○『ジョゼと虎と魚たち』
とてもよかった。
ボンズが有り余る作画力を日常芝居に投入するとこうなると言うか、久々にさわやかな感動を味わった気がする。
序盤で、ジョゼが室内を移動する様子をはっきり写さないのはなぜだろうと思っていたら、海辺のシーンで最大の効果を上げるためだったか。こういう計算された演出は大好き。
パンフレットから、気になったところ引用。太字は引用者による。
キャラクターデザイン・総作画監督 飯塚晴子インタビュー
-恒夫のデザインの最終的な決め手となったのは?
首の太さですね。鈴木(麻里プロデューサー)さんもよく言われていたんですが、首の筋肉の胸鎖乳突筋、その筋がセクシーでいいんですよって言われていて(笑)。
そういえば『リズと青い鳥』を観たとき、首がひょろっと細長いデザインが目を惹いたのだった。あれは、生々しさと非現実感の絶妙なバランスを追求した結果だったのだろうな、と思う。
コンセプトデザイン・loundrawインタビュー
-loundrawさんが感じた、本作の魅力を教えてください。
ジョゼや恒夫が、すごく人間らしいなって思うんですよね。アニメーションの登場人物は「キャラクター」になっていくもので、それは良い部分でもあればそうでない部分でもあると思うんです。ともすれば人間というより記号的表現になってしまうものもある中で、今回は本当にキャラクターが生きていて、悩みながらちょっとずつ前に向かっていくところが、実写っぽいけれどちゃんとアニメとして面白いものになっている。すごいバランスで成り立っているなと思います。逆に実写だとできない、現実世界のネガティブな側面を描いているのも新しいですよね。たぶん見え方としては恋愛ものに大別されると思うんですが、実際に描かれていることはもっと複雑で、「生きていくこと」そのものがちゃんと描かれている。恋愛映画を観たくて来たという方たちに、それ以上のものを持って帰っていただける作品になっていると思います。皆さんにもぜひ何度も観ていただいて、浸ってほしいです。
パンフレットはスタッフインタビューが充実していて、とても良い出来映え。欲を言えば、画面設計・川元利浩の仕事の詳細が知りたかった。それと、スタッフリストの字が小さすぎて読めないのは、決して私の老眼が進んだからではないと思う。
どうでもいい余談。
・恒夫が、まるで気にしてない舞を名前呼びするのはどうなのか。
・飛行機でメキシコに行くのに、恒夫の高所恐怖症はどうなったのか。
・エピローグの、家を解体するパワーショベルの描写に「ロボットアニメのサンライズ」の血を感じる。
今年は、海外アニメーション映画をよく観た年でもあった。
○『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』
世評の高いこの作品、WOWOWで放送してくれたのでやっと観られた。もっとファンタジーよりの作品かと思っていたら、ガチの極地探検ものだった。氷山に帆船が押し潰されるシーンの迫力と恐怖といったら、ちょっと類例がないほど。
○『羅小黒戦記』
これも世評の高い作品で、充実したアクションが素晴らしかった。
が、たまたま観た直後に「マイノリティの側が融和を求めるのはいかがなものか」という批判を耳にして愕然。
確かに、現実の政治に基づいて考えれば「チベットもウイグルもおとなしくしてろ」という話だもんな。そこまで思い至らなかった自分に、少しばかり自己嫌悪に陥った。
○『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』
十分に発達した人形アニメは、CGと見分けが付かない。
ライカの技術は、もはや袋小路に入りつつあると思う。
前回の『KUBO』もそうだったが、ライカ作品共通の欠点は、悪役にまるで魅力や説得力がないことである。そこをどうにかしない限り、せっかくの高度な技術も意味をなさないと思うのだが。
○『Away』
横浜での最後の上映回を滑り込みで観に行った。やはり劇場で観て良かった。ラトビアのアニメ作家ギンツ・ジルバロディスが1人だけで作った81分。緊張と静寂、それでいて躍動感に満ちた映画。
監督は『トゥモロー・ワールド』『イット・フォローズ』などを影響を受けた作品としてあげているが、私は『ライフ・オブ・パイ 虎と漂流した227日』を連想した。遭難ものという意味でもそうだが、途中のエピソードなどよく似ている。
パンフレットから、ギンツ・ジルバロディス監督インタビュー
-『Away』のカメラワークは本当に素晴らしいですね。特に「鏡の湖」のシークエンスはこの映画の最も美しいシーンの一つです。
GZ カメラというものはとても表現豊かなツールです。カメラの動かし方や動きを止めることは言葉のようなもので、僕はそれを探求することにとても興味を持っています。可能な限り少ないカットにして、代わりに長回しをしてカメラが漂いながら周囲を探求するように撮る。ワイドショットからクロースアップにカットするのではなく、カメラを近づけます。これによって観客はキャラクターの世界の中で隣にいるような感覚を得るのだと思います。
ただ、日本版エンディングは蛇足だった。こんな地味な映画、劇場公開にこぎつけただけで快挙だし、いろいろあるんだろうなとは思うが。
あとは、 『ホフマニアダ ホフマンの物語』『幸福路のチー』もWOWOWで観たけど、感想は特になし。
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