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 決断から入院までの一ヶ月間は、ちょうど年末だったこともあり慌ただしく過ぎていきました。
 入院中は仕事も日常的にやっているアレコレも全てストップしますので、通常の年末の忙しさを縫うようにしてそれらに対する準備に奔走しました。

 また自分の健康保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)なのですが、高額医療費制度について調べてみると通常の払い戻しの他に、事前申請すれば窓口自己負担額を 一ヶ月あたり8万円強に抑えてくれる制度があることがわかり、その申請へも行きました。(実際には食事費など保険適用外の自己負担があるので、 窓口支払額はもう少し多くなります。自分の場合12万円強でした)

 調べた限りでは高額医療費制度で戻ってくるとは言え、クリッピング手術の場合は窓口自己負担額が50~100万円と聞いていたので上記の制度には大変助けられました。
 この制度があるかどうかは加入している健康保険組合によって違うと思いますので、もし手術する場合は事前に保険組合に尋ねてみるといいと思います。

 バタバタと年末年始を過ごし、入院前日に長かった髪をバリカンで頭を丸刈りにして(すごく寒い!)、入院しました。わざわざ事前に丸刈りにしたのは、 過去に同じ手術を受けた女性から「手術部位を剃毛されるので、髪の毛が長いままだと、術後にかつてのブル中野さんみたいな髪型になる」という話を聞いたためです。

 入院初日と2日目は検査のみで退屈をもてあましましたが、3日目は朝から手術だったので早朝から点滴を入れ、鎮静剤でボンヤリした頭のまま手術室へと向かいました。

 実際に手術をしてくれたドクターは大変だったと思うのですが、患者である自分に麻酔を入れられた後の記憶はなく、気がついたときにはICUのベッドで 寝ていました。
 頭皮にはドレーンが、膀胱にはカテーテルが入っている状態、というところまでは理解できましたが、麻酔と痛み止めのせいでかなりボンヤリしていて、 それ以上はよくわかりません。ただ手術中ずっと同じ姿勢でいたせいか、腰とかかとが痛かったので動ける範囲で寝返りを繰り返していました。

 その後1日半で自力歩行ができるようになり、一般病棟に戻りました。
 その際何よりも嬉しかったのは自力でトイレに行けるようになったこと!
 カテーテルが入ったままベッドの上で小便をするのは、どうにもやりづらかったんですよ……。

 だって目の前に綺麗な女性看護師さんがいる状況で、しかも本来トイレではないベッドの上で膀胱に力を入れるなんて、恥ずかしいったらありゃしないです。 おまけに力のいれ具合がよくわからないので、上手く出ないし。
 そんなわけで自力で一般病棟に移った日は、自由に小便できる幸せを満喫するため何度もトイレに行きました(笑)

 痛み止めのおかげで傷は痛くなかったのですが、一般病棟に移った次の日(術後3日目)から顔が腫れ始め、その翌日には試合後のボクサーのように 両まぶたがふさがる程腫れてしまいました。
 夜中にトイレで鏡を見ると、まさにリアル四谷怪談。おかげで面会に来た子供が、最初自分だと理解してくれませんでしたよ、ええ(汗)

 とはいえ元々これは想定の範囲だったので、ベッドに横になるよりも座ったり立ったりしているほうが早く腫れが引くということで、出来る限り横にはならずに 過ごしていたら術後6日目くらいには、腫れは残るもののだいぶマシな顔に戻りました。
(この腫れはしばらく繰り返すようで、退院後も一週おきくらいに腫れてます)

 入院していた病院にこれといって不満はなかったのですが、入院中唯一辛かったのが食事でした。簡単に言うとまずいんです。これはおそらく入院患者の多くが50歳代以上で、 しかも脳梗塞や糖尿病患者さんも多くいるためにそういう味付けになっているのだと思うのですが、30歳代の自分には本当に苦行のようでした。
 特に麺類への渇望は激しく、毎日のように「ラーメン屋に行きたいなぁ」と涙で枕を濡らす日々でした。

 あとコーヒーですね。缶コーヒーは院内にも売っているのですが、やはりドリップしたコーヒーが飲みたくて仕方がなかったので、途中から家族に頼み込んでポットに入れて 持ってきて貰いました。

 その後は徐々に回復していき、抜糸は術後7日目、そして術後8日(入院11日目)で退院となりました。
 結局、入院中は入浴できなかったので、退院後のお風呂は非常に気持ちよいものでした。まぁ10日ぶりの風呂でしたので、流してから入ったにも関わらず、 湯船に大量のアカが浮かんでビックリしましたが!
 入院中は頭が痒くて仕方がありませんでした。真冬であれだけ痒かったことを考えると、夏場に同じ手術をするとあの痒さがツライかもしれません。

 退院後、一週間くらいは痛み止めを飲んでいましたが、2週間が経過した今は痛いときだけ飲む程度です。髪の毛はまだ伸びていませんが、点滴などで剃られた 腕の毛はだいぶ伸びてきました。
 ――あ、そうそう。腕の毛と言えば、自分が入院した病棟は男性看護師さんが多かったので、腕の毛は男性看護師さんに剃ってもらったのですが、 剃毛だけは女性看護師さんの方がいいですね(笑)

「毛の生えた腕を挟んで見つめあう20代男性看護師さんと30代オヤジ。ショリショリと毛を剃る音だけが聞こえている……」というのは違う意味で 危険なシチュエーションだったと思います。

 そして最後に自分にとってとても大事なことを書いておきます。
 術後にドクターから説明を受けたのですが「手術をしてみたところ、自分の血管のコブはその頂点近くの皮が薄くなっていて、術中にも破裂しそうなくらい デリケートな状態だった」ということです。
 こればかりは開いてみないとわからないことなので、自分の場合、結果的に開頭手術を選択したのは本当に正解でした。

 またそれだけ血管の壁が薄くなっていたということは、いつ破裂してもおかしくない状態ということですので、放置せずすぐに(と言っても決断まで一ヶ月かかりましたが) 手術したのも良い選択だったと思います。

 完全復活まではもう少しかかりますが、日常生活に不自由なことはなく、逆に今はあの頃の不安も忘れて日常生活を満喫している日々です。



 長い文章を最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

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