【アンチクリストの誕生】

レオ・ペルッツ
垂野創一郎訳

ある夜不思議な夢を見たパレルモの靴直しは、夢判断によって生まれたばかりの子供が偽預言者アンチクリストだという確信を抱く。思い悩んだ男がとった行動は……二転三転する展開が読者を翻弄する表題中篇「アンチクリストの誕生」。他に、ロシア十月革命時の暗号解読を題材にした「主よ、われを憐れみたまえ」、代々月を恐れ憎んできた一族の物語「月は笑う」、降霊術奇譚「ボタンを押すだけで」など、全8編を収録。物語の魔術師レオ・ペルッツの魅力が凝縮された傑作中短篇集。
解説=皆川博子

◆ちくま文庫 2017年10月5日刊 900円(税別) [amazon] [honto]
◆装丁=山田英春 装画=遠藤拓人


「〈奔放なフィクション〉とはすなわち、大法螺です。〈根〉が充実しているほど、みごとな花が咲く。レオ・ペルッツはまさに、「花も実もある絵空事」を著す小説家であると思います。」――皆川博子(解説 より)

「収録された作品は長篇と同様に、息もつかせぬストーリーテリング、目を剥く奇想、運命との対決、読者の瞞着といったペルッツの特色が遺憾なく発揮されています。ペルッツをまだお読みでない方には、この本は格好のペルッツ入門となるでしょうし、すでにペルッツの長篇に親しんでいる方は、ミニチュアコレクションを愛でるように本書を愛でられると思います。」――「訳者あとがき」より

【収録内容】
「主よ、われを憐れみたまえ」
一九一六年十月十二日火曜日
アンチクリストの誕生
月は笑う
霰弾亭
ボタンを押すだけで
夜のない日
ある兵士との会話
 訳者あとがき
 解説 レオ・ペルッツの綺想世界  皆川博子

レオ・ペルッツ(1882-1957)
プラハ生まれのユダヤ系作家。18歳でオーストリアに移住。コルテスのアステカ征服に材を採った歴史小説『第三の魔弾』(1915)で注目を集め、ナポレオンのスペイン侵攻を背景にした『ボリバル侯爵』(20)、実験的な探偵小説『最後の審判の巨匠』(23)などの幻想的な歴史小説や冒険小説で人気を博した。ナチス・ドイツがオーストリアを併合するとパレスティナへ亡命。戦後の代表作に故郷の街プラハを重層的に描いた『夜毎に石の橋の下で』(53)がある。ボルヘス、カルヴィーノ、グレアム・グリーンらが愛読。物語の面白さを熟知したエンターテインメント作家であると同時に、その多重的な語りが注目され、1980年代以降、世界的な再評価が進んでいる。
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