【アントニイ・バークリー作品リスト】


[シリーズ探偵] ★ロジャー・シェリンガム ☆アンブローズ・チタウィック
 邦訳は原則として現在入手しやすい版をあげた。

【長篇】
 1.The Layton Court Mystery (1925) 『レイトン・コートの謎』 巴妙子訳 国書刊行会
 2. The Wychford Poisoning Case (1926) 『ウィッチフォード毒殺事件』 藤村裕美訳 晶文社
 3. Roger Sheringham and the Vane Mystery [米題 The Mystery at Lover's Cave/改題
    Vane Mystery] (1927) 『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』 武藤崇恵訳 晶文社

 4. The Silk Stocking Murders (1928) 『絹靴下殺人事件』 富塚由美訳 晶文社
 5. The Poisoned Chocolates Case (1929) 『毒入りチョコレート事件』 高橋泰邦訳 創元推理
    文庫

 6. The Piccadilly Murder (1929) 『ピカデリーの殺人』 真野明裕訳 創元推理文庫
 7. The Second Shot (1930) 『第二の銃声』 西崎憲訳 国書刊行会/創元推理文庫
 8. Top Storey Murder [米題 Top Story Murder] (1931) 『最上階の殺人』 大澤晶訳 新樹
     社

 9. Murder in the Basement (1932) 『地下室の殺人』 佐藤弓生訳 国書刊行会
 10. Jumping Jenny [米題 Dead Mrs Stratton](1933) 『ジャンピング・ジェニイ』 狩野一郎訳
     国書刊行会/創元推理文庫

 11. Panic Party [米題 Mr. Pidgeon's Island] (1934) 『パニック・パーティ』 武藤崇恵訳 原書
     房

 12. Trial and Error (1937) 『試行錯誤』 鮎川信夫訳 創元推理文庫
 13. Not to Be Taken [米題 A Puzzle in Poison] (1938) 『服用禁止』 白須清美訳 原書房
 14. Death in the House(1939)

フランシス・アイルズ名義
 15. Malice Aforethought (1931) 『殺意』 大久保康雄訳 創元推理文庫
 16. Before the Fact (1932) 『犯行以前』 村上啓夫訳 ハヤカワ・ミステリ 絶版
    同改訂版 (1958) 『レディに捧げる殺人物語』 鮎川信夫訳 創元推理文庫
 17. As for the Woman (1939) 『被告の女性に関しては』 白須清美訳 晶文社

A・B・コックス名義
 18. Brenda Entertains(1925) 7歳の少女を主人公としたユーモア連作短篇集。
 19. Jugged Journalism (1925) 創作講座。実践篇として様々なジャンルの短篇パロディを収載。
 20. The Family Witch (1926) 魔女が登場するファンタジー風ユーモア小説
 21. The Professor on Paws (1926) ユーモアSF。人間の脳を猫に移植するアイデア。
 22. Mr. Priestley's Problem [米題 The Amateur Crime] (1927)『プリーストリー氏の問題』
    小林晋訳 晶文社

A・モンマス・プラッツ名義
 23. Cicely Disappears (1927) 『シシリーは消えた』 森英俊訳 原書房 ※邦訳はバークリー名義

[短篇集]
 24. The Roger Sheringham Stories (1994)
 25. The Avenging Chance and Other Mysteries from Roger Sheringham's Casebook
     (2004)

[邦訳短篇]
  The Avenging Chance 「偶然の審判」 中村能三訳 (『世界短編傑作集3』 創元推理文庫 所
   収)

  Perfect Alibi 「完璧なアリバイ」 大村美根子訳 (HMM93-4)
  White Butterfly 「白い蝶」 酒匂真理子訳 (EQ83-5)
  The Wrong Jar 「瓶ちがい」 砧一郎訳 (『名探偵登場3』 ハヤカワ・ミステリ 所収)
  Razor Edge 「のるかそるか」 久坂恭訳 (EQ94-1)
  “Mr. Bearstowe Says ...” 「ブルームズベリで会った女」 島田三蔵訳 (HMM82-3)
  Mr.Simpson Goes to the Dogs 「帽子の女」 青田勝訳 (EQMM57-9)
  The Policeman Only Taps Once 「警官は一度だけ肩を叩く」 田口俊樹訳 (HMM83-6)
  Right to Kill 「殺しの権利」 深町眞理子訳 (EQ97-9)
  The Sweets of Triumph 「成功の菓子」 久坂恭訳 (EQ97-9)
  Holmes and the Dasher 「ホームズと翔んでる女」 中川裕朗訳 (『シャーロック・ホームズの
   災難/上』 ハヤカワ文庫 所収)

  Unsound Mind 「不健全な死体」 武藤崇恵訳 (HMM2006-3) モーズビー首席警部物
フランシス・アイルズ名義
  Outside the Law 「無法地帯」 井上一夫訳 (別冊EQMM59秋)
  The Coward 「臆病者」 羽田詩津子訳 (HMM86-3)
  Dark Journey 「暗い旅立ち」 笹瀬麻百合訳 (『13人の鬼あそび』 ソノラマ文庫 所収 絶版
A・B・コックス名義
  My Detective Story 「発端」 宮園義郎訳 (新青年38夏増刊 抄訳)
  The Author's Crowning Hour 「作家その栄光の時」 訳者不詳 (HMM82-3)
  A Story Against Reviewers 「書評家連中」 訳者不詳 (HMM82-3)
  The Detective Story 「探偵小説講義」 小林晋訳 (HMM2008-11) ※エッセー
  Bitter Almonds 「苦いアーモンド」 小林晋訳 (HMM2008-11)
  On the Telephone 「電話にて」 白須清美訳 (『奇想天外[21世紀版]アンソロジー』 南雲堂)
  The Woman Who Would Not Be Starled 「驚かない女」 白須清美訳(『奇想天外[21世紀版]
   アンソロジー』 南雲堂)

[その他の邦訳]
  Detective Dialogue 「探偵問答」 久坂恭訳 (創元推理 No.15 1996冬号) セイヤーズとバークリ
    ーとのラジオ対談

  Electrical Bath Plot 「電気ぶろ事件のプロット」 久坂恭訳 (創元推理 No.15 1996冬号)
    上記の対談のさいにまとめられた合作のシノプシス

[合作]
 The Floating Admiral (1931) 『漂う提督』 中村保男訳 ハヤカワ文庫 第12章担当
 Ask a Policeman (1933) 『警察官に聞け』 宇野利泰訳 ハヤカワ文庫 第2部第3章担当
 Behind the Screen (1983/初出1930) 『屏風のかげに』 飛田茂雄訳 (『ザ・スクープ』 中央公
   論社 所収
絶版第4章担当
 The Scoop (1983/初出1931) 『ザ・スクープ』 金塚貞文訳 (中央公論社 絶版 第5・9章担当

【書誌・研究書】

Ayresome Johns, The Anthony Berkely Cox Files (Ferret Fantasy, 1993) ※草稿なども含めた詳細な作品リスト。
Malcolm J. Turnbull, Elusion Aforethought: The Life and Writing of Anthony Berkeley Cox (Bowling Green State University Popular Press, 1996) ※私生活を語ることを嫌い、不明な点が多かったバークリーの生涯を、親族へのインタビューなどによって明らかにした。


【参考文献】

森英俊 『世界ミステリ作家事典/本格派篇』 国書刊行会
真田啓介 『第二の銃声』 解説・作品リスト 国書刊行会


【バークリー論】
近年の作品紹介・再評価をふまえた新しいバークリー論の参考となるものをあげた。

小林晋 「アントニイ・バークリー――比類なき批評精神」 (創元推理文庫 『ピカデリーの殺人』 解説 1984) ※未訳作品を含め全長篇の詳細な紹介と、シェリンガムのプロフィールを通して、バークリーの作風をあらためて検証。この時点ではもちろん 〈世界探偵小説全集〉 は始まっていない。海外クラシック・ミステリの解説のスタイルの点でも画期的なエッセイだった。
小林晋 「バークリーのミステリ風ユーモア小説」 (『プリーストリー氏の問題』 解説、晶文社、2004) ※A・B・コックス名義の作品を中心に、バークリーのユーモア作家としての側面に光を当てる。
瀬戸川猛資 「エドマンド・ビクリー博士の夢――『殺意』」 (創元ライブラリ 『夜明けの睡魔』 初刊1987) ※「昨日の名作」を現在の目で検証してみようという連載 「昨日の睡魔」 の第1回。「謎解きパズルよりも謎解き小説」 をめざした、独立不羈の作家として評価。『殺意』 の主人公が様々なヒーローになる夢を見るシーンが、ジェイムズ・サーバーの 「虹をつかむ男」 に影響を与えているという指摘。
法月綸太郎 「セイヤーズを解剖する」 (講談社『謎解きが終ったら』 1998) ※セイヤーズ 『死体をどうぞ』 は 『毒入りチョコレート事件』 への挑戦ではないか、という問題提起から、両者の共通性、影響関係を論じる。彼らの「作品そのものが良質な探偵小説批評」になっており、そこに 「絶え間ない自己更新運動のダイナミズム」 が感じられるとしている。
法月綸太郎/小森収 「本格推理作家はアントニー・バークリーに何を読みとるのか?」(フリースタイルHP 2001) ※インタビュー形式によるバークリー談義。『第二の銃声』 『ジャンピング・ジェニイ』 『殺意』 『レディに捧げる殺人物語』 などを中心に。実作者ならではの視点も興味深い。
真田啓介 『第二の銃声』 解説 (国書刊行会 1994) ※バークリー作品の特徴を@どんでん返しの多用、A解決の多重性、Bユーモア・ウィット・風刺、C犯罪学への関心、D人間性への関心、とし、さらに『第二の銃声』の詳細な作品分析を行なっている。
真田啓介 「ロジャー・シェリンガム――想像力の華麗な勝利」 (国書刊行会 『地下室の殺人』 解説 1998) ※1996年に刊行された上記ターンブルの研究書をもとに、バークリーの伝記を紹介。多くの謎に包まれていたこの作家の生涯がはじめて日本でも明らかにされた。さらに名探偵シェリンガムの特異性を論じながら、バークリーの探偵小説史に占める位置を再検討する。上の『第二の銃声』 解説とあわせて、今後、バークリーのミステリを論じるには必読の論考。
真田啓介 「空をゆく想像力」 (新樹社 『最上階の殺人』 解説 2001) ※想像力が豊かすぎる名探偵シェリンガムを、「探偵=批評家」 の範疇を突破して 「芸術家」 の領域に達した稀有な存在として論じ、シェリンガム登場作品をあらためて紹介。
森英俊 「知られざるアントニイ・バークリー」 (東京創元社 『創元推理3』 1993) ※バークリーの略伝と、アイルズ名義で 『殺意』 が刊行されたさいの作者探しの騒動 (モームやH・G・ウェルズ、オルダス・ハックスリーも疑われたらしい) や、突然の隠退の理由をめぐる考察など、興味深いエピソードを紹介。
森英俊 「セイヤーズとバークリー、幻の合作ミステリ」 (東京創元社 『創元推理15』 1996) ※1930年に行なわれたセイヤーズとバークリーのラジオ対談と、この二人が計画していた (結局実現しなかった) 合作のシノプシス 「電気ぶろ事件のプロット」 を訳出紹介。
森英俊 『世界ミステリ作家事典/作家事典』 (国書刊行会 1998) ※プロフィールと未訳作品を含む全長篇を紹介。邦訳データを含む著作リスト。
若島正 「風俗小説家としてのバークリー――アイルズ名義の三作を読む」 (みすず書房 『乱視読者の帰還』 2001) ※アイルズ作品に特徴的に現れる、新しくて古い女性、または新しい女性の出現に怯える男性という人物像を手がかりに、当時の社会が抱えた矛盾が反映された優れた風俗小説としてアイルズ・ミステリを読み解く。とくに未訳のAs for the Womanを詳細に紹介、従来、普通小説に接近したものとして探偵小説界では評価の低かった同書を再評価している。
若島正 「バークリーと犯罪実話」 (『ジャンピング・ジェニイ』 解説/みすず書房 『乱視読者の帰還』 2001) ※バークリーの犯罪実話への強い関心、その作品においては探偵よりも犯人が強調されること、作中に登場する作者自身を想起させる小説家たちと自己言及的な言葉、強い女と弱い男のテーマ、探偵小説と犯罪小説とに引き裂かれた作家、など多くのヒントを含む。
芦辺拓/有栖川有栖/小森健太郎/二階堂黎人 「黄金時代の到来/アントニー・バークリー」 (『本格ミステリーを語ろう!/海外篇』 原書房 1999)
※作家4人による座談会形式。パズラー系の作家によるものだけあって、全体的にその角度からの評価が目立つ本だが、バークリーについては 「正統派本格ではない」 (二階堂) としつつも、その先駆的実験性、批評精神を評価。とくに 『第二の銃声』 をめぐる議論。「コンセプトとテクニックと両方持っているというのがバークリーの凄み」 (有栖川)、「バークリー=アイルズのキーワードは 〈意地悪〉」 (芦辺)、「『第二の銃声』は・・・ひねっているけれども本格のスピリットに満ちた傑作」 (小森) などのコメントあり。


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