ドロシイ・L・セイヤーズ編 『探偵・ミステリ・恐怖小説傑作集』 第3



 3巻目になると、いきなり目次に馴染みのない名前が増える。とはいっても、カール・クローゼン、マージェリー・シャープ、アレックス・バーバーといった大方の読者には未知の作家も、戦前の 《新青年》 などには数作が紹介されているから、現在の知名度をそのまま当てはめることは早計であろう (戦前訳の邦題は原題とかけはなれたものも多く、正確を期すには1篇ずつ当ってみる必要があるのだが、いまはその余裕がない)。しかし、いずれにせよ、前の2巻に比べ、よりマイナーな作家が多く採られていることは否めない。おそらく第1・2集を編んだときに作成した候補作リストで、これまで選から漏れたものをベースに目次案が作られたのではないだろうか。(追記:りえぞん氏作成の 「ボルヘス推理小説書評集」 をみていたら、本書の評が載っていて、ボルヘスも同じ推理をしていた)


  • 邦訳が数種あるものは原則として現在入手しやすいものを採った。( ) 内は収録短篇集・アンソロジー、掲載誌。

  • 未訳作品は原題のままとした。戦前訳や雑誌掲載など一部未確認のものもある。


《Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror》 3rd Series (1934)
収録作品


(「犯罪オムニバス 第三集 序」 として 『推理小説の詩学』 研究社出版、に収録)

1 推理とミステリ

ステイシー・オーモニア 「至妙の殺人」 (《新青年》 1929年5月号) 
アレックス・バーバー 「Stain!
J・J・ベル 「弾丸」 (《ぷろふいる》 1934年3月号)
レスリー・チャータリス 「The Mystery of the Childs Toy
カール・クローゼン 「Poker-Face
フリーマン・ウィルズ・クロフツ 「踏切り」 (『クロフツ短編集2』 創元推理文庫)
セント・ジョン・アーヴィン 「The Brown Sandwich
J・S・フレッチャー 「The Judge Corroborates
R・オースティン・フリーマン 「歌う白骨」 (『ソーンダイク博士の事件簿』 創元推理文庫)
オーモンド・グレヴィル 「The Perfect Crime
ローレンス・カーク 「No Man's Hour
エセルレダ・ルイス 「Blind Justice」
G・R・マロック 「サキソフォン・ソロ」 (《新青年》 1936年2月増刊)
H・A・マンフッド 「Wilful Murder」
ジョン・ミラード「Member of the Jury」
バジル・ミッチェル「The Blue Trout」
アントニイ・パースンズ 「A Sleeping Draught」
ロバート・E・ピンカートン 「Wet Paint」
メルヴィル・デイヴィスン・ポースト 「手の跡」 (『アンクル・アブナーの叡智』 ハヤカワ・ミステリ文
   庫)

ガーネット・ラドクリフ 「アイルランド航路」 (《新青年》 1936年8月増刊)
マージェリー・シャープ 「Risk」
フレドリック・スケリー「怪光」(《新青年》 1937年2月増刊)
ハロルド・スティーヴンズ 「罅」(《新青年》 1930年2月増刊)
ヘンリー・ウエイド 「大学生の失踪」(《新青年》 1938年11月増刊)
E・M・ウィンチ 「扣紐」(《新青年》 1934年8月増刊)
ロエル・ヨウ 「Inquest」
フランシス・ブレット・ヤング 「A Busmans Holiday

2 ミステリと恐怖

A・J・アラン 「The 19 Club」
マーティン・アームストロング 「Sombrero
ジョン・ベチャマン 「Lord Mount Prospect」
アルジャナン・ブラックウッド 「ウェンディゴ」 (『ブラックウッド傑作選』 創元推理文庫)
アン・ブリッジ 「The Song in the House」
D・K・ブロスター 「Couching at the Door」
トマス・バーク 「唖妻」 (《別冊宝石》 108号)
A・M・バレイジ 「The Bargain
A・E・コッパード 「鼠:その幻想」 (『悪夢の化身』 ソノラマ文庫海外シリーズ)
オズワルド・クールドリー 「The Mistaken Fury
E・M・デラフィールド 「帰ってきたソフィ・メイスン」 (『怪奇小説傑作集2』 創元推理文庫)
ロード・ダンセイニ 「遥かなる隣人たち」 (《別冊宝石》108号)
ジェイムズ・フランシス・ドワイアー 「A Jungle Graduate
レオノーラ・グレゴリー 「特ダネ」 (《新青年》 1935年2月増刊)
アラン・グリフ 「The House of Desolation」
L・P・ハートリー 「島」 (『ポドロ島』 河出書房新社)
ウィリアム・フライヤー・ハーヴェイ 「Double Demon
マーガレット・アーウィン 「The Book
W・W・ジェイコブズ 「邪魔をした幽霊」 (『こびとの呪』東京創元社)
M・R・ジェイムズ 「ポインター氏の日記」 (『M・R・ジェイムズ怪談全集2』 創元推理文庫)
シリル・ランドン 「“Youll Come to the Tree in the End”」
ジョン・メトカーフ 「時限信管」(『死者の饗宴』国書刊行会)
J・C・ムーア 「Decay
クレア・D・ポレックスフェン 「Stowaway」
サー・アーサー・キラー=クーチ 「一対の手」 (『恐怖の愉しみ/下』 創元推理文庫)
R・エリス・ロバーツ 「The Hill
ナオミ・ロイド=スミス 「The Pattern
ハーバート・ショー 「死後の復讐」 (《新青年》 1938年8月増刊)
ヴィンセント・シーアン 「The Virtuoso
レディ・エリナー・スミス 「船を見ぬ島」(『怪奇小説傑作集2』 創元推理文庫)
サー・フレドリック・トリーヴズ 「The Idol with Hands of Clay
H・ラッセル・ウエイクフィールド 「防人」 (『恐怖の愉しみ/上』 創元推理文庫)
H・G・ウェルズ 「故エルヴシャム氏の物語」 (『ウェルズ傑作集2』 創元推理文庫/他)
ベン・エイムズ・ウィリアムズ 「Witch-Trot Pond
クラレンス・ウィンチェスター 「Anniversary

【参考文献】

  • Dorothy L. Sayers (ed.), 《Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror》 (Victor Gollancz, 1934)
    米版はThe Omnibus of Crime。ただし、分冊になった版もあるので注意が必要である。また、英版と米版では収録作品に若干の異同がある (上記のリストは英版のもの)。



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