BS11で『新マン(略称は帰りマンでもジャックでもなくてこうだろう!)』を放映しているので、小学生の時以来30年ぶりに観ている。昭和47年生まれの私は、本作の再放送がウルトラシリーズの原体験になる。
さて、その29話『次郎くん怪獣に乗る』やどかり怪獣ヤドカリン登場の回。ウルトラマンこと郷秀樹は、MATの人工衛星の定期整備に赴く。
整備を終えて帰ってきたら、人工衛星が故障している。郷は何をしていたんだと隊員たちに責められることになる・・・。
怪獣が巣くっていたことが原因なのだが、これは日常的に起こりうる整備ミス、と考えることもできる。そこで私の本業から、このミスは何に起因し、どうすれば防止できるかを考えてみようという趣向である。以下ウルトラマンの話は全然出てこないのでそのおつもりで。
整備管理には5つの部門がある。作業管理、品質管理、訓練管理、標準管理および記録管理である。
まず、郷は一人で作業に出かけた。通常、整備作業は、作業員と検査員の二人を要する。作業員が作業を行い、その適否を検査員が判断して確認する。こうして品質を保証するのだ。これは品質管理の問題。
次に、郷が基地に帰ってきて初めて、衛星が機能していないことが判明する。作業を行ったのなら、機能試験を行って異常がないことを確認しなければならない。重要なのはそのように作業手順をあらかじめ定めておき、それを遵守すること。これを整備標準といい、その標準を適切に維持管理することを標準管理という。
帰還した郷を、隊員が「あそこも点検しなければならない時期だった」と責める。作業が終わってから「あれを点検したか」と確認するのでは失格。事前に教えてやらなければ意味がない!場合によっては、特殊技能や資格を持っている人の応援を頼まなければならない。となるとスケジュールの調整が要る。工具や器材の手配もしなくてはならない。今回の整備作業では何を整備し、そのために何が必要でどんな準備をしなければならないかを考えて計画を立て、関係者の了解を得る。これが作業管理。
「いつ点検しなければならないか」を決めておくのは前述の標準管理。そして、以前点検したのがいつで、次はいつ、何を点検するかを記録し、直ちに参照できるようにしておくのが記録管理。
そもそも郷には、整備を行う技術があったのか?その技術はどうやって付与され、誰が保証するのか?
一定の整備技術を身につけるには、学校教育やOJT(On the Job Training)を行う。その訓練項目と訓練要領は事前に定められ、資格を持った教官が指導し、試験などで技量を認定する。これが訓練管理。
これらを適切に行うことで、かなりの部分、人的ミスが防げる。その上で、経年劣化や設計ミスに起因する不具合に対処していく。その結果、一斉点検やリコールが発生することもある。新しい点検事項が追加されもするし、点検間隔が短くなることもある。それが整備標準の改訂や訓練内容に反映され、安全が保たれていくのである。
MATがISO9001を取得する日はまだ遠いようだ。
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