【白水Uブックス/海外小説 永遠の本棚】 【イギリス・アイルランド文学】 ケイレブ・ウィリアムズ 義とされた罪人の手記と告白 ヴィレット エドウィン・ドルードの謎 フラッシュ ピンフォールドの試練 クローヴィス物語 けだものと超けだもの 平和の玩具 四角い卵 死を忘れるな ミス・ブロウディの青春 ウッツ男爵 アーモンドの木 トランペット 魔の聖堂 ◇ スウィム・トゥー・バーズにて 第三の警官 ドーキー古文書 【アメリカ・カナダ文学】 彼らは廃馬を撃つ 見えない人間 カッコーの巣の上で ユニヴァーサル野球協会 ◇ ビリー・ザ・キッド全仕事 【フランス文学】 ペンギンの島 地獄の門 【イタリア文学】 まっぷたつの子爵 木のぼり男爵 不在の騎士 冬の夜ひとりの旅人が カフカの父親 【ドイツ語圏文学】 ゴーレム 裏面 第三の魔弾 詐欺師の楽園 【デンマーク文学】 ピサへの道 夢みる人びと 【ロシア・ソビエト文学】 小悪魔 南十字星共和国 劇場 旅に出る時ほほえみを 【ラテンアメリカ文学】 ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件 天使の恥部 エバ・ルーナ エバ・ルーナのお話 【中国文学】 黄泥街 カッコウが鳴くあの一瞬 蒼老たる浮雲 |
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ピサへの道
夢みる人びと 七つのゴシック物語 2 イサク・ディネセン 横山貞子訳 婚礼の日の朝、冒険を求めて国を出奔、海賊になったと噂される弟が三十年ぶりに帰ってきた。弟を愛し独身を守ってきた二人の姉は、その報せを聞いて故郷の屋敷へ向かうが…… 「エルシノーアの一夜」。ローマの売春宿の女、スイスの革命家の帽子つくり、フランスの田舎町の貞淑な聖女――重層する語りの中に浮かびあがる女の複数の生を追う 「夢みる人びと」 他、全3編。夢想と冒険、人生の神秘を描いた、至高の語り手による不滅の物語集下巻。 ◆2013年11月刊 1400円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 装画=カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ ◆晶文社(1981年) の再刊。
第三の警官 フラン・オブライエン 大澤正佳訳 「フィリップ・メイザーズ老人を殺したのはぼくなのです」――研究書の出版資金ほしさに雇人と共謀し、金持ちの老人を殺害した主人公は、事件のほとぼりのさめた頃、隠してあった金庫を取りにその屋敷に忍び込む。そこで老人の亡霊と出会った彼は、いつしか三人の警官が管轄し、自転車人間の住む奇妙な世界に迷い込んでしまう。前衛的な文学実験、神話とノンセンス、アイルランドのほら話の伝統が見事に結びついた奇蹟の傑作。 ◆2013年12月刊 1600円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 装画=ワシリー・カンディンスキー ◆筑摩書房(1973年/1998年) の再刊。
ユニヴァーサル野球協会 ロバート・クーヴァー 越川芳明訳 新人投手デイモン・ラザーフォードの完全試合達成まであと一人! スタンドの観客は固唾をのみ、デイモンの投球を見守る――ユニヴァーサル野球協会は、冴えない中年(初老?)の会計士ヘンリーの頭の中だけに存在する野球リーグだ。試合展開を決めるのはサイコロと各種一覧表。架空のゲームのスコアをつけ、球団勝敗表や選手の成績を記録し、彼らの逸話やリーグの栄光の歴史を空想することにヘンリーの毎日は捧げられている。だが、試合中に起きたある事件をきっかけに、虚構と現実の境界が崩れ始める。野球ゲームの世界に没入する男の物語を通して、アメリカの歴史や政治や宗教を語り直し、現代の神話を創造するポストモダニズム文学の殿堂入り名作。 ◆2014年1月刊 1600円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆若林出版(1985年)/新潮文庫(1990年) の再刊。
ゴーレム グスタフ・マイリンク 今村孝訳 プラハのユダヤ人街に住む宝石細工師の 「ぼく」 は、ある日、謎の人物の訪問を受け、一冊の古い書物の修繕を依頼されるが、客の帰ったあと、彼について何も思い出せないことに気づいて愕然とする。どうやらその男は、33年ごとにこの街に出現するゴーレムらしいのだ。以前現れたゴーレムは、人々に目撃されたあと、出入口のない部屋で不思議な事件を起こしたという。やがて 「ぼく」 の周囲でも次々に奇怪な出来事が……。ユダヤのゴーレム伝説を下敷きに、夢と現実が混淆するこの物語は、第一次大戦さなかに出版されるや忽ちベストセラーとなり、ボルヘス、カフカ、ユングらを魅了したドイツ幻想文学の名作である。フーゴー・シュタイナー=プラークの 「マイリンク 『ゴーレム』 によせる石版画」 25点を収録。 ◆2014年3月刊 1700円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画・挿絵=フーゴー・シュタイナー=プラーク ◆河出書房新社(1973初版) の再刊。
エドウィン・ドルードの謎 チャールズ・ディケンズ 小池滋訳 クリスマスの朝、大聖堂の町から忽然と姿を消したエドウィン・ドルード。捜索の結果、彼の懐中時計が河の堰で見つかり、以前から反目していた青年ネヴィルに殺人の嫌疑がかかるが、事件の背後にはエドウィンの後見人ジャスパーの暗い影があった……。文豪ディケンズが初めて本格的に探偵小説に取り組むも、その突然の死によって未完となった最後の長篇。ディケンズが初期作から追求してきた人間 「悪」 は、本作において近代的に洗練され複雑な魅力を放つ存在となり、登場人物の心理的陰影もより深みを増している。原書挿絵を全点収録。残された手掛りからドルード事件の真相を推理する訳者解説も読み応え十分。 ◆2014年5月刊 1700円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 装画・挿絵=ルーク・ファイルズ ◆講談社(1977)/東京創元社(1988) の再刊。
カッコーの巣の上で ケン・キージー 岩元巌訳 刑務所の農場労働を逃れるため精神障害を装い、委託患者として精神病院にやってきた赤毛の男マックマーフィ。そこではラチェッド婦長が厳格な規則と薬物投与で患者たちの人間性を奪い、病棟を支配していた。マックマーフィは笑いと不屈の反抗心を武器に婦長に戦いを挑み、その姿に患者たちも自由の喜びと勇気を取り戻していくが……。体制への反逆と精神の自由を求める戦いを描いて鮮烈な感動を呼ぶ、20世紀アメリカ文学を代表する名作。 40年後に書かれた序文 「スケッチ」 と自筆イラストを初収録。 ◆2014年7月刊 2000円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ジャクソン・ポロック/本文イラスト=ケン・キージー ◆冨山房(1974、1996) の再刊。
ウッツ男爵 ある蒐集家の物語 ブルース・チャトウィン 池内紀訳 幼き日、祖母の館でマイセン磁器の道化師像を目にし、その美しさと手触りに魅せられたウッツは、マイセン人形の蒐集に生涯を捧げることを決意した。第二次大戦中のドイツ軍占領時代、そして冷戦下、共産主義体制のプラハで、ウッツはあらゆる手を使ってコレクションを守り、蒐集品を増やし続ける。そのそばには彼に忠実に仕える使用人のマルタがいた。個人財産の所有を禁じる当局の横暴に、ついにウッツは国外脱出を考えるが……。ひとりの蒐集家の人生とチェコの20世紀史を重ねあわせながら、蒐集という奇妙な情熱を絶妙の語り口で描いた小説。 ◆2014年9月刊 1400円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆文藝春秋(1993) の再刊。
スウィム・トゥー・バーズにて フラン・オブライエン 大澤正佳訳 一日のほとんどをベッドですごす怠け者の大学生の語り手が執筆中の小説の主人公トレリスもまた、二十年も部屋にこもりきりの作家である。彼は自分が創造した作中人物を同じホテルに同居させ、監視下においているが、作中人物たちはそれぞれ自分の意志をもち、やがて作者の支配を脱して動きだす。小説の中の小説という重層的な語りの中に、アイルランドの神話伝説やダブリンの大学生の日常生活を織り込み、瑞々しい活力に溢れた豊饒な文学空間を創造した、『第三の警官』 のオブライエンのもう一つの傑作。「真の喜劇精神を備えた本物の作家」 (ジェイムズ・ジョイス)、「20世紀に書かれた滑稽小説のうちで十指に、いや五指にはいる」 (アントニー・バージェス)、「『ドン・キホーテ』 や 『千一夜物語』 よりも複雑な言語の迷宮」(J・L・ボルヘス) ◆2014年10月刊 1700円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=クルト・シュヴィッタース ◆筑摩書房(1998年) の再刊。 ピンフォールドの試練 イーヴリン・ウォー 吉田健一訳 中年の小説家ギルバート・ピンフォールドが転地療養をかねてセイロンへの船旅に出かけると、乗船早々、どこからともなく騒々しい音楽や牧師の説教、船内で何やら事件が起きていることを示す怪しげな会話が聞こえてくる。声はやがて作家の悪口となり、さらには彼に対する悪意をむき出しにしたラジオ放送、ピンフォールド襲撃を計画する
「愚連隊」 一味など、船内のどこにいても、さまざまな声が彼を悩ませ始めた。手を替え品を替え、次々に仕掛けられる悪ふざけに途惑うピンフォールドだったが、その一方、声の中には彼に熱烈な愛情を寄せる女性もいて……。幻の声、姿なき敵に翻弄される小説家の悪戦苦闘を皮肉なユーモアをまじえて描いた、ウォー晩年の傑作を吉田健一の名訳で。
裏面 ある幻想的な物語 アルフレート・クビーン 吉村博次・土肥美夫訳 巨万の富を持つ謎の人物パテラが中央アジア辺境に建設した 〈夢の国〉 に招かれた画家夫婦は、そこでヨーロッパ中から集められた古い建物から成る奇妙な都ペルレに住む奇妙な人々と出会う。画家はこの街の住民となり数年が経ったが、パテラの支配に挑戦し革命を画策するアメリカ人の登場と時を同じくして、恐るべき災厄と混乱が都市を覆い始める。幻想絵画の巨匠クビーンが描くグロテスクな終末の光景。作者自筆の挿絵を多数収録。 ◆2015年3月刊 1500円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画・挿絵=アルフレート・クビーン ◆河出書房新社(1971年)の再刊
クローヴィス物語 サキ 和爾桃子訳 皮肉屋で悪戯好き、舌先三寸で周囲を振りまわす青年クローヴィスが起こす騒動、また聞き手として引き出す物語の数々。狐狩りの最中に貴婦人二人がハイエナに遭遇するが……残酷でドライなユーモアが際立つ 「エズメ」。動物に言葉を教える研究を続けてきた男が、ハウスパーティに招かれた先で飼猫に訓練を施すと、喋れるようになった猫が主人や客たちの秘密を次々に暴露しはじめる 「トバモリー」。孤独な少年は庭の物置でひそかにイタチを飼い、神様として崇めていた……数々のアンソロジーに採られた名作 「スレドニ・ヴァシュタール」 他、全28篇を収録。ウッドハウスやO・ヘンリーと並ぶ “短篇の名手” サキの辛辣な諷刺とユーモアに満ちた代表的短篇集 The Chronicles of Clovis (1911) を初の完訳(本邦初訳を含む)。A・A・ミルンの序文と、エドワード・ゴーリーの魅力的な挿絵16点を収録した決定版。 ◆2015年4月刊 1300円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画・挿絵=エドワード・ゴーリー ◆Uブックス・オリジナル ◆日本経済新聞(4/15夕刊) 野崎六助氏評 ◆書評七福神の今月の一冊 杉江松恋氏評
彼らは廃馬を撃つ ホレス・マッコイ 常盤新平訳 1930年代、大恐慌時代のアメリカ。映画監督になる夢を抱いて青年はハリウッドにやってきた。しかし現実は厳しく、エキストラの仕事にもあぶれ、ドラッグストアのバイトで小銭を稼ぐのが精いっぱい。その彼が出会ったのが、テキサスからきた女優志望の女の子。二人はペアを組んでマラソン・ダンス大会に参加することに。これは一時間五十分踊って十分間の休憩を繰り返し、最後の一組が残るまでひたすら踊り続ける過酷な競技だ。大会を渡り歩くこの競技のプロに、逃亡中の犯罪者、家出娘など “わけあり” の参加者も。そして競技が八百時間を越え、残りが二十組に絞られたとき……。競技中に発生する様々な人間ドラマ、若者たちの希望と絶望を巧みな構成で描いたアメリカ小説の傑作。シドニー・ポラック監督、ジェーン・フォンダ主演の映画化 《ひとりぼっちの青春》 でも知られる。 ◆2015年5月刊 1000円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆角川文庫(1970)/王国社(1988)の再刊
第三の魔弾 レオ・ペルッツ 前川道介訳 16世紀、神聖ローマ帝国を追放された “ラインの暴れ伯爵” グルムバッハは新大陸に渡り、アステカ王国のインディオたちに味方して、コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッハは悪魔の力を借りて、コルテス軍の狙撃兵ノバロの百発百中の銃を手に入れるが、その責を問われて絞首台に上ったノバロは死に際に銃弾に呪いをかける。「一発目はお前の異教の国王に。二発目は地獄の女に。そして三発目は――」 コンキスタドール時代のメキシコを舞台に、騙し絵のように変幻する絢爛たる物語を、巧みなストーリーテリングで描き切った幻想歴史小説。 ◆2015年7月刊 1600円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ディエゴ・リベラ ◆国書刊行会(1986)の再刊
死を忘れるな ミュリエル・スパーク 永川玲二訳 「死ぬ運命を忘れるな」 と電話の声は言った。デイム・レティ (79歳) を悩ます正体不明の怪電話は、やがて彼女の知人たちの間にも広がっていく。犯人探しに躍起となり、疑心暗鬼にかられて遺言状を何度も書き直すデイム・レティ。かつての人気作家のチャーミアン (85歳) は死の警告を悠然と受け流し、その夫ゴドフリー (87歳) は若き日の不倫を妻に知られるのを恐れながら、新しい家政婦(73歳)の脚が気になる模様。社会学者のアレック (79歳) は彼らの反応を観察して老年研究のデータ集めに余念がない……。謎の電話が老人たちの間に投じた波紋と、登場人物ほぼ全員70歳以上の入り組んだ人間模様を、辛辣なユーモアをまじえて描き、「この五十年間でもっとも偉大なイギリス小説のひとつ」 (ジュリアン・バーンズ) と評される傑作。 ◆2015年9月刊 1700円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆白水社(1964)の再刊
ミス・ブロウディの青春 ミュリエル・スパーク 岡照雄訳 1930年代のエディンバラ、女子学園の教師ジーン・ブロウディはお気に入りの生徒を集め、彼女たちを 「一流中の一流」 にするための独自の教育を授けた。数学が得意で癇癪持ちのモニカ、セックス・アピールで有名なローズ、体操に夢中のユーニス、発音がきれいで空想好きなサンディ、美人で女優志望のジェニー、いじめられっ子のメアリー。少女たちはブロウディ先生の薫陶を受け、進歩的な思想、芸術の教養から、肌の手入れ法や美しい歩き方、先生自身の恋愛体験まで、あらゆることを教わった。先生を中心に団結した 〈ブロウディ組〉 の六人は、親衛隊として、先生の追放を画策する校長に抵抗したが、その中からひとりの裏切り者が……。圧倒的な個性と情熱で生徒を導く女性教師と、彼女に魅了されながらもやがてその支配を脱していく少女たちを、巧みな構成で描いた名作。 なお、本書は1969年に映画化され、ブロディ先生役のマギー・スミスはアカデミー賞主演女優賞を受賞している。 ◆2015年9月刊 1300円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画(立体制作)=大森せい子 ◆筑摩書房(1973)の再刊 けだものと超けだもの サキ 和爾桃子訳 十月というのに、あの窓を開けっぱなしにしているのはなぜか――少女の話では、三年前、このフランス窓から猟に出ていった叔母の夫と弟二人が荒地の沼に呑まれてしまう事件があった。三人がいつか帰ってくると信じている叔母は、以来、この窓を開けたままにしているというのだが……ショートショートの名作 「開けっぱなしの窓」。列車内で騒ぎ立てる子供を、同じ車室に乗り合わせた男が即興のお話でおとなしくさせる 「お話上手」 など、全36篇を収録したBeasts and Super-Beasts (1914) を全訳。好評 『クローヴィス物語』 に続くサキ短篇集第二弾。エドワード・ゴーリーの挿絵を収録。 ◆2016年1月刊 1400円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画・挿絵=エドワード・ゴーリー ◆Uブックス・オリジナル
南十字星共和国 ワレリイ・ブリューソフ 草鹿外吉訳 南極大陸に建設された新国家の首都 〈星の都〉 で発生した奇病 〈自己撞着狂〉。発病者は自らの意志に反して愚行と暴力に走り、撞着狂の蔓延により街は破滅へと向かう――未来都市の壊滅記 「南十字星共和国」。15世紀イタリア、トルコ軍に占領された都市で、スルタン側近の後宮入りを拒んで地下牢に繫がれた姫君の恐るべき受難と、暗闇に咲いた至高の愛を描く残酷物語 「地下牢」。夢の中で中世ドイツ騎士の城に囚われの身となった私は城主の娘と恋仲になるが……夢と現実が交錯反転する 「塔の上」。革命の混乱のなか旧世界に殉じた神官たちの死と官能の宴 「最後の殉教者たち」 など、全11篇を収録。20世紀初頭、ロシア象徴主義を代表する詩人・小説家ブリューソフが紡ぎだす終末の幻想、夢と現、狂気と倒錯の物語集。アルベルト・マルチーニの幻想味溢れる挿絵を収録。 ◆2016年3月刊 1500円 [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画・挿絵=アルベルト・マルチーニ ◆白水社(1973)の再刊
ケイレブ・ウィリアムズ ウィリアム・ゴドウィン 岡照雄訳 農民の息子ケイレブ・ウィリアムズは、両親を亡くし、有力者の地主フォークランドの秘書として働くようになる。人望厚く慈愛に満ちた主人の下で恵まれた生活を送るケイレブだったが、好奇心の強い彼は、やがて主人の不可解な性格に興味をいだき、ついにその暗い秘密を突き止めてしまう。実は主人フォークランドには人知れず殺人を犯した恐ろしい過去があったのだ……。18世紀末、アナーキズムの古典ともいわれる 『政治的正義』 でイギリス社会に衝撃をもたらした思想家ウィリアム・ゴドウィンが1794年に発表したゴシック小説の名作。社会の不正義をあばく告発小説であると同時に、追う者と追われる者の関係、心理的闘争を息苦しいまでの緊迫感で描き出したサスペンス小説でもある。 ◆2016年7月刊 1800円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ピエール=ポール・プリュードン 『〈復讐〉 の頭部習作』 ◆国書刊行会(1982)の再刊
冬の夜ひとりの旅人が イタロ・カルヴィーノ 脇功訳 あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説 『冬の夜ひとりの旅人が』 を読み始めようとしている。あなたが読み始めた本はしかし、30頁ほど進んだところで同じ文章を繰り返し始める。乱丁本だ。あなたは本屋へ行き交換を求めるが、そこで意外な事実を知らされる。あなたが読んでいたのは 『冬の夜ひとりの旅人が』 ではなく、まったく別の小説だったのだ……。中断され続ける小説を追いかける 〈男性読者〉 と 〈女性読者〉 の冒険。「文学の魔術師」 による究極の読書小説。 ◆2016年10月刊 1800円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=グスタフ・アドルフ・ヘニッヒ 『読書する少女』 ◆松籟社(1981)/ちくま文庫(1995)の再刊
天使の恥部 マヌエル・プイグ 安藤哲行訳 ウィーン近郊の楽園のような島に軍需産業王の夫によって閉じ込められた世界一の美女。映画スターの彼女には出生にまつわる秘密があった。死者との契約により、三十歳になった時から他人の思考が読めるようになるというのだ……。地軸変動により気候が激変、多くの土地が水没した未来の地球。性的治療部で働く女性W218はある日理想の男と出会う。隣国からやってきたその男と、彼女は夢のような一夜を過ごすが、男にはある目的があった……。一九七五年のメキシコシティ、病院のベッドでアナは語る。アルゼンチンでの過去の生活、政治について、愛について……。過去・現在・未来で繰り返される、女たちの哀しい愛と数奇な運命の物語を、メロドラマやスパイ小説、SFなど、さまざまなスタイルと声を駆使して描き、新境地を切り開いたプイグの傑作。改訳決定版。 ◆2017年1月刊 1900円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆図版=ヘディ・ラマー ◆国書刊行会(1989)の再刊
不在の騎士 イタロ・カルヴィーノ 米川良夫訳 時は中世、シャルルマーニュ大帝の軍勢に、サラセン軍との戦争で数々の武勲を立てた騎士アジルールフォがいた。戦場にあっては勇猛果敢、謹厳極まる務めぶりで騎士の鑑ともいうべき存在。だが、その白銀に輝く甲冑の中はからっぽだった――。肉体を持たず、強い意志の力によって存在するこの 〈不在の騎士〉 は、ある日その資格を疑われ、証を立てんと十五年前に救った処女を捜す遍歴の旅に出る。付き従うのはあらゆる存在に同化してしまう従者グルドゥルー。アジルールフォに恋する女騎士ブラダマンテ、さらにその後を追う若者ランバルドもからんで、奇想天外な騎士道物語が展開する。文学の魔術師カルヴィーノが、人間存在の歴史的進化を寓話世界に託して描いた 《我々の祖先》 三部作開幕。〔翻訳権取得〕 「指輪、ナルニア、ゲド、どれも世界を語るに足りないと思っている人への贈り物! これでだめだったら、ファンタジーに絶望していい」 ――金原瑞人 ◆2017年3月刊 1500円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=磯良一 ◆国書刊行会(1989)/河出文庫(2005)の再刊
ビリー・ザ・キッド全仕事 マイケル・オンダーチェ 福間健二訳 左ききの拳銃、人殺しの無法者、多くの女たちに愛された伊達者――西部の英雄ビリー・ザ・キッドの短い生涯は数々の伝説に彩られている。友人にして宿敵の保安官パット・ギャレット、のっぽの恋人アンジェラ・D、ライフルの名手トム・オフォリアードら、ビリーをめぐる人々。流浪の日々と束の間の平和、銃撃戦、逮捕と脱走、そしてその死までを、詩、散文、写真、関係者の証言や架空のインタビューなどで再構成。ときに激しい官能、ときにグロテスクなイメージに満ちた様々な断片を集め、多くの声を重ねていく斬新な手法でアウトローの鮮烈な生の軌跡を描いて、ブッカー賞作家オンダーチェの出発点となった傑作。カナダ総督文学賞受賞。作品の成り立ちを作者自ら振り返った2008年版 「あとがき」 を追加収録。 ◆2017年4月刊 1500円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆国書刊行会(1994)の再刊
平和の玩具 サキ 和爾桃子訳 子供たちには武器の玩具や戦場模型、兵隊人形のかわりに平和的な玩具を、という新聞記事に感化された母親が、早速実践にうつすが……「平和の玩具」。その城には一族の者が死ぬとき森の狼が集まって一晩中吠えたてるという伝説があった……「セルノグラツの狼」 他、全33篇を収録。辛辣な諷刺と残酷なユーモアの作家サキの没後編集された短篇集を初の完訳。序文G・K・チェスタトン。付録としてサキ及び近親者の書簡を収録。 ◆2017年6月予定 1600円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画・挿絵=エドワード・ゴーリー ◆Uブックス・オリジナル
劇場 ミハイル・ブルガーコフ 水野忠夫訳 『船舶通信』のしがない記者兼校正係マクスードフは、昼は新聞の仕事をしながら、夜は小説を書き続けていた。ある夜、突然部屋を訪れた著名な編集者ルドルフィによって、文芸誌に作品掲載が決まり、作家の仲間入りを果たしたマクスードフだったが、それが彼の苦難の始まりだった。ルドルフィは発売前の雑誌と共に姿を消し、その後 〈独立劇場〉の依頼で自作を戯曲化するも、演出家の不条理な介入や劇場内の対立など、様々な障害によって上演はひたすら先延ばしされる。劇場の複雑な機構に翻弄されながらもその虜となっていく作家の悲喜劇を、作者の実体験にもとづいて戯画的に描いた未完の傑作。 ◆2017年9月刊 1800円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=カジミール・マレーヴィチ ◆白水社(1972)の再刊
四角い卵 サキ 和爾桃子訳 森の中でヴァン・チールは裸で岩の上に寝そべる若者に出会った。浅黒い肌に獣のような目をしたこの野生児は「子どもの肉にありついてから二ヶ月はたつ」と不気味なことを言うのだった……「ゲイブリエル‐アーネスト」。戦地の一杯飲み屋で隣り合わせた男は、交配によって四角い卵を産む雌鶏をつくりだし、一儲けしたというのだが……「四角い卵」他、全36篇。新訳決定版サキ短篇集第四弾は、初期短篇集『ロシアのレジナルド』、没後出版の『四角い卵』に、その後発掘された短篇、スケッチを収録。サキの生涯と作品を概観したJ・W・ランバートの重要エッセー「ボドリー・ヘッド版サキ選集 序文」を付す。 ◆2017年12月刊 1500円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画・挿絵=エドワード・ゴーリー ◆Uブックス・オリジナル
木のぼり男爵 イタロ・カルヴィーノ 米川良夫訳 18世紀イタリア、男爵家の長子コジモは、12歳のある日、かたつむり料理を拒否して庭の樫の木に登った。一時的な反抗と思われたが、その後もコジモは頑なに地上に降りることなく、木の上で暮らし始める。木から木へ伝って自由に移動し、森で猟をしたり、無法者と交際したり、読書に励んだりしながら成長していった。樹上で暮らすコジモは有名人となり、外国の学者たちと文通もした。時代はやがて革命と戦争へ向かい、男爵家を継いだコジモの地方にも軍隊がやってきた……。恋も冒険も革命もすべてが木の上という、奇想天外、波瀾万丈の物語。文学の魔術師カルヴィーノが、人間存在の歴史的進化を寓話世界に託して描いた《我々の祖先》三部作のひとつ。新装改版。 ◆2018年1月刊 1800円(税別)[amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=磯良一 ◆初刊 白水社(1964)/白水Uブックス(1995)の新装改版
ペンギンの島 アナトール・フランス 近藤矩子訳 高徳の修道士、聖マエールは悪魔に唆されて極地の島へ赴き、住民たちに洗礼を施す。しかし、目の悪い老聖者が授洗したのは実は人間ではなく、島のペンギンたちだった。この間違いにより神学上の問題が生じたため、天上では神が聖人たちを集めて会議を開き、対応が話し合われた結果、ペンギンを人間に変えて問題を切り抜けることにした。「人間たれ」の声と共に、ペンギンたちは人間に変身、ここにペンギン国の歴史が始まった。 ◆2018年3月刊 1900円(税別)[amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=原書表紙より ◆中央公論社(1970)の再刊
黄泥街 残雪(ツァンシュエ) 近藤直子訳 黄泥街は狭く長い一本の通りだ。両側には様々な格好の小さな家がひしめき、黄ばんだ灰色の空からはいつも真っ黒な灰が降っている。灰と泥に覆われた街には人々が捨てたゴミの山がそこらじゅうにあり、店の果物は腐り、動物はやたらに気が狂う。この汚物に塗れ、時間の止まったような混沌の街で、ある男が夢の中で発した「王子光(ワンツーコアン)」という言葉が、すべての始まりだった。その正体をめぐって議論百出、様々な噂が流れるなか、ついに「王子光」がやって来ると、街は大雨と洪水に襲われ、奇怪な出来事が頻発する。すべてが腐り、溶解し、崩れていく世界の滅びの物語を、言葉の奔流のような圧倒的な文体で語った、現代中国文学を代表する作家、残雪の第一長篇。残雪研究の第一人者でもある訳者の「わからないこと 残雪『黄泥街』試論」を併録。 ◆2018年10月刊 1800円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=エゴン・シーレ ◆河出書房新社(1992)の再刊
カフカの父親 トンマーゾ・ランドルフィ 米川良夫・竹山博英・和田忠彦・柱本元彦訳 カフカの死んだ父親が巨大な蜘蛛となって現れる「カフカの父親」。文豪ゴーゴリの愛妻は空気の量によって自在にその姿を変えるゴム人形だった! グロテスクなユーモア譚「ゴーゴリの妻」、イギリス人の船長から一年間習ったペルシャ語は実際には誰にも通じない言葉で・・・「無限大体系対話」など、カルヴィーノ、ブッツァーティと並ぶイタリア文学の異才ランドルフィの途方もない奇想とナンセンス、特異な言語感覚に満ちた短篇傑作集。奇妙な一行の超現実主義的な航海を描く「ゴキブリの海」を追加収録した決定版。 ◆2018年11月予定 1700円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=オディロン・ルドン ◆国書刊行会(1996)の再刊・新編集
ドーキー古文書 フラン・オブライエン 大澤正佳訳 ダブリン近郊の海辺の町ドーキーでミックが知りあった科学者を自称する紳士ド・セルビィは、世の堕落を嘆き、人類救済のための世界破壊を企て、大気中の酸素を除去する物質を研究開発していた。嘘か真か、時間の停止にも成功したという。一方、ミックは行きつけの酒場で飲み仲間の医者に「ジェイムズ・ジョイスが死んだという話は眉唾物だ」と聞かされる。ド・セルビィの計画阻止と、生きている(?)ジョイス探しに乗り出したミックだったが・・・。次々登場する奇人変人に飛びきりの奇想。世界中で愛されたアイルランド文学の異才フラン・オブライン最後の傑作。 ◆2018年1月刊 1800円(税別)[amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆集英社(1977年/1990年) の再刊。 カッコウが鳴くあの一瞬 残雪(ツァンシュエ) 近藤直子訳 わたしは駅の古いベンチに横になっていた。わたしにはわかっている、カッコウがそっと三度鳴きさえすれば、すぐにも彼に逢えるのだ・・・。姿を消した〝彼〟を探して彷徨い歩く女の心象風景を超現実的な手法で描いた表題作。毎夜、部屋に飛び込んできて乱暴狼藉をはたらく老婆の目的とは・・・「刺繡靴および袁四ばあさんの煩悩」ほか、夢の不思議さを綴る夜の語り手、残雪の初期短篇全9篇に、訳者による作家論「残雪―夜の語り手」を併録。 ◆2018年5月刊 1600円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=パウル・クレー ◆河出書房新社(1991)の再刊
蒼老たる浮雲 残雪(ツァンシュエ) 近藤直子訳 棟続きの家に住む二組の夫婦。梶の木の花の匂いに心乱され、不審な行動をとる更善無を、隣家の女、虚汝華が覗き見ていた。夫の老况は生活能力のない男で、しじゅう空豆を食べている。女房の好物は酢漬けきゅうり。家の中では虫が次から次へと沸いて出て、虚汝華は殺虫剤をまくのに余念がない。二つの家の間に漲る敵意と疑念。ある夜、梶の花の残り香の中で、更善無と隣家の女は同じ夢を見た……。奇怪なイメージと支離滅裂な出来事の連鎖が衝撃を呼ぶ中篇『蒼老たる浮雲』に、初期短篇「山の上の小屋」「天窓」「わたしの、あの世界でのこと」を収録した残雪作品集。 ◆2019年7月刊 1700円(税別)[amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=パウル・クレー ◆河出書房新社(1989)の再刊
ヴィレット(上・下) シャーロット・ブロンテ 青山誠子訳 身寄りのない英国女性ルーシー・スノウは、自身の運命を切り開こうと決心して海峡を渡り、ラバスクール王国の首都ヴィレットへ辿り着いた。女子寄宿学校を経営するマダム・ベックに雇われた彼女は、誰一人知る者のない異国の街で、英語教師としての生活を始める。短気で独断的な教授や良家の子女からなる生徒たちに手を焼き、幼馴染との再会や、学内に出没する修道女の幽霊騒ぎなど、様々な出来事に心を揺さぶられながらも、ルーシーは次第に周囲の評価を獲得していく。それでもなお、彼女を苦しめる孤独は癒されることなく、胸に秘めた思いはさらなる葛藤を生み続けるのだった。運命に立ち向かう、内向的だが想像力に溢れたヒロインの心理的陰影に富んだ語りの魅力で『ジェイン・エア』以上の傑作と称され、ヴァージニア・ウルフからカズオ・イシグロまで、名だたる作家たちを惹きつけてきたシャーロット・ブロンテの文学的到達点。 「一人称の語りについてのほとんどすべてを私はこの小説で学んだ。プロットは『ジェイン・エア』の明晰な筋立てを欠いているが、この作品にはより豊饒で大胆な達成がある」――カズオ・イシグロ 「『ヴィレット』はシャーロット・ブロンテの時ならぬ死によって絶筆となった小説であり、彼女の作品の中では最も完成度が高い。(中略)「独創的な名画は独創的な名著と同じくらい得がたいものだ」と。『ヴィレット』はまさにそのような名著の一つである」 ◆2019年8月刊 各2000円(税別) [amazon上・下] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=リチャード・レッドグレイヴ/本文挿絵=ジョン・ジェリコー ◆みすず書房社(1995)の再刊
旅に出る時ほほえみを ナターリヤ・ソコローワ 草鹿外吉訳 《人間》が怪獣をつくりだした。合金の骨格に緑色の人工血液、生肉を動力源とする鉄製の怪獣17Pは、前肢の鑿岩機で地中を進み、また拙いながら人間のことばも話した。怪獣を創造した科学者、《人間》は自ら怪獣に乗りこみ、地下潜行試験を繰り返していた。一方、市内で発生したストライキを武力鎮圧した国家総統は独裁体制を推し進める。「旅に出る時ほほえみを・・・」人の痛みを知る金属製怪獣の歌う声が心に響く、現代のおとぎ話。 ◆2020年1月刊 1800円(税別)[amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=レオン・スピリアールト ◆サンリオSF文庫(1978)の再刊
フラッシュ 或る伝記 ヴァージニア・ウルフ 出淵敬子訳 イングランド南部の村で生まれたコッカー・スパニエルのフラッシュは、著名な女性詩人エリザベス・バレットへの贈り物として、ロンドンへやってきた。病弱でひきこもりがちな主人の家で、フラッシュは次第に都会の生活になじんでいく。そこで目にした主人エリザベスの恋愛、父親の抑圧、犬泥棒とスラム街訪問、イタリアへの駆け落ち……。犬の目を通して、19世紀英国の詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの人生をユーモアとウィットをこめて描いた、モダニズム作家ウルフの愛すべき小品。「犬好きによって書かれた本というより、むしろ犬になりたいと思う人によって書かれた本」。 ◆2020年6月刊 1600円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ヴァネッサ・ベル ◆みすず書房(1993)の再刊
まっぷたつの子爵 イタロ・カルヴィーノ 村松真理子訳 トルコとの戦争へ出かけたメダルド子爵は敵の砲弾で吹き飛び、まっぷたつに引き裂かれてしまう。体の左半分を失いながら奇跡的に一命をとりとめたメダルドは、右半身だけで領地に帰ってきた。しかし、その性格は以前とは一変、人々は半分になった子爵が村や森に落とす邪悪な影に怯え始める。《我々の祖先》三部作の第一作『まっぷたつの子爵』新訳。オムニバス版に書き下ろされた作者序文「一九六〇年の覚書き ◆2020年10月刊 1600円(税別) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=磯良一 ◆Uブックス・オリジナル 見えない人間 (上・下) ラルフ・エリスン 松本昇訳 「僕は見えない人間である」――町の有力者の集まりでバトル・ロイヤルに参加させられ、演説を披露した代償に、黒人大学の奨学金を貰った〈僕〉は、白人の理事を旧奴隷地区へ案内するという失敗を犯して大学を追い出されてしまう。学費を稼ぐためニューヨークへやってきた彼は、たまたま遭遇した立ち退き騒動で発揮した演説の才を見込まれて、民衆運動を組織するブラザーフッド協会の一員となるが……。不可視の存在となり、地下の「穴ぐら」で暮らす男の遍歴を描いた、20世紀アメリカ文学を代表する名作。全米図書賞受賞。 ◆2020年11月刊 2400円/2300円(税別)[amazon上・下] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=エドワード・マクナイト・コーファー ◆南雲堂フェニックス(2004)の再刊
小悪魔 フョードル・ソログープ 青山太郎訳 学校教師ペレドーノフは町の独身女性から花婿候補ともてはやされていたが、実は出世主義の俗物で、打算的で傲岸不遜な男。視学官のポストを求めて画策するが、町の人々が自分を妬み、陰謀を企んでいるという疑心暗鬼に陥り、やがて奇怪な妄想に取り憑かれていく。一方、少女にも見紛う美少年サーシャに惚れ込んだリュドミラは、無邪気な恋愛遊戯に耽っていたが……。ロシア象徴主義・デカダン派の作家ソログープが、地位に執着する男の悲喜劇、噂に踊らされる人々の姿を、毒のあるユーモアで戯画化して描いた傑作長篇。 ◆2021年5月刊 2640円(税込) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ミハイル・ヴルーベリ ◆河出書房新社(1972)の再刊
詐欺師の楽園 ヴォルフガング・ヒルデスハイマー 小島衛訳 金持ちで蒐集家のおばに引き取られた私は十五歳で絵を描きはじめた。完成した絵は不謹慎な題材でおばの不興を買ったが、屋敷を訪れていたローベルトおじは絵の勉強を続けるよう激励する。実はこのローベルトこそ、バルカン半島の某公国を巻き込み、架空の画家をでっちあげて世界中の美術館や蒐集家を手玉に取った天才詐欺師にして贋作画家だった。十七歳になった私はおじの待つ公国へ向かったが……。虚構と現実の境界を軽妙に突く、ゲオルク・ビューヒナー賞作家による知られざる傑作。 「これは別格の小説。何故これを書いたのは私ではないのか、考えはじめると口惜しくて夜も眠れない一冊」――佐藤亜紀氏 ◆2021年10月刊 1980円(税込) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ヤン・バプティスト・ウェーニクス ◆新潮社(1968)の再刊
魔の聖堂 ピーター・アクロイド 矢野浩三郎訳 18世紀初め、ロンドン大火後の都市再建計画の一環として、サー・クリストファー・レンの監督下に建設中の七つの教会に、異端の聖堂建築家ニコラス・ダイアーが秘かに仕掛けた企みとは。一方、現代のロンドンでは教会周辺で少年ばかりを狙った連続殺人が発生、有力な手掛かりもないまま深まる謎に、捜査を指揮するホークスムア警視正は次第に事件の奥底に潜む闇に呑み込まれていく……。円環する時間と重層する空間、魔都ロンドンの過去と現在が交錯する都市迷宮小説の傑作。ウィットブレッド賞、ガーディアン小説賞受賞。 ◆2023年12月刊 2750円(税込) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ウィリアム・ブレイク ◆新潮社(1997)の再刊
義とされた罪人の手記と告白 ジェイムズ・ホッグ 高橋和久訳 17世紀末のスコットランド、地方領主コルウァンの二人の息子は両親の不和により別々に育てられた。明朗快活で誰にでも愛される兄ジョージと、厳格な信仰をもつ母親のもとで陰鬱な宗教的狂熱の虜となった弟ロバート。自分が神に義認されあらゆる罪を免れていると信じるロバートは、17歳の誕生日に出会った不思議な力を持つ人物に唆されるまま、恐ろしい行為を重ねていく。変幻自在にその姿を変える〝謎の友人〟の正体は? そして政治的対立に揺れる議会開催中のエディンバラで、兄弟の宿命的な確執はついに衝撃の結末へ……。奇怪な事件の顚末が異なる視点から語られ、重層するテクストが読者を解釈の迷宮へと誘う。小説の可能性を極限まで追求し、アラスター・グレイらの現代作家にも多大な影響を与える、ゴシック小説隆盛の掉尾を飾る傑作にして早過ぎたポストモダン小説。(『悪の誘惑』改題) ◆2024年3月刊 予価2530円(税込) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆装画=ウィリアム・ブレイク ◆国書刊行会(1980)の再刊 ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件 ホルヘ・ルイス・ボルヘス / アドルフォ・ビオイ=カサーレス 木村榮一訳 黄道十二宮を用いたイスラム教の加入儀礼の最中に宗派の指導者が殺され、容疑をかけられた新聞記者。急行列車内で起きたダイヤ窃盗と殺人事件に巻き込まれた舞台俳優。雲南奥地の至聖所から盗まれた聖なる宝石を追ってブエノスアイレスへやって来た中国人魔術師の探索行……。身に覚えのない殺人の罪で投獄され服役中の元理髪店主イシドロ・パロディが、面会人が持ち込む数々の難事件を解き明かす。ボルヘスとその盟友ビオイ=カサーレスによる奇想と逆説に満ちた探偵小説連作集。 ◆2024年9月刊 予価1980円(税込) [amazon] ◆装丁=田中一光/片山真佐志 ◆岩波書店(2000)の再刊
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