【内容見本でみる国書刊行会 第16回】


アーカム・ハウスと国書刊行会、日米の特殊版元がタッグを組んだ
《アーカム・ハウス叢書》 全7巻 (1986-87)。
 



アーカム・ハウスはH・P・ラヴクラフトの死後、その作品集を刊行するため、オーガスト・ダーレスとドナルド・ワンドレイが1939年に創った出版社。社名はラヴクラフトの小説中に登場するニューイングランドの町アーカムに由来する。同社ではラヴクラフト作品のほか、クラーク・アシュトン・スミス、R・E・ハワード、フランク・ベルナップ・ロング、シーベル・クイン、カール・ジャコビ、H・R・ウェイクフィールド、W・H・ホジスンなど、《ウィアード・テールズ》 作家を中心に数多くの怪奇小説集を刊行してきた。レイ・ブラッドベリ、ロバート・ブロック、フリッツ・ライバーの最初の本を手がけたのも同社である。
《定本ラブクラフト全集》 でアーカム・ハウスと提携した国書刊行会が、同社のコレクションの中から7冊を厳選、練達の訳者を揃え、原書のデザインをいかした装丁で送り出した怪奇小説叢書。小B6判というハンディな判型は、早川書房 《異色作家短篇集》 旧版 (函入) を意識したものだという。

それぞれ独自の個性をもった怪奇作家が集められているが、当編集室のイチオシはM・H・ウェルマン 『悪魔なんかこわくない』。放浪のバラッド歌手 「銀のギターのジョン」 がアパラチア山地の村々で出会う怪異の数々を描いて、現在埋もれているのが勿体ない連作集。アーカム・ハウス創業者ダーレスの 『淋しい場所』 は、クトゥルー神話の大系化推進者とは別の一面を見せてくれる好短篇集 (なお、パンフには 「各務三郎訳」 とあるが、その後、森広雅子訳に変更されている)。なお、ラムレイ 『黒の召喚者』 訳者の朝松健氏は本叢書の企画者。叢書発刊時にはすでに編集をはなれて退社し、作家生活に入っていた。


《深夜画廊(ナイト・ギャラリー) 全3巻 (1982-83) は、怪奇小説やミステリのアンソロジスト、ピーター・へイニングが編集したヴィジュアルブック。A4判の大型本。

パンフはB5サイズの二つ折。赤地に緑の文字で、シリーズ名等がちょっと読みづらい。

『怪物世界 パルプマガジン―恐怖の絵師たち』
リー・ブラウン・コイ、ハネス・ボク、ヴァージル・フィンレイ、etc. パルプマガジンに躍った怪奇と幻想の黄金時代。今、甦る恐怖のノスタルジア!
『幽霊屋敷 絵と写真で見る西洋幽霊史』
鎖をひきずる古城の亡霊からマリリン・モンローの心霊写真まで! 本物か?偽物か?現実と虚構のはざまに現れる幽霊たちの6,000史。
『妖精異郷 アイルランドの妖精A.B.C.』
驚異と不思議の島アイルランド! 人と妖精が共に暮らす国。バンシーがレプラカーンが取り替えっ子(チェンジリング)がページの間を飛びまわる。
                                            

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