―今日は何の日―
【3月】

3月1日
◆1887年のこの日、『検死審問』 『悪党どものお楽しみ』 『探偵術教えます』 のパーシヴァル・ワイルドがニューヨークで生まれる。
◆1892年のこの日、芥川龍之介が東京市京橋区入船町で生まれる。龍之介という名前は、辰年辰月辰日の辰の刻の生まれにちなんで、という。木々高太郎が 「探偵小説」 に替わる呼称として 「推理小説」 を提唱したとき、その例として芥川の 「河童」 を挙げたことはよく知られているが、「藪の中」 を “解決のないミステリ” として読むことも可能だろう。ちなみに 『文豪ミステリ傑作選/芥川龍之介集』 (河出文庫) は、「奉教人の死」 「開化の殺人」 「疑惑」 「魔術」 「未定稿」 「黒衣聖母」 「影」 「妙な話」 「アグニの神」 「奇怪な再会」 「藪の中」 「報恩記」 を収録している。怪奇幻想作家としての側面に注目して編まれたものに 『伝奇ノ匣3/芥川龍之介妖術伝奇集』 (学研M文庫)、『文豪怪談傑作選/芥川龍之介集 妖婆』 (ちくま文庫) がある。
◆1908年のこの日、『迷宮としての世界』 『文学におけるマニエリスム』 のグスタフ・ルネ・ホッケがブリュッセルで生まれる。
◆1932年のこの日、生後1年7ヶ月のチャールズ・A・リンドバーグ・ジュニアが誘拐される。大西洋単独横断飛行の英雄の息子の誘拐事件を、新聞は 「世紀の犯罪」 と書き立て、全米が騒然となった。72日後、子供は近くの林の中で死体となって発見された。その2年後、ハウプトマンという男が逮捕され、死刑判決を受けて、事件は一応の決着をみたが、その後もさまざまな疑惑が取り沙汰され、リンドバーグ自身が犯人という説 (たとえばアールグレン&モニアー 『リンドバーグの世紀の犯罪』 朝日新聞社) を含め、いまも事件の 「真相」 を探る試みは尽きない。なお、アガサ・クリスティーはこの誘拐事件に想を得て、 『オリエント急行の殺人』 (1934) を執筆している。
◆1939年のこの日、岡本綺堂が死去。慢性の気管支炎が悪化して肺浸潤を宣告され、前年の10月から病床にあったが、2月12日には危篤状態に陥り、やや持ち直したものの、綺堂はすでに死を覚悟していた。岡本経一 『綺堂年代記』 (青蛙房) から引く。「意識の明瞭なこと、気力の衰へぬこと、これを唯一の頼みにして、みんな奇蹟を信じてゐたけれども、定命のともしびの消えかかるものを防ぎ止むる術はなかつた。三月一日の夜明け前、門下代表の額田六福を枕許に招いて、ただ看護の礼と後を頼むといふ言葉だけで、殊更の遺言も感想も洩さなかつた。こんこんと深い眠りに落ちて再び目を開かなかつた。遠間の静かな息が長く尾を引いて消えてなくなつたのは、真昼の零時二十分である。例の少し唇を曲げて含み笑ひをするやうな白晢の顔に死の苦渋は見られなかつた。享年六十八、六十六年三月の生涯をここに終る」
◆1971年のこの日、『帽子から飛び出した死』 『天井の足跡』 「天外消失」 のクレイトン・ロースンが死去。1963年から70年まで 《EQMM》 の編集者でもあった。


3月2日
◆1797年のこの日、ゴシック小説の嚆矢 『オトラントの城』 のホラス・ウォルポールが死去。ストロベリー・ヒルに彼が創りあげた擬似ゴシックの幻影城は、死後45年たって競売に付された。内部はかなり改装されてしまったが、いまも現存し、観光ツアーなども行なわれているらしい。
◆1917年のこの日、1950年代、人生の敗残者たちを描いた作品でペイパーバック界のべストセラー作家となったデイヴィッド・グーディスが、フィラデルフィアで生まれる。邦訳に 『狼は天使の匂い』 『深夜特捜隊』 『華麗なる大泥棒』。また、多くの作品が映画化されていて、トリュフォー 《ピアニストを撃て》 の原作も邦訳が出た。やはりグーディス原作の 《潜行者》 はハンフリー・ボガートとローレン・バコール主演のフィルム・ノワールの古典。若い頃から奇行の目立ったグーディスは、やがて小説が書けなくなって、自ら精神病院に入り、49歳で亡くなっている。
◆1977年のこの日、2月27日に亡くなったジョン・ディクスン・カーの葬儀が、サウスキャロライナ州グリーンヴィルのスプリングウッド共同墓地で行なわれた。墓地は生前のカーが調べ物のために通った図書館の隣にあった。
◆2003年のこの日、『傷痕の街』 『黄土の奔流』 などのハードボイルド作家生島治郎、本名小泉太郎が肺炎で死去。享年70。元 《EQMM》 編集長で、小泉喜美子の元夫でもあり、当時の回想にもとづく 『浪漫疾風録』 がある。
3月3日
◆1756年のこの日、メアリー・シェリーの父親で、急進的社会思想家、ゴシック小説 『ケイレブ・ウィリアムズ』 (1794) の作者ウィリアム・ゴドウィンが、英国ケンブリッジシャーで生まれる。
◆1863年のこの日、『三人の詐欺師 (怪奇クラブ)』 「パンの大神」 のアーサー・マッケンが、ウェールズのカーレオン・オン・アスクで、牧師の子として生まれる。ローマ時代の遺跡が散在し、神秘的な森や草地のひろがるこの土地は、少年マッケンの夢想をかきたてた。自伝的小説 『夢の丘』 は 「魂のロビンソン・クルーソー」 である青年の孤独な彷徨と、現実と夢想の間の戦いを描いた傑作。
◆1962年のこの日、三島由紀夫の戯曲 『黒蜥蜴』 (原作・江戸川乱歩) が東京・サンケイホールで初日を迎える。配役は黒蜥蜴=水谷八重子、明智小五郎=芥川比呂志。他に田宮二郎、大空真弓らが出演。千秋楽(3/26)には三島本人もボーイ役で特別出演した。
3月4日
◆1852年のこの日、ニコライ・ゴーゴリが死去。『死せる魂』 第二部の原稿を暖炉に放り込んでしまったあと、憂鬱症に苦しんだゴーゴリは次第に宗教に傾倒するようになり、断食療法の果てに42歳で亡くなった。『ゴーゴリ全集』 全7巻 (河出書房新社) は、詐欺師チチコフの遍歴を通してロシア社会の欺瞞をあばく 『死せる魂』 をはじめ、幻想小説の傑作 「鼻」 「外套」 「ヴィイ」 「肖像画」 「狂人日記」 など、面白小説の宝庫。また、トンマーゾ・ランドルフィの短篇 「ゴーゴリの妻」 は、生涯独身で、一説には女を知らなかったともいうゴーゴリの 「妻」 の驚くべき正体をあかすグロテスクな笑いに満ちた奇想小説。こちらも是非ご一読を (『カフカの父親』 収録)。
◆1881年のこの日、ピュリッツアー賞作家でポジオリ教授シリーズの作者T・S・ストリブリングがテネシー州クリフトンで生まれる。「ミステリが辿ったかもしれないもう一つの歴史を示唆している」 (山口雅也) という 『カリブ諸島の手がかり』 はミステリ史上に特異な地位を占める名短篇集。とくに 「最後の最後でミステリの底が抜ける」 (有栖川有栖) と評された最終話 「ベナレスへの道」 の衝撃は忘れがたい。ポジオリのその後の活躍も 『ポジオリ教授の冒険』 『ポジオリ教授の事件簿』 にまとめられている。
◆1922年のこの日、ベルリンのプリムス=パラスト劇場で、F・W・ムルナウ監督の 《吸血鬼ノスフェラートゥ》 がプレミア上映される。上映後、公開記念のコスチューム・パーティを催すなど、大々的な宣伝が行なわれたが、ヒットにはいたらず、『吸血鬼ドラキュラ』 の作者ブラム・ストーカーの未亡人から著作権侵害で訴えられ、裁判所から上映禁止とフィルムの破棄を命じられることになる。ちなみにこの映画の企画者で、舞台装置・衣装を担当した画家のアルビン・グラウは神秘主義者でもあり、オカルト結社に関わり、魔術師アレイスター・クロウリーとも接点があったという (但しその思想は拒絶していた)。
◆1948年のこの日、『ブラック・ダリア』 以降、『ビッグ・ノーウェア』 『LAコンフィデンシャル』 『ホワイト・ジャズ』 と異様なパッションに満ちた作品を立て続けに発表し、注目を集めたジェイムズ・エルロイがロサンジェルスで生まれる。
◆2003年のこの日、『シンデレラの罠』 のセバスチアン・ジャプリゾがフランス中部のヴィシーで死去。享年71。18歳のとき本名ジャン・ バティスト・ロッシで発表した青春恋愛小説 『不幸な出発』 は 「若き天才現る」 と絶賛を浴び、のちに作者自身の監督で映画化された(《続・個人教授》)。他に 《さらば友よ》 《雨の訪問者》 《狼は天使の匂い》 など、多くのミステリ映画のシナリオを手がけている。
3月5日
◆1904年のこの日、《新青年》 編集長として横溝正史のモダニズム路線を継承する一方で、小栗虫太郎、木々高太郎、久生十蘭などを世に送り出し、実作者としても 「空で唄う男」 「お・それ・みお」 などの都会的でロマンティックな短篇を発表した水谷準が、函館市に生まれる。牧逸馬(谷譲次)、久生十蘭は函館中学の先輩だった。
◆1936年のこの日、海外ミステリの評論・研究家なら誰もがお世話になっている怪物的書誌 《Crime Fiction》 の編者アレン・J・ヒュービンが、ミネソタ州クロスビーで生まれる。
3月6日
◆1831年のこの日、「命令不服従」 と 「職務怠慢」 により、エドガー・アラン・ポーがウェストポイント陸軍士官学校を放校になる。どう考えてもポーが軍人に向いていたとは思えないのだが。ルイ・ベイヤード 『陸軍士官学校の死』 は同校在学中のポーが登場する歴史ミステリ。
◆1909年のこの日、大岡昇平が東京牛込に生まれる。推理長篇 『夜の触手』 『歌と死と空』 や、海外の裁判実話に取材した短篇集 『無罪』、裁判小説の傑作 『事件』 などがある。また、編著 『ミステリーの仕掛け』 (社会思想社) は、大井広介、平野謙、遠藤周作、埴谷雄高、荒正人、丸谷才一、開高健、坂口安吾、椎名麟三、吉田健一らの名前が目次に並ぶミステリ・エッセー・アンソロジーの好著。
3月7日
◆1922年のこの日、1960年代に登場、法廷物を得意としたサラ・ウッズが、ヨークシャー州ブラッドフォードで生まれる。弁護士アントニイ・メイトランドを探偵役にしたシリーズは長篇47作に及ぶ。
◆1924年のこの日、安部公房が東京・滝野川で生まれる。花田清輝らとの座談会では、チャンドラーを一蹴しながらも、ハメットのセミ・ドキュメンタリー手法を高く評価し、「主人公を動かすのは外部の偶発性だよ。読んだとき、俺は負けた、と思ったね」 と発言している。
◆1928年のこの日、江戸川乱歩賞受賞作 『猫は知っていた』 (1957) で戦後ミステリ界に新風を送り込んだ仁木悦子が、東京府豊多摩郡渋谷村 (現在の渋谷区) に生まれる。
◆1973年のこの日、ロバート・アルトマン監督の 《ロング・グッドバイ》 が公開される。原作はレイモンド・チャンドラーの古典的名作。猫を飼うフィリップ・マーロウなんて、と原作崇拝者には酷評されたが、エリオット・グールド演じるマーロウの飄々としたキャラクター、西海岸の風俗など、当時の 「ネオ・ハードボイルド」 的ムードがあって面白い。
3月8日
◆1919年のこの日、『海の牙』 『飢餓海峡』 の水上勉が、福井県大飯郡本郷村で生まれる。
3月9日
◆1918年のこの日、『裁くのは俺だ』 (1947) 以下のマイク・ハマー・シリーズで戦後アメリカ最大のベストセラー作家の一人となったミッキー・スピレインが、ブルックリンで生まれる。
◆1971年のこの日、アントニイ・バークリー・コックスが、パディントンのセント・メアリー病院で、肺炎、慢性気管支炎、鬱血性心不全の併発により死去。死亡証明書には 「アントニイ・ビヴァリー・コックス」 と誤記されていた。『被告の女性に関しては』 (1939) を最後に小説の筆を絶ったバークリーは、晩年、人嫌い、厭世的な性格が嵩じて、世捨て人のような生活を送っていたという。かつてクリスチアナ・ブランドに 「この世の中に嫌いでない人間など、一人としていないのだよ」 と洩らしたこともあるバークリーだが、血縁者や友人、かつての使用人たちに対する遺産相続、贈与の手配はきちんとなされていた。
◆1981年のこの日、『月世界への旅』 『暗い山と栄光の山』 『円環の破壊』 のマージョリー・ホープ・ニコルソンが死去。
3月10日
◆1920年のこの日、悲痛な恋愛小説 『日々の泡 (うたかたの日々)』 の作者で、ジャズ・トランペット奏者、シャンソンの作詞・作曲家、歌手、俳優としても活躍したボリス・ヴィアンが、パリ郊外のヴィル・タヴレで生まれる。別名をつかい、アメリカ小説の 「翻訳」 として発表された、白い肌をもつ黒人青年を主人公に若者たちの暴力とセックスを描いた 『墓に唾をかけろ』 (1946) は、風俗紊乱の廉で起訴され、発禁処分となった。チャンドラー 『大いなる眠り』 や、ヴァン・ヴォークト 『非Aの世界』 など、ミステリ・SFの翻訳も多く手がけている。岡崎京子の漫画版 『うたかたの日々』 もぜひ手に取ってみてほしい一冊。
◆1929年のこの日、最初のファイロ・ヴァンス映画 《カナリヤ殺人事件》 が公開される。主演はウィリアム・パウエル (のちに 《影なき男》 のニック・チャールズ役も演じている)。ブロードウェイの歌姫 〈カナリヤ〉 役で 《パンドラの箱》 のルイーズ・ブルックスも出演している。この映画は製作途中でサイレントからトーキーに変更されたが、すでに撮影を終了したブルックスは 《パンドラの箱》 出演のためにドイツへ渡っており、音声を吹き込みに帰国することを拒否した。そのため映画では別人が声を当てている。
3月11日
◆1936年のこの日、夢野久作が来客中に脳溢血で急死。
◆1970年のこの日、弁護士ペリー・メイスン・シリーズの作者アール・スタンリー・ガードナーが死去。一昔前はミステリ・ファンなら誰でも必ず何冊かは読んでいる人気作家だったのに、いまはあまり読まれていないようだ。
◆1972年のこの日、フレドリック・ブラウンが死去。個人的な思い出だが、初めて買った 〈ミステリマガジン〉 がフレドリック・ブラウン追悼号だった。
◆1988年のこの日、クリスチアナ・ブランドが死去。最晩年のブランドについては、山口雅也 「ブランドからディクスン・カーの逸話を聞く」 (『ミステリー倶楽部へ行こう』 所収) が貴重な証言。〈EQ〉 のために特別に書き下ろされた 『ブランド回想録』 (1983年1月号〜1985年5月号) には、クリスティー、セイヤーズ、カーをはじめ英国ミステリ界の面々の興味深い逸話が多数記されている。
3月12日
◆1868年のこの日、鉄道探偵ソープ・ヘイズルの作者ヴィクター・L・ホワイトチャーチが英国国教会の牧師の家に生まれる。自身も聖職の道にすすみ、オックスフォード・クライストチャーチの参事会員にまでのぼりつめた。乱歩の少年探偵団物 『天空の魔人』 の素晴らしい列車消失トリックが、ホワイトチャーチ 「ギルバート・マギル卿の絵」 の完全な盗用であることを知ったときは、子供心にショックでしたね。
3月13日
◆1884年のこの日、「銀の仮面」 のヒュー・ウォルポールが、国教会牧師の父親の赴任地だったニュージーランドで生まれる。ウォルポールを有名にしたのは 湖水地方のある一族の歴史を辿った 「へリス年代記」 と総称される大河小説群だが、〈ジーキルとハイド〉 テーマの 《Portrait of a Man with Red Hair》、稀代の脅迫者を描いた 『暗い広場の上で』、殺人者がその犠牲者に同化していく不気味な物語 《The Killer and the Slain》 など、長篇犯罪小説も数作残している。短篇の代表作を集めた 『銀の仮面』 は奇妙な味わいの秀作を数多くおさめている。
◆1912年のこの日、『煙で描いた肖像画』 『歯と爪』 『消された時間』 など、技巧的なプロットの作品で知られるビル・S・バリンジャーが、アイオワ州オスカルーサで生まれる。
◆1919年のこの日、〈タイムズ・ピカユーン〉 紙が、すでに数件の殺人を犯していた 〈ニューオリンズの斧男〉 から手紙を受け取る。この手紙で 〈斧男〉 は、3月19日に無差別殺人を実行すると予告すると同時に、ジャズを聴いている家を襲うことはないと約束した。その日、ニューオリンズ中にジャズが鳴り響いたが、〈斧男〉 は犯行を行なわなかった。手紙の主がほんとうに殺人者本人であったかどうかはともかく、タチの悪いジョークなのは間違いないが、その日のニューオリンズはちょっと凄いことになっていたことだろう。レイ・セレスティン 『アックスマンのジャズ』 (ハヤカワ・ミステリ) はこの斧男事件にもとづいている。
3月14日
◆1869年のこの日、オカルト探偵物 『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』 や長篇 『ケンタウロス』 など、夥しい作品を残した怪奇小説の巨匠アルジャナン・ブラックウッドが英国ケント州で生まれる。神秘主義、アニミズム的傾向のつよい作品には正直ピンとこないものもあるのだが、代表作 「柳」 や 「ウェンディゴ」 の鮮烈な恐怖は同時代の怪奇小説のなかでも図抜けている。
◆1901年のこの日、『黒死館殺人事件』 の小栗虫太郎が東京市神田旅籠町に生まれる。小栗家の本家は神田多町で代々酒問屋をいとなむ旧家だった。
◆2010年のこの日、アメリカの俳優、ピーター・グレイヴスがロサンゼルスの自宅で死去。享年83。1960年代〜70年代初の人気TVシリーズ 《スパイ大作戦》 のリーダー役、ジム・フェルプス役で有名。キャリアの初期に、ビリー・ワイルダーの収容所物の傑作《第十七捕虜収容所》(1953 )で脇役ながら重要な役を演じている。
3月15日
◆紀元前44年のこの日、ローマ帝国の支配者ユリウス・カエサルが、ブルータスらによって暗殺される。
◆1902年のこの日、リリアン・デ・ラ・トーレがニューヨーク市で生まれる。『消えたエリザベス』 は18世紀の実在事件の謎解きに挑戦した歴史ミステリの古典だが、辞書編纂者・批評家のサミュエル・ジョンスン博士を探偵役に、その伝記作者ジェイムズ・ボズウェルがワトスン役をつとめる短篇シリーズも4冊残している。
◆1923年のこの日、挿絵画家・石原豪人が島根県簸川郡大杜町で生まれる。児童書、少年誌のグラビア頁などで、妖怪、怪獣、怪人、幽霊、怪異現象などを異様な迫力で描き、昭和の子供たちに強烈なインパクトを与えた。少女誌で乱歩の少年探偵団物 『魔法人形』 『塔上の奇術師』 などの挿絵も手がけている。林月光名義でSM雑誌でも活躍した。その画業の一端は 『石原豪人』 (河出書房新社) にまとめられている。竹熊健太郎によるインタビュー(『箆棒な人々』 収録) も面白い。
◆1937年のこの日、H・P・ラヴクラフトが故郷プロヴィデンスで腸癌のため死去。享年46。
◆2010年のこの日、洋画家の勝呂忠が間質性肺炎で死去。享年83。ハヤカワ・ミステリの表紙画をその初期から長年にわたって手掛けた。《エラリイ・クイーンズ・ミステリマガジン》 日本版の表紙も創刊号(1956)から担当、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)美術賞を受賞している。その油彩抽象画は当時の読者に新鮮な印象を与え、「ミステリ」 のイメージアップに大きく貢献した。
3月16日
◆1943年のこの日、米国CBSラジオの 《サスペンス》 で、ジョン・ディクスン・カー脚本のミステリ・ドラマの傑作 「B13号船室」 が放送される。1940年代から50年代にかけてカーは夥しいラジオ・ドラマを執筆していて、その経験はこの時期の作風の変化に大きな影響を与えていると思われる。
◆1951年のこの日、『小笛事件』 の山本禾太郎が死去。
◆1999年のこの日、瀬戸川猛資が死去。古典を新しい目で読みなおしてみよう、現代ミステリをきちんと評価しよう、という 『夜明けの睡魔』 などのエッセーは、ミステリ批評界に新風を吹き込んだ。
3月17日
◆1904年のこの日、実際の殺人事件にもとづいた舞台劇 《ロープ》 や、二重人格テーマの心理サスペンス 『二つの脳を持つ男』 の作者パトリック・ハミルトンが、英国サセックス州で生まれる。《ロープ》 を映画化したヒッチコックは、全篇をワンショットで撮るという実験を試みたが、作品的には成功とはいえなかった。のちにヒッチコックはこの実験を 「無意味な狂ったアイディア」 と振り返っている。ハミルトンのもうひとつの代表作の戯曲 《エンジェル・ストリート》 は、《ガス燈》 として二度映画化 (1940、1944) されているが、ジョージ・キューカー版 (1944) では、イングリッド・バーグマンが策謀によって発狂寸前にまで追いつめられていくヒロインを演じて、アカデミー主演女優賞に輝いた。
3月18日
◆1915年のこの日、朝鮮戦争で中共軍の捕虜になった米軍大尉が洗脳をほどこされ、暗殺者としてアメリカに戻ってくる特異なサスペンス小説 『影なき狙撃者』 (52) の作者リチャード・コンドンが、ニューヨーク市で生まれる。原題 “Manchurian candidate (満洲の候補者)” は 「洗脳された手先、傀儡」 という意味の一般名詞にもなった。ジョン・フランケンハイマーによる映画化 (62) もスリラー映画の古典として評価が高い。2004年、背景を湾岸戦争に変更してリメイクされた (原題は同じだが、邦題は 《クライシス・オブ・アメリカ》 という凡庸なもの。リメイク版では中国/満州は関係ないので、Manchurian は世界支配をもくろむ巨大企業の名前ということになっている。かなり無理やりな感じも)。
3月19日
◆1918年のこの日、福永武彦が福岡県筑紫郡二日市町で生まれる。〈EQMM〉 に連載された名コラム 「深夜の散歩」 でもわかるとおり、熱心な探偵小説ファンだった福永は、自身、加田伶太郎名義で大学助教授、伊丹英典を探偵役とした短篇シリーズを執筆している。また、中村眞一郎、堀田善衛と共に 《モスラ》 の原作も手がけた。ちなみに中村は福永の後を受けて 「バックシート」 を 〈EQMM〉 に連載、堀田には 『ABC殺人事件』 (創元推理文庫・旧訳)、『白昼の悪魔』 (ハヤカワ・ミステリ) などの翻訳がある。
◆1950年のこの日、火星シリーズ、ターザン、地底世界ペルシダーなど、多くの冒険小説シリーズで絶大な人気を博したエドガー・ライス・バロウズが死去。
◆2008年のこの日、イギリスのSF作家アーサー・C・クラークが、スリランカ、コロンボの病院で死去 (スリランカには1956年に移住)。享年90。『幼年期の終り』 『都市と星』 『宇宙のランデヴー』 『楽園の泉』 など、多数の作品がある。映画 《2001年宇宙の旅》 の原作でも有名。
3月20日
◆1868年のこの日、盲人探偵マックス・カラドスの作者アーネスト・ブラマが英国マンチェスターで生まれる。その経歴には謎が多い。数あるホームズのライヴァルたちのなかでも異彩を放つ、指先の感触で新聞が読めるというカラドスの冒険を集めた 『マックス・カラドスの事件簿』 (創元推理文庫) は、いま読んでも十分面白い作品集。中国を舞台にしたファンタジー、カイ・ルン物も、ほとんど紹介が進んでいないが本国では評価が高いシリーズ。
◆1912年のこの日、大阪圭吉 (本名・鈴木福太郎) が愛知県新城町の旧家に生まれる。戦前随一ともいえる本格短篇の精髄は 『とむらい機関車』 『銀座幽霊』 (創元推理文庫) にまとめられている。
◆2001年のこの日、〈新青年〉 編集長として、また実作者としても活躍した水谷準が肺癌のため死去。享年97。晩年は探偵小説界との交わりを絶ち、ゴルフ関係の著作・翻訳に専念していた。
3月21日
◆1876年のこの日、〈冒険世界〉 〈武侠世界〉 の主筆をつとめ、『海底軍艦』 などの科学冒険小説で明治の少年たちの胸を躍らせた押川春浪 (本名・方在) が松山市で生まれる。父、方義は有名なキリスト者で東北学院の創設者・初代院長。弟、清は日本初のプロ野球チーム 〈日本運動協会〉 の創設メンバーで、〈野球殿堂〉 第1回表彰者のひとり。
◆1907年のこの日、連続殺人鬼物 『恐怖のブロードウェイ』 (1954) 他で知られるデイヴィッド・アリグザンダーが、ケンタッキー州シェルビイヴィルで生まれる。新聞記者出身の彼の作品ではスポーツ新聞のコラムニスト、バート・ハーディンが活躍する。好短篇集 『絞首人の一ダース』 の邦訳もある。
◆2002年のこの日、『アデスタに吹く冷たい風』 のトマス・フラナガンが死去。
◆2017年のこの日、モース主任警部シリーズのコリン・デクスターがオックスフォードの自宅で死去。享年86。
3月22日
◆1908年のこの日の夜、東京、豊多摩郡大久保村 (現・新宿区大久保) の空き地で、銭湯帰りの女性が口に濡れ手ぬぐいを押し込まれて窒息死しているのが発見された。15日後、植木職人で覗きの常習者だった 「出歯亀」 こと池田亀太郎が殺人犯として逮捕される。但し、池田は裁判では一貫して無罪を主張、結局、無期徒刑の判決が下されたが、この事件については冤罪の可能性も指摘されている。
◆1921年のこの日、怪盗紳士ラッフルズの作者で、ドイルの義弟でもあったE・W・ホーナングがフランス南西部の保養地サン・ジャン・ド・リューズで死去。

3月23日
◆1925年のこの日、南太平洋で武装船に襲撃されたエンマ号の生き残りヨハンセン二等航海士以下八名が、南緯47度9分西経126度43分の海上に巨大な石柱が聳えたつのを発見。海底から浮上したと思われるこの奇怪な石の建造物に上陸した一行は、その中から出現した描写不能の怪物に遭遇する。同時刻、世界各地で原因不明の自殺、発狂、殺人、暴動が多数発生、プロヴィデンスに住む青年彫刻家ウィルコックスは突如高熱を発して昏睡状態に陥り、邪神クトゥルーの夢をみる。
◆1964年のこの日、フリッツ・ラング監督の 《M》 でギョロ目の猟奇殺人者を演じ、強烈な印象を残したペーター・ローレがハリウッドで死去。葬儀では怪奇俳優のヴィンセント・プライスが弔辞を述べた。ジョン・ヒューストン 《マルタの鷹》 ではホモセクシュアルなジョエル・カイロ役、ロジャー・コーマンのポー映画 《黒猫の怨霊》 では妻と愛人を壁に塗りこめる嫉妬深い夫、同じく 《忍者と悪女》 ではコミカルな魔法使い役 (共演はボリス・カーロフとヴィンセント・プライス!)、他にも 《毒薬と老嬢》 など、ミステリ・怪奇映画に多数出演した特異な俳優。
3月24日
◆1834年のこの日、アート・アンド・クラフト運動を率いた工芸家・デザイナーで、『ユートピアだより』 を著した社会主義者で、『世界のかなたの森』 『世界のはての泉』 などのファンタジーの作者でもあるウィリアム・モリスが、ロンドン郊外のウォルサムストウで生まれる。
◆1905年のこの日、〈SFの父〉 ジュール・ヴェルヌが死去。1991年になって、生前未発表の原稿 『20世紀のパリ』 (1863執筆) が発見され、世界的話題となった。
◆1916年のこの日、〈アメリカ版ジェイムズ・ボンド〉 マット・ヘルム・シリーズのドナルド・ハミルトンがスウェーデンで生まれる。ディーン・マーティン主演で映画化されたこのシリーズは、『誘拐部隊』 以下12冊 (邦題はすべて 「〜部隊」 で統一されている) がポケミスに収録されている。
◆1961年のこの日、フォーチュン氏シリーズで知られるH・C・ベイリーが死去。
◆2008年のこの日、俳優リチャード・ウィドマークがコネティカット州の自宅で死去。享年93。映画デビュー作の 《死の接吻》 (1947)で冷酷非情な殺し屋を演じて注目を集め (車椅子の女性を階段から突き落とすシーンは当時の観客にショックを与えたという)、多くの犯罪映画や西部劇で悪役をつとめた。笑顔の怖さは天下一品で、ハイエナの異名をとった。その個性的な役づくりは、たとえば日活アクションの悪役たちにも影響をあたえていると思われる。単純な悪役ではなく、さまざまな役柄を演じることができた貴重な性格俳優でもあり、ジェラルド・カーシュ原作、ジュールス・ダッシン監督の 《街の野獣》 (50) では、レスリング興行で一攫千金を夢見ながら、組織に追い詰められていく青年を演じていて、これも印象深い。
3月25日
◆940年のこの日 (天慶3年2月14日)、平将門が平貞盛・藤原秀郷の追討軍と激突、下総国猿島で戦死。その後将門は日本の歴史上最強の怨霊となった。荒俣宏 『帝都物語』 は、その将門の怨霊を喚び覚まし、東京壊滅をもくろむ怪人加藤保憲と、それを阻止せんと立ち上がった人々の霊戦を描いた伝奇大作。
◆1903年のこの日、『耳すます家』 (1938) の殺人に巻き込まれたヒロインのリアルな造型で注目を集めたメイベル・シーリイが、ミネアポリスで生まれる。
3月26日
◆1959年のこの日、レイモンド・チャンドラーが死去。ちなみにチャンドラーの顧問弁護士で、遺言状の作成にあたったのは、英国の探偵作家マイクル・ギルバート。
◆1994年のこの日、『狙った獣』 『鉄の門』 のマーガレット・ミラーが死去。
◆同年同日、『高木家の惨劇』 『奇蹟のボレロ』 の角田喜久雄が死去。
◆2006年のこの日、翻訳家の矢野浩三郎が骨髄性白血病のため死去。享年69。ウィリアム・マッギヴァーン 『殺人のためのバッジ』、ジョルジュ・シムノン 『モンマルトルのメグレ』、スチュアート・ウッズ 『湖底の家』、スティーヴン・キング 『ミザリー』、ケン・フォレット 『大聖堂』 など、多くの訳書がある。編纂したアンソロジーに 『アンソロジー恐怖と幻想』 全3巻 (月刊ペン社)、『怪奇と幻想』 全3巻 (角川文庫)、『世界怪奇ミステリ傑作選』 正・続 (番町書房)、『ミステリー・ゾーン』 全4巻 (文春文庫) など。『定本ラヴクラフト全集』 (国書刊行会) の監訳者も務めている。早川書房編集者、チャールズ・E・タトル商会等を経て、矢野著作権事務所 (現在の日本ユニ・エージェンシーの前身) を設立した、日本における翻訳権エージェントの草分け的存在でもあった。
3月27日
◆1908年のこの日、『若者よ、きみは死ぬ』 (70) 他でCWAゴールドダガーを2度受賞、犯罪心理に重点をおいた作風でハイスミスとも比べられたジョーン・フレミングが、英国ランカシャー州ホリッジで生まれる。
◆2002年のこの日、映画監督ビリー・ワイルダーがロサンゼルスの自宅で肺炎のため死去。享年95。クリスティー 「検察側の証人」 を原作にしたミステリ映画の古典 《情婦》 (57) をはじめ、原作ジェイムズ・ケイン、脚本レイモンド・チャンドラーのフィルム・ノワール 《深夜の告白》 (44)、脱走計画にスパイ探しのフーダニットをからめた 《第十七捕虜収容所》 (53)、ホームズ・パロディの快作 《シャーロック・ホームズの冒険》 (70) など、ミステリ界にも縁の深い監督だった。
◆2006年のこの日、スタニスワフ・レムがクラクフの病院で心不全のため死去。享年84。『ソラリス』 『エデン』 『砂漠の惑星』 『天の声』 『枯草熱』 『完全な真空』 『虚数』 など、多くの邦訳作品がある。SFというジャンルを超えて、現代の世界文学で最高の作家のひとりといっていいだろう。現在、《スタニスワフ・レム・コレクション》 (国書刊行会) が刊行中。その一巻 『高い城・文学エッセイ』 にはレムが少年時代を語った自伝的小説 「高い城」 が収められている。
◆2011年のこの日、インド、ボンベイ警察のゴーテ警部シリーズで知られるH・R・F・キーティングがロンドンで死去。享年84。『パーフェクト殺人』(64)、『マハーラージャ殺し』(80)でCWAゴールド・ダガー賞を受賞。1996年には長年に功績に対しダイヤモンド・ダガー賞を贈られている。評論家としても活躍、『ミステリの書き方』 『海外ミステリ名作100選』 などの著書がある。
3月28日
◆1902年のこの日、『股から覗く』 の葛山二郎が大阪府南河内郡で生まれる。
◆1912年のこの日、CBAラジオのミステリ・ドラマ 《サスペンス》 に多くの脚本を提供したルシール・フレッチャーがブルックリンで生まれる。代表作の 《スミマセン番号間違えました》 (43) は、病床の女性が自分の殺害計画を夫が話しているのを偶然耳にしてしまう、ぞっとする物語。バーバラ・スタンウィック主演で映画化もされた (48、邦題 《私は殺される》)。
◆1924年のこの日、史上最低の探偵ドーヴァー警部の作者ジョイス・ポーターが英国チェシャ州マープルで生まれる。
◆2004年のこの日、英国の俳優ピーター・ユスティノフが、心臓疾患のためスイスの病院で死去。享年82。《ナイル殺人事件》 《地中海殺人事件》 などのエルキュール・ポアロ役で有名。アンブラー原作の犯罪コメディ 《トプカピ》 では、ひょんなことから窃盗団の一味に加わる男を軽妙に演じている。
3月29日
◆1902年のこの日、『第二の顔』 『壁抜け男』 『マルタン君物語』 のマルセル・エイメが、フランス、ブルゴーニュ地方のジョワニーで生まれる。
◆1971年のこの日、『十二人の評決』 のレイモンド・ポストゲイトが死去。
3月30日
◆1956年のこの日、『トレント最後の事件』 『トレント乗り出す』 のE・C・ベントリーが死去。ホームズ型の名探偵を 「笑い」 の俎上にのせた喜劇的探偵小説の原点として、『トレント最後の事件』 の重要性があらためて言及されることが、近年目につくようになった。
◆1995年のこの日、エリザベス・フェラーズが死去。長篇デビューが1940年、最後の長篇が1990年と、半世紀にわたる長いキャリアをもつ作家だが、日本ではほとんど忘れられた作家のひとりだった。それが俄然注目を集めはじめたのは、1990年代末に 『猿来たりなば』 以下のジョージとトビー・シリーズが紹介されてから。

3月31日
◆1809年のこの日、『死せる魂』 『外套』 『鼻』 のニコライ・ゴーゴリがウクライナのプルタワ県ミルゴロド郡の小村に生まれる。故郷ウクライナに材をとった作品集 『ディカーニカ近郷夜話』 『ミルゴロド』 には、魔女や妖怪、異教の信仰が登場するフォークロア的作品が含まれている。なかでも 『ミルゴロド』 収録の中篇 「ヴィイ」 は妖怪小説の傑作。《妖婆 死棺の呪い》 (1967) としてソビエトで映画化され、水木しげるも貸本漫画時代に 「死人つき」 として越前・柏崎の妙智寺に舞台を移して翻案、のちにTV版 《ゲゲゲの鬼太郎》 の一挿話に仕立て直された。
◆1922年のこの日、『モルダウの黒い流れ』 『シロへの長い道』 『チェルシー連続殺人』 でCWAゴールド・ダガーを三度受賞したライオネル・デイヴィッドスンが、英国ヨークシャー州ハルで生まれる。
◆1926年のこの日、『コレクター』 『魔術師』 『マゴット』 のジョン・ファウルズが、エセックス州リー・オン・シーで生まれる。『コレクター』 は異常者による女性誘拐物のひとつの原型にもなった。
◆1939年のこの日、バジル・ラスボーンがホームズを演じた最初の映画 《バスカヴィル家の犬》 が公開される。
◆2008年のこの日、映画監督ジュールス・ダッシンが、アテネの病院でインフルエンザの合併症のため死去。享年96。ニューヨークのアパートで起きた殺人事件の捜査を描いた 《裸の町》 (48) のドキュメンタリー・タッチは、黒澤明 《野良犬》 (49) をはじめ、多くの刑事ドラマに影響を与えた。ロンドンの裏社会で一攫千金を夢見る青年の苦闘を描く 《街の野獣》 (50、原作ジェラルド・カーシュ)、マッカーシーの赤狩りを逃れてフランスで撮ったフィルム・ノワール 《男の争い》(55、原作オーギュスト・ル・ブルトン)、トルコのトプカピ宮殿博物館の宝剣強奪計画を軽妙なタッチで描いた犯罪コメディ 《トプカピ》 (64、原作エリック・アンブラー 『真昼の翳』) などのミステリ映画がある。

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