WOWOWでロバート・アルトマンの’77年作品「三人の女」を観る。
WOWOWの予定表の紹介欄には、「女同士の嫉妬や虚栄をテーマにしたダークな味わいの人間ドラマ。職場の憧れの先輩と同居生活を送っていた内気なヒロイン。だが、自殺未遂をきっかけに人柄が変貌し・・・。」と書いてあるが、実際に観てみると完全なホラー映画。
何しろ、「憧れの先輩」が「シャイニング」(’80)のシェリー・デュバル、「内気なヒロイン」が「キャリー」(’76)のシシー・スペイセクである。2人並んで立ってるだけで怖い。
私は、アルトマン映画を初めて観たのが復活を果たした「ザ・プレイヤー」(’92)なので、こういう映画を撮っているのが意外だった。
男をあさり、射撃場に通い、カッコよく生きているつもりで、端から見ると痛々しいデュバル。ネジが2,3本外れていて、ひたすらデュバルの真似をするスペイセク。彼女は、服装や髪型をデュバルに似せて、あたかも双子の片割れのようになっていく。ある時、デュバルが妻子持ちの男を部屋に引き込んだことにショックを受け、スペイセクは発作的に自殺を図る。自責に駆られ、献身的にスペイセクの世話を焼くデュバルだが、意識が戻ったスペイセクはすっかり人格が変わっていた。このときから2人の力関係は逆転する・・・。
デュバルがわざわざ田舎から呼び出して病床を見舞った両親を、スペイセクは知らない人だと言う。この両親がまた、得体の知れない母親に寝てばかりいる父親という奇っ怪なキャラクターで、おまけに泊めてもらったデュバルの家で夫婦生活に励むわで、本当にアカの他人に見えるのがミソ。
ではいったい、これまで一緒に暮らしていた「内気なヒロイン」は、何者なのか?
派手な流血などなくても、こんなところに地面が揺らぐような恐怖がにじむ。
ふと思ったのだが、バーベット・シュローダーの「ルームメイト」(’92)は、この映画に影響を受けているのではないだろうか。「ルームメイト」の原作である、ジョン・ラッツの「同居人求む」は、ルームメイトが主人公の姿形ばかりか恋人も身分も仕事も奪って、完全に成り変わろうとする話だった。ところが映画版の「ルームメイト」は、幼い頃に死んだ双子の片割れを取り戻そうとして主人公そっくりになる、という全然別の話になっているのである。この改変がどこから来ているのか不思議だったのだが、こうしてみると「三人の女」にそっくりだ。実際、「三人の女」には(ストーリーには全然絡んでこないのに)双子が重要なモチーフとして登場するのである。
それはそうと、この映画は女性への恐怖に満ちている。「三人の女」というモチーフ自体が、「マクベス」の三人の魔女を連想させる。「イーストウィックの魔女たち」(’87)って映画もあったっけな。そういえば近作の「Dr.Tと女たち」(’00)も、女にもてすぎて困っているリチャード・ギアが女のいない土地へ逃げ出すという話だった。アメリカ映画にはミソジニー(女性嫌悪)という伝統があるというが、その観点からアルトマン映画を見直すと、結構面白そうな気がする。
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