シリーズが書き継がれた。他の邦訳に 『ポジオリ教授の冒険』(河出書房新社)がある。

掴み所のないような出だしなのに、途中から異様に高まってくる緊張感、奇妙な殺人方法と犯罪者像、そして、切れ味鋭く、それでいて後を引くような幕切れ……。(中略) ストリブリングは、それまでの本格ミステリーが基盤としていた近代合理主義に、《向こう側》 の論理を持ち込んでいた。私はそこに、新しいミステリーの可能性を見たような気がしたのである。
               山口雅也(巻末エッセイより)


「このミステリーがすごい!2000」 第9位
「週刊文春」 傑作ミステリー・ベスト1999 第22位

read→ポジオリ教授シリーズ
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悪魔に食われろ青尾蠅 
Devil Take the Blue-Tail Fly (1948)

ジョン・フランクリン・バーディン 
浅羽莢子訳 ゲスト・エッセイ=恩田陸

1999年10月刊 2000円
装画=松本圭以子
文庫化
(創元推理文庫 2010) 

今日がその日だ──退院日の朝、精神病院のベッドで目覚めたエレンは、純粋な喜びを感じていた。これで愛する夫のもとに帰れるのだ。退院後、優れたハープシコード奏者であったエレンは、演奏活動を再開する。しかし、音楽も、夫との生活も、以前とはすべてが微妙に違っていた。不安に怯えるエレンの前に、ひとりの男が現れたときから、封印されていた忌まわしい過去が形をなしはじめ、彼女をめぐる暗い影は、恐怖に満ちたクライマックスへと次第に戦慄の度合いを増してゆく……。人間心理の暗部に深く探索の針をおろし、そのあまりに突き抜けた先見性ゆえに、70年代に劇的な復権を果たすまで不当に埋もれていた本書は、ジュリアン・シモンズが絶賛し、各種ベスト表にも選出された〈幻の傑作〉である。

ジョン・フランクリン・バーディン (1916-1981)
アメリカ、オハイオ州シンシナティに生まれる。10代のうちに家族を次々に失い、様々な職に就きながら自己教育と執筆をつづけ、長篇ミステリ 『死を呼ぶペルシュロン』 (46)、『殺意のシナリオ』 (47) (小学館) を発表。つづく第3作 『悪魔に食われろ青尾蠅』 (48) は、アメリカでは出版社から拒絶され、イギリスで刊行される。一部で高く評価されながら、その後完全に忘れられた作家となるが、70年代に初期三作が復刊されると、精神世界の内部を探究した心理ミステリーの傑作として、爆発的な再評価を獲得、劇的な復権を果たした。

一冊の本で、こんなに何度もぞっとさせられたの、久しぶりです。ぜひ読んでみて下さいよ。(中略)冒頭からの緊張感に満ちた不気味なタッチといい、時にカット・バックされる、過去と現実が地続きになった眩暈のするような描写といい、読んでいる方が不安を覚えるほど突き放された感触といい、うーん。これ、お勧めです。
                        恩田陸(巻末エッセイより)

バーディンは 〈翔泳社ミステリー〉 でいちばん知名度の低い作家でしょう。しかし本書は、〈サンデー・タイムズ〉 のベスト99や、キーティングの 〈名作100選〉 にも選ばれていて、その奇妙な題名とあいまって、昔から知る人ぞ知る作品でもありました (1971年の 〈創元推理コーナー〉 に紹介された 〈サンデー・タイムズ〉 のベスト表では、「青い尾の蛾を悪魔がつかまえる」 となっています)。そしてこれは、まぎれもない傑作でした。未訳の作品にまだこうした作品が埋もれていることは、クラシックの発掘作業に勇気を与えてくれます。

「このミステリーがすごい!2000」 第17位
「週刊文春」 傑作ミステリー・ベスト1999 第11位


Read→緋色の研究/ジョン・フランクリン・バーディン

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ドイル傑作選T ミステリー篇

北原尚彦・西崎憲編

1999年12月刊 2400円  品切

名探偵シャーロック・ホームズ・シリーズで知られる作家アーサー・コナン・ドイルには、ホームズ物以外にも、ミステリー・怪奇・冒険・SF・ユーモアなど、様々なジャンルにまたがる多くの作品がある。本書は、天性のストーリー・テラー、ドイル短篇の精髄をジャンル別に全2巻に編集した決定版傑作集である。第1巻は、「まだらの紐」「王冠のダイヤモンド」 の戯曲版ホームズ譚、ドイル自身によるパロディなどを集めた 〈ホームズ外伝〉 を中心に、「バスカヴィル家の犬」 の魔犬伝説との関連も取り沙汰される狩猟奇譚 「狐の王」、古代ドルイド教の生贄の儀式が現代に甦る 「血の石の秘儀」、痛快きわまるボクシング小説 「クロックスリーの王者」 など、全13篇を収録。

【収録作品】王冠のダイヤモンド(戯曲)/まだらの紐(戯曲)/競技場[フィールド]バザー/ワトスンの推理法修業/消えた臨時列車/時計だらけの男/狐の王/血の石の秘儀/深き淵より[デ・プロフンディス]/シニョール・ランベルトの引退/昇降機/クロックスリーの王者/バリモア公の失脚/解説:シャーロック・ホームズの鬼っ子たち(北原尚彦) 

19世紀末の読者を熱狂させたコナン・ドイルの名作群は、いとも楽々と歳月を超え、世界中のファンの手によって21世紀に受け渡されようとしている。まさに不朽、不滅。本書にはこれまで読めなかった佳作が数多く収録されており、ドイルの小説世界の奥深さと裾野の広がりをたっぷりと堪能することができる。シャーロッキアンやミステリファンだけでなく、あらゆる読書家にとって20世紀最後のうれしいプレゼントになるだろう。
                  ――有栖川有栖

 
アーサー・コナン・ドイル(1859-1930)
イギリスの作家。医院を開業しながら、小説を執筆。長篇 『緋色の研究』 『四つの署名』 で創造した名探偵シャーロック・ホームズを主人公に、〈ストランド〉 誌に連作短篇を発表、一躍、人気作家となる。『シャーロック・ホームズの冒険』 『回想』 『帰還』 『最後のあいさつ』 『事件簿』 とつづく短篇集と、長篇『バスカヴィル家の犬』『恐怖の谷』は、探偵小説史上に輝く不滅の古典。『失われた世界』 『毒ガス帯』 などのSF、『白衣の騎士団』 他の歴史小説など、様々なジャンルにわたって、多くの作品を残した。晩年は心霊主義に傾倒した。

→新編集 《ドイル傑作集》 全5巻 創元推理文庫

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ドイル傑作選U ホラー・SF篇

北原尚彦・西崎憲編

2000年2月刊  2400円  品切

天性のストーリー・テラー、ドイル短篇の精髄をジャンル別に編集した決定版傑作集、第2巻は、超高空飛行に挑んだ飛行士が〈空のジャングル〉で遭遇した怪物たちの世界 「大空の恐怖」、古代エジプトのミイラが現代に甦る 「競売ナンバー249」、数世紀を経た呪いが惨劇を引き起こす 「銀の斧」 などの恐怖小説の名篇に、『失われた世界』 の天才科学者チャレンジャー教授が大活躍するSF 「地球の悲鳴」 「分解機」、潜水艦の脅威を警告したシミュレーション戦争小説 「危険!」、さらにドイル自身の心霊術・神秘主義への傾倒をうかがわせる降霊奇譚 「火あそび」、古代と現代とが数千年の時を超えて交錯する 「ヴェールの向こう」、愛する者を死に追いやる 〈宿命の女〉 を描いて強烈な印象を残す 「ジョン・バリントン・カウルズ」 など、全14篇を収録。

【収録作品】 大空の恐怖/樽工場の怪/北極星号の船長/競売ナンバー249/銀の斧/地球の悲鳴/分解機/危険!/ロスアミゴスの大失策/火あそび/ヴェールの向こう/いかにしてそれは起こったか/トトの指輪/ジョン・バリントン・カウルズ/解説:ドイルの語らなかったこと(西崎憲)
言葉では言い尽くせぬ不思議な胸の高鳴り、登場人物と息がふれ合うような物語との一体感──ドイルの小説はいつ読んでもみずみずしい。この世に読書の愉しみがある限り、ドイルはいつまでも読み継がれるだろう。ホームズと並ぶ人気キャラ、チャレンジャー教授の奇想天外・抱腹絶倒の活躍譚を始めとして、目眩く 「怪奇」 と 「驚異」 の物語を集めた本書は、ドイルの多彩な話術の才を堪能できる永久保存版アンソロジーである。
                ――法月綸太郎
 
他に、怪奇短篇 「茶色い手」 が 『怪奇小説の世紀2』 で読める。

→新編集 《ドイル傑作集》 全5巻 創元推理文庫

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