トヨタ自動車への公開質問状

フィリピン工場内のストリップショー
組合つぶしを目的とした不法体質

トヨタ自動車の責任を問う

2006年12月12日
フィリピントヨタ労組を支援する会

日本トヨタがフィリピントヨタの処分に介入!

 フィリピントヨタは4月1日社内ストリップショー事件発生以来5月19日フィリピントヨタ労組(TMPCWA)のビラでの暴露までこの事件を放置し、その後何等かの処分を行った(全員に一律文書譴責程度の処分か?)ことは確実であるがその内容すら公式に発表しようとしなかった。そしてTMPCWAの更なるビラにフィリピントヨタはまったく動きを見せなかった。そして、日本トヨタもこの件での私達の9月29日の質問状に沈黙を決め込んできた。しかし、日本トヨタはついに動かざるを得なくなった。私達の質問状の公開、一部マスコミでの報道の圧力が日本トヨタを動かした。

 このフィリピントヨタ・ストリップショーの責任者ネストール・タデオが新たに出勤停止になった。また、PT会議は依然続けられているが、日本人の参加は禁止された。だが会社の経費負担(一人当たり170ペソ)は続けられている。社外のPT会議はいくつかのレストランと課長や労働者の自宅で行うことだけが認められ、2時間以内に限ってビール2本までに制限されたそうである。

 ただし、この出勤停止について日本トヨタは何の発表も行っていない。ただ、タデオの上司であるエーメ・ロペス(女性)がフィリピントヨタ労組(TMPCWA)の組合員のところに来て、日本のニュース記事のコピーを示し、「あなた達の組織がやっていることを見て御覧なさいよ。ただただ会社のイメージを疵付けているだけじゃないの」といったとのことである。

 日本のトヨタはこれまで「現地の問題は現地で」といい続けてきた。しかしここで、日本トヨタは、フィリピンで起きた問題であっても日本トヨタが介入しなければならない問題がありうること、かつ日本トヨタはフィリピントヨタに対して処分を変更させる力を持っていることを、ここではっきりと証明して見せた。つまり現地が今年5月ごろに一旦は何らかの処分をし、これまでTMPCWAの圧力にもかかわらずその処分を維持し続けたにもかかわらず、日本でフィリピントヨタ・ストリップショーが明らかにされることで日本トヨタは旧来の処分を「出勤停止」に変更させたのである。それにしてもトヨタでは、一方では、事前通告して公聴会に出席した233名の自主的な労働組合員は解雇され、他方では、夜間ではあるが工場内の就業時間中に外からダンサーを招いてそれもきわめて破廉恥なストリップショーを行うという前代未聞の事件を主催した管理職が出勤停止なのであり、トヨタは自主的な労働組合に対しては異常に敵対的で、管理職には驚くほど甘い。

 むろんこの処分のアンバランスの背後にトヨタの明確な意思が潜んでいる。このトヨタの歪んだ意思によって、トヨタはこの問題を世界の前に公開できないのである。それゆえトヨタは未だに臭いものに蓋をし、事件を闇に葬ることのみを考え続けている。この通常の人々には信じられない特異な事件がおきるには必ず特異な背景がある。その背景を解き明かすことなしにこの事件の真実の姿は見えてこない。
 前回の質問後に新たに判明した事実を踏まえて、公開で再質問する。


フィリピントヨタ労組攻撃がフィリピントヨタ管理職の腐敗体質を拡大した

 事実経過に関して会社側の最初の処分のための「適正手続書」(522日)があるので、それを公開しておきたい。ただしここには大きな事実の歪曲がある。

 第一に、そこでは「前期のチームメンバーは、前期の破廉恥事件の計画、観取、および参加に終始関与していた」としてあたかも全員で計画されたものであるかのごとく述べている。しかし、フィリピントヨタ労組組合員はPersonal Touch of Boss(通称PT会議)に呼びつけられて参加しただけでそこで何が行われるかについては知らされていなかった。第二に、そこではストリップショーはPT会議の後に行われたとされているが、この時間はこの工場メンテナンス部門の就業時間帯であり、PT会議が終了していたならば労働者達は仕事に戻らなければならなかったのであり、会社側は「破廉恥事件」としてだけでなく、業務放棄事件として裁かなければならなかったはずである。つまり事実は飲食、ストリップショーの全体がPT会議の行事として行われたのである。

 Personal Touch of Bossという名前に示されるようにこの会議は管理職が部下の従業員との触れ合いを行うものとして会社の補助金がついている。主体はBoss、すなわち管理職であり、管理職がフィリピントヨタ労組を切り崩し、御用組合を拡大することを意図して従業員との飲食を行うものであった。事実PT会議が盛んに行われたのはフィリピントヨタ労組の結成から233名の解雇が行われた時期と一昨年に御用組合が結成されて新たな承認投票を行う時期に重なり、PT会議と会社のTMPCWA敵視との関係は明らかである。

 また飲食を伴う性格からしてこの会議は会社の外で行われることが多かった。特にこの工場メンテナンス部門の課長ネストール・タデオがはなはだしかったようではあるが、この管理職の外での触れ合い会議は当初の単なる飲食からストリップショー、そして売春にまでエスカレートした。むろんこの下地にはフィリピントヨタ管理職の業者との腐敗した付き合い方があったことは明らかであろう。つまり会社外では4月1日の工場内のストリップショーよりももっと腐敗した行為が行われていたのである。組合切り崩しのための会社の補助金付の会議が労働者の正当な権利意識を堕落させるためだけでなく、女性を金で買う腐敗したものにまでなってしまっていたのである。むろん通常は費用の面からしても会社からの公の補助だけではここまでエスカレートすることは困難だが、トヨタの管理職(達?)はどこかからかこの費用を捻出していたのである。

 むろんこうした恥ずべき会社行事が会社内部に持ち込まれるにはさらにフィリピントヨタの特殊な条件が必要だった。前の報告にも述べたごとく、会社内でもフィリピントヨタ労組を切り崩し御用組合強化のためであれば会社の規定の無視、違法行為が容認される風土が作られていた。すなわち、労使協議会と監督職組合役員はフィリピントヨタ労組切崩・御用組合育成のための会社内外の活動を会社業務と認められてきた。また彼らはこの活動に会社のサービス車両を使う事を認められ、監督職組合の委員長エンジェル・ディマランタはこの会社車両を使って飲酒運転事故を起こしても、会社行事中に銃で同僚を脅したり暴力を振るっても何の処分も受けずに放置されてきたのである。

 このフィリピントヨタ工場での就業時間中のストリップショーはフィリピントヨタ労組を破壊するための「規律の規制緩和」の中でフィリピントヨタ管理職が持っていた腐敗体質が顕在化、エスカレートしたものである。そして、多国籍企業トヨタ自動車はフィリピントヨタの最高裁判決無視に象徴される違法なフィリピントヨタ労組破壊に同意し、この「規律の規制緩和」に積極的に同意を与えていたのである。


トヨタのコンプライアンスは「臭いものに蓋」か!

 さらに問題なのはこの事件の顕在化に対するフィリピントヨタと日本トヨタの対応である。第一に、フリピントヨタ経営陣は4月1日の事件から5月19日フィリピントヨタ労組のビラでの暴露までこの事件を完全に放置してきた。第二に、フィリピントヨタは5月22日の朝の集会で参加者全員を前に立たせてネストール・タデオが謝罪し処分が行われたことは確実であるが、その処分内容などについてはなんら公式に発表していない。第三に、日本トヨタもまたこの事件についての公式のコメントを拒否し続けた。

 つまりこのストリップショーが行われたPT会議にはフィリピントヨタ労組のメンバーも2人参加しており、彼らがストリップショーをその場でやめさせる行動をしなかった限りで彼らにも責任はある。しかし、彼らは組合に報告し組合の公開に同意することで、現場ではやめさせることが出来なかったが、同じことが再び起きないようにするための決意を示した。そして彼らは文書譴責の処分を受けた。

 それに対して、フィリピントヨタは「臭いものにふた」の態度で一貫している。フィリピントヨタは「適正手続書」に示されるようにこのストリップショーが会社のPersonal Touch of Bossという会議で行われたこと、またこれが管理職ネストール・タデオ指導のもとで行われたことを隠そうとした。また、フィリピンの事件はアメリカのセクシャルハラスメント事件とは違って個人の事件ではなく組織的性格のものであり会社にとってより一層重い責任が問われるにもかかわらず、フィリピントヨタは責任者ネストール・タデオの処分すら公式に発表しないままネストール・タデオを旧来の役職で働かせ続けた。

 むろんフィリピントヨタが問題を隠蔽しようとしても、日本トヨタは多国籍企業中枢としての責任がある。しかし、工場内ストリップショー発覚当初のこの事件の放置、TMPCWAが指摘した後の公開できない軽い処分、日本トヨタへの質問状に対する沈黙に示されるように、日本トヨタはフィリピントヨタからこの事件の報告を受けていながら、フィリピントヨタのこの事件の処理に支持を与え続けた。そして日本で私達と一部のマスコミがこれを取り上げることで初めてトヨタは旧来のフィリピントヨタの処分を変更させた。しかし、トヨタはまだフィリピントヨタと一緒に事実を隠蔽しようとしている。なぜトヨタはこれほどまでにかたくなな態度をとり続けるのであろうか。トヨタはアメリカの問題にはコメントできてもフィリピンの問題にはコメントできないとでもいうのであろうか。

 理由は明らかである。まず、トヨタ経営トップは、アメリカのセクシャルハラスメント事件でもそうだが、フィリピンでも工場内ストリップショー発覚当初のこの事件の放置、TMPCWAが指摘した後の責任者に対しても軽い処分と処分内容の非公開、日本での質問状への沈黙、そしてこの問題が日本で公になって始めて責任者の出勤停止という経過が示しているように、こうした女性問題は表面化しなければ許されるものであるかのごとく考えているのである。冒頭に示したエーメ・ロペスさんがもっとも端的にその態度を示している。彼女は、例えトヨタの従業員であっても女性として、また女性と生活を共にする者として、トヨタの「イメージを傷つけても」断固として異議を申し立てなければならない一線があることを理解していない。

 また、トヨタ経営トップが自主的労働組合敵視の政策を採用し、そのため自主的な労働組合破壊のためであればフィリピン最高裁の判決無視など、法律の無視、軽視が許されるかのごとき思想を持ち続けているためでもある。この組合敵視の思想が根底にあって、トヨタ経営トップはTMPCWA攻撃でのフィリピントヨタ管理職や御用組合の腐敗を容認し続け、この不祥事を招いたのである。


私達はトヨタ自動車にもう一度問う

以下の四点についてトヨタ自動車の公式見解を求めたい。

1、私達がここで指摘した、フィリピントヨタ工場内で行われたストリップショーの経過、その引き金となった社外PT会議で行われたストリップショーなどの事実、社内で労使協議会や監督職組合役員に許した特権的処遇などの事実はあったのかどうか。また私達がそれについてここで指摘した事実に誤りはあるかどうか。

2、世界を代表する多国籍企業で認められた通称PTミーティング(Personal Touch of Boss)での工場内外のストリップショーは前代未聞の出来事である。にもかかわらず、トヨタは、工場内ストリップショー発覚当初のこの事件の放置、TMPCWAが指摘した後の責任者に対しても軽い処分と処分内容などの非公開、そして日本で問題が明るみに出た後の責任者の出勤停止など、といった場当たり的な対応をなぜとってきたのか。

3、トヨタは、フィリピントヨタ労組を切り崩し、御用組合を育成するために行われてきた労使協議会・監督職組合役員に対する特権的処遇やエンジェル・ディマランタの違法行為をなぜ未だに放置しているのか。

4、トヨタは、トヨタ基本理念で「内外の法とその精神を遵守し」と述べていながら、なぜフィリピン最高裁判決に従ってTMPCWAとの団体交渉に応じないのか。

                                                    以上


                  適正手続書

2006年5月22日
作成者 フィリピントヨタ エーメー・ロペス(課長)

事実の記述

 前記のチームメンバーが所属するユーティリティーズ・マネジメント・セクションは、去る2006年4月1日、TMP託児所において、ボスとの触れ合いミーティングを行った。触れ合い活動終了後、同チームメンバーは、残った飲食物を平らげるため、またグループと共に過ごせる得がたい時間を愉しむため、その場に留まった。愉しみの最中に、メンバーのある者たちが、女性「ダンサー」1名のサービスを得る手配をし、その結果同ダンサーが構内においてストリップダンスをするに至った。このことがグループの興奮度を高まらせ、扇情的に掻き立て、ある者たちは他の者たちが卑猥にはやし立てる中で同ダンサーの秘部に触り始めるに至った。その際みだらな行為の一部が携帯電話器のカメラに録画されて、それが他のTMPチームメンバーたちに回された。


違反の容疑および適用される懲戒処分

 前記のチームメンバーは、前記の破廉恥事件の計画、観取および参加に終始関与していたものであり、下記の犯則を犯したものである。

   就業時間中であるか否かにかかわらずTMP構内において、ポルノ図書・物品の陳列・
   配布ならびに扇情的およびセクシャルハラスメント行為等の非道徳的行為をすること。


【付属資料】

・グローバル化の中で堕落するトヨタ、TMPCWA攻撃の中で腐敗するフィリピントヨタ
  フィリピントヨタ、就業時間中の工場の職場で全裸ストリップショー (10/26) 
  全裸ストリップショーの公表に当たって (10/26) 
  トヨタ自動車本社への質問状 (9/30)