【歌うダイアモンド】
The Singing Diamonds and Other Stories (1965)
ヘレン・マクロイ
好野理恵・今本渉・霜島義明・吉村満美子訳
頽廃の気に満ちた清朝末の北京を舞台に、美貌の露国公使夫人の失踪と王維の真蹟をめぐる謎を絢爛たる筆で描いて、名作の誉れ高い 「東洋趣味(シノワズリ)」 を巻頭に、女教師のドッペルゲンガーが奇怪な事件を召喚する 「鏡もて見るごとく」、全米各地で謎の飛行物体の目撃者が次々に死んでいく 「歌うダイアモンド」
のベイジル・ウィリング博士探偵譚、近未来の高度消費・管理社会の悪夢 「Q通り十番地」、終末戦争後の世界を描いた 「風のない場所」 他、本格推理、サスペンスからSFまで作者の多彩な才能を示し、〈クイーンの定員〉
にも選ばれた名短篇集 『歌うダイアモンド』 (1965) に、15年前の事件に決着をつけるため町に帰ってきた男が再び殺人事件に巻き込まれる、サスペンスと謎解きを融合させた力作中篇
「人生はいつも残酷」 を併録。
◆創元推理文庫 2015年2月刊 1160円(税別) [amazon]
◆解説=千街晶之
◆装丁=藤田知子/装画=新岡良平
◆晶文社版の文庫化
◇晶文社版(2003)書評より
マクロイのすべてが詰まった珠玉の作品集。――深町眞理子氏評(讀賣新聞2003年3月16日)
本作品集は、マクロイの手になる短篇のマスターピースをほぼ網羅している。(中略) 個々の作品の充実ぶりは尋常ではない。――三橋暁氏評 (ミステリマガジン2003年4月号)
週刊文春ミステリー・ベスト10 第7位
このミステリーがすごい!2004 第8位
2004本格ミステリ・ベスト10 第4位
【収録作品】
まえがき ブレット・ハリデイ
東洋趣味 (シノワズリ)
Q通り十番地
八月の黄昏に
カーテンの向こう側
ところかわれば
鏡もて見るごとく
歌うダイアモンド
風のない場所
人生はいつも残酷
解説 不安の詩神 千街晶之 |
 
アメリカ版原書 |
ヘレン・マクロイ
(1904-1992)
アメリカの探偵作家。早くからその文才を発揮、十代で文芸・美術評論や創作を発表し始める。1938年に精神科医ウィリング博士を探偵役とした 『死の舞踏』
で探偵小説家デビュー。『家蠅とカナリア』 『暗い鏡の中に』 などの傑作を発表。50年代に入るとサスペンス色を強め、『ひとりで歩く女』 『幽霊の2/3』
『殺す者と殺される者』 などで新境地を示した。のちに本格物に回帰し、後期の代表作に 『割れたひづめ』 (国書刊行会)がある。短篇では本格物からSFまで幅広いジャンルを手がけ、多彩な才能を披露した。一時期、ハードボイルド作家ブレット・ハリデイと結婚していたこともあり、1950年にはMWAの会長に就任している。
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