【内容見本でみる国書刊行会 第9回】


《ウィアードテールズ》 全5巻+別巻 (1984-88)。那智史郎・宮壁定雄編
ラヴクラフト、R・E・ハワード、ブラッドベリ、R・ブロック、マシスンら、多くの怪奇作家を輩出した伝説のパルプマガジン 《ウィアードテールズ》 の傑作怪作を年代別に編集、その判型、表紙、挿絵、広告、読書欄などを可能な限り忠実に再現したアンソロジー。別巻は、パルプマガジン入門、ウィアード・テールズの歴史、掲載作品リスト、挿絵画家紹介などの研究・資料篇。

推薦文は野田昌弘、中島河太郎、水木しげる、権田萬治の各氏。怪奇幻想文学ジャンルから選ばれていないのは、意外といえば意外。水木先生はどうやらパルプ雑誌とアメ・コミをごっちゃにされているようだが、「日本でもこういう大人の怪奇物が出てくると、怪奇劇画界も大いに発展すると思う。これこそ “ホンモノ” の怪奇物だ」 と太鼓判。これでいいのだ。
この内容見本、折角だからカラーにしてパルプマガジン独得の色づかいを見せたらよかったのに、とも思うが、シリーズ刊行を寿ぐコメントを寄せたウィアードテールズ作家の顔触れがすばらしい。


短篇 「三つの銅貨」 が第3巻に収録されているマリー・E・カウンセルマンは、上のコメントにあるように、同じ巻にWT誌の想い出を書き下ろしている。解説の那智史郎氏によると、カウンセルマンは日本びいきで、短歌や俳句に興味を持ち、「新古今和歌集」 から数篇を英語に訳しているとのこと。手紙には 「国書刊行会の美しい造本は私も知っています」 につづけて 「私はお金持ちではありませんが、旨い食事と良い本のどちらをとるかということがどういうことなのか、良く知っています」 とあったという。
なんでも 「高い」 と文句を言えばいいと思っている人は、すこしカウンセルマンさんを見習うように。

                                               

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