更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2007年9月30日(日)
藤島康介インタビュー

アフタヌーン11月号の藤島康介インタビューからの抜粋。

『(裁ち切りや見開きをあまり使わない正統的なコマ割りについて)
 K原さん(注:初代担当編集者)もよく「複雑なコマ割りは絵の上達を妨げる」と仰ってました。要は、複雑なコマ割りで読者に読み手としてのスキルを要求するのではなく、シンプルでも読者を惹きつけることができる表現力を磨けということだと思うんですけど、確かに、そういった手法の制限を設けたほうが、表現について考えるようになると思うんです。』

講談社の編集部では、新人作家にはまず「藤島先生のコマ割りを参考にしろ」と指導するそうである。
藤島作品をそういう目で見たことはなかったが、少女マンガの表現が高度になりすぎて客層を狭めたことなどを考えると、いろいろと示唆的。
マンガ以外にも、いろいろと応用が利きそうである。
「細部に懲りすぎると原画がダメになる」とか、
「構図に懲りすぎると撮影技術が落ちる」とか、
「構成に懲りすぎると脚本がおろそかになる」とか、
「特撮に懲りすぎると予算がなくなる」とか。

いや、最後のは違うかもしれない。

2007年9月28日(金)
’06年セ・リーグの守備成績

久々に野球の話。

だいぶ前から暖めていたネタなので、古くなりすぎた感もあるが、面白い結果が出たと思う。
’06年の東京ヤクルトスワローズは、「ホームランに頼った大雑把な野球をして負けた」と言われ続け、その象徴とされたのが2番・リグスだった。
しかし実は、リグスは大変な守備の名手だったのだ。
詳しくは本文を。

2007年9月25日(火)
続・時系列シャッフル映画

「アウト・オブ・サイト」('98)を忘れていた。スティーブン・ソダーバーグ監督完全復活を印象づけた傑作。私事ながら、エルモア・レナード原作で唯一面白かった映画。ジェニファー・ロペスもこの頃は格好良かったんだが。

ところで、今回時系列について考えていて気がついたことをひとつ。
断言は避けるが、「タイムトラベルものには、時系列シャッフル映画が存在しない」らしい。本文でも触れたように、代表格は「バック・トゥ・ザ・フューチャーpart2」。本作は縦横無尽に時代を移動するが、それは基本的に舞台の変換と同じで、主人公の主観時間はずっと一方向に流れ続けている。
ちょっと意外な気もするが、考えてみれば当然のことで、ただでさえ複雑に舞台を移動するのに時系列まで入れ替えたら、観客の理解を超えてしまうのである。
おそらく、その実例は「プライマー」('04)である。
「おそらく」と書いたのは、15分ほどで寝てしまって、何も覚えていないからだ。察するところ、「タイムトラベルで時系列入れ替え」に挑戦した非常に野心的な作品だったと思うのだが、何しろ印象的な役者はいないわ演出は平板だわで、まるで理解できない、そもそも理解しようという欲求が起こらなかった。

しかし、おかげでまだ誰も成功していないジャンルがひとつ明らかになった。天才的な演出家が、画期的な技法を編み出して成功させたら、歴史に名が残るぞ。

2007年9月24日(月)
「CCさくら」と「ガンスリ」

こちらの記事を読んで思いついたこと。
http://crusherfactory.net/~pmoon/mt/001630.html

この中で、「CCさくら」の世界観・人間観は「善良なもの、きれいなもの、かわいいものに埋め尽くされ」ていると指摘されている。

一方の「ガンスリンガー・ガール」は、知ってのとおり身寄りのない少女たちを半ば誘拐してきて擬体化・洗脳し、暗殺者に仕立てる話である。
いわば、「汚れたものばかりで構成された世界の中で、それでも光り輝くものを希求する」物語だ。

面白いことに、まるで正反対の世界観を持つこの両作品は、同じ浅香守生監督の手による。「ガンスリ」は、ちょうど「CCさくら」の陰画にあたるのである。
いずれも原作を持つ作品なので、監督の資質がどこまで影響しているかは不明だが、私は偶然ではないと思う。

むしろ、同じ監督だから両作がこうした関係になったのか、作品がこうだから浅香監督を起用したのかが気になる。もし後者だとすると、浅香監督を起用したマッドハウスの判断にそれこそ敬服する。

2007年9月24日(月)
時系列シャッフルという技法

先日マイミクさんたちと話したとき、「バッカーノ!」が「エヴァ」に似ている、という意見がネット内で流れているという話を聞いた。最初の劇場版「DEATH&REBIRTH」からの連想だと思うのだが、私の感覚では、時系列をいじる技法というのはそんなに珍しいものではないし、もちろん「エヴァ」が起源でもない。

そこで、とりあえず私の記憶にある中で、時系列シャッフル映画をピックアップして簡単に分類してみた。新たに発見したら、順次追加していく予定。根本的には、「回想シーンというのを発明したのはいつ、誰か」というところまで遡らなくてはならないが、さすがにちょっと手に余りそう。

2007年9月18日(火)
三越公開講座最終回

行ってきました
思ったよりもたくさんメモを取っていた。今回が一応の最終回ということもあってか、質疑応答も実に活発だった。私としては、「レイアウトと作画節約の因果関係」について聞けたのが収穫。
大意だが「レイアウトは、観客の側が、そこで何がどう表現されているかを分析するのに有効な方法論。作画の節約は結果論と考えるべき」という回答が印象的であった。

2007年9月17日(月)
薔薇の刻印

ずっと前から思っていたのだ。

「少女革命ウテナ」の薔薇の刻印と、茨城県の県章はデザインが似ていると。

ようやく画像を発見したので、並べてみた。

  

左が「ウテナ」、右が茨城県。
・・・思ったほど似てなかった。

すみません、オチませんでした。

ちなみに、右の県章が使用されていたのは平成3年までで、今は下のデザインに変わっている。



モチーフはいずれも薔薇。茨城県の分際で、県花が薔薇なのである。

2007年9月15日(土)
特に脈絡もなく

かなり前からブックマークしていた記事。

日本音楽財団のHP
なぜこんなページに辿り着いたのか、全然覚えていない。所有楽器一覧にご注目。日本にこんなにたくさんストラディバリウスがあるというのも驚きだが、貸与事業をやっているというのに心底たまげた。とっさに損害保険料も天文学的だろうな、と思ってしまう自分の俗物ぶりが嫌になる。

もう一件。機械に心がない、などと思う人は、ぜひこれを見てほしい。
日本機械学会認定「機械遺産」
歴史学で一番研究が遅れている分野は技術史だ、と聞いたことがある。以前、TVで旧式TVのコレクターを紹介していた。例によって、ノスタルジーの文脈で面白おかしく紹介されただけだった。こんな貴重なコレクションは、それこそ博物館が保存すべきものだと思うのだが。
世界遺産なんか放っといたって誰かが保存してくれる。身の回りにある技術者の苦闘の足跡こそ、本気で記憶すべきものだ。

2007年9月13日(木)
夏休みの成果報告その2

これも実家から出土した、コペル21。



とは何ぞや、と言いますと、’83年頃に公文教育研究センターが出版していた小中学生向けの科学雑誌である。私も公文少年だったので購読していたのだ。
試しに検索かけてみたらヒットするのはヤフオクの記事ばかりで、ウィキペディアにさえ項目がない。もちろん、とっくの昔に廃刊になっている。この雑誌が歴史に名を残したのはただひとつ、「かがみあきらが連載を持っていた」という事実による。



その作品、「ワンダートレック」の一部。子供向けのジュブナイルなので今読んで面白いというものでもないが、独特の色使いやキャラの魅力は窺えるだろう。驚いたことに、単行本が出ていた。
 → http://www2u.biglobe.ne.jp/~chammy/apo.htm

ところで、コペル21はかの超大作SFバカ映画「さよならジュピター」の宣伝に非常に力を入れておりまして、おかげで私は観る前からディアンヌ・ダンジェリーの名前を知っていた(三浦友和と無重力Hすることで有名なあの人)。天才少年役を演じたマーク・パンソナのインタビューが読めるなど、この雑誌だけだったに違いない。


え、マーク・パンソナって、globeのメンバーだったの!?

2007年9月12日(水)
夏休みの成果報告

夏休み中に実家でいろいろ発掘したので、当分はこのネタで。

押入から、「challenge mate」の’84年11月号が出土した。「challenge mate」というのは、進研ゼミ会員向けの情報誌である。進研ゼミは、伊藤伸平「はるかリフレイン」の連載をしていたこともあって、意外と侮れないのだ(「はるかリフレイン」は、伊藤伸平の唯一まともに完結した作品)。その誌上で、中学生読者のアンケート結果発表の記事を見つけた。対象は、中学生約3万人とある。

その中に、「よく見るアニメ番組は?」という質問があって、回答がなかなか面白いのだ。

曰く、『「キャプテン翼」特に男子に強い人気(「ルパン3世」とともに3学年で1・2位を分けあっている)。「キャッツアイ」こちらは女子の支持率が高い(「うる星やつら」が3学年とも女子の2位)。
この4番組で、ほとんどベスト3が埋まるのだが、ここでも目立っていたのが、中3女子の第1位「別になし」。
 今の中学生はアニメ世代だといわれ続けていて、「趣味はアニメ」と答える人が半数近くいると考えられているが、本当にそうなのだろうか?大洪水のようなアニメ番組ラッシュに、「もう、ちょっとひと休み」という気分になってきたのかもしれないね。』

'84年といえば、ちょうど「風の谷のナウシカ」が公開された年。キネ旬ベストテンにランクインされて、一般社会に「大人の鑑賞に耐えるアニメ」(死語)の存在を知らしめるのは、このアンケートよりもう少し後になる。私の実体験から言って、中学生にもなって「趣味がアニメ」と言うのはかなり勇気がいる時代だった。中3女子がもうアニメなんか見ない、というのはごく自然なことだろう。14歳の壁という奴である。

それよりも面白いのが、「キャプテン翼」が男子、「うる星やつら」が女子に支持されているというくだりだ。「C翼」が腐女子予備軍を、「うる星」がダメオタを大量生産したという現在の通説とは、正反対である。もちろん、調査対象が中学生で、進研ゼミ会員に限られるということは割り引いて考えなければならないが、歴史というのはそう簡単に割り切れないとは言えるだろう。
そういえば、「キャッツアイ」の第2期OPなんて、中学生男子にはエロ過ぎて直視できなかったっけな。

2007年9月10日(月)
エヴァンゲリオン新劇場版:序

「この12年、エヴァより新しいアニメはなかった」との庵野監督の言葉も宜なるかな。
12年を経て、再びトップランナーに返り咲いてしまった。「3DCGの使徒」に不安を覚えていたのだが、この調子で行ってくれれば、まったく文句なし。最後までついて行きます。

がしゃがしゃ変型する第5使徒にも驚いたが、私の思うに、オリジナルからの最大の改変は、ヤシマ作戦後にシンジに救出されたレイが、シンジにゲンドウの面影を重ねるカットが削除されたことである。逆に、その直前にレイの手から落ちた眼鏡のカットが追加されており、さらに意味を補強する。
ストーリーの流れからも心理の動きからも、この方が自然である。
その代わりに、シンジとレイの交流も仕組まれたものだった、としたわけだ。

オリジナルのエヴァは、回り道をしつつも「男性原理の発動=成長」とするテーゼを徹底的に破壊する作品だった。今回は、ここで明確にシンジの男性原理を確立したのだが、これが今後突き落とす準備だとすると、いささか背筋が寒くなる。
庵野監督自身の身上の変化に、改変の原因を求める向きもあろうが、ヤボだからあえて言わない。

その他雑感いくつか。
・パンフによると、京田知己が絵コンテを手がけたのは、新作パートのうち人物がメインのシーンとのこと。ミサトとリツコの会話のシーンとか、ヤシマ作戦の作戦会議がそうかな。シンジの胸ぐらをつかんだミサトが手を放し、自分の頬を打つシーンが秀逸。
・権利の関係はどうなるんだろう。パンフを見ると、マルCにカラー・GAINAXと併記してあるので、GAINAXは原作料だけ受け取るんだろうか。
・ほぼスタッフインタビューだけで構成されたパンフレットは、そんじょそこらのムックよりもいい出来。でかいだけの「Genius Party」のパンフは深く反省するように。
・「TVからの再編集による映画化」という方法論は、これで終わっちゃったかも知れないなあ。
・新「エヴァ」の制作発表を聞いたとき思ったのが、「トップ2」は望むと望まざるとに関わらず新「エヴァ」の観測気球の役を果たしたのだろうな、ということだった。「トップ2」でOVA時代の徒花に決着をつけ、「グレンラガン」でロボットアニメ史をおさらいしてみせ、この新「エヴァ」。GAINAXは本気で、アニメ史を総括しようとしているように見える。とすると、次はいよいよ「蒼きウル」か?

2007年9月9日(日)
「時かけ」における円環のイメージ

先日、「秒速5センチメートル」のときに予告した件をアップ。
かなり前の日記にも書いたのだが、「時かけ」に現れる円環のイメージを拾ってみた。他の細田監督作品と比較するほどの知識はないのだが、結構面白いものになったと思う。

2007年9月9日(日)
「バッカーノ!」OP

一身上の都合により、しばらく更新をお休みしていましたが、再開します。

だいぶん前の話だけれど、幻視球さんで標題の件を採り上げていた
その中の、「天井を背負った窮屈な構図」で思い出したのが、WEBアニメスタイルの、かつて劇場版「地球へ・・・」を造った恩地日出夫監督のインタビューである。
恩地監督は実写畑の人なのだが、アニメーターが人の顔を描くと、「必ず、背後に天井の縦横線と柱でできるYの字を書いてしまう」と言っている。最初から2次元の世界で勝負しているアニメーターという人種は、遠近感を出すために、背後には壁しかないはずの構図でもついそういう絵造りをしてしまうのだそうだ。「地球へ・・・」はもう27年も前の作品だが、少なくとも当時のアニメーターにはそういう習性があったということになる。

「バッカーノ!」の天井を背負った構図が、どんな意図の元に描かれたのか興味のあるところだ。

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