P1 P2 P3 P4 P5
 事の起こりは2010年11月でした。
 元々が偏頭痛持ちだった自分は、普段の偏頭痛(主に目の奥~こめかみ近辺が痛い)とは違う後頭部の痛みを感じたのです。 しかし、幸か不幸かいつも通っている大学付属病院の頭痛外来は異様に混んでいるので(予約変更すると2ヶ月待ちとか)、近所にある脳神経外科を受診しました。

 近所の病院なので割と気軽に行ったのですが、やはり病院は病院。混んでることには変わりありません。たっぷり3時間待ってMRIおよびMRA検査を受けた結果、 下された診断は「後頭部の痛みは肩こりが悪化したモノ」というものでした。

 ……なんだ、肩こりか。
 正直、そんな風に思ったのですが、次の瞬間、ドクターの言葉は思わぬ方向へと繋がっていました。

 「ところが●●さん(←私の名前)、ちょっと困ったことがありまして。今回の肩こりとは全く別のものですが、あなた の血管にコブがあるんです」
 これが今回の入院・手術の原因である脳動脈瘤との出会いでした。

 ところがです。

 かなり衝撃的な宣告にもかかわらず、自分は全く驚いていませんでした。
 むしろ心の中では「そっか、俺にもあったのか」とスムーズに受け入れていたのです。
 それはもちろん、自分の度胸がハンパないからに違いありません!
 ……
 …………
 ………………スミマセン、嘘つきました。
 自分はどちらかというと小心者の部類です、はい。
 単に、今回の話には前日譚があるのでした。

 自分の脳に動脈瘤が発見される半年前、だいたい2010年の春頃でしょうか、高校時代の同級生数人で飲む機会がありました。そのときのメンバーには 電気店経営のMという男と、外科医であるYという男が含まれていたのですが、偶然にも今回、この2人が大きな役割を果たしてくれました。
 実はこの電気店経営のMという友人は、この飲み会の数ヶ月前に脳ドックで脳動脈瘤が発見され、血管内治療(詳しくは後述)を受けたばかりだったのです。

 外科医Yを別として、その日集まった30代の自分たちにとって脳動脈瘤というのは聞き慣れない病気でした。そのため単純な興味から、その日の会話は 主に外科医Yに対し、電気店経営Mの病気(脳動脈瘤)とはどんな病気で、血管内治療とはどんな手術だったのかを聞き出すような流れに終始しました。
 その結果、以下の情報を外科医Yと電気店経営Mが教えてくれたのでした。
  • 脳動脈瘤は決して珍しい病気ではない
    (脳ドック受診者の10~15%に発見される)

  • 脳動脈瘤の原因は諸説あるが、現在のところ先天的に血管が薄い部分に圧力がかかると瘤ができると考えられる。先天的な要素が強いため、 何かをしたから動脈瘤ができたわけではなく、患者になるかどうかの違いは運/不運くらいの違いしかない

  • 脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血等の重篤な症状を引き起こす。こうなると生命の危険があるほか、生き残ったとしても後遺症等の可能性は高くなる

  • 脳動脈瘤の発症に年齢には関係ない。
    (ただし健康診断等の都合上、特に30歳以降に多く発見される)

  • 脳動脈瘤における治療法は主に二つ。
    1)頭を開き、瘤を洗濯ばさみのようなクリップでつまんでしまうクリッピング手術 2)開頭せずに血管内にカテーテルという管を通し、瘤の中にコイルを詰めてしまう血管内治療

  • 未破裂の脳動脈瘤は年に0.7~1%くらいの確率で破裂する。そのため平均寿命まで余命40年あるとすれば、生きている内に破裂する確率は28~40%となる。
 飲み会の与太話とはいえ、ここまで聞いたことがあったため、自分に脳動脈瘤が発見されたと言われたときは驚くこともなく「ああ、Mと同じ 病気があったんだな」と思えたのです。そして同時に「Mが大丈夫だったんだから、自分も血管内治療をしてもらえば大丈夫だろう」と高をくくっていました。

  << 前頁へ 次頁へ >>