更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2011年12月
アートミックの血脈

近年の深夜アニメのエログロ描写のエスカレートぶりを見ていると、深夜アニメがOVAの末裔だということが実感できる。80年代末から90年代初頭のOVA爛熟期の状況にそっくりではないか。

私はちょうどその頃多感な(笑)時期だったので、アートミック作品には大きな影響を受けた。アートミックは、『メガゾーン23』と『ガルフォース』で一時代を築いたが、その後はヒット作に恵まれず97年にひっそりと倒産した。まさしくOVA時代を象徴するスタジオと言えるだろう。
アートミックの文化は、例えば東映がジブリに、虫プロがマッドハウスにその血脈を残したと言うような意味では、どこにも痕跡を残さなかった。その潔い消滅っぷりが実にバブルの申し子っぽかった。

と、思っていたのだ、つい最近までは。
んで話は冒頭に戻るが、消滅したと言うよりも、アニメ界全体がアートミック化してしまったという方が正しかったのかも知れない。
『ガルフォース』なんて、今なら間違いなく百合文脈で評価(消費?)される作品だし。

そのアートミック作品の中で、スプラッタ描写の極北に達したのが『ジェノサイバー 虚界の魔獣』('93)である。さすがの私も、リリース時に観たきりで一度も観返していない。実家のどこかにダビングしたビデオがあるはずだが。DVDどころか、LDさえ出ていないようだ。
この作品は容赦のないゴアシーンばかりが語りぐさだが、エロ方面でも凄かった。第4話に主人公夫婦のベッドシーンがあるのだが、これがとんでもなくえちい。
以下は真面目な話。断っておくが18禁アニメではない。描写自体はたいして過激ではないし、肝心な部分をはっきり見せているわけでもないのだが、(作画的な意味での)動きがもの凄くなまめかしいのだ。一度観ただけなのに今でも覚えているのだから、よほど名のあるアニメーターが手がけたのではないかと思っている。

それはさておき、過激な描写で客の歓心を惹くのは表現の末期症状である。スプラッタホラーがわずか数年で滅びた故事を思い起こして頂きたいものだ。

2011年12月25日(日)
『とらドラ!』BD-BOX

とりあえず新作『弁当の極意』だけ観てみて、やられた!と。
ひととおり原作も読んだので、新作映像があると聞いても、ああ、あのエピソードね、と思って正直言って舐めてたのよ。

まさかこういう風にアレンジしてくるとは。
弁当バトルのアイデアはそのままに、竜児と大河の関係をより深化させ、シリーズの後日談まで発展させる手際の巧みさ鮮やかさ。

『とらドラ!』の面白さは原作が優れているから(に過ぎない)という意見をときどき目にするが、私はそれに与しない。特に、こと最終回のまとめ方については、アニメ版の方が断然上だと思っているのだが、この新作を観てさらに惚れ直した。

「2000年代、僕たちには『とらドラ!』があった」。
2000年代が終わってもうすぐ丸2年になる。この10年に一度の傑作を超えるものが、次の10年に出てくるだろうか。

2011年12月23日(金)
『リアル・スティール』

なんかいろいろ忙しくてご無沙汰。

話題のロボットボクシング映画、観てきた。

『ロッキー4』ですな。最先端のトレーニング理論と大金を投じた設備で作り上げられた戦闘マシン・ドラゴと、古いジムで練習しひたすら走り込むロッキー。最新テクノロジーで武装したチャンピオンロボット・ゼウスに、昔ながらのボクシングのテクニックで挑むATOM。そういえばゼウスのオーナーはロシアの富豪という設定だ。
でも『リアル・スティール』のロッキーは、シャドーボクシングしかしないのであった。

この映画は父親と息子とATOM、という3者からなるが、根本的な欠点がここにある。親父と息子、どっちかが要らないよ。
どうしても父子の絆をドラマの軸に仕立てようとした結果、ATOMは単なる真似っこ機械になってしまっている。ボクサーATOMとセコンドの物語にしたければ、1対1の関係でなければ盛り上がらない。『ミリオンダラー・ベイビー』で、ヒラリー・スワンクの実の家族はろくでなしのクズばかりだったことを思い出そう。
どう考えても、チャンピオンとの決闘でズタボロになり、思わずセコンド役(親父でも息子でもいいが)がタオルを投げようとした瞬間、ただの機械だったはずのATOMが自分の意志で戦いを続行する!そして訪れる大逆転!
でなければダメだろう。
パンフのインタビューによると監督は、ATOMに心があるのかどうかわざと曖昧に描いたと言っているのだが、私には「人間の作った人型機械に魂が宿る」という思想を語ることへのためらいが感じられる。21世紀になって10年も経ったのに、まだそんなに心を持つロボットが恐いか?
実際、『アイアン・ジャイアント』は宇宙から来たという設定だったから実質ETのようなものだし、友好的な人工知能と言ったら『ナイトライダー』のキット君くらいしか思い浮かばない。人間型じゃないし(逆に車の姿だというのが、アメリカらしいと言えるかも)。

2011年12月12日(月)
『兄嫁はいじっぱり』

標題はエロゲ-原作の18禁アニメ。タイトルから想像されるとおりの内容ですが特筆すべきは、ベテランアニメーターの鈴木卓也・竜也兄弟が参加していること。
クレジット上は、竜也氏がキャラクターデザイン・作画監督。有名アニメーターがエロ作品を手がけること自体は別に珍しくないのだが、注目は卓也氏が絵コンテを手がけていることだ。このお2人は原画マンに徹するタイプのアニメーターなのか、絵コンテ担当は非常に珍しい。と言うか、作画wikiとか見る限りでは、卓也氏が絵コンテを描いているのはこの作品だけらしい(竜也氏の方は他の18禁作品で絵コンテあり)。
そういう意味で貴重な作品と言えなくもない。もちろん実力あるアニメーターが手がけているだけあって「実用度」も高い。

興味がわいて原作のエロゲーの方も少しかじってみたのだが、ひとつ感心したことがある。それは、シチュエーションの作り方。

ヒロインの兄嫁さん・舞は、生まれたばかりの赤ちゃんを抱えつつ花屋を切り盛りするしっかり者だが、夫が単身赴任で寂しい思いをしている。そこに同居している主人公とつい・・・・・・、という話なのだが、ソコに至るまでの描写の積み重ねが絶妙なのだ。

例えば、舞さんが疲れて居眠りしていると、赤ちゃんが泣き出してしまう。起こすと気の毒なので、赤ちゃんを2階の自室に連れて行ったり。
はたまた、舞が仏壇に向かって、亡き両親に対して悩みを吐露しているのを偶然聞いてしまったり。

この地に足が付いたというか、血の通ったシチュエーションの数々。
もしかすると人妻ものでは定番の描写なのかも知れないけど、「主人公が寝ていると妹(もしくは幼なじみ)が自室まで起こしに来て生理テント目撃で一悶着」みたいな十年一日のごとき描写を毎シーズン見せられている目には、大変新鮮に映ったのでありました。

2011年12月6日(火)
野球の話題まとめて

今シーズンの野球に関する話題をまとめて。

○ バレンティンはどういう選手だったか
5年ぶりくらいに信濃町ぼーどをのぞいたら、バレンティンをクビにすべきかという話題が出ていた。
私の見たところ、この議論は①今年はギャラに見合った働きをしたか?②来年は期待できるか?の2つの論点に分けた方がいいように思う。
先に私の結論を述べると、①今年は期待以上の働きをした。②来年はあまり期待しない方がいい。というもの。

バレンティンを批判する向きは、打率.228(リーグ24位。規定打席到達者中最低)を指摘する。それに対して、出塁率を挙げて弁護する向きがある。
ちょっと誤解されていると思うのだが、打率よりも出塁率の方が大事というのは間違いではない。しかし、当たり前だが普通打率の高い選手は出塁率も高いものである。だがそういう選手は給料が高いので、貧乏チームは雇えない。マネー・ボール理論が着目したのは、「打率の割には出塁率が高い選手がいる」という事実である。こういう選手は、旧来の基準では評価が低いので給料が安い。したがって、安上がりに得点力の高い打線が組める。
そこでバレンティンだが、出塁率.318(19位)というのはお世辞にも誉められた成績ではない。しかも長打率.469(規定により2位)、四球数61(5位)を記録しているのに、である。普通長打率の高い選手は、警戒されて四球が増えるので出塁率も高くなる傾向にある。それでこの出塁率の低さは、むしろいかにヒットが打てなかったかを証明するものであろう。
とはいえ、ホームランが多いだけあってチーム得点、ひいては勝利への貢献は大きい。RCAA19.62(9位) RCWIN2.29(9位)は立派なものだ。
http://shinbo89.blog115.fc2.com/blog-entry-851.html

年俸6500万円(推定)の選手としては十二分の働きと言えよう。
しかし。こちらのサイトでは、(更新が止まっているため8月28日時点だが)スイング率をまとめている。

http://www.baseball-lab.jp/11data_ba_p_4/

バレンティンのボール球のスイング率27.2%は、畠山の20.5%に比べて非常に高い。しかも畠山はボール球でも73.8%ものコンタクト率を維持しているのに対し、コンタクト率が44.8%と低い。したがってトータルの空振り率が15%と高い。畠山はわずか5.6%である。
つまりバレンティンは当たれば飛ぶが、ボール球に手を出しがちでしかも空振りの多い、非常に粗い打者である。まさにわれわれが知るバレンティンの姿そのものだ。
一般的に言って、統計数字はデータが多いほど蓋然性が高い。したがって、故障しているのでもない限り、シーズン終了時点でのこの数字がバレンティン本来の実力である可能性が高い。

三振が多いのは、長距離打者の宿命だという。それはそうだが、三振はランナーを進めることのできない価値の乏しいアウトだ。比べるのも恐れ多いが、全盛期の王は極めて三振の少ない打者だった。プロ入り14年目32歳のシーズンは、48本塁打に対して三振43と、三振よりホームランの方が多いという信じがたい成績を上げている。小野俊哉『プロ野球解説者のウソ』(新潮新書、2011年)62頁。これはいろいろ問題ある本だが、データはデータだ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E8%B2%9E%E6%B2%BB

なお1974年の出塁率.532、長打率.761 、OPS1.293は日本記録。

一方、畠山はRCAA33.97(3位) RCWIN3.97(3位)で堂々たる成績だ。栗原や阿部を上回る4番として申し分ない働き。年俸わずか4000万円、コストパフォーマンスという点を考えると日本一であろう。球界最安4番の面目躍如。


○ スワローズの得失点

http://number.bunshun.jp/articles/-/170601

今年のスワローズは、得失点差がマイナスでありながら貯金11で2位に入った。普通この現象は、勝つゲームは僅差だが負けるゲームは大敗するというやりくり上手なチームを意味する。しかし問題は、得点がリーグ1位で失点がリーグ5位-スワローズより失点が多いのは最下位のベイスターズだけ、という点だ。つまりスワローズがやっていたのは、「僅差を守り勝つ野球」ではなくて「打ちまくって相手より1点でも多く取って勝つ野球」だったのだ。これは我々の知るスワローズのチームカラーとは大分異なる。9月以降打線が低調になった結果、優勝を逃したのは、必然だったと言えるだろう。


○ 菅野のファイターズ入団拒否

http://number.bunshun.jp/articles/-/174132

この記事はみんなが不幸になったと言っているが、私は長い目で見ればそうでもないんじゃないかと思っている。プロ志望者にとっては、意中の球団に行けるとは限らないということが改めて明らかになった。人気球団が実力ある選手を一本釣りする傾向にも歯止めをかけた(ジャイアンツが4年連続で新人王を輩出しているというのは異常なことだ)。ドラフト会議の意義やあり方について議論が深まるなら、それもいい。なにより、ファイターズはドラフトの精神に則って筋を通す球団だということを満天下に知らしめた。これは必ずいい結果を生むだろう。


○ 宮本のゴールデングラブ賞
ゴールデングラブ賞が人気投票に過ぎないということはよく知っているが、いくら何でもおかしいだろう。宮本のアウト寄与率2.20は、レギュラー3塁手4人のうち下から2番目だ。トップの森野の2.60とは0.4もの開きがある。1試合あたり0.4個のアウトと言えば、単純計算で140試合では56アウト分となる。宮本は、森野より56人も余分にヒットを許し、ランナーを出したのだ。

2011年
           守備率 試合 刺殺 補殺 失策 併殺 アウト寄与率
1 宮本 慎也 (ヤ) .997   132   92  199   1   18     2.20
2 森野 将彦 (中) .968  140   110  252  12   17     2.60
3 村田 修一 (横) .963  144    95  248  13   17     2.38
4 新井 貴浩 (神) .946  138    84  215  17   14     2.17

2010年
1 村田 修一 (横) .969  143    85  229   10  21     2.20
2 宮本 慎也 (ヤ) .959  125    87  197   12  17     2.27
3 森野 将彦 (中) .952  143    97  283   19  31     2.66
4 新井 貴浩 (神) .952  144    83  232   16  12     2.19
5 小笠原 道大 (巨) .942 102    71  171   15  19     2.37

2009年
1 宮本 慎也 (ヤ) .993  118    68  197   2   16     2.25
2 新井 貴浩 (神) .973  144    86  279  10   24     2.53
3 小笠原 道大 (巨) .958 123    65  163  10   13     1.85
4 森野 将彦 (中) .934  141   100  254   25   17     2.51

一般に、野手は年齢とともに守備範囲が狭くなり、逆にエラーが減少する。かの長島も、69年(33歳)、73年(37歳)にリーグ最高守備率を記録している。宇佐美徹也『上原の悔し涙に何を見た』(文春文庫PLUS、2002年)、68頁。
もちろん守備率が高いのは、守備範囲の打球を堅実に処理できることだから悪いことではない。投手に安心感を与えもするだろう。しかし、野手の一義的な任務は、より多くの打球を処理しアウトを稼ぐことである。
宮本がチームの精神的支柱としてスワローズ若手選手たちを引っ張ったことは私だって解っている。だからベストナインの受賞には文句はない。だがゴールデングラブ賞は、守備の優秀者に与えられる賞だ。リーグで一番下手な選手に与えちゃいかんだろう。


○ 落合退任

http://number.bunshun.jp/articles/-/59778

8年間で4度も優勝しながら、観客動員は低下の一途。2010年の日本シリーズは1、2、5、6戦の地上波中継が行われなかった。何とか中継を行うために、テレビ局関係者が第1、2戦のデーゲーム開催を打診したが、これを一蹴したのが落合だったという。鷲田康「誰がプロ野球を殺すのか」『Number』766号、2010年11月、55頁。
落合は勝つことこそファンサービスだと言う。だがそのファンとは、一体どこにいる誰のことだったのだろう。
もちろん、観客の目は肥えていることが望ましい。だがそれは、客商売の人間なら口が裂けても言ってはいけないことだ。


○ アジアシリーズ
私は以前からクライマックスシリーズ推進論者である。今年のパ・リーグなど、CSがなかったらどれほど味気ないものだったか。
今年のCSは、成績不振のチームが日本シリーズに出るかも知れないという昔からの懸念を払拭するものだった。すなわち、レギュラーシーズンで圧倒的に強いチームは、短期決戦でもそうそう負けないということが実証されたのだ(以前の下克上チームは比較的僅差だった)。

その完全優勝のホークスは、最後の最後で画竜点睛を欠いた。
2001年当時のスワローズの守護神・高津は、肘痛が悪化し、歯を磨くのも辛い状態だった。だから日本シリーズを制したとき、胴上げ投手の高津が最初に考えたことは「これでもう野球やらなくていいんだ」だったという。
日本シリーズを終えた時点で、高齢の主力選手、特に故障持ちを休ませてやりたい気持ちはとてもよく解るのだが。いずれアジアシリーズを米国にまで広げ、真の世界一決定戦を行おうというビジョンがあるのならば、アジアシリーズにも本気で取り組む必要があるだろう。

○ 学術研究
川端浩一、金子公宥「日本と米国のプロ野球におけるボールの反発力について」『大阪体育大学紀要』第42巻(2011)という論文があった。
MLBとNPBの未使用ボール及び大学野球の中古ボールの反発係数を比較検討したもの。
その結果、
「1 メジャー球、日本球及び中古球の3種のボールの反発係数は、ボールの進入速度の増加とともに減少し、各ボールの反発係数eと進入速度との間に有意な負の相関が認められた。
2 日本球の反発係数は、メジャー球よりわずかに高く、「よく飛ぶ」傾向にあった。
3 メジャー球と日本球の反発係数は中古球より有意に高く、ボールの劣化による影響の大きいことが示唆された。」
しかしメジャー球と日本球の飛距離の差は、球速140km/h、45度の角度で上がった場合で80センチほどだった、とのこと。おかわり君が言うとおり、「違いなどない」が正解なのかも知れない。



忘れてたので追記
○ ガッツポーズ
沢村賞投手・田中に対しガッツポーズをするなと苦言。みんなの意見はこんな感じ。

http://number.bunshun.jp/articles/-/172792/feedbacks?per_page=10

私は別にいいんじゃないのと思うが、もっとはっきり言っちまや、どうでもいいよそんなもん。
教育のためというなら、全国の体育会の陰湿ないじめやら体罰やら裏金やら性暴力やら、なにより夏の高校野球の連投をまずやめさせろよ。立派な児童虐待だアレは。

バックナンバー