【内容見本でみる国書刊行会 第2回】


国書刊行会・海外文学部門の歴史はここから始まった――
《世界幻想文学大系》、ただし第1期 (1975-77) のパンフは手元に無いので、第2期 (1979-81) の内容見本小冊子。

中綴じ、全20頁の小冊子。国書刊行会では基本的に取次委託配本をせず、注文買切制をとっていたため、刊行前に読者の事前予約を集めるのが肝要で、シリーズごとにこの種の内容見本をつくっていた。書店に配布したほか、愛読者にダイレクトメールも実施した。

責任編集=紀田順一郎・荒俣宏氏連名の 「刊行にあたって」。これとは別に荒俣氏の6頁にわたるエッセー 「幻想文学における世界像拡大の歴史」 も収録されている。杉浦康平+鈴木一誌の凝りに凝ったデザインは国書の海外文学の造本イメージをつくり上げた。
推薦文は、渡辺一夫、寺山修司、中井英夫、窪田般彌の各氏。

全20頁のうち、イメージ図版の頁が10頁もある。普通なら許されない贅沢なつくり。

各巻内容紹介。この冊子では第30巻にコルタサル 『すべての火は火』 を予定していたが、のちに 『秘密の武器』 に差し替えられた。ヤン・ポトツキ 『サラゴサ手稿』 は某社から完全版 (国書版は冒頭約1/5の部分訳) 刊行の話が出てから、はや十数年の歳月が……。



つづいて 《世界幻想文学大系》 第3期 (1983-86) の内容見本。
開くとB2判のポスターになる仕掛け (下はその右上1/4の部分)。これも杉浦康平+鈴木一誌デザイン。書店用ポスターに、という目論見だったが、当時は国書刊行会の本を置いている書店が今よりさらに少なく、実際に貼ってくれた店がどれだけあっただろうか。




裏面には第1期〜第3期の各巻内容紹介が細かい文字でびっしり。推薦文は楠田枝里子・辻邦生氏というちょっと意外な取り合わせ。M・H・ニコルソン 『月世界への旅』、パオロ・ロッシ 『普遍の鍵』という研究篇を加えたのが第3期の特色だった。
ちなみに第37巻に予定されていたベン・ヘクト 『悪魔の殿堂』 は、諸般の事情により、結局レオ・ペルッツ 『第三の魔弾』 と差し替えになり、幻のタイトルとなった。「幻覚と妄想、暴力と性的倒錯の地獄を生きる主人公ファンタジアス・マレア――ジャーナリスト、シナリオ作家など幾多の職業を遍歴したヘクトがさながら精神病者の告白をつづるがごとき本書は、「遅れてきたアメリカ世紀末」 の所産ともいうべき傑作である」 というこの作品、ちょっと読んでみたいでしょ。

                                               

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