しばらく『ストレンヂア』の件にかかりきりだったのでなかなか更新できなかったが、いろいろネタがたまってしまったのでまた随時書き付けていく。
もう1ヶ月も前になるが、『銀魂』観てきた。
大変楽しかった。が。
まあこの作品に真剣にツッコミ入れてもしかたないのだが、あえて気になった点を2つほど挙げておく。なお私の本作理解は、基礎設定のみ頭に入れて『新訳紅桜篇』鑑賞→TVシリーズ一気観→『完結篇』という順序で、原作は未読。
まずひとつは、新八と神楽を戦場に連れてきてしまって良いのか?という点。『新訳紅桜篇』で顕著だったが、本作において新八と神楽は、銀時ら大人グループに対して、「庇護されるべき子ども」のポジションを堅持している。子どもを戦争に-つまりヤクザの喧嘩とは違う、殺したり殺されたりを前提にした場に連れてきていいのか?すでに手を汚している銀時らと違って、新八と神楽については、殺人を犯す描写は慎重に回避されてきたはずだ。もしも戦争に行って人殺しするのが成長であるという論法だったら、なおさら感心しない。完結篇と言っても、やっていいことと悪いことはある。
もうひとつも、この点に密接に関係している。実は『新訳紅桜篇』を観たときから気になっていたのだが、非人間型のエイリアンならばさばさ斬り殺して良いのか?神楽だってエイリアンだろうに。
つまりこの論点は、何をもって人とみなすか、という問題である。
そりゃ昆虫型の異星人なら、良心の呵責なくブチ殺せるだろうが、だからこそ、特に新八と神楽の扱いについては配慮が必要だったんじゃないかな。
ところで、神楽の語尾のことなのだが。
あれ、ぼちぼちポリティカリーにインコレクトな表現じゃないかと思うのだけれど、たまたま夏コミで買ったマンガ研究同人誌に面白い記事があった。
日本のマンガが中国語に翻訳されるときには、当然「アルヨ」は省略されてきた。ところが近年、中国のオタが作った『銀魂』二次創作には、神楽の語尾に「阿魯(正確には、魚の下は点々ではなく横棒)」という単語をつけている例が見られるのだそうだ。
『「阿魯」とは、中国語では意味のない造語で、日本語の「アル」と同じ発音の漢字で、「アル」の当て字として使われている』。
柯雯雯(KeWenwen)「『アルヨことば』はいかに翻訳されたのか -中国における『アルヨことば』の受容から考える-」『夏目マンガ調査班』vol.3
中国のオタコミュニティは、「アルヨことば」が日本における中国人のステレオタイプであることを知りつつ、キャラの萌え表現の一つとして受容している、と指摘している。
面白いものですな。
それはそうと、この同人誌で面白いのは留学生の書いた記事ばっかり。日本人学生、もっとがんばれ。つーか、いいかげん東浩紀の引用やめんか。
ついでにもうひとつ、映画ならではのネタとして話題を呼んだアレなんですけどね。
アレを目の仇にする人をしばしば見かけるけど、私にはその気分がよく解らない。そりゃ見てて楽しいとは思わないが、別段目くじら立てるほどのものとも思えないのだ。金払って映画観に来た観客を泥棒扱いしてるって?
じゃあ書店の万引き防止ポスターは、客を万引き犯扱いしているのか?
電車の痴漢防止CMは、乗客を痴漢呼ばわりしているのか?
その理屈は通らんでしょ。
あのCMが不要だという理路としては、以下が考えられる。
① 劇場内で盗撮は行われていない
② 盗撮は行われているが、被害額は問題とするほど多くない
③ 盗撮は行われており、被害も多大だが、CMに抑止効果が認められない
まあ想像だが、①はないだろう。
②は、日本の映画産業が年間に海賊版DVDによって被る被害額は約200億円だという。
http://www.eigakan.org/legal/
出典はやや怪しいが、無視していい額ではあるまい(なお、ググると盗撮防止法の是非に関する議論がかなりヒットするが、それらは私よりふさわしい人に任せる)。
③は、「抑止効果が認められない」ことを定量的に証明する必要があろう。
さらに言えば、「必要ない」のと「上映すべきでない」の間にはかなり大きな開きがある。もしアレが映画ファンの足を逆に映画館から遠ざけていると言うなら、それこそアレが原因で映画館の動員客数が統計的に有意に減少していると実証して頂きたい。
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