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フィリピントヨタ労組の全造船関東地協加盟と
戦いの展望

全造船関東地協事務局長 早川 寛さんへのインタビュー記事

『地域と労働運動』51号(2005年1月号)より転載


―フィリピントヨタ労組が全造船関東地協に加入した、と聞きました。あっという感じもします。このさきどんな闘い方を考えているのか、お聞かせいただければ、とおもいますが。


 正しくは全造船機械労働組合関東地方協議会神奈川地域労働組合と大変長い名前なんですが、ここに加入したということになります。何を考えて加入、ということをお話しする前にフイリピントヨタ労組の闘いの現状をお話したいと思います。ご存じだと思いますが彼らは長年の苦労の後に2000年の3月にフイリピン雇用労働省承認のもとに組合承認選挙を実施します。日本と違ってフィリピンでは、正式な組合をつくるための選挙を行わなければならない。現場労働者の記名投票で過半数の賛成が得られなければ、従業員を代表する組合、会社と交渉権をもった組合として認められないわけです。この選挙で過半数の労働者が組合結成に賛成をした。ところがフイリピントヨタ社は、この選挙は無効だとして、労働仲裁官に申し立てます。一般従業員ではなく監督職だ、として120名が投票資格なしとされたその判断は誤りだ、というのがその根拠です。

 この問題を巡って裁判が行われたその裁判に出席するため、組合員が欠勤した。それが2001年3月の大量解雇理由となりました。実際は事前に裁判に出席するため欠勤することを手紙で出し、そのうめ合わせのため他日に出勤する、ということを提案していたのです」

―ストライキになるのは、そのあと。

 そう3月28目からストに入ります。4月13日まで、スト中止これは雇用省長官から職場に戻るようにとの命令をうけてです。
 このストライキの時に、スト破りに対するピケをはりますが、会社が雇ったガードマンが銃をもって威嚇したり、組合員に襲いかかってケガをさせたりしています。ところがその後、組合員の方がトヨタから刑事告訴されることになります。このピケの最中に、職制をにらみつけて威嚇した、とか、全くふざけた理由なんです。
 いずれにしろ25名が起訴されて、公判。公判といっても中身は何も進まずに裁判だけが続く。そして毎年、勾留されないための「保釈金」を払わされるというこれは兵糧責めですね。

―つまり、正式な組合として認めない、大量解雇223名でしたか、そして刑事告訴この3つが争点になっているわけですね。

 そうです。要は組合つぶしです。
 1番目の組合として認めない、団体交渉を行わない、と言う点については、実は決着がついているはずなのです。2003年9月、フィリピン最高裁はトヨタ社の提訴を棄却しました。「フイリピントヨタ労組との団交命令をとりあえず仮差し止めをして、やらないでよい。」との高裁の決定は無効。ややこしいのですが、いずれにしろ、フイリピントヨタ労組との団交を行いなさい、という最終判断を下したのです。

―じゃあきまり、じゃないですか。

 ところが、それでもなおトヨタ社は、裁判で争う、という。最高裁で負けても再審がある。というようなことでしょう、いずれにしろ延々と裁判を続けて引き延ばすという戦法です。
 二つめの解雇問題の方はこれがなかなか難しくて、高裁では解雇は有効。退職金も払わなくてよい。という判決が出ています。これに対して高裁の再審では違法とまでは言えない欠勤だから、退職金は払え、という判断をだしました。解雇そのものはまだ係争中になっています。

―じゃあ退職金を受け取ってしまった人もいるわけですか。

 会社からの個別訪問などで受け取って解雇を認めてしまった人も、たしかにいます。大体80名ぐらいですか、しかし3分の2の解雇者が退職金というエサを拒否して闘っている。これはフイリピンの労働運動の中では極めて珍しい、画期的なことだと言われています。
 貧しい、仕事がない、そこで支え合って解雇撤回闘争を長く続けるのは、もともと大変困難なんですね。フイリピントヨタ労組の場合、執行部は全員解雇されている。しかし職場には200名以上の労働者が組合員として存在している。

―日常的な闘いはどのようなことをやっているのですか。

 さまざまな機会をとらえて職場の労働者への働きかけ、学習会、トヨタ工場やデイーラーでのピケやラリー。警察がすぐ来るので大変なようですが、そして、目本のトヨタ本社への攻勢、今年は9月に東京と愛知でやりました。

―それで、全造船関東地協への加入ですが。

 2001年から毎年トヨタ本社へ申し入れ行動を行っています。フイリピンからも来て、しかしその時の対応はきまっています。
 フイリピン現地のことはフイリピン現地で解決するように、と考えています。これが毎回の本社の答えです。
 今年、フイリピン最高裁はフイリピントヨタの団交拒否は理由なし、としました。普通ならここで解決するはずです。ところが、それでも拒否して認めようとしない。これはもう当事者能力なし、解決能力なし、と判断するしかありません。フイリピントヨタ社は、トヨタ本社のアジア部、というところがコントロールしています。社長は勿論目本から、あの奥田碩氏もかつてここの社長でした。日本国内で考えれば、このような事態になれば親会社の責任を問うことになります。本社行動です。それを支援という関係だけではなく、自分たちの組合の一部にする。そうなれば、私達が当事者になります。そうなればフイリピンの労組がいちいち目本の親会社に出向いて要求しなくてもよい、効率がいい。という面もある。しかし本筋は多国籍企業が海外で行っている団交拒否・解雇、組合つぶしという不当労働行為を、本国で、日本で追及する方法はないのか、というところから考えた手段です。

 突飛にみえるかもしれませんが、目本国内では労働組合としてはあたりまえにやってきたことです。何の不思議もない。不当労働行為を労働委員会や裁判で争う、親会社を相手に闘い勝利した例はいくつもあります。東芝アンペックスは東芝とアメリカのアンペックス社の合弁でつくられた企業ですね。組合つぶしのため会社解散を行い、全員解雇した。この東芝アンペックス争議では、神奈川地労委が、親会社東芝の不当労働行為を断罪し、争議の勝利に結びつけました。全造船東芝アンペックス分会の経験をもとに考えると、地労委におけるトヨタとの闘いが重要な要素をしめると考えています。

―それでトヨタの反応はどうでした。

 9月17目にトヨタ本社へ、エドクベロ委員長らと出向き、組合加入通知と団交開催要求書を提出しました。相手は困惑していました。2週間後に、拒否回答が来ました。理由は「彼らはフイリピントヨタ社の解雇者であって当社は関係ない」
 ま、これは折り込みずみのことで。
 トヨタ以外に、同じく出資している三井物産本社と、フイリピン現地資本のメトロマニラ銀行の目本支社。UFJ銀行にも出しました。メトロマニラ銀行はフイリピントヨタ社の筆頭株主で30%の株をもっている。ところがこの銀行、UFJが98%出資している銀行なんですね。UFJJもとは東海銀行ですね。これがトヨタとの結びつきが深い。ちなみに、トヨタ本社の出資比率は34%。

―回答は拒否。

 ええ、三井物産は「当社は少数株主で」。つまり、トヨタとやってくれということでしょう。UFJには取引銀行としての責任についても話しました。

―で、神奈川地労委の申立は。

 はい。今年中にしたいと考えています。ハードルはたしかに高いと思います。この不当労について親会社の関与は、という問題、子会社と親会社との関係はどこまで、それにフイリピンで解決するべきことではないのか、という指摘などでしょうか。どう攻めていくか、フイリピン現地の弁護士とも十分連絡をとりあって、というになりますね。

―この他にも攻めロを作っていますね。

 ILOともうひとつOECDのナショナルコンタクトポイント。多国籍企業としてのあり方、ガイドラインについての申し立てです。ILOへの救済申してについては、今年4月理事会から大変いい勧告が出されました。団交問題、解雇問題、刑事事件、いずれもこちら側の主張を全面的に認めたもので、フイリピン労働法を変えろ、とまで言っています。この勧告の履行状況について調査団を派遣するという方向も出されています。フィリピン政府に対して履行を求める、という形になっているので、トヨタはどうするのか、世界に恥をさらすことになるのかどうか。6月のジュネーブのILO総会に、エド委員長と、フイリピントヨタ労組を支援する会のメンバー計4人が出かけていって、ロビー活動を行ったのですが、反応は大変好意的でしたね。

 もうひとつのOECDの多国籍企業ガイドライン(ナショナルコンタクトポイント)への申し立てについては受けつけられていて、現在調査中です。(目本では外務省、厚生労働省、経済産業省がその任にあたっている)
 いずれにしろ、トヨタ社にとっては国際的な枠組みの中で問題解決が迫られるということで大変頭の痛い所に追い込まれているといえるでしょう。どんな闘いもやってみなければわかりません。フイリピン現地での近況報告によると、彼らは全造船加入を喜んでくれています。
 それだけに、私達の責任重大だと考えています。

―全造船加入についての反響は、いいようですね

 最後に、このような状況作り出してきたのは、無論フィリピン現地の闘いもありますが「フイリピントヨタ労組を支援する会」のカが大変大きいと思います。私達もその一員ですが、いろんな方々がカをかしてくれています。愛知にも支援する会ができています。全造船加入はそのような運動のひとつ。支援する会とは車の両輪で進めていければ、と思っています。 

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