【内容見本でみる国書刊行会 第10回】


《ドイツ・ロマン派全集》 全10巻+別巻1 (1983-85)/ 第U期 全10巻+別巻1 (1989-92)
前川道介=責任編集。
 
ティーク、ホフマン、ノヴァーリス、ブレンターノ、フケー、ハウフ、アイヒェンドルフ、ジャン・パウル、シュレーゲル兄弟、グリム兄弟、ハイネ等々、ドイツ・ロマン派の主要作家・作品を網羅した画期的全集。第T期別巻の 『ドイツ・ロマン派画集』 も評判を呼んだ。
内容見本は小冊子形式。(第1期は造本を担当した杉浦康平+鈴木一誌。第2期は編集部作成。杉浦デザインの素晴らしさは言うまでもないが、図版の上に文字を白抜きでセットしたりするので、ときに読みにくくなるのが難)
「推薦のことば」 は川村二郎、高橋英夫、種村季弘、中野孝次、日影丈吉の各氏。
「かれらの豊富な幻想は生きることにほかならなかった。かれらの文学ほど純粋で同時に雑駁なものは類が無い。かれらの幻想があくまで人間的だからだ。それがわたしたち後代人に幻想する力と静かに生きる喜びを与えてくれる」(日影丈吉)
責任編集・前川道介氏の4頁に及ぶ 「刊行にあたって」 は、ドイツにおけるロマン主義の諸相を概観して読みごたえがある。

《ドイツの世紀末》 全5巻 (1986-87)

「世紀転換期のドイツ語文化圏の状況を 〈都市〉 の視点から立体的に捉え、再構成する初の試み」。
ウィーン (池内紀編)、プラハ (平田達治・平野嘉彦編)、ミュンヘン (三光長治編)、ベルリン (平井正編)、チューリヒ (土肥義夫編) の全5巻編成。装丁=田淵裕一。
内容見本は縦長の観音折スタイル。長4封筒に収まって、DMや本への投げ込みにもそのまま使えるこのタイプや三折タイプのものが次第に増えていく。(とくに巻数がすくないシリーズの場合)

他に 《ドイツ民衆本の世界》 全6巻 (1987-88) というシリーズもあり、1980年代のドイツ文学界における国書刊行会の業績は圧倒的である。
しかし、考えてみれば一方で 《フランス世紀末文学叢書》 《1945:もうひとつのフランス》 があり、《ロシア・アヴァンギャルド》 があり、スペイン語圏なら 《ラテンアメリカ文学叢書》 《スペイン中世・黄金世紀文学選集》、英米文学では 《ゴシック叢書》 《ヒロインの時代》、アジア圏では 《新しい台湾の文学》、さらには世界短篇文学全集ともいうべき 《バベルの図書館》、世界各国の現代文学を紹介する 《文学の冒険》 に至るワールドワイドなラインナップをみれば、世界文学は国書刊行会にあり、と言うこともできそうだ。
                                            

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