更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2007年11月28日(水)
アニメギガ 河森正治

しばらく本業の方が忙しくて更新できなかったが、今日で一段落。
録りだめていたこの番組を観られた。

河森氏といえば変型というわけで、そのデザインの秘訣を話してくれたのだが、何といっても圧巻はこの、レゴブロックで自作した試作モデル。



「マクロスゼロ」に登場した戦闘機のデザイン用だが、何が凄いって、ちゃんと設定通り変型するのだ!

 

バルキリー以来変わらない「実現可能性」へのこだわりは、オモチャ化前提のためというより、やはり工業デザイナーの血を感じる。河森氏本人の意向はともかく、河森メカがいち早く3DCG化したのは、このへんとも関係があるに違いない。
3DCG作画に切り替えたことでデザインそのものにフィードバックするものはないのか、ぜひ聞いて欲しかった。

2007年11月25日(日)
プレーオフの日程問題

昨年のプレーオフ後にも、「プレーオフのないセ・リーグは実戦から遠ざかるために日本シリーズで不利」という議論があり、私も少し言及したが、実際どのくらい違っているのか、新聞の縮刷版で調べてみた

結論から言って、大して変わらんよ。そんなつまらん心配よりも、改善しなきゃならん問題は山積のはず。

なお、「ダイ・ハード」の伏線対照表を一応完成。

2007年11月18日(日)
タトゥー

TATTO BURSTの新年号に、「COBRA生誕30年記念 寺沢武一インタビュー」が!

私は「身体髪膚 父母これを授く」という世代なので、この表紙が目にとまらなかったら一生手に取ることのなかったであろう雑誌。なぜゆえにタトゥー雑誌で?と思ったら、アメコミ調で入れ墨がカギになるエピソードがあるから、なのだそうで。
3ページちょっとだが、記事そのものはマンガ家になったきっかけから語り起こさせて、なかなかいい出来。以下「 」内は正確な引用でなく大意。

「家系に医者が多いので、自分も医者か薬剤師になるつもりだったが、当時の彼女が少女マンガの新人賞に応募していて、賞金100万と聞いて自分も描いて応募してみたら入選してしまったのがデビューのきっかけ」
「手塚プロの面接を受けて、会社に来いと言われたので採用されたと勘違いして、家財道具一式机からタンスまで送りつけたら、入りきらなかった荷物が社長室に積まれていた」
デジタル導入について、
「雑誌上では効果が再現できないと編集者に言われて、それは印刷技術が低いのだと激しくやり合った」
驚いたり納得したりしたのが、
「SF者と思われがちだが、実は時代小説が大好きで、司馬遼太郎と山本周五郎の大ファン。基本は義理と人情」
なるほど。

しかし、計算してみたら「コブラ」を発表したのが23歳の時なのですな。恐るべし。

2007年11月16日(金)
日活アクション

「日活アクション無頼帖」の上梓で最近話題になることの多い日活アクション映画だが、WOWOWで特集したので(こればっかし)、まとめて観た。「ジオブリーダーズ」でしか知らないというのは、映画好きとしてはまずいだろうと思って。

宍戸錠 「拳銃は俺のパスポート」('67) 
渡哲也 「紅の流れ星」('67)
赤木圭一郎 「紅の拳銃」('61)
石原裕次郎 「二人の世界」('66)

特に上の2作は、ヒロイン側の造形が出色で、素晴らしい。
ところでちょっと気になる点が。
「拳銃は俺のパスポート」の終盤で、最後の決戦を控えたジョーさんが、あり合わせの材料で手製の武器を造るシーンがあるのだが、これが「ルパン三世 ルパンVS複製人間」('78)のラス前のシーンにそっくりなのだ。
懐中時計を改造して時限爆弾を造るアイデアから、これが最後の詰め手になるところも同じ。材料を広げた机の上をパンしていくカメラワークも瓜二つ。
時期的に考えて、これは明らかなオマージュと見るべきだろう。

日活出身者で、「ルパン」に脚本で参加している大和屋竺のアイデアかと思ったら、ウィキペディアによると実際には吉川惣司一人の脚本なんだそうだ。

もちろん、パクリだなどと言っているのではなく、アニメもまた膨大な映画的記憶の上に成立していると言いたいのである。

11/18追記。「紅の流れ星」って、ジャン・ギャバンの「望郷」('37)だよな。

2007年11月11日(日)
OVA版「戦闘妖精雪風」

ブッカー少佐の最後のセリフが、ずっと気になっていた。
「あいつが死んじまったなんて、どうしても思えないんです。今も、どこかで元気に暮らしている。そんな気がして、しょうがないんですよ・・・」
引っかかっていたのは、「どこかで元気に暮らしている」という言い回し。なぜブッカーは、「どこかの空を飛んでいる」と言わなかったのだろう。空に魅入られた男・深井零に手向けるにはこの言葉こそふさわしいだろうに。

本作は、不可解なラストシーンで終わる。ブッカー少佐が、いつも通りの作戦ブリーフィングを行い、零は多くのパイロットに混じってそれを聞いている。最後にブッカーはいつもの決まり文句「必ず生還しろ。これは命令だ」を口にし、それを聞いた零は微笑して出撃していく。

最近、設定資料集「なをもつかぜのほん」に掲載されていた、最終話の初期脚本を読んだ。
零は、雪風と一心同体の戦闘知性体となり、ジャムと戦い続けることを選ぶ。

前述のラストシーンは一見回想シーンのようであり、私も長らくスルーしていたのだが、これがジャムが作り上げた仮想の戦場で、零が今現在経験していることだとしたら?零と雪風は、異質な知性体であるジャムの好奇心を満足させるためだけに、今も戦い続けているのである。

以上は、発表後すぐに話題になっていたこと。ここで冒頭のセリフの問題に戻る。

ブッカーの目で見れば、零と雪風の戦いは、永遠に続く地獄の責め苦である。
だからこそブッカーは、「零は今も飛んでいる」と口にすることができなかった。それはあまりにも酷い想像だから。
だが、同時にブッカーは、零と雪風にとってはそれが幸福であることも知っている。ブッカーが、雪風から零を奪い取ることができなかったのも、それが理由であろう。

小説「戦闘妖精雪風」は、異質な知性同士の(ディス)コミュニケーションを描いた物語だが、OVA版はそれに男たちと機械との三角関係のドラマを加えてみせたのである。

2007年11月5日(月)
ネオン

最近、「ガン×ソード」を観直し始めた。

映画からの引用という切り口で何か語れないか、と思っていたのだが、見つけたのはこんなのだけだった。



主人公ヴァンの登場シーンで、「VACATION」のネオンが一部壊れて、「VAN」になるというお遊び。
これは、映画の中では結構ポピュラーな技法である。私の覚えのあるものから、2つ3つ挙げてみた。
「バットマン リターンズ」('92)の、キャットウーマン誕生のシーン。「HELLO THERE」が壊れて、「HELL HERE」に。


「ロボコップ」('87)より、ガソリンスタンドが爆発するシーンで、SHELL石油のSの字が吹っ飛んで「HELL」になる。


これは劇場公開時には既に有名な話だったのだけれど、画面上はコマ送りしないとわからない。さらにモトネタは007映画なのだそうだが、そっちは未確認。

画像は発見できなかったが、ポール・ニューマン主演の「傷だらけの栄光」('56)にもいいシーンがある。腕っ節は強いが口下手な主人公が、親友に「彼女に電話してやれ」と励まされて送り出されるシーンで、「HOTEL」のHOがちょうど隠れて、「TEL」になるのである。

これは文字ではないが、ネオンサインによる心情描写として有名な「王立宇宙軍」('87)のワンシーン。


1人酒を飲むシロツグの背後で、ネオンが代わりに涙を流す。

おまけ。玄鉄絢「少女セクト」より。背後の看板に注目。

2007年11月1日(木)

個人的に今一番注目している中村健治監督のTVシリーズ初監督作・「モノノ怪」のDVDを買った。その特典のブックレットに、キャラクターデザイン・総作画監督の橋本敬史氏のインタビューが載っているのだが、面白い記述があった。

『−「モノノ怪」のキャラクターの見どころは?
「(略)一番こだわっているのは「歯」をしっかり描くことですね。口の中の「歯」を描くとシンプルな絵でも生々しくなるんです。声優さんのしゃべりと、口の動き、歯の動きをしっかり合わせて描いて、キャラクターの実在感を強調しています。」』

アニメキャラクターの歯といえば、「涼宮ハルヒの憂鬱」12話「ライブアライブ」で、ライブシーンでハルヒの歯が描き込まれている事が、一部で話題になっていた。ハルヒは決して「シンプルな描線のキャラ」ではないが、あのライブシーンの躍動感は、歯の描写が一役買っていたに違いない。

なぜ歯を描くと生々しく見えるのだろう。口腔の奥行き・立体感が表現できる、という理由もあるだろうが、もっと重要な理由は歯の機能にあるような気がする。歯というのは、獲物を捕らえ、食物を摂取するための極めて重要な器官である。だから、歯の存在自体が、生命力の発露のように感じるのではないだろうか。


以下は余談で、災害派遣で墜落事故の現場に出向いた同僚から聞いた話。ちょっとグロなので、食事中の方はご注意ください。

その同僚の属する班は、遺体の収容にあたることになった。遺体といってもこっぱみじんなので、要は肉片を拾って歩くのである。一つも見逃してはならないというので、林の中をずっと地面を見つめて歩いていた。疲れて、ふと周りを見て初めて気がついた。

樹の幹に、点々と歯が突き刺さっていたそうである。

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