【悪魔に食われろ青尾蠅】
Devil Takes the Blue-Tail Fly (1948)

ジョン・フランクリン・バーディン
浅羽莢子訳

今日がその日だ──退院日の朝、精神病院のベッドで目覚めたエレンは、純粋な喜びを感じていた。これで愛する夫のもとに帰れるのだ。退院後、優れたハープシコード奏者であったエレンは、演奏活動を再開する。しかし、音楽も、夫との生活も、以前とはすべてが微妙に違っていた。不安に怯えるエレンの前に、ひとりの男が現れたときから、封印されていた忌まわしい過去が形をなしはじめ、彼女をめぐる暗い影は、恐怖に満ちたクライマックスへと次第に戦慄の度合いを増してゆく。
人間心理の暗部に深く探索の針をおろし、そのあまりに突き抜けた先見性ゆえに、1970年代に劇的な復権を果たすまで不当に埋もれていた本書は、ジュリアン・シモンズが絶賛し、各種ベスト表にも選出された幻の傑作である。文庫化。


◆創元推理文庫 2010年12月刊 本体700円 [amazon] [bk1]
◆装画=松本圭以子/装幀=藤田知子
◆解説=松浦正人

※『悪魔に食われろ青尾蠅』 (翔泳社、1999) の文庫化。

◆『悪魔に食われろ青尾蠅』 (翔泳社版)
このミステリーがすごい!2000 第17位
「週刊文春」 傑作ミステリー・ベスト1999 第11位



ジョン・フランクリン・バーディン (1916-1981)
アメリカ、オハイオ州シンシナティに生まれる。10代のうちに家族を次々に失い、様々な職に就きながら自己教育と執筆をつづけ、長篇ミステリ 『死を呼ぶペルシュロン』 (46)、『殺意のシナリオ』 (47) (小学館) を発表。つづく第3作 『悪魔に食われろ青尾蠅』 (48) は、アメリカでは出版社から拒絶され、イギリスで刊行される。一部で高く評価されながら、その後完全に忘れられた作家となるが、1970年代に初期三作が復刊されると、心理ミステリーの傑作として再評価され、劇的な復権を果たした。