更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2009年10月29日(木)
「Fate」と「舞−HiME」と決断主義

今度はEXTRAですか。
ま、いいけどさ。

これまで散々書き散らしてきたように、私は「Fate」を「面白いけど失敗作」と評している
「物語から導かれるはずのないハッピーエンドをくっつけて、台無しにしてしまった」という一点においてである。

ちなみに、「失敗作だけど面白い」のが旧「エヴァ」。この両者の間には、果てしなく深くて広い溝がある。

それはそうと、同種の失敗作がほかにもあった。
「舞−HiME」だ。
私は知人にこの作品の最終回のことを訊かれて、真顔で「一生観ないほうがいい」とアドバイスしたことがある。放送当時はネット環境になかったので世間の評価は知らないが、観たときはそのくらい脱力した。キャラ人気に頼って命脈を保っている、という点でも似ているし。

最近気がついたのだが、「Fate」と「舞−HiME」は同じ2004年の作品である(「Fate」は1月発売、「舞−HiME」は9月から翌年3月放送)。このこと自体は偶然だろうが、ちょっと示唆的だ。

以下の話は、あくまで私の経験範囲から考えたことで、特に裏付けはない。事例を挙げて反論するのは容易だろう。また、TVアニメと18禁ノベルゲームを同列に論じることの無理も承知で言ってみるのだが、この両作がああいうエンディングを迎えた、「迎えさせられた」のは、「ハッピーエンドにしなければ客が納得しない」という製作者側の判断によるものだと思う。

それ自体は大昔からある思考法だけれど、なぜこの年なのか?
私は、97年のエヴァショックの後遺症、もしくは反動ではないかと想像する。

で、話はしばらく前話題になったいわゆる決断主義に飛ぶ。
要は、「エヴァ」を筆頭とする「セカイ系」へのアンチテーゼとして生まれた作品群を指す(らしい)のだが、その代表とされるのが、「コードギアス」と「デスノート」である。

「コードギアス」は2006年から2008年(2期終了まで)。「デスノート」は2003年末から2006年連載。
両作品とも、超常の力を駆使し力ずくで世界を変えようとするピカレスクロマンだ。その主人公の造形が決断主義と称されるわけだが。

完結した今観返すと、むしろ重視すべきなのは、両作品ともスキャンダラスなストーリー展開から考えると信じられないほどに勧善懲悪、因果応報、健全で良識的で、ある意味保守的と言っても良いような結末を迎えたことではないか、と思うのだ。


そう考えてくると、ゼロ年代の10年間というのは、エヴァショックを克服して、「過酷なストーリーは過酷な結末を導く」というごく当たり前の原理を回復するリハビリ期間だったような気がする。「舞−HiME」にも谷口悟朗が関わっている、というのは結構重要なことかも。

最後にもう1回繰り返すけど、別の事例を挙げて反論するのはいくらでもできるだろうから、強く主張する気はありません、念のため。

2009年10月18日(日)
最近読んだ野球本

最近(でもないが)読んだ野球本から、印象に残ったもの。

Numberの高校野球特集号から、1992年8月16日 星陵対明徳義塾の松井の5打席連続敬遠の真相。
明徳義塾のこの作戦が全国的な非難を浴びたのは、よく覚えている。

しかし明徳義塾が、松井の全敬遠という戦略を採用したのは、松井の後を打つ5番打者を完璧に抑えられるという計算あってのことだった。

『この時、明徳義塾は、エース岡村憲二が肘を故障し、本来、センターを守る河野和洋を主戦投手として試合に臨まざるを得ない事情を抱えていた。馬淵監督は、甲子園の15人のベンチ入りメンバーのうち、実にピッチャーを5人登録するという"エース不在"の状態で、優勝候補の星陵に挑んだのである。

松井との勝負を避けるためには、その次の打者を「打ち取れること」が最大の焦点になる。特に松井の直後を打つ月岩への分析は徹底したものだった。得意球、苦手な球、対応できるコースと対応できないコース・・・・・・馬淵はあらゆる分析を月岩に対して行なった。その結果、内角高めの速い球と外角低めのカーブかスライダー、つまり「対角線上」の緩急をつけた球で、「月岩は打ち取れる」という結論に達したのである。』「総力を挙げて挑んだ5番打者との勝負。」角田隆将 Number734号 33頁。


『遊撃手論』矢崎良一(PHP研究書、2009年)より、ドラゴンズのショート・井端の言葉。

『(練習でプレッシャーをかけるなんて)そんなことをするより、うまいファーストがいてくれたほうがずっとうまくなる。ショートバウンドだろうが何だろうがファーストがちゃんと捕ってくれたら、ショートはかなり楽ですよ。そしたら思い切って投げられるし、自然とスローイングも良くなる。だって、あの何秒の間に捕って正確に投げようと思っていて、投げるときにためらったりとか、「あそこに投げないと」ということを考えなくていいんですから。(中略)
内野手を育てるのはファーストだと思いますよ。安心感が違います。「あの辺に投げておけば何とかしてくれる」というのと、「ここに投げないといけない」では、投げていて全然違いますし」(193頁)

荒木−井端のトスプレーは見た目も華麗だが、
【井端自身の中に、「魅せるプレー」という意識はない。
「アウトを取る可能性がいちばん高いからやっているだけであって、荒木が体を返してスローイングしてアウトにできるなら、無理してやるようなプレーじゃないんで」
そうやって予測してやっていることだから、一個のプレーで喜びというのもあまりない。
『テストと一緒で、「これ、出るんじゃねえか」と思っていた問題が、出たら、サッと解くだけで、そこまで嬉しくはないでしょう』とサラッと言う。】(227頁)


WBCの投手コーチの回想。「世界一の方程式」 山田久志 ベースボール・マガジン社新書
左のセットアッパーとして、どうしても山口(巨人)をメンバーに入れたかったが、

『ずっとピッチャーたちの動きを観察していると、山口だけが投手グループの輪のなかになかなか入っていけない様子だった。
逆に、すぐに溶け込めというのが無理だったかもしれない。山口にとってはプロ入りして1年だけの実績でしたから、あの錚々たる顔ぶれに自らすっと入っていくのは気が引けるようなところがあるのだろうと見ていたのです。』(100頁)

『気づいたのは、巨人でチームメートの内海哲也とほとんどいつも同じ行動をとっているということでした。食事会場に入ってくるのも、バスに乗り込んでくるのも一緒、ロッカールームも隣同士で、まるで二人で生活のリズムを合わせているかのようでした。(中略)和田の代わりは杉内にできるが、内海の代わりは和田にはできない。』(102頁)

そういうわけで、内海と山口がセットで選ばれたとの由。選考基準もいろいろあるものだ。


Number 736号 野村監督のノート「ノムラの教え」の一節。

『優勝は強いか弱いかよりも「ふさわしい」かどうかで決まることが多いのだ』

私見だが、今年の12球団に優勝にふさわしくないチームが一つある。
中日ドラゴンズだ。ドラゴンズは、ただ1チーム、WBCに一切協力しなかった。

http://kenbtsu.way-nifty.com/blog/2008/11/post-9994.html

たとえ世間は忘れても、私は覚えている。
WBCの後遺症という言い方は好きではないが、WBC参加選手の多くがシーズンに入っても思うように成績が上がらず、ひいてはチーム成績にも影響を与えた。巨人も楽天も、それを乗りこえてきた。
今年中日にだけは、優勝させてはならない。


最後に「フルタの方程式」 古田敦也 朝日新聞出版から、投手の個性について。

『長身で大柄な外国人投手ブロスは、しばしば制球難に苦しんだ。強いイメージがあるが、マウンドでは意外に弱気な一面がある。彼が来日間もない頃、制球が乱れてくるたびに「You can do it!」などと激励するためにマウンドに駆け寄ったりしていた。しかしどうも彼の調子は上がらない。
しばらくして、通訳を通してブロスが意外なことを言ってきた。

「オレは罵られないとダメなんだ・・・・・・」

激励はいらない、罵ってくれと。なるほどそういうタイプの人間がいてもおかしくはない。翌日、通訳から汚い罵り英語を教えてもらうことになった。確かにブロスの制球難は、試合中罵られることで改善された。おかげで私の英語力も極めて偏った形で上達した。』(141-142頁)

ダイヤモンドにバッテリーの熱い絆がほとばしる!
マウンドに炸裂する言葉責め!!

いかん、腐女子スイッチが入りそう。

2009年10月18日(日)
氷川先生の三越公開講座

去る10月4日に三越で、単発で行われた公開講座「アニメと原作の差」。

聴講してきたので、メモ書き

改めて書き下してみたら、えらい量だった。

2009年10月17日(土)
「ルー=ガルー」

ここのところ殺人的に忙しかったんですが、一段落したのでぼちぼち更新。

プロダクションI.Gで、京極夏彦原作「ルー=ガルー」を映画化

私は原作15ページで挫折。

それはともかく。

I.G制作、藤咲淳一監督、箸井地図キャラデザインという、「BLOOD+」の悪夢がよみがえる魔のトライアングルも心配だが、最大の不安要素は製作委員会に木下工務店が名を連ねている、という点だろう。

木下工務店については、こちらが詳しい

名前の通りれっきとした建設会社なんだけど、早い話、社長さんが映画好きで、積極的に出資しているのですね。なのだが、関わる映画が揃いもそろって微妙な出来。しかも出資比率が高くなるほどトンデモ度が増すという。

ついにアニメ界にも魔の手が。
上手いことカネだけ出させて口は出させない、という具合に持って行ければいいのだが。

木下工務店の公式サイトを見ると、過去に「ゲゲゲの鬼太郎」と「劇場版プリキュア」にも出資していて、東映とつきあいがあるらしい。今回の参加も、そちらからの流れなのかな。

それはそうと、改めて考えてみるとI.Gって打率の低い会社ですね。

2009年10月2日(金)
「眼鏡のつる」問題その3


以前触れた長井龍雪監督作品における「眼鏡のつるの省略」について、続報。

カサヰケンイチ−長井龍雪の特徴かもしれないと書いたが、ではあの作品はどうだったかと思って調べてみた。

そう、「ハチミツとクローバー」だ。

まずカサヰケンイチ監督の第1期は、こんな感じ。





無造作に瞳に被せてしまうか、瞳の上を通してごくオーソドックスに処理している。

長井龍雪監督の第2期はどうかというと、基本的には同じなのだが、その気で探してみたらありました。



chap3で、内緒でスペイン行きの準備をしていた理花さんに詰め寄る真山のシーン。
長井本人の絵コンテなら決まり、だと思ったのだが残念、絵コンテ:福田道生、演出:佐々木浩一でした。


全話チェックしたわけではないので、以下はあくまで想像なのだが、

カサヰ監督の第1期シリーズではこの技法は使われなかった。
長井監督の第2期シリーズで、要所で使ってみた。
手応えがあったので、長井監督が「とらドラ!」で全面的に採用。
それをカサヰ監督が「青い花」で踏襲。

という流れではないかと。

今回調べてみて初めて知ったのだが、第1期シリーズで長井が手がけたのは、12話の演出1度きりなのね。第2期の監督を任せたのは、かなりの英断だったんじゃないだろうか。

その長井監督の新作は「とある科学の超電磁砲」。「禁書目録」が肌に合わなかったのでスルーのつもりだったんだけど、観てみようかな。脚本が水上清資だし。

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