【ロンドンの見世物】
The Shows of London
全3巻

リチャード・D・オールティック


パノラマ、ディオラマ、魔術幻燈、自動人形、蝋人形、動物見世物、万国博覧会――17世紀から19世紀英国の見世物と娯楽施設の歴史を、豊富な図版資料と興味津々のエピソードで紹介。近代ヨーロッパ大衆の想像力を絵解きする社会・文化史の金字塔。

◆小池滋監訳 井出弘之・高山宏・浜名恵美・村田靖子・森利夫訳
◆国書刊行会

◆A5判・上製ジャケット装
◆装丁=平野甲賀


縁日【フェア】の社会学

小池 滋

 ある国の国民性が何たるかを知りたければ、その国の公衆展示物を見るがよい――これは冗談ではない。19世紀イギリスの (おそらく) 知識人が大真面目に強調していたことであった。だから、少なくともイギリスにおいては、展示物の歴史は、とりもなおさず国民文化の歴史であると言っても、間違いではない。

 アメリカの碩学リチャード・オールティックがこの大著の中に盛り込んだものは、まさに中世末期から19世紀中葉に至るまでの、ロンドンの展示物である。縁日の大道芸人が客を呼び込む見世物から、異国の珍品、フリーク、科学を使った七不思議、光学の詐術、そして後に大英博物館を形成したコレクションなどなど。演劇以外のすべてのショーが光あやなす魔力によって現代の読者を魅惑する。

 あらゆる時代のロンドン市民の飽くことなき好奇心と、その記録を徹底的に追究する著者の熱烈な学者魂とが合体して、この宝庫をつくり上げた。いまでは珍らしく貴重な当時の図版を豊富に挿入して、(本書に登場する主人公たちの言葉を借りるならば) 「おもしろくて、ためになる」 知の博物館が、いま門戸をここに開く。


第T巻

産業革命と植民地経営によって、未曾有の繁栄を誇ったイギリスはまた、世界随一の見世物王国でもあった。中世末期から19世紀にかけてロンドンで興行され、人々を夢中にさせた見世物、娯楽施設の数々を、同時代の証言と貴重な図版で紹介。〈見る〉〈集める〉という行為に憑かれた近代ヨーロッパ大衆の想像力を絵解きする見世物大百科。

第1巻は、教会の聖遺物、収集家の珍品キャビネットの英国見世物史の濫觴から、学者豚、蝋細工、覗きからくり、自動人形など、あの手この手の見世物興行、ロンドン塔、ウェストミンスター寺院、ベドラム精神病院などのロンドン名所案内、遊園地が催す噴水ショー、花火、気球の打ち上げ、ロイヤル・アカデミー美術展の開催、エイドフュージコン、ロンドン名物コロシアムの巨大パノラマの登場まで、17世紀初頭から18世紀の英国見世物業界の活況ぶりを生き生きと描く。

1989年12月刊 本体4500円 [amazon]

[目次]

第1章 キャビネットから博物館へ 1600-1750年
第2章 キャビネットから博物館へ 1750-1800年
第3章 妖怪変化屋ならびに世にも不思議な見世物師たち
第4章 蝋細工と時計仕掛け
第5章 機械仕掛けの発明展
第6章 水、火、空気と天の寝台
第7章 18世紀ロンドンの名所と行楽地
第8章 アート・オン・ディスプレイ
第9章 エイドフージンコン
第10章 レスター・スクエアのパノラマ
第12章 歓楽宮のパノラマ


第U巻

世はまさにパノラマ時代。巨大なカンバスに写し出される世界の町々、アルプスの山々、最新の戦場光景。ディオラマ、動くパノラマ、コズモラマと、次々と現れる新機軸に、幽霊ショーでロンドン市民を恐懼せしめたファンタズマゴリアも上陸。東洋の珍品、古代遺宝を並べ立てたブロックのエジプシャン・ホールが異国趣味、古代幻想をかきたてれば、新大陸やアフリカから連れてこられた「高貴な野蛮人」や、フリーク・ショーが一世を風靡する。動物園には世界の珍獣奇獣が集められ、マダム・タッソー蝋人形棺は大入満員。大英帝国の繁栄の下、ますます巨大化・多様化する見世物興行の数々。

1990年2月刊 本体4175円  品切 [amazon]

[目次]

第13章 ディオラマ
第14章 パノラマ百態
第15章 パノラマ劇場
第16章 動くパノラマ
第17章 光学、機械、幽霊
第18章 幕間−見世物とロンドンの市民生活
第19章 ウィリアム・ブロックとエジプシャン・ホール
第20章 高貴な野蛮人再考
第21章 古代趣味と異国趣味
第22章 動物王国における生と死
第23章 動物園と遊園地
第24章 蝋人形と肉体芸術


第V巻

19世紀のめざましい技術革新は見世物の世界にも変化をもたらした。自動オーケストラ、詩作機械、「姿なき少女」など、新奇な機械仕掛けの数々が人々を驚倒させ、天文学ショーやファラデーの公開科学講座が、教育と見世物を結びつける。戦場や都市の精巧なミニチュア模型、ワイルドの大地球儀、「モンブラン登頂」ショーが、大英帝国の版図拡張に沸く国民の異国への好奇心をかきたて、大英博物館など公共施設の開放が国会で審議される。そしてハイド・パークの「ガラスと鉄の殿堂」水晶宮の下、世界中の人・物・情報を集めた世紀の大イベント――1851年ロンドン万国博覧会の開催。その未曾有の盛況ぶりにヴイクトリア朝見世物産業の変遷を追う。付年表・総索引。

1990年6月刊 本体4175円 [amazon]

[目次]

第25章 またまた機械仕掛けの見世物
第26章 科学のふたつの顔
第27章 大衆のためのテクノロジー
第28章 手工芸品と模型
第29章 民衆に開かれた美術
第30章 幕間−見世物産業の内幕
第31章 国家的モニュメント
第32章 水晶宮の年−1851年
第33章 50年代I 新しいライフ・スタイルとパノラマの衰退
第34章 50年代II 旧き秩序は移ろう
見世物年表
総索引


リチャード・D・オールティック (1915-2008)
アメリカの英文学者。オハイオ州立大学名誉教授。他の邦訳に『ヴィクトリア朝の緋色の研究』『二つの死闘』(以上、国書刊行会)、『ヴィクトリア朝の人と思想』(音羽書房鶴見書店)がある。

 

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