レターズ
ジョン・バース
ビリー・ザ・キッド全仕事
マイケル・オンダーチェ
巡礼たちが消えていく
ジョン・フラー
マゴット
ジョン・ファウルズ
ハードライフ
フラン・オブライエン

ふくろうの眼
ゲルハルト・ケップ
カフカの父親
トンマーゾ・ランドルフィ
不滅の物語
イサク・ディーネセン
虚数
スタニスワフ・レム
エバ・ルーナ
イサベル・アジェンデ
エバ・ルーナのお話
イサベル・アジェンデ
魔法の書
エンリケ・アンデルソン=インベル
遠い女 ラテンアメリカ短篇集
フリオ・コルタサル他

※本体価格(税別)表示

〈文学の冒険〉シリーズ

英米の人気作家から東欧・ラテンアメリカの未知の傑作まで、
エキサイティングな世界文学の最前線を紹介して
フィクションの新たな可能性を切り拓く
まったく新しい形の世界文学全集。

国書刊行会
四六変型・上製ジャケット装


〈文学の冒険〉はもともと自分の企画ではない。当初、全15冊で構想されていたシリーズを、2冊まで出したところで、企画した編集者が退社することになり、急遽そのあとを引き継ぐことになった。担当編集者としての愛着はもちろんあるが、ここでは「自分が企画したもの」という原則を守って、これらについては触れないでおく。さいわい、このシリーズは好評を得て、引きつづき第2シリーズを刊行することになった。ここでは中心となっていくつか企画を出したが、以後、このシリーズは編集部内で企画を出しあうかたちとなった。下に掲載したのは、第2シリーズで企画書を提出したもの。ただし、途中から〈探偵クラブ〉〈世界探偵小説全集〉などの刊行が重なったこともあり、入稿時、または校正途中から、実際の編集作業を同僚に引き継いでもらったものも多い。それらについては注記を付した。

〈文学の冒険〉シリーズの全体についてはこちらをご覧いただきたい。

レターズ (I・II)
Letters (1979)

ジョン・バース (アメリカ)
岩元厳・小林史子・竹村利子・幡山秀明訳

2000年5月刊 596頁/590頁 各3200円
1巻【amazon】/2巻【amazon】

装丁=前田英造(坂川事務所)

ヴェトナム反戦運動や大学紛争で騒然たる1969年のアメリカ。新作の構想を練っていた作家ジョン・バースのもとへ、マーシーホープ州立大学で英文学を教えるレイディ・アマーストから、名誉博士号授与の件で手紙が届いた。スタール夫人の血を引き、ウェルズ、ヘッセら、名だたる文豪たちの愛人役をつとめてきたレイディ・アマーストは、45歳を迎えた今、作家アンブローズ・メンシュと恋におち、激しいセックスを繰り返している。大学では、自称桂冠詩人A・B・クック6世が学長代行と組んで陰謀を画策中、もう一人の作家ジェローム・ブレイは政治と小説の革命をめざし、コンピューターを使って奇怪な小説を書き続けている。一方、37歳の時に自殺に失敗した弁護士トッド・アンドルーズは、老境にはいって再度の自殺を考え始めている。行動不能の“無天候状態”に悩むジェイコブ・ホーナー君は、いまだカナダの再生復帰院に滞在中。『フローティング・オペラ』 『旅路の果て』 『酔いどれ草の仲買人』 『やぎ少年ジャイルズ』 『キマイラ』 など、過去の作品の主人公たちが再登場し、彼らが交わす88通の手紙で構成される、バース文学の総決算ともいうべき超弩級の大作。

ジョン・バース(1930- )
アメリカの作家。1951年、第1作
『フローティング・オペラ』(講談社・絶版) を発表。以後、教職のかたわら創作活動に打ち込む。ポストモダニズムの中心的作家として、古典や神話などの先行テクストから新たな物語を再構築し、様々な文学的実験によって小説の可能性を追求した。『旅路の果て』(白水社)、『酔いどれ草の仲買人』(集英社)、『やぎ少年ジャイルズ』(国書刊行会)、『キマイラ』(新潮社)など、ほとんどの作品が邦訳されている。

それまでの自作の登場人物が再登場するバース文学の総決算ともいうべき大冊。アメリカの歴史そのものを再点検しようとする壮大な試みでもある。リサイクル――時間がひとめぐりしてある出来事が再び繰り返されることが、大きなテーマになっていて、個人の歴史というミクロなレベルと、アメリカの歴史というマクロなレベルで、その主題が追求されていく。

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ビリー・ザ・キッド全仕事
The Collected Works of Billy the Kid (1970)

マイケル・オンダーチェ (カナダ)
福間健二訳

1994年7月刊 196頁 1748円 品切
白水Uブックス

装丁=坂川栄治(坂川事務所)

左利きの拳銃、危険な恋人、夢見る殺人者――西部の英雄ビリー・ザ・キッド。そのロマンスとヴァイオレンスに彩られた短い生涯を、詩、挿話、写真、証言、インタビューなどで再構成。略奪と逃走、銃撃戦、つかの間の平和と激しい愛、友人にして宿敵、保安官パット・ギャレットとの抗争……さまざまな断片によって浮かび上がる、愛と生と死の物語。アウトロー伝説に材をとり、斬新な手法で鮮烈な生の軌跡をえがいた、ブッカー賞作家オンダーチェのアヴァンポップ・フィクション。

マイケル・オンダーチェ(1943- )
カナダの作家。セイロンで生まれ、ロンドンで教育を受けたあと、カナダに移住。学校講師のかたわら詩作を続け、演劇・映画にも活動の幅を広げる。本書(70)と、ジャズ・ミュージシャンの伝記に材をとった
『バディ・ボールデンを覚えているか』 (新潮社) (76)で詩と小説の融合を試み、高い評価を受ける。『家族を駆け抜けて』 (彩流社) (82)につづく、『イギリス人の患者』 (新潮文庫) (92)はブッカー賞を受賞、映画化もされて、世界的に注目を集めた。

『イギリス人の患者』 のヒットで、一挙にメジャーな名前となってしまったが、詩と散文のコラージュのような、この小さな本のポップな感覚は、その後の作品からは薄れてしまったように思う。

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巡礼たちが消えていく
Flying to Nowhere (1983)

ジョン・フラー (イギリス)
工藤政司訳

1994年8月刊 160頁 1650円 【amazon】

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=北見隆

中世ウェールズの荒れ果てた島の修道院で、奇蹟の井戸を訪れた巡礼たちが次々に姿を消した。調査のため派遣されたヴェーンを待っていたのは、人間の魂の所在を明らかにせんと禁断の研究にいそしむ修道院長の奇怪な情熱と、謎めいた島の人々だった。院内で行なわれる秘密の儀式、消えた死体の謎、探索が進むにつれ、ヴェーンはいつしか聖と俗、生と死の混沌たる迷宮のなかに引き込まれていく……。

ジョン・フラー(1937- )
イギリスの作家・詩人。父親は詩人・小説家のロイ・フラー。オックスフォード大学を卒業後、教員生活をつづけながら、『フェアグランド・ミュージック』 他、多くの詩集を刊行。小説第1作の本書はブッカー賞候補になった。編著、児童向けの著作も多い。

父親のロイ・フラーは有名な詩人だが、Fantasy and Fugue (56), The Second Curtain (56)という長篇ミステリも書いている。J・F・バーディンの 『悪魔に食われろ青尾蠅』 をいち早く評価していたところを見ると、なかなかの目利きでもあったらしい。その息子がやはりミステリ仕立ての小説でデビューする。受け継いだのは詩の才能だけではなかったようだ。

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マゴット
A Maggot (1986)

ジョン・ファウルズ (イギリス)
植松みどり訳

1997年1月刊 600頁 3200円 【amazon】

装丁=前田英造(坂川事務所)

18世紀半ばのイングランド西部、緑濃い森の洞穴の暗闇で、何が起ったのか。この日を境に忽然と姿を消した5人の旅人の行方を追い、敏腕弁護士アスカーが事件の真相に迫る。処女のごとき娼婦、悪魔のような貴公子、聾唖の召使、謎の依頼人、そして洞穴での怪しげな儀式と驚くべきヴィジョン……夥しい書簡、調書、雑誌記事から次第に浮かび上がる不可解な事実は、いったい何を物語るのか。『コレクター』 『魔術師』 の巨匠が新しい地平に挑む歴史/反歴史ミステリ。

ジョン・ファウルズ(1926-2005)
イギリスの作家。蝶収集マニアの青年を主人公にした第1作
『コレクター』 (白水社)は大きな反響を呼び、以後 『魔術師』 (河出文庫)、『フランス軍中尉の女』 (サンリオ・絶版)など、話題作を次々に刊行、現代イギリス文学を代表する作家となる。他に 『黒檀の塔』 『ダニエル・マーティン』 (以上、サンリオ・絶版)、エッセイ 『アリストス』 (パピルス) などの邦訳がある。

この本は翻訳権を取った後、すぐに人に任せてしまい、ほとんど編集にはタッチしていない。このへんになると、もはや自分の企画とはいえないような気もする。ファウルズの小説には、必ずなにか「仕掛け」があって愉しませてくれるが、これは一種のミステリ仕立ての歴史小説。ぶっ飛んだラストは論議を呼んだ。

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ハードライフ

The Hard Life (1961)

フラン・オブライエン (アイルランド)
大澤正佳訳

2005年2月刊 2000円 【amazon】 【bk1】

装丁=前田英造(バーソウ
装画=谷山彩子


20世紀初頭のアイルランドのダブリン、両親を早く亡くして孤児となったメイナスとフィンバーの兄弟は、義理の伯父コロッピー氏に引き取られ、その家で暮らすことになった。変り者コロッピー氏の下で二人は育てられるが、兄メイナスは綱渡り術通信講座というイカサマ商売を考案、やがて次々に事業を拡大、ロンドンへと出て行く。その後、コロッピー氏が重い関節炎に悩んでいることを聞いたメイナスは、特効薬〈豊満重水〉を送って服用をすすめるが、この薬が思わぬ事態を引き起こすことに……。奇想小説 『第三の警官』 で知られるアイルランド文学の奇才フラン・オブライエンの 「真面目なファルス」 小説。

フラン・オブライエン (1911-1966)
アイルランドの作家。『スウィム・トゥー・バーズにて』 『第三の警官』 (以上筑摩書房) 『ドーキー古文書』 (集英社) など、奇想とユーモア、文学的実験に満ちた作品で知られ、ジョイス、ベケットらと共に20世紀アイルランド文学を代表する作家のひとり。

世紀末前後のダブリンを舞台にした青春小説であり、謎の活動をめぐるミステリであり、綺想と言葉遊びとで笑いを取るユーモア小説でもある。――石堂藍氏評(本の雑誌2005年5月号)


素晴らしい翻訳で読み解くアイルランド小説の卑俗的釈義――小野寺建氏評(ヨミウリウィークリー2005/6/19号)

『スウィム』 が真正面から圧倒的なパワーで押し寄せてくる喜劇だとすれば、『ハードライフ』 はひっそりとした後ろ姿の喜劇だ。――
小山太一氏評(新潮2005年5月号)

                    
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ふくろうの眼
Eulensehen (1989)

ゲルハルト・ケップ (ドイツ)
園田みどり訳

1993年7月刊 366頁 2718円 品切

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=北見隆

悪魔に目をかけられた日にゃ、十字架にはりつけ、お星様とご対面、いきおい酷い目にあわされる――。ここはドイツの片田舎、今夜も眠れぬ郵便配達夫がひとり。両眼を開けて生まれてから、どちらの眼も閉じたことがない。その不眠ゆえ彼の眼は〈ふくろうの眼〉、封を切らずに中身を見通せる眼となった。あげく頭の中は風変わりな住民たちの秘密でいっぱい、夜の視覚はますます冴えわたり、眠れぬままに紡ぎだしたる24の物語。凶暴な運転で村中を震え上がらせた産婆への奇怪な復讐、フンボルトとともに世界中を経巡ったオウムが語る見聞録、異国に囚われた男の悲しい恋物語……万華鏡のように散乱するエピソードに史実を織り込み、饒舌にシニカルに語られる20世紀の千夜一夜物語。現代ドイツ文学の異才、本邦初紹介。

ゲルハルト・ケップ(1948- )
ドイツの作家・大学教授。他の作品に 『インナーフェルン』(83)、『路線区間』(85)、『ピラネージの夢』(92)などがある。高度な批評性と重層的な語りを特徴とした、80年代以降のドイツ文学界で最も重要な作家のひとり。

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カフカの父親
Il babbo di Kafka e altri racconti

トンマーゾ・ランドルフィ (イタリア)
米川良夫・和田忠彦・柱本元彦訳

1996年4月刊 290頁 1845円 品切

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=オディロン・ルドン

文豪ゴーゴリの愛妻は、吹き込まれた空気の量によって自在にその姿を変えるゴム人形だった! グロテスクなユーモア譚 「ゴーゴリの妻」。オペラ歌手の歌声の重さや固さ、色、はては匂いや味について大真面目に考察する怪論文 「『通俗歌唱法教本』より」。船乗りから習ったペルシャ語が実は誰にも通じない言葉であることが判明する 「無限大体系対話」。ある朝突然口から飛び出してきた言葉たちが、意味の配分をめぐって大論争を繰り広げる、ナンセンスな味わいの 「騒ぎ立てる言葉たち」など、奇抜なアイディアや、日常生活にぽっかり開いた裂け目を、完璧なストーリーテリングで調理する、現代イタリア文学の奇才ランドルフィ、本邦初の作品集。

【収録作品】マリーア・ジュゼッパ/手/無限大体系対話/狼男のおはなし/剣/泥棒/カフカの父親/『通俗歌唱法教本』より/ゴーゴリの妻/幽霊/マリーア・ジュゼッパのほんとうの話/ころころ/キス/日蝕/騒ぎ立てる言葉たち

トンマーゾ・ランドルフィ(1908-1979)
イタリアの作家。フィレンツェ大学に学び、同市の文学サークルに参加。逆説、言葉遊び、ナンセンスなどの手法を用いた超現実的な作品を多数発表、20世紀イタリアを代表する短篇作家。賭博狂いなど、数々の奇行でも有名だった。

カルヴィーノやブッツァーティなどもそうだが、イタリアの奇想作家の 「奇妙な味」 は、英米の所謂 「異色作家」 系統のものとは、根本的に何かが違うような気がする。アングロサクソンのストーリー・テリングの伝統にもとづいた語りとは、最初から異なる地面の上に立った、突拍子もない、素っ頓狂なお話が飛び出してくる。ランドルフィはそのなかでも、もっとも 「たがのはずれた」 作家である。このセンスを気に入ってもらえたら、「ゴキブリの海」 (『現代イタリア幻想短篇集』 国書刊行会、所収)もどうぞ。

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不滅の物語
The Immortal Story and Other Stories

イサク・ディーネセン (デンマーク)
工藤政司訳

1995年9月刊 304頁 2136円 【amazon】

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=戸田勝久

仕事一途の老実業家が、ある日ふと、以前聞いたことがある船乗りの物語を思い出し、その話の内容を自分の手で実現させようとする 「不滅の物語」、亡父の忌まわしい記憶に苦しむ領主のもとを訪れた老婆が驚くべき事実を語る 「満月の夜」、自分が失った世界一の美声を探して彷徨するプリマドンナの物語 「エコー」など、7つの不思議な物語。

【収録作品】不滅の物語/満月の夜/指輪/カーネーションを胸に插す若い男/悲しみの畑/エコー/女人像柱

イサク・ディーネセン(1885-1962)
デンマークの作家。本名カーレン・ブリクセン。早くから詩や批評に興味を持ち、ブリクセン男爵と結婚後、社交界の花形となる。1914年、ケニアに渡り、21年に離婚後もアフリカで農園を経営、32年に帰国。34年に発表した 『7つのゴシック物語』(晶文社)で注目を集める。『冬物語』 『バベットの晩餐会』 (ちくま文庫)など、物語性ゆたかな作品群は20世紀文学の奇蹟とも言われている。アフリカ時代の体験を綴った 『アフリカの日々』(晶文社)も感動的なノンフィクション。ほとんどの作品を英語とデンマーク語で発表したバイリンガル作家でもある。

これも入稿途中から担当を引き継いでもらったもの。

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虚数
Wielkosc Urojona i Golem XIV (1973/1981)

スタニスワフ・レム(ポーランド)
長谷見一雄・沼野充義・西成彦訳

1998年2月刊 330頁 2400円 【amazon】

装丁=前田英造(坂川事務所)
装画=マーク・コスタビ

人体を透視することで人類を考察する 〈死の学問〉 の研究書 『ネクロビア』、バクテリアに英語を教えようとして、その予知能力を発見した細菌学者が綴る 〈バクテリア未来学〉研究書 『エルンティク』、人間の手によらない文学作品 〈ビット文学〉の研究書 『ビット文学の歴史』、未来を予測するコンピュータを使って執筆された百科事典 『ヴェストランド・エクステロペディア』 の販売用パンフレット、人智を超えたコンピュータGOLEM XIVによる人類への講義をおさめた 『GOLEM XIV』。――様々なジャンルにまたがる5冊の〈実在しない書物〉の序文と、ギリシア哲学から最新の宇宙物理学や遺伝子理論まで、人類の知のすべてを横断する 『GOLEM XIV』 の2つの講義録を収録。知的仕掛けと諧謔に満ちた奇妙キテレツな作品集。

スタニスワフ・レム(1921-2006)
ポーランドの作家。1951年、『金星応答なし』 (ハヤカワ文庫SF) でSF作家としてデビュー。現代SFの最高峰に推す人も多い 『ソラリス』 (国書刊行会) をはじめ、『砂漠の惑星』 『エデン』 『泰西ヨンの航星日記』 (以上、ハヤカワ文庫SF) 『枯草熱』 『天の声』 (国書刊行会)など、多くの傑作を発表した。70年以降、メタフィクション的手法によって小説の可能性を探った架空の本の書評集 『完全な真空』 (国書刊行会) (71) と本書で、新たな注目を集め、晩年は小説からは離れたが、文明批評や科学評論などに健筆をふるった。《スタニスワフ・レム・コレクション》 (国書刊行会) が刊行中。

架空の本の書評集 『完全な真空』 の姉妹篇ともいうべき本。ただし、レムの実験はさらに一歩先へ進んでいる。入稿途中から同僚に引き継いだ。

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エバ・ルーナ
Eva Luna (1987)

イサベル・アジェンデ (チリ)
木村榮一・新谷美紀子訳

1994年6月刊 404頁 2250円 品切

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=アンリ・ルソー

私の名はエバ。生命を意味している。天が与えた私の才能は、お話を語ること――。独裁政権下の南米のとある国、密林の捨て子だった母と、インディオの父の間に生まれた娘エバは、人間の剥製法を研究する博士の家で育てられた。幼くして母を亡くし、やがて博士の死とともに屋敷は処分され、わずか7歳にして彼女の流浪の人生が始まった。独身者の姉妹、政府高官、娼家の女将、辺地で商店を営むアラブ人、両性具有の女優らのもとを転々としながら、エバは大きくなり、やがて愛を知り、革命にかかわり、自分の人生を見出していく……。次々に披露される途方もない挿話と巧みなストーリーテリング、『精霊たちの家』 で衝撃的デビューを飾った 〈現代のシェヘラザード〉 イサベル・アジェンデの世界中を夢中にさせたベストセラー。

イサベル・アジェンデ(1942- )
チリの作家。母親はチリの名門の出身。16歳で結婚し、ジャーナリストとして活躍。1973年、叔父にあたるアジェンデ大統領が軍事クーデターで暗殺され、翌年、混乱の中ベネズエラに移住、亡命者となる。1982年に発表した第1作
『精霊たちの家』(国書刊行会)は世界的ベストセラーとなり、映画化もされた。『エバ・ルーナ』(87)刊行後、再婚とともにアメリカに移住、以後、『エバ・ルーナのお話』(90)、『無限計画』(91)など、話題作を発表し続けている。〈文学の冒険〉では、難病で逝った娘をめぐるノンフィクション・ノヴェル 『パウラ』 も出た。

第2シリーズの開始を飾った1冊。ラテンアメリカ文学の 「ブーム」 の後から来た世代であるアジェンデの作品は、とにかくお話自体の面白さ、語りの力で読者をぐいぐい引っ張っていく。現実的な物語の中に、突如、幻想的なものが侵入してくるあたりは、いわゆる 「マジック・リアリズム」 ではあるが、ガルシア=マルケスなどのそれとは根本的に違うものだ。その平易な面白さは、各国でベストセラーになったのも頷ける。

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エバ・ルーナのお話
Cuentos de Eva Luna (1990)

イサベル・アジェンデ(チリ)
木村榮一・窪田典子訳

1995年7月刊 322頁 2136円 【amazon】

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=アンリ・ルソー

大統領の座を狙う元歴戦の勇士は、市場の娘から選挙用に「完璧な演説」を買うが、そのおまけに貰った言葉にとりつかれ、骨抜きにされてしまう…『二つの言葉』。サーカス稼業の山師が貴婦人に恋をした。つれない彼女を振り向かせた贈物とは…『恋人への贈物』。自分を50年間地下室に閉じ込めた男を愛しつづけた女の物語…『心に触れる言葉』。ある娘の魂と旅をしたインディオの身の上話…『ワリマイ』。成り上がりの悪党夫婦が上流社会の仲間入りをしようと、悪戦苦闘する『人から尊敬される方法』他、お話の名人エバが紡ぎ上げた素晴らしい物語の数々。長篇『エバ・ルーナ』から生まれた作品集。

【収録作品】二つの言葉/悪い娘/クラリーサ/ヒキガエルの口/トマス・バルガスの黄金/心に触れる言葉/恋人への贈り物/トスカ/ワリマイ/エステル・ルセーロ/無垢のマリーア/忘却の彼方/小さなハイデルベルク/判事の妻/北への道/宿泊客/人から尊敬される方法/終わりのない人生/つつましい奇跡/ある復讐/裏切られた愛の手紙/幻の宮殿/私たちは泥で作られている

イサベル・アジェンデ(1942- )
チリの作家。母親はチリの名門の出身。16歳で結婚し、ジャーナリストとして活躍。1973年、叔父にあたるアジェンデ大統領が軍事クーデターで暗殺され、翌年、混乱の中ベネズエラに移住、亡命者となる。1982年に発表した第1作 『精霊たちの家』 (国書刊行会) は世界的ベストセラーとなり、映画化もされた。『エバ・ルーナ』 (87) 刊行後、再婚とともにアメリカに移住、以後、『エバ・ルーナのお話』(90)、『無限計画』(91)など、話題作を発表し続けている。〈文学の冒険〉では、難病で逝った娘をめぐるノンフィクション・ノヴェル
『パウラ』 も出た。

『エバ・ルーナ』 外伝ともいうべき本。これもかなり初期の段階から人に任せている。

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魔法の書
El grimorio (1961)

エンリケ・アンデルソン=インベル(アルゼンチン)
鼓直・西川喬訳

1994年11月刊 248頁 1942円 品切

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=フリードリヒ・メクゼパー

古本屋で見つけた1冊の本は、キリスト生誕以来の歴史を物語る魔法の書物だった。けっして終りまでたどり着けない不思議な本の物語『魔法の書』、ミステリ狂の医者が自ら完全犯罪を成し遂げようとするが、事態は思わぬ方向に……『将軍、見事な死体となる』、身体がどんどん軽くなっていく男の話『身軽なペドロ』、人間のようになるために魔法を禁じた妖精の国の話『決定論者の妖精』など、ユニークなアイディアと洗練された語り口で読者を魅了する奇想短篇集。

【収録作品】魔法の書/将軍、見事な死体となる/ツァンツァ/亡霊/船旅/事例/身軽なペドロ/空気と人間/手/屋根裏の犯罪/道/水の死/決定論者の妖精/授業/ファントマ、人間を救う/解放者パトリス・オハラ/アレーホ・サロ、時のなかに消える/森の女王/ニューヨークの黄昏

エンリケ・アンデルソン=インベル(1910-2000)
アルゼンチンの作家・批評家。『魔法の書』(61)、『クラインの瓶』(72)、『モーツァルトの指輪』(90)など、幻想的な短篇を集めた作品集を刊行する一方、ミシガン、ハーヴァードなど多くの大学で教壇に立ち、名著の誉れ高い『イスパノアメリカ文学史』(54)、『魔術的リアリズム』(76)他の評論・研究書を発表、ながくラテンアメリカ文芸批評の指導的立場にあった。

批評家としてラテンアメリカ 「マジック・リアリズム」 の理論的な位置づけに寄与した作家だが、その作品は、ガルシア=マルケスやフエンテスらに比べると、ずっと軽やかなテイストを持っている。表題作は 「不思議な本」 テーマの幻想小説の白眉というべき名作。この本も訳稿がほぼ揃ったところで引き継いでいる。

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遠い女 ラテンアメリカ短篇集
La lejana y otros cuentos fantansticos

フリオ・コルタサル他 木村榮一編
木村榮一・井上義一・入谷芳孝訳

1996年10月刊 276頁 1942円 【amazon】

装丁=坂川栄治(坂川事務所)
装画=ポール・デルヴォー

凍てつくブダペストの橋の上で、あの女は私を待っている――異様な衝動に突き動かされ、見知らぬ町の遠い女を探しにやって来た美しいアレーナを待ち受けていたものは…コルタサル『遠い女』。未知の世界への探検熱にとりつかれ、狂人たちを引き連れて船出した騎士フォン・クヴァッツのたどる数奇な運命…ムヒカ・ライネス『航海者たち』。驚倒すべき想像力が紡ぎだした、きらびやかな悪夢、奔放な空想、黒い哄笑。ポーの正統的な継承者、フリオ・コルタサルの表題作をはじめ、現代アメリカ文学の多様性をあますところなく伝えるパス、フエンテス、ビオイ=カサーレスらの幻想短篇全11篇を収録。

【収録作品】アンルフォンソ・レイエス「夕食会」/オクタビオ・パス「『流砂』より」/カルロス・フエンテス「チャック・モール」/フリオ・ラモン・リベイロ「分身」/フリオ・コルタサル「遠い女」「乗合バス」「偏頭痛」「キルケ」「天国の門」/アドルフォ・ビオイ=カサーレス「未来の王について」/マヌエル・ムヒカ=ライネス「航海者たち」/解説:夢の変容、文学の変容=木村榮一

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