―今日は何の日―
【5月】

5月1日
◆1902年のこの日、黒沼健 (本名・左右田道雄) が横浜市で生まれる。父親は経済学者で銀行家の左右田喜一郎。戦前から翻訳家として活躍し (セイヤーズ 『大学祭の夜』 他)、戦後も 『幻の女』 『黒衣の花嫁』 を始めとするアイリッシュ/ウールリッチ作品、ブレイク 『野獣死すべし』、ワイルド 『検屍裁判』、ポストゲイト 『十二人の評決』 など、多くの作品を手がけている。〈オール讀物〉 に連載した世界の不思議や秘境についての実話読物も好評を博し (三島由紀夫や開高健も愛読者だったという)、『秘境物語』 『謎と怪奇物語』 『予言と怪異物語』 など十数冊にまとめられた。東宝怪獣映画 《空の大怪獣ラドン》 《大怪獣バラン》 に原作も提供している。
◆1939年のこの日、コミックブックのヒーロー、バットマンが 〈ディテクティヴ・コミックス〉 27号で初登場する。「化学会社事件」 と題されたこのエピソードで、バットマンは会社重役から殺人者に転じたアルフレッド・ストライカーと闘い、最後は彼を酸のタンクへ放り込み、こうつぶやく。「やつにはお似合いの最期さ」


5月2日
◆1844年のこの日、東洋幻想譚 『ヴァテック』 の作者ウィリアム・ベックフォードが死去。西インド諸島の砂糖黍農園がもたらす莫大な収入をもとに築きあげた夢の宮殿フォントヒル・アベイも、農園経営の悪化と共に人手に渡り、長く寂しい晩年を過ごしていた。
◆1905年のこの日、『毒薬の小壜』 でMWA賞に輝いたサスペンスの名手シャーロット・アームストロングが、ミシガン州ヴァルカンで生まれる。『ノックは無用』 はマリリン・モンロー主演で映画化された。
◆1946年のこの日、テイ・ガーネット監督、ラナ・ターナー主演の 《郵便配達は二度ベルを鳴らす》 が公開される。《キル・ビルVol.2》 で、敵役のビルが金髪好きになったのは子どものときこの映画を見てから、という話が出てくるように、ラナ・ターナーは1940-50年代ハリウッドを代表するブロンド美人で、この映画の悪女コーラ役はさらに彼女の人気を高めた。当時のペイパーバックの煽情的な表紙には、ラナ・ターナー風の美女が多数登場しているという。
◆同年同日、サンフランシスコ湾のアルカトラズ監獄で囚人の暴動が発生。鎮圧には機関銃とバズーカ砲、催涙ガスで武装した海兵隊2部隊を必要とした。2日後、看守2名、囚人3名の死者を出して騒ぎは収まった。
◆2015年のこの日、ルース・レンデルが死去。享年85。
5月3日
◆1901年のこの日、ジョン・コリアがロンドンで生まれる。父親も作家、曽祖父は国王付きの侍医であった。詩人として出発し、英国留学中の西脇順三郎とも交友があったが、奇想長篇 『モンキー・ワイフ』 や、洗練されたスタイルのブラック・ユーモアに満ちた短篇で有名になった (代表作を集めた短篇集 『ナツメグの味』 を是非ご賞味されたし)。植物怪談 「みどりの想い」 は怪奇小説アンソロジーの定番。ミステリ・アンソロジーでお馴染みの 「クリスマスに帰る」 は 《ヒッチコック劇場》 でドラマ化された。ハリウッドでは脚本家として活躍、ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘップバーン主演の 《アフリカの女王》 (51)は、もともとはC・S・フォレスターの原作を読んで感銘を受けたコリアがワーナー社に映画化を提案、自ら脚本を執筆したもの。しかし、巨額の製作費が障害となって結局同社は企画を断念、紆余曲折の末、ジョン・ヒューストンが映画化権を買い取り、ジェイムズ・エイジーと共にコリアの脚本を書き直して、実現にこぎつけた。
5月4日
◆1891年のこの日、スイスのライへンバッハの滝で、「犯罪界のナポレオン」 モリアーティ教授がシャーロック・ホームズと格闘中に滝壺に転落、死亡。ホームズはそのまま姿を消す。

5月5日
◆1906年のこの日、『死体をどうぞ』 『火の玉イモジェーヌ』 などのユーモア・ミステリの作者シャルル・エクスブラヤが、フランス南東部のサンテチエンヌで生まれる。
◆1959年のこの日、創元推理文庫が創刊。第1回配本は、ガストン・ルルー 『黄色い部屋の謎』 (120円)、A・A・ミルン 『赤い館の秘密』 (100円)、ロス・マクドナルド 『兇悪の浜』 (120円)、S・S・ヴァン・ダイン 『ベンスン殺人事件』 (120円) の4点。ただし5月5日は奥付の日付。東京創元社の年表には4月創刊とある。実際には4月下旬に配本されていたものか。
◆1985年のこの日、カーター・ブラウンが死去。
◆1999年のこの日、中島河太郎が死去。

5月6日
◆1868年のこの日、ガストン・ルルーがパリで生まれる。密室ミステリの古典 『黄色い部屋の謎』 (1907) は絶大な人気を博し、新聞記者探偵ルルタビイユ・シリーズは全8冊をかぞえ、パリのオペラ座の地下に棲む仮面の怪人の奇怪な愛の物語 『オペラ座の怪人』 (1910) は何度も映画化・舞台化された。
◆1893年のこの日、マーガレット・イザベル・ポストゲイト、のちのG・D・H・コール夫人がケンブリッジで生まれる。ケンブリッジ大学を卒業後、フェビアン協会 (社会主義団体) 等で働き、経済・政治・教育などに関する多数の著書がある。夫G・D・H・コールは著名な経済・社会学者。『十二人の評決』 のレイモンド・ポストゲイト (やはり本業は社会学者) は3歳下の弟。『百万長者の死』 (1925) 以下、長篇・短篇集あわせて30冊以上に及ぶ探偵小説の夫婦合作は、おもに夫ジョージがプロットをつくり、マーガレットが執筆したと云われている。
◆1897年のこの日、木々高太郎こと林髞が山梨県甲府市で生まれる。慶應大学医学部卒業後、生理学研究室に入り、1932年にソビエトに留学、条件反射研究で有名なパブロフに師事する。1934年、〈新青年〉 に 「網膜脈視症」 を発表、「完全犯罪」 の小栗虫太郎とともに、二大新星現る、と大きな注目を集めた。
◆1915年のこの日、オーソン・ウェルズがウィスコンシン州ケノーシャで生まれる。20世紀映画界最大のトリックスター (にしてトラブルメイカー)。1938年に演出したラジオ・ドラマ 《宇宙戦争》 では、火星人侵攻を現実のニュースと思い込んだ人々が全米にパニックを引き起こし、彼の名を一躍有名にする。《第三の男》 の犯罪者ハリイ・ライム役は絶賛を浴び、フィルム・ノワールの傑作 《上海から来た女》 《黒い罠》 を監督、自ら出演もしている。また、名作 《市民ケーン》 は 「薔薇のつぼみ」 というダイイング・メッセージの謎をめぐる物語でもある。70年代後半には、怪奇小説やミステリの古典 (「猿の手」 やコリンズ 「恐怖の寝台」 など) を映像化したTVシリーズ 《オーソン・ウェルズ劇場》 のホスト役もつとめている。
◆1964年のこの日、佐藤春夫が死去。

5月7日
◆1865年のこの日、『薔薇荘にて』 『矢の家』 で長篇探偵小説黄金時代の先鞭をつけたA・E・W・メイスンがロンドンで生まれる。冒険小説の古典 『四枚の羽根』 は何度も映画化された。上記2作以外のアノー探偵物の長篇では、『オパールの囚人』 (戦前訳あり) が悪魔崇拝や黒ミサを題材にとりあげた作品で、J・D・カー、ジュリアン・シモンズらが推奨している。
◆1931年のこの日、〈新しい太陽の書〉 4部作、『ケルベロス第五の首』 のジーン・ウルフがニューヨーク市に生まれる。
◆1933年のこの日、横溝正史が肺結核のため喀血。翌34年には執筆を停止して信州上諏訪に転地、療養生活に入る。
◆1940年のこの日、『夜ごとのサーカス』 『ワイズ・チルドレン』 のアンジェラ・カーターがイングランド南東部イーストボーンで生まれる。1969年から72年まで日本に滞在、一時、銀座のバーでホステスもしていた、というのは有名な話。ちなみに日本にやって来たのは、《Several Perceptions》 (68) で獲得したサマセット・モーム賞の授賞条件が、「一定期間海外で暮らすこと」 で、その渡航先に選んだ日本が気に入って、そのまま居ついてしまったらしい。
◆2013年のこの日、特撮監督レイ・ハリーハウゼンがロンドンで死去。享年92。《猿人ジョー・ヤング》(49)で特撮の神様ウィリス・オブライエンのアシスタントとなり、その特殊効果のほとんどを手掛け、親友レイ・ブラッドベリ原作の 《原子怪獣現わる》(53)で本格デビュー。《世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す》(56)、《地球へ2千万マイル》(57)、《シンドバッド七回目の冒険》(58)、《アルゴ探検隊の大冒険》(63)
《恐竜100万年》(66) などの作品でストップモーション・アニメの第一人者として活躍。《タイタンの戦い》(81)が最後の作品となった。
5月8日
◆1928年のこの日、澁澤龍彦が東京市芝区高輪車町で生まれる。江戸時代後期に財を成した渋沢一族の出身(一族の支流からは明治の大事業家・渋沢栄一、その孫で民俗学者としても有名な渋沢敬三が出ている)。『黒魔術の手帖』 『毒薬の手帖 』は 〈宝石〉 の連載、『秘密結社の手帖』 は 〈エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン〉 の連載だった。〈日本読書新聞〉 に連載されたミステリ時評 「推理小説月旦」 (『快楽図書館』 学研、所収) もある。
◆1985年のこの日、シオドア・スタージョンが死去。
◆1988年のこの日、ロバート・A・ハインラインが死去。かなり作風は異なるが、この同じ日に亡くなったSF作家二人は親友同士で、新作のアイデアにつまったスタージョンがハインラインからネタをもらった、という逸話もある。
◆1993年のこの日、アヴラム・デイヴィッドスンが死去。遺体は火葬に付され、太平洋に散骨された。スタージョンとデイヴィッドスンは、ともにエラリイ・クイーンのゴーストライター (正確にはマンフレッド・リーに代わる合作協力者) を務めたことでも知られている。
5月9日
◆1888年のこの日、「赤い館」 「防人」 「ゴースト・ハント」 などの怪奇小説家ハーバート・ラッセル・ウエイクフィールドが英国ケント州の小村イーラムで生まれる。
◆1931年のこの日、ジャン=バティスト・ロッシがマルセイユで生まれる。18歳で発表した小説 『不幸な出発』 (1950) は注目を集め、早熟の天才、「10代のフローベール」 と称賛された。その後、『ライ麦畑でつかまえて』 の翻訳などを手がけたあと、1962年、本名のアナグラム、セバスチアン・ジャプリゾ名義の 『寝台車の殺人者』 でミステリ作家に転じ、つづく 『シンデレラの罠』 (62) では、一人四役というはなれわざを演じてセンセーションを引き起こした (「私がこれから物語る事件は巧妙にしくまれた殺人事件です。私はその事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人なのです」)。映画界にも関わりが深く、《シンデレラの罠》 《殺意の夏》 《続・個人教授 (原作・不幸な出発)》 の自作の映画化を始め、《さらば友よ》 《雨の訪問者》 《O嬢の物語》 などのシナリオを手がけている。
◆1932年のこの日、ギャヴィン・ライアルがバーミンガムで生まれる。RAF (英国空軍) のパイロットから作家に転じ、『最も危険なゲーム』 『深夜プラス1』 など、冒険小説の傑作を発表した。
◆1946年のこの日、双葉十三郎が江戸川乱歩邸を初めて訪問。映画雑誌 《スタア》 4月号の 「アメリカ新刊だより」 に双葉が書いたハードボイルド紹介 (小鷹信光 『私のハードボイルド』 によると、これが 「ハードボイルド」 という言葉の日本初紹介) に注目した乱歩が、「一度会いたい」 と連絡してきたもの。乱歩は戦前から海外作品を読み漁っていた双葉の知識に驚くが、双葉は 「私の師匠ともいうべき、もっと外国探偵小説通の男がいるから、今度連れて来ます」 という。これが植草甚一である。
5月10日
◆1886年のこの日、『最後にして最初の人類』 『スターメイカー』 『オッド・ジョン』 『シリウス』 の作者オラフ・ステープルドンが、リヴァプール近郊で生まれる。
◆1930年のこの日、ストラテメイヤー・シンジケートと呼ばれる作家組織を創設し、複数のペンネームを駆使して、ハーディ・ボーイズ、ナンシー・ドルー、ダナ・ガールズ、トム・スイフト、ローヴァー・ボーイズなど、数多くの少年少女向け探偵・冒険物シリーズを出版社に提供したエドワード・L・ストラテメイヤーが死去。事業は娘ハリエットが受け継いだが、1982年に彼女が死去すると、サイモン&シュスター社がその経営権を買い取った。
5月11日
◆1857年のこの日、犯罪者から警官に転身、その経験と人脈をいかして犯人逮捕、治安維持に多大な功績を残し、パリ警察を牛耳ったヴィドックが死去。しかし、その晩年は必ずしも恵まれたものではなかったらしい。
◆1866年のこの日、「こびとの呪 (ルクンドー)」 一篇で強烈な印象を残すアメリカの怪奇作家エドワード・ルーカス・ホワイトがニュージャージー州バーゲン郡で生まれる。
◆1931年のこの日、ベルリンの映画館ウーファ・パラスト・アム・ツォーでフリッツ・ラングの名作 《M》 が封切られる。企画当初のタイトルは 《我々の中の殺人者》 というものだったが、これがナチスを連想させたため、ナチス批判映画に関わるのを恐れたスタジオ経営者たちは撮影に施設を貸すのを渋った。映画が連続殺人者を扱ったものであることを説明して、ようやくスタジオを確保することができたという。
◆1985年のこの日、『探偵を捜せ』 『被害者を捜せ』 他のパトリシア・マガーが死去。
5月12日
◆1907年のこの日、J・K・ユイスマンスが死去。世紀末耽美主義のバイブル 『さかしま』 や、悪魔崇拝を題材にした 『彼方』 の作家も、晩年はカトリックの信仰に傾倒していた。
◆1907年のこの日、現代のロビン・フッド、〈セイント〉 ことサイモン・テンプラーの作者レスリー・チャータリスがシンガポールで生まれる。生名レスリー・チャールズ・ボウヤー・イン。母親はイギリス人、父親は中国人の医師で、殷王朝皇帝の直系の子孫だという。1926年にチャータリスの名前を使い始めるが、これは18世紀の悪名高いギャンブラー、決闘常習者で、秘密結社 〈地獄の業火クラブ〉 の創設者だったフランシス・チャータリス大佐にちなんだもの。
◆1946年のこの日、双葉十三郎が植草甚一を連れて江戸川乱歩邸を再訪。この日初めて乱歩と会った植草は、当時のことを 「よく晴れた日曜の昼さがりであったが、乱歩さんは探偵小説の研究に余念がなさそうで、白カードに書いた作家と作品のインデックスをみせながら 『きみは探偵小説についてよく知っているそうだね』 と眼鏡ごしに切り出された」 と書きとめている (「江戸川乱歩と私」)。乱歩はハメットやチャンドラー、クレイグ・ライスの話をし、アイリッシュ 『幻の女』 を激賞して、「あれは、ぼくが訳すよ」 と言って相好を崩したという。『探偵小説四十年』 によると、植草のほうではアイルズ 『殺意』 の話などをしたようだ。その後、東京創元社 《世界推理小説全集》 (1956-60)、《現代推理小説全集》 (1957-58) で植草は、乱歩と共に監修者をつとめ、作品選定や解説などに尽力することになる。
◆2003年のこの日、イアン・フレミングの007シリーズやエド・マクベインの87分署シリーズの翻訳家、井上一夫が肝硬変で死去。享年80。J・D・カー 『夜歩く』 『連続殺人事件』 『盲目の理髪師』 や、M・G・ルイスのゴシック小説 『マンク』 などの仕事もある。
◆2008年のこの日、戦後初のSF長篇とされる『光の塔』(1962)の作者、今日泊亜蘭が肺癌のため死去。享年97。語学にも堪能だった今日泊は 《探偵倶楽部》 1955年8月号にリチャード・ミドルトン 「幽霊船」 の翻訳を発表している(南條竹則訳 『幽霊船』 の 「ミドルトン小伝」 にその一部が紹介されているが、なかなかの名調子)。本名・水島行衛。父は谷崎潤一郎 「人魚の嘆き」 の挿絵でも知られる画家・水島爾保布。峯島正行 『評伝・SFの先駆者今日泊亜蘭』(青蛙房、2001) がある。
5月13日
◆1907年のこの日、ロマンティック・サスペンスの女王ダフネ・デュ・モーリアが、ロンドンで生まれる。祖父は 『トリルビー』 (魔人スヴェンガリが登場する) で有名な作家・画家のジョージ・デュ・モーリア。ヒッチコックが映画化したベストセラー 『レベッカ』 (1940) をはじめ、女性を主人公としたゴシック・ロマンス風の長篇で人気を博したが、短篇集 『鳥』 (創元推理文庫) をひもとけば、神秘主義への関心、不条理な恐怖、精緻な心理描写など、その意外な一面に驚く読者も多いはず。
5月14日
◆1818年のこの日、〈恐怖派〉 ゴシック小説を代表する 『マンク (修道士)』 の作者マシュー・グレゴリー・ルイスが死去。英国バラッド復興の呼び水となった詩華集 『驚異物語集』 『恐怖物語集』 や、シラー『群盗』、ゲーテ 「魔王」 などドイツ文学の翻訳で、ロマン派詩人にも大きな影響を与えたルイスには、国会議員を務め、人道主義の立場から、ジャマイカの黒人農園労働者の条件改善に取り組む、ゴシック作家とは別の一面もあり、病死したのは現地視察から帰国航海の途上であった。
◆1925年のこの日、『ソロモン王の洞窟』 『洞窟の女王』 などの秘境冒険小説で、スティーヴンスン、ドイルらと人気を競ったH・ライダー・ハガードが死去。渋谷章の評伝 『ハガード、ハガード!』 は 《幻想文学》 創刊号から終刊まで20年以上つづいた長期連載だった。
5月15日
◆1891年のこの日、『巨匠とマルガリータ』 のミハイル・ブルガーコフがウクライナの首都キエフで生まれる。
◆1906年のこの日、《新青年》 編集長を務め、翻訳家・ユーモア作家として活躍した乾信一郎がシアトルで生まれる。
◆1926年のこの日、脚本家として有名なアントニー&ピーター・シェーファーの双子の兄弟がリヴァプールで生まれる。ピーター・アントニー名義の合作で1950年代に3作の探偵小説を発表、『衣裳戸棚の女』 はユーモア密室ミステリの佳作。アントニーの脚本作品に 《探偵/スルース》 《フレンジー》 《ウィッカーマン》 《ナイル殺人事件》、ピーターの代表作に 《フォロー・ミー》 《エクウス》 《アマデウス》 がある。
5月16日
◆1956年のこの日、アルフレッド・ヒッチコック監督の 《知りすぎた男》 が公開される。英国時代に撮った 《暗殺者の家》 (34) をみずからリメイク (原題は同じ)。「最初のイギリス版はなにがしかの才能のあるアマチュアがつくった映画だったが、リメークのアメリカ版はプロがつくった映画だ」 とのちに振り返っている。ドリス・デイが作中で歌う 「ケ・セラ・セラ」 も大ヒットした。ちなみに原題の 《The Man Who Knew Too Much》 は、当時ヒッチコックが映画化権をもっていたチェスタトンの同題短篇集から採ったもの (内容はまったく関係がない)。
◆1965年のこの日、〈新青年〉 初代編集長として江戸川乱歩らを世に送り出し、日本探偵小説の礎を築き、作家、翻訳者としても活躍 (『月長石』 『甲虫殺人事件』 『プレード街の殺人』 他。『樽』 は井上良夫訳に手を入れたものと言われている) した森下雨村が死去。1940年に父親の病気を契機に故郷の高知に帰農し、「晴釣雨読の生活」 を送っていた。釣随筆に 『猿猴川に死す』 などがある。ちなみにSF作家の森下一仁は遠縁にあたる。
◆1994年のこの日、『股から覗く』 の葛山二郎が死去。
5月17日
◆1904年のこの日、フランスの名優ジャン・ギャバンがパリで生まれる。《殺人鬼に罠をかけろ》 《サン・フィアクル殺人事件》 ではメグレ警部を演じ、《現金に手を出すな》 《皆殺しのバラード》 《地下室のメロディー》 《シシリアン》 など、多くのギャング映画に出演した。
◆1949年のこの日、海野十三が結核のため死去。
◆1950年のこの日、ドロシー・ヒューズ原作、ニコラス・レイ監督、主演ハンフリー・ボガートのサスペンス映画 《孤独な場所で》 が公開される。
5月18日
◆1909年のこの日、『ケープコッドの惨劇』 (1931) 以下のアゼイ・メイヨ・シリーズで人気を博し、アリス・ティルトン名義でもユーモア・ミステリの佳作を発表したフィービー・アトウッド・テイラーがボストンで生まれる。
◆1936年のこの日、東京市荒川区尾久町の待合で、赤い腰紐で絞殺され、局部を切り取られた男の死体が発見される。その2日後、品川の旅館で被害者の愛人、阿部定が逮捕された。1936年 (昭和11) は2.26事件の年。新聞はこの猟奇事件をセンセーショナルに報道、暗い時代の大衆の鬱屈の捌け口となった。なお、1941年に恩赦で出所した阿部定は、戦後、自ら阿部定劇のヒロインを演じて全国を巡業し、60歳を越えて 《明治・大正・昭和/猟奇女犯罪史》 (石井輝男監督、1969) に出演、事件を振り返っている。
5月19日
◆1864年のこの日、ナサニエル・ホーソーンが死去。「ウエイクフィールド」 の理由なき “蒸発” や、「牧師の黒いヴェール」 の不条理な罪の感覚などは、あるいは現代のミステリにもそのまま通じるテーマかもしれない。
◆1976年のこの日、平井呈一が心筋梗塞に脳内出血を併発して死去。享年73。前年、《アーサー・マッケン作品集成》 全6巻 (牧神社) の訳業を完成させ、つづいて 《ド・クィンシー作品集成》 にかかろうとした矢先のことだった。翌6月、最後の仕事となった 『こわい話・気味のわるい話』 第三輯 (牧神社) が上梓、巻頭に訃報が掲載された。
◆2003年のこの日、元創元推理文庫編集長・翻訳家の厚木淳が胆管癌で死去。享年73。E・R・バローズ〈火星シリーズ〉、カー、クリスティーなどの翻訳がある。また編集者としての業績については、瀬戸川猛資編集の 《BOOKMAN》 6号 (1983)の座談会 「早川ミステリvs創元推理文庫」 で戸川安宣氏 (当時・創元推理文庫編集長) が次のように発言している。「うちの方は、長いこと厚木淳という編集者が一人で切り盛りしてきた。古典を順にコツコツ出していったり。だから派手さとかバラエティに富んだ面白さの面では欠けるところもあるけれど、そのぶん一本芯が通ってまとまりのいいところがあるんではないかと思っています」。田村隆一、都筑道夫、生島治郎、福島正実、常盤新平といった早川書房編集者の華やかな系譜にくらべ、従来あまり語られることはなかったが、戦後翻訳ミステリ出版の一翼を支えた名編集者として記憶しておきたい。『東京創元社 文庫解説総目録 資料編』 収録の厚木淳インタビューは貴重な資料。宮田昇 『新編戦後翻訳風雲録』(みすず書房) でも、一章が割かれている。
5月20日
◆1799年のこの日、〈人間喜劇〉 の作者オノレ・ド・バルザックが、フランス中部のトゥールで生まれる。『ゴリオ爺さん』 『浮かれ女盛衰記』 など複数の作品に登場する怪人物ヴォートランは、泥棒からパリ警察の大物に転身したヴィドックをモデルにしている。『セラフィタ』 など、神秘主義を扱った幻想小説もあり、〈バルザック幻想・怪奇小説選集〉 全5巻 (水声社) には、英国ゴシック小説の影響が顕著な初期作品 『百歳の人』 などが収録されている。
◆1904年のこの日、『幽霊の死』 『判事への花束』 『屍衣の流行』 『霧の中の虎』 など、アルバート・キャンピオン・シリーズで人気を博したマージェリー・アリンガムが、ロンドンで生まれる。両親は作家、祖父や叔母も出版関係者という環境に生まれ育った彼女は、幼い頃から文章を書き始め、8歳のときに書いた小説が叔母の経営する雑誌に掲載されたという。夫となったイラストレイターのヤングマン・カーターは、探偵小説のジャケット・アートの第一人者で、彼女の作品も多数手がけている。
◆1956年のこの日、スタンリー・キューブリックのドキュメンタリー・タッチの犯罪映画 《現金に体を張れ》 が封切られる。時間軸を解体して断片的なシーンを組み合わせていく手法は、《レザボア・ドッグス》 をはじめとするタランティーノ作品に強い影響を与えた。ジム・トンプスンが脚本に参加したことでも知られる。
5月21日
◆1917年のこの日、TVシリーズの弁護士ペリー・メイスン、鬼警部アイアンサイド役で有名な俳優レイモンド・バーが、カナダ太平洋岸の都市ニューウェストミンスターで生まれる。《裏窓》 の殺人者役もよく知られているが、《陽のあたる場所》 では地方検事を演じている。
◆1924年のこの日、シカゴ大学の学生リチャード・ローブとネイザン・レオポルドが、14歳の少年を誘拐して殺害する。裕福な家庭に生まれ育ち、ニーチェの超人思想に心酔、同性愛関係にもあった二人は、自分たちが世間のモラルを超越した存在であることを証明するために、完全犯罪の遂行を試みたが、案に相違して簡単に逮捕されてしまう。ニーチェ主義者の犯罪ということで、同じくニーチェに傾倒していたヴァン・ダインにも衝撃をあたえたのではないか。この事件にもとづいたパトリック・ハミルトンの戯曲 《ロープ》 (1929) は、のちにヒッチコックが映画化 (48)。他にも 《強迫/ロープ殺人事件》 (59)、《恍惚》 (92)、《完全犯罪クラブ》 (2002) など、この事件に材をとった映画は多い。事件から12年後、ローブは刑務所内のシャワー室で同房の囚人に殺害され、レオポルドは1958年に出所、71年に心臓発作で亡くなっている。
◆1938年のこの日の未明、岡山県の小村で、頭の両側に二本の懐中電灯を手拭いで固定し、日本刀、短刀、猟銃で武装した青年が村人を襲撃、死者30名、重傷1名、軽傷2名の犠牲者を出した。世に言う 「津山三十人殺し」 である。横溝正史 『八つ墓村』、西村望 『丑三つの村』、島田荘司 『龍臥亭事件』、岩井志麻子 『夜啼きの森』 など、この前代未聞の大量殺人に想を得た作品は数多い。ノンフィクションとして取り上げたものに、松本清張 『ミステリーの系譜』、筑波昭著 『津山三十人殺し』 などがあり、最近も石川清 『津山三十人殺し 最後の真相』 が出たばかり。
5月22日
◆1859年のこの日、アーサー・コナン・ドイルがエジンバラで生まれる。
◆1966年のこの日、人気TVシリーズ 《ペリー・メイスン》 が最終回 (第271回 「Final Fadeout」) を迎える。その後、1980年代に同じレイモンド・バー主演で、TVムービー 《新・弁護士ペリー・メイスン》 として復活した。
◆1972年のこの日、英国の探偵作家ニコラス・ブレイクこと桂冠詩人セシル・デイ・ルイスが死去。
◆2010年のこの日、アメリカの数学者、サイエンス・ライター、マーティン・ガードナーが死去。享年95。『奇妙な論理』、『自然界における左と右』、数学パズルや奇術関連本など、夥しい著作がある。『不思議の国のアリス』 『鏡の国のアリス』 『スナーク狩り』 『オズの魔法使』 『ブラウン神父の童心』 『木曜日の男』 『老水夫行』 の詳注版も、数学者・科学者ならではの卓見に満ちている。
5月23日
◆1934年のこの日、ルイジアナ州ギブズランド郊外でテキサス・レンジャーズが、悪名高い銀行強盗カップル、ボニー・パーカーとクライド・バロウを待ち伏せし、車ごと蜂の巣にする。死亡したとき、ボニーはボローニャ・サンドイッチを頬張り、クライドは裸足だったという。二人を主人公にした映画ではアーサー・ペン監督のニューシネマ 《俺たちに明日はない》 (67) が有名だが、早くも事件の3年後にはフリッツ・ラングの 《暗黒街の弾痕》 (37) が製作され、《拳銃魔》 (J・H・ルイス、49)、《夜の人々》 (ニコラス・レイ、49)、《ボウイ&キーチ》 (R・アルトマン、74) につながっていく。
5月24日
◆1725年のこの日、18世紀ロンドン暗黒街の帝王ジョナサン・ワイルドが絞首刑となる。ワイルドはロンドン中の泥棒の元締めとして盗品を手元に集め、それを被害者に買い戻させる、という天晴れな手口でたちまち莫大な財をなし、しかも、自分に逆らう者やライヴァルは容赦なく当局に密告、飴と鞭、表と裏の顔を巧みに使い分けて犯罪界を支配した。
◆1902年のこの日、横溝正史が神戸市で生まれる。1921年(大正10)、「恐ろしき四月馬鹿」 を 〈新青年〉 に投稿入選。1927年には森下雨村のあとを受けて 〈新青年〉 編集長に就任、モダニズム路線を追求して誌面を刷新、新創刊の 〈探偵小説〉 では海外長篇の翻訳紹介に力をいれた。戦前は耽美的な作風で知られていたが、戦後、『本陣殺人事件』 (1946)、『蝶々殺人事件』 (46-47)、『獄門島』(47-48) と堂々たる本格長篇を次々に発表、探偵文壇の寵児となった。
◆1952年のこの日、『世紀の犯罪』 などのサッチャー・コルト・シリーズが1930年代のアメリカで人気を博したアントニイ・アボットが死去。本名フルトン・アウスラー、。《リバティー》 《リーダース・ダイジェスト》 誌の編集者として著名な人物で、イエス・キリスト伝などの宗教書はベストセラーになった。フランクリン・D・ローズヴェルト大統領の原案によるリレー長篇 『大統領のミステリ』 (1935) を企画、まとめ役になったのもこの人。
◆2015年のこの日、『闇の公子』 『死の王』 などのファンタジー作家タニス・リーが死去。享年67。
5月25日
◆1803年のこの日、歴史小説 『ポンペイ最後の日』、オカルト長篇 『ザノーニ』 『不思議な物語』 や短篇怪奇小説の古典 「幽霊屋敷」 で知られるエドワード・ブルワー=リットンがロンドンのベイカー街で生まれる。
◆1906年のこの日、角田喜久雄が横須賀市で生まれる。1922年(大正11)、「毛皮の外套を着た男」 が 〈新趣味〉 に掲載。10代のデビューであった。その後も 〈新青年〉 〈キング〉 等に探偵・怪奇短篇を発表したが、戦前は専ら 『妖棋伝』 『髑髏銭』 などの伝奇時代小説家として人気を博した。戦後、あらためて探偵小説に取り組んだ 『木家の惨劇』 (1947、初出題 『銃口に笑う男』) は、横溝 『本陣殺人事件』、坂口安吾 『不連続殺人事件』 と共に、戦後本格長篇時代の口火を切った。
◆1945年のこの日、ルヴェル 『夜鳥』 の名訳者、田中早苗が死去。他にガボリオ、コリンズ、ルルーなどの訳業がある。
5月26日
◆1828年のこの日、ドイツ南部、バイエルン王国のニュールンベルクに突然、一人の少年が姿を現す。「カスパール・ハウザー」 と名乗るこの少年はしかし、「穴の中でひとりで暮らしていた」 と繰り返すばかりで、言葉もほとんど知らないようだった。何処から来たのか、正体も不明のまま、5年後、少年は何者かにナイフで刺され、謎の死を遂げる。バーデン大公国の王子とも、ただの詐欺師とも、さまざまな臆測が飛びかったが (なかには宇宙人説を唱える人も!)、そのミステリは現在に至るまで未解決のままである。この 「宇宙の孤児」 ともいうべき少年の不思議な事件について詳しくは種村季弘 『謎のカスパール・ハウザー』 を。また、ヘルツォークの映画 《カスパー・ハウザーの謎》 はこの事件を正面から取り上げている。ちなみにフランツ・カフカは晩年、「私はカスパール・ハウザーよりも孤独だ」 と語ったという。
◆1897年のこの日、ブラム・ストーカー 『ドラキュラ』 が出版される。
◆1913年のこの日、吸血鬼ハンターのヴァン・ヘルシング教授 (クリストファー・リーのドラキュラ伯爵との死闘は語り草)、フランケンシュタイン男爵 (《フランケンシュタインの逆襲》 のF男爵は映画史上もっとも極悪非道と言われている) など、多くの怪奇映画で主役/敵役を演じた俳優ピーター・カッシングが、英国サリー州ケンリーで生まれる。晩年には 《スターウォーズ》 に出演、帝国軍総統を演じて話題を呼んだ。
◆2009年のこの日、栗本薫 (別名中島梓) が膵臓癌のため死去。享年56。100巻を超える大河シリーズ 《グイン・サーガ》 はついに未完に終わった。
5月27日
◆1894年のこの日、『赤い収穫』 他のコンチネンタル・オプ物や 『マルタの鷹』 『ガラスの鍵』 などの作品で、ハードボイルド・ジャンルを確立したダシール・ハメットが、メリーランド州セント・メリー郡で生まれる。
◆1911年のこの日、怪奇映画に多数出演した俳優ヴィンセント・プライスがミズーリ州セントルイスで生まれる。舞台俳優として出発、ハリウッド入りして、犯罪映画 (《ローラ殺人事件》 など)、怪奇映画の個性的な演技で人気を確立した。《アッシャー家の惨劇》 (1960) 以下の一連のロジャー・コーマン製作・監督のポー映画が印象深い。美術コレクター・評論家としても活躍、TVで美術紹介番組のホストもつとめた。ティム・バートン 《シザー・ハンズ》 (90) の老マッド・サイエンティスト役が最後の仕事となった。
◆1922年のこの日、ハマー映画の吸血鬼ドラキュラ役で有名になったクリストファー・リーがロンドンで生まれる。俳優デビュー後、193cmの長身が災いしてながく役に恵まれなかったが、 《フランケンシュタインの逆襲》 (1957) の怪物役でチャンスをつかみ、つづく 《吸血鬼ドラキュラ》 (58) で演じたドラキュラ伯爵が当たり役となり、怪奇スターとして一躍注目を集めた。ミイラ男、フー・マンチュー博士などの他、 《007黄金銃を持つ男》 (74) ではジェイムズ・ボンドの敵役も演じている (原作者イアン・フレミングは従兄にあたる)。また、ビリー・ワイルダーの 《シャーロック・ホームズの冒険》 (70) でマイクロフト、TVムーヴィーでシャーロックと、ホームズ兄弟の両方を演じた珍しい記録も持つ。近年も 《スリーピー・ホロウ》 《スターウォーズ/エピソード2・3》 《ロード・オブ・ザ・リング》 と精力的に映画出演を続けている。
◆1934年のこの日、ハーラン・エリスンがオハイオ州クリーヴランドで生まれる。『世界の中心で愛を叫んだけもの』 はSFファンだけのものにしておいては勿体ない名短篇集。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞等をいくつも獲得した短篇の名手エリスンだが、「鞭打たれた犬たちのうめき」 ではMWA最優秀短篇賞も受賞している。
5月28日
◆1908年のこの日、1950〜60年代にジェイムズ・ボンド・シリーズで一世を風靡したイアン・フレミングがロンドンで生まれる。
◆1954年のこの日、アルフレッド・ヒッチコック監督の 《ダイヤルMを廻せ》 が公開される。この映画で、狡猾な犯罪計画の標的となる主婦を演じたグレース・ケリーは、共演者レイ・ミランドと不倫関係に陥ったが、作品ではクール・ビューティぶりを遺憾なく発揮、ヒッチコックのお気に入りとなった。《裏窓》 (54)、《泥棒成金》 (55) と続けてヒロインに起用されている。
◆1958年のこの日、アルフレッド・ヒッチコック監督、ボアロー&ナルスジャック原作、ジェイムズ・スチュアート主演の 《めまい》 が公開される。ヒロイン役はキム・ノヴァク。もっとも、ヒッチコックが最初に想定していたのは、《間違えられた男》 でヘンリー・フォンダの相手役をつとめたヴェラ・マイルズで、カメラ・テストまで行なったが、ヒッチコックの胆嚢手術で撮影が延期されているあいだに妊娠が判明、出演不可能となってしまった。キム・ノヴァクはヒッチコック好みの女優ではなく、撮影中も不満を感じていたらしいが、この映画での彼女は素晴らしく、スチュアート演じる主人公を魅了し呪縛するファム・ファタルとして強烈な魅力を発散している。
5月29日
◆1874年のこの日、ブラウン神父の作者ギルバート・キース・チェスタトンが、ロンドンで生まれる。『トレント最後の事件』 のE・C・ベントリーは、セント・ポール学院在学中に知り合って以来の大親友。『木曜の男』 と 『トレント』 をお互いに捧げあっている。
◆1957年のこの日、《フランケンシュタイン》 《フランケンシュタインの花嫁》 《透明人間》 など、ユニヴァーサル・ホラーの名作で知られる映画監督ジェイムズ・ホエールの死体が、ハリウッドの自宅のプールで発見される。警察では自殺として処理。1941年に引退したホエールは、自宅に引きこもって孤独な生活を送っていた。同性愛者で、謎につつまれた彼の生涯を掘り起こした映画に 《ゴッド and モンスター》 (1998) がある。

5月30日
◆1778年のこの日、『ザディグ』 の論理的推理法がポーのデュパン物にも影響を与えたヴォルテールが死去。
◆1912年のこの日、〈クライム・ノヴェル〉 の提唱者で、評論 『ブラッディ・マーダー』 や、『犯罪の進行』 『ねらった椅子』 など多くの作品を発表、CWA (イギリス推理作家協会) の創設者のひとりでもあるジュリアン・シモンズが、ロンドンで生まれる。兄は作家・書誌学者のA・J・A・シモンズ。
◆1969年のこの日、ヘンリー・ウエイドの筆名で20冊の長篇探偵小説を発表した准男爵ヘンリー・ランスロット・オーブリー=フレッチャーが死去。
5月31日
◆1963年のこの日、「せんとらる地球市建設記録」 「エル・ベチョオ」 「探偵殺害事件」 「落下傘嬢殺害事件」 「もだんしんごう」 を 〈新青年〉 に、「偽視界」 を 〈ぷろふいる〉 に発表した星田三平が死去。晩年はながく病床にあったという。

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