【レオ・ペルッツの本】
テュルリュパン どこに転がっていくの、林檎ちゃん アンチクリストの誕生
最後の審判の巨匠 ボリバル侯爵 スウェーデンの騎士 聖ペテロの雪
夜毎に石の橋の下で 第三の魔弾
 

【テュルリュパン】
ある運命の話

レオ・ペルッツ
垂野創一郎訳

1642年、ルイ13世時代のパリ。宰相リシュリュー枢機卿は生涯最後の大仕事として貴族勢力の一掃を決意し、秘かに革命の陰謀をめぐらしていた。一方、運命がその企てを阻止するために選んだのはテュルリュパンという名の愚か者、自らを高貴の生まれと信じる町の床屋だった……。フランス革命の150年前に共和革命が画策されていた、しかもその首謀者は時の権力者リシュリューその人だった、という途方もない奇想。時計仕掛めいたプロットがきりきり動いて、物語は転がり落ちるように展開していく。ボルヘス、カルヴィーノ、グレアム・グリーンらを虜にした稀代のストーリーテラーによる伝奇歴史小説。付録として、同時代のペルッツ評価を刷新したアルフレート・ポルガーの『テュルリュパン』評を併録。

◆ちくま文庫 2022年4月刊 990円(税込) [amazon]
◆装丁=山田英春 装画=M!DOR!

レオ・ペルッツ(1882-1957)
プラハ生まれのユダヤ系作家。18歳でオーストリアに移住。コルテスのアステカ征服に材を採った歴史小説『第三の魔弾』(1915)で注目を集め、ナポレオンのスペイン侵攻を背景にした『ボリバル侯爵』(20)、実験的な探偵小説『最後の審判の巨匠』(23)などの幻想的な歴史小説や冒険小説で人気を博した。ナチス・ドイツがオーストリアを併合するとパレスティナへ亡命。戦後の代表作に故郷の街プラハを重層的に描いた『夜毎に石の橋の下で』(53)がある。ボルヘス、カルヴィーノ、グレアム・グリーンらが愛読。物語の面白さを熟知したエンターテインメント作家であると同時に、その多重的な語りが注目され、1980年代以降、世界的な再評価が進んでいる。
◆その他のレオ・ペルッツ作品



【どこに転がっていくの、林檎ちゃん】

レオ・ペルッツ
垂野創一郎訳

元オーストリア陸軍少尉ヴィトーリンは、大戦中にロシア軍の捕虜収容所で司令官セリュコフに受けた屈辱が忘れられず、彼と決着をつけるため、ウィーンからひとりロシアへと舞い戻った。革命後の混乱のなか、姿を消したセリュコフを探し求めて旅を続けるヴィトーリン。ロシアとヨーロッパを股にかけた壮大な追跡行の果てに、彼を待っていたものとは……。冒険につぐ冒険、若き日のイアン・フレミングが「天才的」と絶賛したペルッツ最大のヒット作。

◆ちくま文庫 2018年12月刊 予価950円(税別) [amazon]
◆装丁=山田英春 装画=タダジュン

「ペルッツの筆さばきに翻弄されるように、一気に読み進められずにはいられない。(中略) ラストは、空漠として、静謐で、救いがある。「冒険」の数々の残像が揺曳する。味わい深い物語を読んだという思いが押し寄せてくる」――ストラングル・成田氏(翻訳ミステリー大賞シンジケート

「復讐の旅が、周囲の人間を巻き込みながら大きな使命と化していく様は、現代的な冒険小説そのもの。発表から一世紀近くが過ぎた現在においても全く色あせない傑作だ」――小財満氏(本の雑誌3月号)

【アンチクリストの誕生】

レオ・ペルッツ
垂野創一郎訳

ある夜不思議な夢を見たパレルモの靴直しは、夢判断によって生まれたばかりの子供が偽預言者アンチクリストだという確信を抱く。思い悩んだ男がとった行動は……二転三転する展開が読者を翻弄する表題中篇「アンチクリストの誕生」。他に、ロシア十月革命時の暗号解読を題材にした「主よ、われを憐れみたまえ」、代々月を恐れ憎んできた一族の物語「月は笑う」、降霊術奇譚「ボタンを押すだけで」など、全8編を収録。物語の魔術師レオ・ペルッツの魅力が凝縮された傑作中短篇集。
解説=皆川博子

◆ちくま文庫 2017年10月刊 900円(税別) [amazon] [honto]
◆装丁=山田英春 装画=遠藤拓人


「〈奔放なフィクション〉とはすなわち、大法螺です。〈根〉が充実しているほど、みごとな花が咲く。レオ・ペルッツはまさに、「花も実もある絵空事」を著す小説家であると思います。」――皆川博子解説 より)

「収録された作品は長篇と同様に、息もつかせぬストーリーテリング、目を剥く奇想、運命との対決、読者の瞞着といったペルッツの特色が遺憾なく発揮されています。ペルッツをまだお読みでない方には、この本は格好のペルッツ入門となるでしょうし、すでにペルッツの長篇に親しんでいる方は、ミニチュアコレクションを愛でるように本書を愛でられると思います。」――「訳者あとがき」より

◆「読み手の予想を超えていく8編の幻惑譚に、ページを繰る手が止まらない」――池澤春菜氏評(朝日新聞 2017/11/5)
◆「奇想天外不羈奔放、苦くて甘いユーモアの果てに人間の運命の不思議と悲哀が横たわる」―― 土方正志氏評(読売新聞 2017/11/12)
WEB本の雑誌 牧眞司氏評
翻訳ミステリー大賞シンジケート ストラングル・成田氏評

【収録内容】
「主よ、われを憐れみたまえ」
一九一六年十月十二日火曜日
アンチクリストの誕生
月は笑う
霰弾亭
ボタンを押すだけで
夜のない日
ある兵士との会話
 訳者あとがき
 解説 レオ・ペルッツの綺想世界  皆川博子