幻のポケミス



ハヤカワ・ミステリ・シリーズは1953年に創刊、現在1600点以上をかぞえる翻訳ミステリ叢書である。欧米の優れた現代ミステリを次々に紹介してくれたこの叢書が、日本のミステリ界に与えた影響とその功績は、誰しもが認めるところだろう*1

よく知られているように、初期には江戸川乱歩監修 《世界探偵小説全集》 を叢書名に掲げ、同時代の話題作と同時に、探偵小説の古典を順次収録していく予定であったが、やがて新作を中心とした編集方針に変わっていった。通し番号が101から始まり、100番までが欠番になっているのは、それを古典作品で埋める構想が当初あったともいうが、現在にいたるまで、その空白は埋められることなく続いている。

あるいはその空白に予定されていたのは、こういったラインナップかもしれないと思わせるのが、ここに掲げる 「幻のポケミス」 リストである。No.194 パット・マガー 『被害者を探せ』 (1955年7月刊) の巻末に、今後の刊行予定として掲載されたもので、作品数は一挙350点にものぼっている。刊行開始から2年、さらなる拡大をめざす編集部の意気込みが伝わってくるようだ。クイーン、クリスティー、カー、ガードナーなど、人気作家の作品がずらりと並んでいるのはもちろん、ほとんど聞いたこともないような名前や、現在に至るまで 「幻」 のままの有名作も予定にあがっている。もし、これが実現していたら……と、ミステリ・ファンなら、このリストを眺めているだけで、楽しい数刻を過ごすことができるだろう*2

もちろん、このリストのかなりの部分は、その後、実際に刊行されているが、他社から刊行されたり、あるいは作品そのものに不足があると判断したのか、何らかの事情で、結局、陽の目を見ることなく終ってしまったタイトルも相当数に上っている。実現したものにも、予告タイトルが変更されたものが多く、これはこれで面白い資料なのだが*3、とりあえずここでは、ハヤカワ・ミステリでは実現しなかった 〈幻の作品〉 を抜き出してリストにしてみた。

他社から翻訳が出ているものについてはこれを記し、未訳の作品については、推定できる範囲で原題を掲載した。一般のファンにはあまり馴染みがないと思われる作家については、簡単な説明を補足している。また、邦訳短篇集で、かならずしも原書そのままではないが、相当する作品を中心にまとめたものについては☆印を付した。

なお、元になったリストは、作者の原綴アルファベット順であるが、ここでは便宜を考えて、作者名の50音順に配列した。作者名には現行の表記と異なるものもみられるが、一部注記が必要と考えたものを除いてそのままとしている。


*1―ただし「世界最高最大」をみずから謳っているのは、多少、誇大広告の憾みがある。イギリスのコリンズ・クライム・クラブ、アメリカのダブルデイ・クライム・クラブの2大叢書はともに2000点を越えているし、フランスのセリ・ノワール叢書だって、そのくらいはいっているはずだ。「最高」 はさておき、「最大」 を誇るには少しばかり数が足りないようだ。

*2―しかし、どのくらい真剣に、これらの作品が検討されていたか、という点では少々疑問がなくもない。リストを見ていくと、その作家の第1作か、シリーズ第1作を上げたものが相当数あり、そのへんはあまり作品を吟味せず、とりあえず最初の作をあげておいた、と思われる節がある。また、ジェイムズ・サンドーやヘイクラフト/クイーン、W・B・スティーヴンスン、F・シーモア・スミスなどの、よく知られた名作表から抜いてきたと思われるタイトルも多い。これらの名作表は、初期ポケミスの巻末に付録として掲載され、ポケミスの解説をもとに編まれた江戸川乱歩 『海外探偵小説 作家と作品』 (早川書房)にも収められている。刊行予定リストの発表は、あるいは類似企画を検討している他社への牽制の意味合いもあったかもしれない。 

*3―たとえば、カー/ディクスン 「毒ある冗談」 「死は逆転する」 「咽喉切り船長」 「鍍金男」 「村の殺人鬼」 「真紅のカーテン」、クイーン 「因果応報」、クリスティー 「四天王」 「匿名の手紙」 「知られざる行先」 「イノック・アーデンの死」、バークリイ 「裁判と誤審」、マクロイ「ガラスの彼方」、ライス 「甘美なる殺人」 など。それぞれ、どの作品かおわかりだろうか。


INDEX

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殺意 フランシス・アイルズ
  →『殺意』 創元推理文庫

ジェリイ氏の仕事 アーサー・アップフィールド
  ※Mr. Jelly’s Business (1937)。オーストラリアを代表する本格ミステリ作家アップフィールドの名
   探偵ナポレオン・ボナパルトは、アボリジニと白人の血をひいている。オーストラリアの自然を舞
   台にした彼の探偵譚は、結局ポケミスでは紹介されず、ハヤカワ・ミステリ文庫で 『ボニーと警官
   殺し』 など3冊が刊行された。

世紀の犯罪 アントニイ・アボット
  →『世紀の犯罪』論創社
  ※About the Murder of the Clergyman’s Mistress (1931)。ヴァン・ダインの影響下に登場したア
   メリカ本格派アボットのサッチャー・コルト物。戦前訳 『世紀の犯罪』 (黒白書房)もある。この大
   仰な邦題は英版The Crime of Centuryから。

サーカス・クイーンの死 アントニイ・アボット
  →『サーカス・クイーンの死』論創社
  ※About the Murder of the Circus Queen (1932)。サッチャー・コルト物第4作。タイトルがAbout
   the Murder of 〜 で統一されているのも、ヴァン・ダインの 「〜殺人事件」 やクイーンの国名シリ
   ーズにならったもので、この時代のアメリカ本格らしい。本書は、世界的に有名な女空中ブランコ
   乗りが数千の観衆の目前で墜落死を遂げるという派手な展開。アボットは通俗的な面白さで人気
   を集めた。井上良夫 『探偵小説のプロフィル』 でも、コルト物が取り上げられている。

ゴタールの手柄 F・I・アンダースン
  『怪盗ゴダールの冒険』 国書刊行会

孤独な狼 ルイ・ジョゼフ・ヴァンス
  ※The Lone Wolf (1914)。作者は、ラッフルズ、セイントの系譜に連なるヒーロー、ローン・ウルフが
   活躍する、展開の速い犯罪冒険小説で一世を風靡した流行作家。

ベンスン殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン
  →『ベンスン殺人事件』 創元推理文庫

グリーン殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン
  →『グリーン家殺人事件』 創元推理文庫

カジノ殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン
  →『カシノ殺人事件』 創元推理文庫 

ガーデン殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン
  →『ガーデン殺人事件』 創元推理文庫  

夜は千の眼を持つ コーネル・ウールリッチ
  →『夜は千の眼を持つ』 創元推理文庫

ザンジヴァールへの道 ピエル・ヴェリイ
  ※La Route de Zanzibar (1949)。『サンタクロース殺人事件』 で有名なフランス作家ヴェリイだが、
   松村喜雄『怪盗対名探偵』 (晶文社)によると、本書はミステリというより普通小説に分類される
   もののようだ。

手がかり カロリン・ウエルズ
  ※The Clue (1909)。〈もし私がそれを知ってさえいたら〉派の流れをくむ多作なアメリカの女性作
   家。探偵フレミング・ストーン物はかつて一世を風靡したが、いまはほとんど顧みられていない。
   これはその第1作。

帰って来た女 パトリシア・ウェントワース
  ※The Traveller Returns (1945)。ロマンス小説や歴史小説を書いていたイギリスの作家ウェン
   トワースは、女性探偵ミス・シルヴァーのシリーズで大当たりをとる。元家庭教師で、若い恋人
   たちのよき相談相手でもあるミス・シルヴァーは、ミス・マープルと並び称されるようになった。

リーダー氏の心 エドガー・ウォーレス
  →『J・G・リーダー氏の心』論創社
  ※The Mind of Mr. J. G. Reeder (1925)。通俗スリラーを書きまくったウォーレスだが、短篇には
   意外に本格味の濃い作品がある。なかでも長年イングランド銀行で偽造紙幣や贋造小切手の
   鑑定を受け持ってきたあと探偵となったJ・G・リーダー氏の事件簿である本書は、多くの目利き
   が推薦する好短篇集。「宝探し」 (『名探偵登場3』 ハヤカワ・ミステリ、所収)他を収録。

正義の四人 エドガー・ウォーレス
  →『正義の四人』 長崎出版

暗黒の階段 ミニヨン・エバハート
  →『暗い階段』 六興キャンドル・ミステリ・絶版

18号室の患者 ミニヨン・エバハート
  →『夜間病棟』論創社
  ※The Patient in Room 18 (1929)。メアリー・ラインハートの伝統を受け継ぎ、ドメスティックな作風
   で女性読者をつかんだアメリカ作家エバハートの第1作。ポケミスには 『見ざる聞かざる』 が収録
   されている。

復讐する鸚鵡 アン・オースティン
  →『おうむの復讐』 東京創元社・絶版

合い鍵 L・G・オフォード
  ※The Skeleton Key (1943)。ラインハートの流れをくむアメリカの女性作家。本書はサンドーの
   名作表に採られている。

隅の老人 バロネス・オルツイ
  →☆『隅の老人』 ハヤカワ・ミステリ文庫/『隅の老人の事件簿』 創元推理文庫/
    『隅の老人 完全版』 作品社

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失われた絞首台 ディクスン・カー
  →『絞首台の謎』 創元推理文庫

髑髏城 ディクスン・カー
  →『髑髏城』 創元推理文庫

帽子蒐集狂事件 ディクスン・カー
  →『帽子収集狂事件』 創元推理文庫/集英社文庫

盲目の理髪師 ディクスン・カー
  →『盲目の理髪師』 創元推理文庫

ゴドフレイ卿殺し ディクスン・カー
  →『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』 国書刊行会/創元推理文庫

黒い眼鏡 ディクスン・カー
  →『緑のカプセルの謎』 創元推理文庫

金網の問題 ディクスン・カー
  →『テニス・コートの謎』 創元推理文庫

自殺 ディクスン・カー
  →『連続自殺事件』 創元推理文庫 

死の別離 ディクスン・カー
  →『死が二人をわかつまで』 国書刊行会/ハヤカワ文庫

三つの弾丸 ディクスン・カー
  →「第三の銃弾」(『カー短編全集2/妖魔の森の家』 創元推理文庫、所収)*簡約版
    『第三の銃弾』 ハヤカワ・ミステリ文庫 *完全版

古物商クック リチャード・キヴァーン
  ※William Cook, Antique Dealer (1928)。ミステリと冒険小説を融合させたイギリス作家。F・シー
   モア・スミスの名作表にとられた作品。

伯父の死 C・H・B・キッチン
  ※Death of His Uncle (1939)。ポケミスに収録された『伯母の死』に登場する素人探偵ウォレンが、
   友人の伯父が失踪した事件の調査に駆り出される。海辺の洞窟に伯父のかつらと衣服を発見し、
   水泳中に溺死したと推理するが……。

薪小屋の秘密 アントニイ・ギルバート
  →『薪小屋の秘密』 国書刊行会

空翔ける殺人者 デイリイ・キング
  →『空のオベリスト』 国書刊行会

大陸横断列車の殺人 デイリイ・キング
  →『鉄路のオベリスト』 光文社カッパ・ノベルス・絶版/論創社  

時計の殺人 ルーファス・キング
  ※Murder by the Clock (1929)。ヴェルコール警部補シリーズで人気を博したアメリカ本格派。とい
   っても、その作風は通俗性のつよいスリラー的なもの。本書では、行方不明の男を捜していたヴェ
   ルコールが、殺人事件につきあたる。

緯度殺人事件 ルーファス・キング
    →『緯度殺人事件』論創社
  ※Murder by Latitude (1930)。戦前訳 『緯度殺人事件』 (黒白書房)。正体不明の殺人者が船上
   で犯行を繰り返す。ヴェルコール物。

ローマ帽の秘密 エラリイ・クイーン
  →『ローマ帽子の秘密』 ハヤカワ・ミステリ文庫・他

フランス白粉の秘密  エラリイ・クイーン
  →『フランス白粉の秘密』 ハヤカワ・ミステリ文庫・他 

ギリシャ棺の秘密 エラリイ・クイーン
  →『ギリシャ棺の秘密』 ハヤカワ・ミステリ文庫・他 

アメリカ銃の秘密 エラリイ・クイーン
  →『アメリカ銃の秘密』 ハヤカワ・ミステリ文庫・他 

間のドア エラリイ・クイーン
  →『日本庭園の秘密』 ハヤカワ・ミステリ文庫・他

ハートの四 エラリイ・クイーン
  →『ハートの4』 創元推理文庫

毒蜘蛛 パトリック・クェンティン
  →『女郎蜘蛛』 創元推理文庫

競技者の謎 パトリック・クェンティン
  →『俳優パズル』 創元推理文庫

リーヴンワース事件 A・K・グリーン
  →『リーヴェンワース事件』 東都書房・絶版

三匹の盲目の鼠 アガサ・クリティー
  ※短篇集The Blind Mice and Other Stories (1950) か。邦訳は『愛の探偵たち』 (ハヤカワ・ミス
   テリ文庫)/『クリスティ短編全集3/二十四羽の黒ツグミ』 (創元推理文庫)
。あるいは、表題作
   「三匹のめくらのネズミ」の戯曲化で、大ヒットしたThe Mousetrap (1954) 『ねずみとり』 (ハヤカ
   ワ・ミステリ文庫
の可能性もないとはいえない。

紫水晶の眼鏡 フランシス・クレーン
  ※The Amethyst Spectacles (1944)。パットとジーン・アボットのおしどり探偵が活躍する、ロマン
   ティックな味のミステリ・シリーズで人気を集めたアメリカの女性作家。タイトルには様々な色を織
   り込んでいる。ポケミスでは 『ライラック・タイムの死』を収録。

フランス鍵 フランク・グルーバー
 →『フランス鍵の秘密』 ハヤカワ・ミステリ
  ※The French Key (1940)。口八丁手八丁のジョニー・フレッチャーと相棒サム・クラッグのユーモ
   ア・ミステリ・シリーズ。グルーバーの第1長篇。

グルート公園の殺人 F・W・クロフツ
  →『フローテ公園の殺人』 創元推理文庫

フレンチ警部の最大事件 F・W・クロフツ
  →『フレンチ警部最大の事件』 創元推理文庫

クロイドン発12時30分 F・W・クロフツ
  →『クロイドン発12時30分』 創元推理文庫 

菫の香 ベイナード・ケンドリック
  ※The Odor of Violets (1941)。盲人探偵マクレーン大尉物。ケンドリックの作品では 『指はよく見
   る』 がポケミスに収録されている。

石切場の死 G・D・H&M・I・コール
  ※Death in the Quarry (1934)。イギリスの著名な経済学者G・D・H・コールが夫人と合作した本格
   ミステリ、ウィルスン警視シリーズは、本国では今も根強い人気をもつ。『百万長者の死』 『ブルッ
   クリン家の惨事』 などの邦訳もあるが、現在はいずれも絶版。

百万長者の死 G・D・H&M・I・コール
  →『百万長者の死』 東京創元社・他・絶版

過ぎし日への乾杯 マニング・コール
  →『昨日への乾杯』 新潮文庫・絶版

明日への祝杯 マニング・コール
  →『殺人計画』 新潮文庫・絶版

(作品未定) G・ハーマー・コックス (G・ハーマ・コックス)
  ※映画・TV界で活躍したアメリカの脚本家・作家。新聞社のカメラマン、ケント・マードックが活躍す
   るサスペンスに優れたミステリ・シリーズがある。

二枚の切符 J・J・コニントン
  ※The Two Tickets Puzzle (1930)。会社社長が列車の中で殺され、現場には1枚の切符が落ち
   ていた。少ない手がかりから論理的推理が展開されるパズル興味濃厚な1作。

迷路の殺人 J・J・コニントン
  ※Murder in the Maze (1927)。シリーズ探偵クリントン・ドリフィールド登場の代表作。屋敷の庭に
   造られた迷路のなかで殺人が発生する。

緑の心 ジョン・コリア
  ※短篇集Green Thoughts and Other Strange Tales (1932) か。表題作は「緑の想い」(『怪奇小
   説傑作集2』 創元推理文庫、所収)
。コリアの邦訳短篇集には 『炎の中の絵』 (早川書房)、『ナツ
   メグの味』 (河出書房新社)、『ザ・ベスト・オブ・ジョン・コリア』 (ちくま文庫・品切)
などがある。

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耳のある家 メイベル・シーリイ
  →『耳すます家』 〈別冊宝石47〉・絶版

ツアレスキ侯爵 M・P・シール
  →『プリンス・ザレスキーの事件簿』 創元推理文庫

死せるギャレ氏 ジョルジュ・シメノン
  →『死んだギャレ氏』 創元推理文庫・絶版

エンジェル家の殺人 ロージャー・スカーレット
  →『エンジェル家の殺人』 創元推理文庫

ブラック・マウンテン レックス・スタウト
  →『黒い山』 ハヤカワ・ミステリ (2009)

お休みなさい、シェリフ ハリスン・スティーヴス
  ※Good Night, Sheriff (1941)。スティーヴズはアメリカの作家・批評家・大学教授。ヴァン・ダイン
   同様、長い病気の静養中にミステリを耽読、これなら自分のほうが上手く書ける、といって書き上
   げたのが本書。農夫の妻殺しをとりあげ、限られた容疑者のなかで巧みに疑惑をかきたて、高い
   評価を受けた。サンドーの名作表の1冊。

六死人 アンドレ・スティーマン
  →『六死人』 創元推理文庫

十八人の幽霊 アンドレ・スティーマン
  ※Dix-huit fantome (1952)。フランス・ミステリ界きっての謎解き派ステーマンは、結局、ポケミス
   には収録されず、「幻の作家」化していたが、その後、各社から 『マネキン人形殺害事件』 『六死
   人』 『殺人者は21番地に住む』 など、代表作がぽつぽつと紹介された。

ドラキュラ ブラム・ストーカー
  →『吸血鬼ドラキュラ』 創元推理文庫

足跡 K・C・ストラーン
    ※Footprints (1929)。井上良夫『探偵小説のプロフィル』によれば、1933‐34年にクイーンの〈ミステ
   リ・リーグ〉誌上で実施されたベストテン投票で、この 『足跡』 は堂々10位にランクインしている。
   28年前の密室射殺事件の謎を関係者の手紙をもとに解決するもの。作者はアメリカの女性作家。

ジャラッキ公爵釣に行く T・S・ストリブリング
  →☆『ポジオリ教授の事件簿』 翔泳社

ナイン・テイラース ドロシイ・セイヤース
  →『ナイン・テイラーズ』 創元推理文庫/集英社文庫

広告会社の殺人 ドロシイ・セイヤース
  →『殺人は広告する』 創元推理文庫

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(作品未定) J・ハドリー・チェイス
  ※ポケミスに収録されたのは 『殺人狂想曲』 『ヴェニスを見て死ね』 の2作。

(作品未定) ピーター・チェイニイ
  ※ポケミスに収録されたのは 『女は魔物』。

セイント登場 レスリー・チャーテリス
  ※ポケミス293 『聖者ニューヨークに現わる』 が対応するかとも思ったが、この The Saint in New
   York (1935) はセイント物第1作ではない。やはりこれは3中篇を収録した Enter the Saint
   (1930)
だろう。

セイントの復讐 レスリー・チャーテリス
  →『聖者の復讐』 六興キャンドル・ミステリ・絶版

双生児の秘密 ジョセフィン・テイ
  →『魔性の馬』 小学館
  ※Brat Farrar (1949)。身寄りのない孤児が、名家の財産の横取りをたくらむ男によって、8年前か
   ら行方不明になっている甥に仕立て上げられて、屋敷に送り込まれる。やがて青年は8年前の事
   件に疑問を感じてひそかに調査を始める。犯罪小説と謎解き興味が融合した佳作。 

赤後家殺人事件 カーター・ディクスン
  →『赤後家の殺人』 創元推理文庫

一角獣殺人事件 カーター・ディクスン
  →『一角獣の殺人』 創元推理文庫

孔雀の羽 カーター・ディクスン
  →『孔雀の羽根』 創元推理文庫

撮影所殺人事件 カーター・ディクスン
  →『かくして殺人へ』 新樹社/創元推理文庫

9+殺人=10 カーター・ディクスン
  →『九人と死で十人だ』 国書刊行会/創元推理文庫

百聞は一見に如かず カーター・ディクスン
  →『殺人者と恐喝者』 原書房/創元推理文庫

青銅ランプの呪 カーター・ディクスン
  →『青銅ランプの呪』 創元推理文庫

コッド岬の惨劇 P・A・テイラー
  →『ケープコッドの悲劇』 論創社
    ※The Cape Cod Mystery (1931)。戦前訳 『ケープコッドの惨劇』 (〈スタア〉1939-6上〜7下)。避
   暑地ケープコッドを舞台に、自由人アゼイ・メイヨが探偵として活躍する人気シリーズは、ユーモア
   と謎解きの興味をかねそなえている。メイヨが殺人容疑をかけられた親友を救うため立ち上がる本
   書はその第1作。クイーン/ヘイクラフトの名作表にも採られている。

矢印の秘密 エリザベス・デイリイ
  ※Arrow Pointing Nowhere (1944)。古書収集家のヘンリー・ガーメッジが探偵役をつとめるビブリ
   オ・ミステリで、クリスティーのお気に入りでもあったアメリカの女性作家。本書でも古書コレクター
   に届けられた謎の手紙に端を発して、怪事件が続発する。ポケミスには 『二巻の殺人』 が収録さ
   れている。

ジョン卿再登場 C・デイン&H・シムプスン
  ※Re-Enter Sir John (1932)。数種の名作表にも採られた有名作。有名劇場の支配人兼主演俳
   優のサー・ジョン・ソマレズが、容疑をかけられた青年に救いの手をさしのべる。サー・ジョン初登
   場の第1作 Enter Sir John (1928) は、イギリス時代のヒッチコックが 『殺人!』 として映画化し
   た。

看破者ジョンスン博士 リリアン・デ・ラ・トール
   →『探偵サミュエル・ジョンソン博士』論創社
   ※Dr. Sam: Johnson, Detector (1946)。18世紀の文人・辞書編纂者サミュエル・ジョンスン博士を
   探偵役にした歴史ミステリ・シリーズの第1短篇集。全4巻のシリーズから編集した 『探偵サミュ
   エル・ジョンソン博士』
(論創社) がある。デ・ラ・トーレには、18世紀の実在事件の真相を推理し
   た 『消えたエリザベス』 (東京創元社・絶版) もある。
 

流砂 ローレンス・トリート
  ※Q as in Quicksand (1947)。アルファベットをタイトルに冠した作品で有名なアメリカ作家。EQMM
   およびHMMに相当数の短篇が紹介されている。

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ヴァルモンの勝利 ロバート・バー
  →『ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利』 国書刊行会

毒入りチョコレート アントニイ・バークレイ
  →『毒入りチョコレート事件』 創元推理文庫

ベラミ裁判 F・N・ハート
  →『ベラミ裁判』 日本出版協同・絶版

闇に隠る F・N・ハート
  ※Hide in the Dark (1929)。法廷ミステリ 『ベラミ裁判』 で有名なハートのもう1つの有名作。という
   のは、〈殺人〉というパーティ・ゲームを作中でとりあげて、このゲームを全米に広めることになった
   という理由から。くじ引きで決めた殺人者役 (参加者には伏せられている) が、暗闇の中で誰かを
   「殺し」てみせ、誰が殺したかを当てるゲームです。

死者の藪 マイルズ・バートン
  ※作品不明。『見えない凶器』 『プレード街の殺人』 のジョン・ロードの別名義の作品。バートン名義
   でも60冊以上の長篇があるが、生前はロードの別名であることは伏せられていたという。
   【追記】塚田よしと氏のご教示によると、Not a Leg to Stand On (1945)がこのタイトルに該当するらしい。
   「死者の藪」は作中に出てくる首吊り騒ぎのあった雑木林をさすとのこと。

二日酔広場 パトリック・ハミルトン
   →『二つの脳を持つ男』 小学館
  ※Hangover Square (1939)。精神分裂症を扱った特異な犯罪小説。イギリスの作家ハミルトンは演
   劇界で活躍し、ヒッチコックの 『ロープ』 や、イングリッド・バーグマン主演の 『ガス灯』 は、彼の戯
   曲が原作。

(作品未定) ブレット・ハリデイ
  ※ポケミスには 『夜に目覚めて』 以下、マイケル・シェーン・シリーズを中心に17点が収録されてい
   る。

青い小旗の謎 スチュワート・パルマー
  ※The Puzzle of the Blue Banderilla (1937)。女性教師ヒルディガード・ウィザーズ物。ライスとの
   合作でも知られるパーマーは、アメリカ本格派を代表する作家の一人。

ミス・ウィザースの手柄 スチュワート・パルマー
  ※The Riddles of Hildegarde Withers (1947)「緑の氷」 (『犯罪の中のレディたち/上』 創元推理
   文庫、所収)、「医者と瓜ふたつの男」 (『クイーンの定員3』 光文社文庫、所収)
他を収録した短
   篇集。ウィザーズ物の短篇は初期のEQMMの常連だったから、あるいはオリジナル編集を考えて
   いたかもしれない。

40面相の男 トーマス・ハンシュー
  →『四十面相クリークの事件簿』 論創社

鍵の番人 E・D・ビガーズ
  →『チャーリー・チャン最後の事件』 論創社
  ※Keeper of the Keys (1932)。ハワイ警察の中国系警察官チャーリー・チャン・シリーズ最終作。
   このシリーズは大戦間のアメリカで大変な人気を博し、40本以上の映画が作られた。

落ちた雀 ドロシイ・B・ヒューズ
  →『墜ちた雀』 〈別冊宝石24〉・絶版

二輪馬車の秘密 ファーガス・ヒューム
  →『二輪馬車の秘密』 新潮文庫・絶版/扶桑社

赤毛のレドメイン イーデン・フィルポッツ
  →『赤毛のレドメイン家』 創元推理文庫

守銭奴の死 イーデン・フィルポッツ
  →『密室の守銭奴』 〈別冊宝石29〉・絶版『守銭奴の遺産』論創社

イームス・アースキン事件 A・E・フィールディング
  ※The Eames-Erskine Case (1924)。戦前に 『仮面の殺人』 (博文館) の邦訳がある。いわゆる
   〈足の探偵〉 派のポインター首席警部を探偵役にしたイギリスの女性作家フィールディングの第
   1作。昭和18年の井上良夫宛書簡では、乱歩は 「100頁で投げました」 と書いている。

停った足音 A・E・フィールディング
  →『停まった足音』 論創社
 
 ※The Footsteps That Stopped (1926)。『ゴア大佐の推理』 と並ぶ 〈幻の作品〉 の代表格。かつ
   て創元推理文庫でも、かなり具体的な刊行予告がされたことがあった。ヴァン・ダインが推奨した
   せいか、名前だけが知れわたってしまった不幸な作品。実際に読んだ人の評価はかなり厳しい。 

死は過去を持つ アニタ・ブーテル
  ※Death Has a Past (1939)。イギリスの女性作家。サンドーの名作表の1冊。

簡単な毒 レスリー・フォード
  ※The Simple Way of Poison (1937)。未亡人グレイス・レイサムと元軍人のプリムローズ大佐のコ
   ンビが探偵役をつとめるシリーズで人気を博した、コージー・ミステリの先駆者ともいうべきアメリカ
   の女性作家。別名デイヴィッド・フロム。この一派では重要な作家のひとりだが、邦訳はほとんど
   ない。

完全殺人事件 クリストファー・ブッシュ
  →『完全殺人事件』 創元推理文庫

(作品未定)ハルバート・フットナー
  ※カナダ生まれのアメリカ作家・劇作家。女性探偵ロシカ・ストーリーのシリーズで有名。代表作
   にThe Under Dogs (1925)などがある。

思索機械 ジャック・フットレル
  →☆『思考機械』 ハヤカワ・ミステリ文庫/『思考機械の事件簿1〜3』 創元推理文庫
   『思考機械』全2巻 作品社

ハーバード大学の殺人 ティモシイ・フラー
  →『ハーバード大学殺人事件』 青弓社

マックス・カラドス アーネスト・ブラマ
  →☆『マックス・カラドスの事件簿』 創元推理文庫

31号新館の秘密 オースティン・フリーマン
  →『ニュー・イン三十一番の謎』論創社
  ※The Mystery of 31 New Inn (1912)。 『赤い拇指紋』 『オシリスの眼』 につづくソーンダイク博士シ
   リーズ第3長篇。

フルード夫人の失踪 オースティン・フリーマン
   →『アンジェリーナ・フルードの謎』論創社
  ※The Mystery of Angelina Frood (1924)。ディケンズの未完に終った探偵小説 『エドウィン・ドル
   ードの謎』 を下敷きにした異色作。極端な抄訳ながら戦前訳 『男装女装』 (平凡社) がある。

孔雀の眼 ブライアン・フリン
  ※The Mystery of the Peacock’s Eye (1928)。本格とスリラーをブレンドした作風のイギリス作
   家。本書では、若い女性の毒殺事件に、〈孔雀の眼〉 と呼ばれるエメラルドの盗難事件や某国
   皇太子恐喝事件がからむ派手な展開を見せる。  

死の弾丸 ニコラス・ブレイク
  →『死の殻』 創元推理文庫

ミドル・テンプルの殺人 J・S・フレッチャー
  →『ミドル・テンプルの殺人』 東都書房・絶版/論創社

警視庁から来た男 デヴィッド・フローム
  ※The Man from Scotland Yard (1932)。レスリー・フォードはフロム名義では、山高帽に眼鏡とコ
   ウモリ傘がトレードマークで、小心者のピンカートン氏が、スコットランド・ヤードのブル警部を助け
   て謎を解く、ユーモアに満ちた本格ミステリを執筆している。

ゴア大佐の推理 リン・ブロック
  ※The Deduction of Colonel Gore (1924)。戦前から何度か刊行予告をされながら、ついに幻に
   終った作品。東京創元社の〈世界推理小説全集〉でも予定にあがっていた。作者ブロックは、錯綜
   するプロットによって、家庭の悲劇をメロドラマティックに描いたイギリス本格派。本書はヴァン・ダ 
   インの「傑作探偵小説」や、乱歩/井上良夫の往復書簡でも言及された有名作。

フォーチュン氏を呼べ H・C・ベイリー
  →『フォーチュン氏を呼べ』論創社
  ※Call Mr. Fortune (1920)。フォーチュン氏物の第1短篇集。邦訳短篇集に 『フォーチュン氏の事
   件簿』 (創元推理文庫) があるが、本書からは採られていない。

誰が駒鳥を殺したか ハリントン・ヘクスト 
  →『だれがコマドリを殺したのか?』 創元推理文庫

病院の殺人 ジェセフィン・ベル
  ※Murder in Hospital (1937)。『ロンドン港の殺人』 がポケミスに収録されているイギリスの女性
   作家ベルの第1作。何かと噂のあった美人看護婦の死体が洗濯物入れの中から発見される。病
   院に勤めていたベルの体験がいかされている。

お節介の死 ジョージ・ベレアー (ジョージ・べレアー
  ※Death of Busybody (1942)。イギリスの作家・銀行家。50冊以上におよぶリトルジョン警部
   シリーズがある。これはその第2作。

トレント自身の事件 E・・ベントリイ
  ※Trent’s Own Case (1936)。H・ワーナー・アレンとの合作。名作 『トレント最後の事件』 (13) か
   ら23年後に書かれた続篇だが、残念ながら諸氏の評価は高くない。
   戦前訳 『トレント自身の事件』 (春秋社) がある。

アンクル・アブナー M・D・ポースト
  →『アンクル・アブナーの叡智』 ハヤカワ・ミステリ文庫/
    『アブナー伯父の事件簿』 創元推理文庫

ムッシュー・ヨンケル M・D・ポースト
  →『ムッシュウ・ジョンケルの事件簿』論創社
  ※Monsieur Jonquelle (1923)。ポーストの創造した多くの探偵役の中で、アブナー伯父につぐ位
   置をしめる、パリ警視庁長官ジョンケル氏の事件簿。「大暗号」(『暗号ミステリ傑作選』 創元推理
   文庫、所収)
他を収録。

ナイン・タイムス・ナイン H・H・ホームズ
  →『密室の魔術師』 〈別冊宝石99〉・絶版

墓場行きロケット H・H・ホームズ
  →『死体置場行ロケット』 〈別冊宝石104〉・絶版

不思議なミッキイ・フィン エリオット・ポール
  →『不思議なミッキー・フィン』 河出書房新社
  ※The Mysterious Mickey Finn (1939)。『ルーヴルの怪事件』 が紹介されているホーマー・エヴァ
   ンズ物の第1作。モンパルナスのカフェで起きた毒殺事件を扱った本書には、30年代のパリに集
   った芸術家やジャーナリストが数多く登場する。エリオット・ポール自身、第1次大戦でパリに渡り、
   そのまま住み着いてしまったアメリカ人ジャーナリストで、大戦間のパリやスペインでの生活を綴
   った回想記で有名になった。

レディ・キラー E・S・ホールディング
  →『レディ・キラー』 東京創元社・絶版

無罪のダフ夫人 E・S・ホールディング
  ※The Innocent Mrs. Duff (1946)。ホールディングはロマンス小説も書いていたアメリカの女性作
   家。

戸口に誰が? レイモンド・ポストゲイト
  ※Somebody at the Door (1943)。法廷ミステリの名作 『十二人の評決』 で知られるポストゲイトの
   第2作。嫌悪すべき夫を殺した女性の物語。

ラムパス王の死 フランシス・ボナミイ
  ※The King Is Dead on Queen Street (1945)。ユーモアあふれる語り口で一時期注目を集めたア
   メリカ本格派。「キング」 と呼ばれる大物映画監督の怪死事件をとりあげた、代表作である本書
   は、シリーズ探偵ピーター・シェーンが登場せず、ワトスン役のフランシス・ボナミイが謎を解くとい
   う変わった趣向。

大立物の死 J&E・ボネット
  ※Dead Lion (1949)。イギリスの夫婦作家。本書は有名批評家の死因に疑惑を抱いた甥が、真相
   究明しようとするもの。

消え失せた女 E・L・ホワイト
  →『バルカン超特急』 小学館

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モトさんしっかり J・P・マーカンド
  ※日本人スパイのモト氏は、映画化もされ、かつては有名なキャラクターだった。タイトルからする
   と No Hero (別題Your Turn, Mr. Moto) (1935) 『ミカドのミスター・モト』 (〈EQ〉1988.9-11)
   
か、Think Fast, Mr. Moto (1937) あたりか。同シリーズには 『天皇の密偵』 『サンキュー、
   ミスター・モト』の邦訳もある。
   【追記】 『都筑道夫創訳ミステリ集成』(作品社、2022)の解説(新保博久)では、都筑道夫[訳]
   /マーカンド『銀のたばこケースの謎』(1957。原作の大筋を借りて都筑が創作した児童書。伊藤
   照夫名義)の「原作」Mr. Moto Is So Sorry (1938) が『モトさんしっかり』ではないか、という可能
   性が検討されている。なお、Mr. Moto Is So Sorryの完訳が『天皇の密偵』サンケイ出版/角川文庫

殺人鬼登場 ナイオ・マーシュ
  →『殺人鬼登場』 六興キャンドル・ミステリ・絶版

無事の人 ヘレン・マキンネス (ヘレン・マッキネス)
  ※Above Suspicion (1941)。『ヴェニスへの密使』 『ザルツブルグ・コネクション』 の邦訳もあるスコ
   ットランド生まれのアメリカ作家。スパイ小説で成功をおさめる。第1作の本書は映画化もされた。

Xに対する逮捕状 フィリップ・マクドナルド
  →『Xに対する逮捕状』 国書刊行会/創元推理文庫

目の壁 マーガレット・ミラー
  →『眼の壁』 小学館文庫

薔薇の別荘 A・E・W・メイスン
  →『薔薇荘にて』 国書刊行会

ロードシップ・レインの家 A・E・W・メイスン
  →『ロードシップ・レーンの館』論創社
  ※The House of Lordship Lane (1946)。『薔薇荘にて』 『矢の家』 のアノー探偵、最後の事件。盗
   難事件を調査していたアノーは、主犯とにらんでいた実業家の自殺に直面する。

(作品未定) ヴァン・ウィック・メイスン
  ※アメリカの作家。陸軍情報部ヒュー・ノース大尉(のち少佐)が活躍するスパイ小説で有名。The
   Vesper Service Murders (1931) など初期作品は、探偵小説興味も強いという。

マーティン・ヒューイット アーサー・モリスン
  →☆『マーティン・ヒューイットの事件簿』 創元推理文庫/『マーチン・ヒューイット』作品社

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ホリゾンタル・マン ヘレン・ユーステス
  →『水平線の男』 創元推理文庫・絶版

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母、死体を発見す ジプシー・ローズ・リー
  →『ママ、死体を発見す』 論創社 (※ライス名義での出版)
  ※Mother Finds a Body (1942)。クレイグ・ライスが有名ストリッパーのゴーストライターをつとめた
   といわれている作品 (ただし、2001年に出たジェフリー・マークスの評伝は、ライス代作説には
   否定的である)。同名義の第1作 『Gストリング殺人事件』 同様、ジプシー・ローズ・リー本人が
   登場。彼女の母親が浴槽の中に身許不明の死体を発見して大騒ぎとなる。

首のない女 クレイトン・ロースン
  →『首のない女』 東京創元社・絶版/原書房

パディントンの秘密 ジョン・ロード
  ※The Paddington Mystery (1925)。150冊もの本格ミステリを刊行したジョン・ロードのプリーストリ
   ー博士シリーズ第1作。

フー・マンチュー博士 サックス・ローマー
  ※順当に考えればシリーズ第一作 The Mystery of Dr. Fu-Manchu (1913) か。中国人の天才科
   学者フー・マンチューは、東洋人による世界征服を夢見て秘密結社を組織し、様々な科学兵器や
   魔術や毒物の知識を駆使して、白人社会を脅かす。それに立ち向かうのが、スコットランド・ヤード
   の元高官ネイランド・スミスである。現在の目で見れば「黄禍論」以外の何物でもないが、この連
   続冒険活劇は英米で大ヒットし、何度も映画化された。その最初のエピソード 「ザイヤットのキス」
   (『シャーロック・ホームズのライヴァルたち2』 ハヤカワ・ミステリ文庫、所収)
は邦訳で読むことが
   できる。ちなみに戦前訳 『悪魔博士』 (改造社)は第2長篇の邦訳。
  ※2004年になって第一作 『怪人フー・マンチュ−』 がポケミス入りした。   

雪の上の血痕 ヒルダ・ローレンス
  →『雪の上の血』 東京創元社・絶版

ノース夫妻と殺人事件 F&R・ロックリッヂ
  ※The Norths Meet Murder (1940)。アメリカの夫婦探偵物の代表的なシリーズの第1作。作者も
   夫婦合作。

順序なしの殺人 F&R・ロックリッヂ
  →『湖畔の殺人』 六興キャンドル・ミステリ・絶版

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インクェスト パーシヴァル・ワイルド 
  →『検死審問』 創元推理文庫 他

ティンスレイの骨 パーシヴァル・ワイルド
  →『検死審問ふたたび』 創元推理文庫
  ※Tinsley’s Bone (1942)。作家の焼死事件をめぐって、『検屍裁判』 の検視官や陪審員の面々が
   再登場、ユーモアたっぷりの掛け合いを披露する。結末の意外性にも満ちた埋もれた逸品。

モラン氏の冒険 パーシヴァル・ワイルド
   『探偵術教えます』 晶文社/ちくま文庫

【参考資料】

森英俊 『世界ミステリ作家事典/本格派篇』 国書刊行会
ハワード・ヘイクラフト 『娯楽としての殺人』 国書刊行会
井上良夫 『探偵小説のプロフィル』 国書刊行会
江戸川乱歩 『海外探偵小説 作家と作品』 早川書房
松村喜雄 『怪盗と名探偵』 晶文社
サザランド・スコット 『現代推理小説の歩み』 東京創元社
Chris Steinbrunner & Otto Penzler, Encyclopedia of Mystery & Detection, Routledge &Kegan Paul
Jacque Barzun & Wendell Hertig Taylor, A Catalogue of Crime, revised ed., Harper & Row
Twentieth-Century Crime & Mystery Writers, third ed., St James Press
Allen J. Hubin, Crime Fiction II, Garland Publishing