冒頭のクシャトリヤのアクションシーンを観直した。くどいようだが原作は未読。
初見のときから気になっていたのが、このときの対戦相手である特務仕様ジェガンである。
と言うのは、この機体のパイロットは顔が映らないのだ。その代わり繰り返し映るのが、スティックやコンソールの操作をする手元。


この一連のアクションシーンは、実によく考えられている。
3機のジェガンは、特務仕様機がクシャトリヤを牽制し、その間に通常型2機でガランシェールを追おうとする。マリーダはファンネルで通常型ジェガンを瞬殺し、特務機に対峙する。
このとき画面に映るのは正面から捉えたマリーダのバイザー。特務機パイロットの描写と対照的だ。

特務機は散弾の連射でクシャトリヤを攻撃。クシャトリヤはファンネルを向かわせるが、特務機は撃ち尽くしたランチャー類を排除して加速し、ファンネルの危険界を一気に突破する。よく見ると、腕に1発ファンネルのビームが命中しているのだが、増加装甲でしのいでいる。ファンネル1機のビームは低出力なので、耐えられるのだ(そのために、通常型ジェガンの撃墜シーンで「ファンネルのビームは何発も命中しないと致命傷にならない」ことを手間をかけて見せている)。
間合いを詰めた特務機はビームサーベルを抜いて接近戦を挑む(「こう近ければオールレンジ攻撃はできまい!」)。クシャトリヤもそれに応じ、ひとしきり斬り結ぶ。
特務機は一度離れて、突きに転じる。
実はこの記事を起こそうと思ったのは、これに気づいたからなのだが、太陽の位置に注目してもらいたい。



特務機のパイロットは、太陽を背にした瞬間を狙って突き込んできているのだ。
いつの時代も、太陽を背にするのは空中戦の鉄則である。
しかしマリーダは、それを剣でなくスラスターの噴射で受けるという思いがけない策に出る。特務機はとっさにセンサーをかばってしまい、がら空きになった胴を抜かれることになる(ついでに言えば、以前同人誌原稿に書いた話だが、ビームサーベルによる損傷では爆発しないということもここで表現されている)。
短時間だが、こういう考え抜かれた殺陣は見ていて飽きない。
この特務機パイロットは、おそらくニュータイプではない。サイコミュを駆使するマリーダについては、カメラが表情を捉えるのに対し、特務機パイロットはあくまで手元、すなわち肉体による機体操作しか映さない。血のにじむような修練の結果会得した、超人的な技量であったろう。そして太陽の位置に関するとっさの判断から解る、空間認識力。
このわずかなアクションシーンには、ノーマルタイプの極限と限界、それをたやすく凌駕する強化人間、そしてニュータイプへの可能性、という『ガンダム』を構成する基本要素が詰まっているのである。
追記
後になって気がついたが、この戦いはつまり「オールドタイプの極限」と、「偽物のニュータイプ」の戦いなのである。真のニュータイプ同士なら、戦わなくてすむかもしれないという希望を暗示しているのだ。
|