【ヘレン・マクロイ作品】
あなたは誰? 二人のウィリング 牧神の影
割れたひづめ 歌うダイアモンド
【あなたは誰?】

ヘレン・マクロイ
渕上痩平訳

「ウィロウ・スプリングには行くな」 ――匿名の電話の警告を無視して、フリーダは婚約者アーチーと共にその実家へ向かったが、到着早々、再び謎の電話があり、何者かが彼女の部屋を荒らす事件が起きる。どうやらフリーダに激しい悪意を抱く者がこの土地にいるらしいのだ。不穏な空気のなか、その夜、隣人の上院議員邸で開かれたパーティーで、ついに殺人事件が発生。捜査協力に招聘された精神科医ベイジル・ウィリング博士は、一連の事件にはポルターガイスト現象の特徴があると指摘するのだが……。本格ミステリの巨匠マクロイの初期傑作。

◆ちくま文庫 2015年9月刊 900円(税別) [amazon] [honto]
◆装丁=藤田知子 装画=河井いづみ


◇2016本格ミステリ・ベスト10 第2位
◇週刊文春ベスト・ミステリー 第14位

ヘレン・マクロイ (1904-1994)
アメリカのミステリ作家。ニューヨーク生まれ。ソルボンヌ大学に留学、パリとロンドンで美術批評家、新聞記者として活動し、1932年に帰国。精神科医ウィリング博士を探偵役とした 『死の舞踏』 (1938) でデビュー。『家蠅とカナリア』 『暗い鏡の中に』 『幽霊の2/3』 『殺す者と殺される者』、短篇集 『歌うダイアモンド』 など、本格推理からサスペンスまで多彩な作風で人気を博した。



【二人のウィリング】

ヘレン・マクロイ
渕上痩平訳

ある夜、自宅近くのタバコ屋でウィリングが見かけた小男は、「私はベイジル・ウィリング博士だ」 とタクシーの運転手に名乗り、その車で走り去った。驚いたウィリングは男の後を追って、パーティ開催中の家に乗り込み、偽者と対峙するが、そこで奇妙な殺人事件に巻き込まれてしまう。死の直前、被害者は 「鳴く鳥がいなかった」 という謎の言葉を残していた……。ウィリング博士の偽者が本人の前に現れる発端の意外性はシリーズ随一、謎解きの興味にサスペンスに富んだ展開と、円熟味を増した中期の傑作。
「絡み合った謎にも結び目がある。名探偵がそれをほどき、一本の糸になる快感」 ――深緑野分氏 (「解説」 より)

◆ちくま文庫 2016年4月刊 820円(税別) [amazon] [honto]
◆装丁=藤田知子 装画=河井いづみ

◆解説=深緑野分

◇「このミステリーがすごい! 2017」 第15位
◇「2017本格ミステリ・ベスト10」 第2位
◇IN★POCKET 「文庫翻訳ミステリー・ベスト」 総合第9位
◇「このミステリが読みたい!」(ミステリマガジン) 第14位



【牧神の影】

ヘレン・マクロイ
渕上痩平訳

深夜、電話の音でアリスンは目が覚めた。それは同居する伯父フェリックスの急死を知らせる内線電話だった。心臓発作が死因と思われたが、翌朝訪れた陸軍情報部の大佐の話では、伯父は軍のために戦地用暗号を開発していて、死の直前、解読不能の新暗号法を完成させていたらしい。思い当たることはないかと大佐に尋ねられたが、暗号の話自体、彼女には初耳だった。しかし、その後、人里離れた山中のコテージで一人暮しを始めたアリスンの周囲でやがて次々に怪しい出来事が……。謎解きとサスペンスが融合したマクロイ円熟期、暗号ミステリの傑作。

解説=山崎まどか「謎の余韻に酔いしれる」
「名作という噂のみ長年語られてきた作品がついに邦訳されたことを慶びたい」――千街晶之氏(小説すばる9月号)
『2019本格ミステリ・ベスト10』

◆ちくま文庫 2018年6月予定 900円(税別) [amazon]
◆装丁=藤田知子 装画=松本圭以子

◆解説=山崎まどか