【柴田宵曲の本】
妖異博物館 正・続  明治の話題  明治風物誌  奇談異聞辞典

「明治の話題」

柴田宵曲


彗星、憲法発布、園遊会、観覧車、辻占売り、アイスクリーム、烟草の広告、鐘の音、コックリさん、ゴム風船、等々、150余に及ぶさまざまな事物、風俗、主題によって明治を語った宵曲随筆集。博覧強記にして滋味横溢。事物起原の考証から懐かしい日常風景まで、多種多様な話題をめぐって、漱石、鏡花、子規、緑雨らの文章を縦横に引き、また作家、学者、政治家、ジャーナリスト等の興味深い逸話を数多く収めた本書は、さながら明治文学詞華集、人物逸話集の趣もある。(初版は1962年、青蛙房刊)

◆ちくま学芸文庫 2006年12月刊
◆中扉絵=三谷一馬 ◆装丁=間村俊一 ◆解説=川本三郎
◆本体1300円 [amazon] 
品切

【明治の話題】 目次
はしがき
【T】 彗星/春の大雪/晴雨/憲法発布/国会/提灯行列/凱旋門/凱旋遺聞/記念絵端書/演説/通訳/弔詞/投票/文芸委員
【U】 焼芋と牡丹餅/発行停止/檜可斬/号外/校正/懸賞小説/電信/電話/図書館/試験/採点/賄征伐
【V】 酒癖/貫目/官界の高士/吾輩は猫/暗殺の予言/安藤閣上/十人組/諢名/超人/年齢/水嶋寒月/死神/宿望/詐称/腰弁/高利貸/成金/乞食/忘れた日本語/花井お梅
【W】 丁髷/カイゼル髯/ハイカラ/燕尾服/シルクハツト/夏帽/角帽と制服/美術学校の制服/下駄/眼鏡/指輪/時計/香水
【X】 人力車/鉄道馬車/自転車/飛び乗り飛び降り/花電車/一銭蒸汽/渡船/変つた乗物/飛行機
【Y】 園遊会/音楽会/かるた会/海水浴/水泳場
【Z】 日比谷公園/両国橋/吾妻橋/兜町/紅葉館/イルミネーシヨン/観覧車/日英博覧会/電気館/ルナパーク/手品/うつし絵/菊人形/国技館/角力の名前/角力勝負附/酉の市/砂文字/占ひ/催眠術/声色つかひ
【[】 絵草紙屋/質屋/氷店/露店/お宝売り/苗売り/辻占売り/薬売り/パン売り/豆売り/カツフエー/ミルクホール
【\】 ビール/サイホン/烟草の広告/官製烟草/岩谷天狗/詰め替へ/きんとん/牛肉/サンドヰツチ/文字焼/カステラ/アイスクリーム/トマト/汁粉/懐中汁粉/砂糖水
【]】 ピストル/決闘/贋造紙幣/銀貨/銅像/幻燈/蓄音機/広告の楽隊/鐘の音/午砲/新内の流し/火の番/土蔵/街燈/洋字看板/ゼム/ラムプ/玩具/ゴム風船/焼きぬき/燐票/蚊遣香/ライオン/コレラ/ミイラ/コスモス/洒落/作文の型/ミツドウエー
あとがき(岡本経一)/解説 「小さな明治」 への愛惜 (川本三郎)

 格別これといふ動機なしに、こんな書物が出来上つた。平生明治研究者を以て任じて居らぬ著者は、年来書き溜めた原稿などの持合せがない。本書の内容はおぼつかない脳裏の記憶に、乏しい架上の書物の記載を加味した混成酒の如きものである。混成酒が上等の酒でないくらゐの事は、生来の下戸である著者と雖も心得てゐる。
 明治年間に評判になつた事柄もあれば、今日より顧みてはじめて興味を生ずる性質のものもある。何方へ転んでも明治の話題には相違ないから、看板に偽りありの譏りだけは、どうにか免れ得るであらう。
                            
 ―― 「はしがき」 より

柴田宵曲 (しばた しょうきょく)
明治30年(1897)、日本橋久松町の商家に生まれる。中学中退後、上野図書館に通って独学で俳句、文章に精進。句誌 「ホトトギス」 編集者を経て、「子規全集」 「分類俳句全集」 の編纂・校正に尽力した。三田村鳶魚の著述にも協力。俳句・近代文学・古典に関する著作が多く、著書に 『蕉門の人々』 『古句を観る』 『漱石覚え書』 『明治の話題』 『明治風物誌』 『妖異博物館 正・続』、編著に 『随筆事典/衣食住篇・奇談異聞篇』 などがある。昭和41年(1966) 死去。その名利を求めぬ生き方、飄然とした人柄について、共著 『書物』 もある親友・森銑三は、 「柴田さんを利用しなかったジャーナリズムも頼りないが、一生、ジャーナリズムに煩わされる所なく、趙然として一生を終った所にわが宵曲大人があった」 と語っている。1991年に 『柴田宵曲文集』 全8巻が小澤書店から刊行された。