グローバル化の中で堕落するトヨタ
TMPCWA攻撃の中で腐敗するフィリピントヨタ

フィリピントヨタ、就業時間中の工場の職場で
全裸ストリップショー

2006年10月26日
フィリピントヨタ労組を支援する会

グローバル化が激しい競争を生み出し、トヨタは貧困と不法を持ち込んだ

 トヨタは国境を越えて全世界に展開し、今全世界的な激しい競争を行っている。この競争の中でトヨタは、資本主義の先進諸国と比較して20分の一の安い賃金の発展途上国労働者を使ってこの世界的競争を行うことでこの極端な格差になれ、この格差を当然のことと思い始めた。また、トヨタは公然と違法行為を行うことにもなれた。フィリピントヨタ労組の闘いが示しているように、トヨタは6年間も平気で団体交渉を拒否し続けた。最高裁判決が出てもILO勧告が出てもフィリピントヨタ労組(TMPCWA)との団体交渉を拒否し続けた。フィリピン政府と一体になってTMPCWAを不法に攻撃し続けることになれた。そして、フィリピン官僚の接待にもなれたに違いない。

 こうしたグローバル化の下での発展途上国の経験によって、トヨタは日本においてもただ雇用契約の形態が違うだけで賃金が2分の1から3分の1の安い非正規労働者を企業内に大々的に導入することに違和感を持たなくなった。下請企業が違法を行わざるを得ない取引条件を彼等に強制することに違和感を持たなくなっていった。事実がそれを示している。トヨタ自身もサービス残業など様々な違法行為を行っているが、トヨタの下請けでは違法行為のオンパレードである。違法請負、違法派遣、違法出向から始まって、残業割増・社会保険・年金未払い、給料未払い、違法解雇、労災隠し、そして研修生実習生に象徴される強制労働、ここにはありとあらゆる不法が滞留している。トヨタはトヨタグループの中に非正規労働者と貧困、不法を蔓延させることで1兆円の利益を生み出したが、同時に腐敗にまみれることになった。


それは労働組合潰しのフィリピントヨタで起きた

 その恥ずべき事件はフィリピントヨタ社サンタロサ工場で今年4 月1日に起きた。工場メンテナンス部門職場での夜勤の就業時間内に、TMPCWA組合員2名はネスター・タデオ課長より至急課内全員が集まるように命令され、集合場所に行ったところ、全員(総勢9名、すなわち前記TMPCWA所属課員2名のほか職制4名、TMPCLO所属課員1名、新正規労働者1名、実習生1名)が集まっていた。課長はPT会議を開始すると言って、就業時間内にもかかわらず飲み食いパーティーが始まった。さらに驚いたことには外部からプロの1人の女性が呼ばれていて、全裸ストリップショーが行なわれた。参加していた何人かはその現場の写真(動画)を自分の携帯電話に収録した。この飲み食いの費用は職制が予め用意したものであり一般課員の負担はゼロであった。

 TMPCWAはこのような恥ずかしき出来事を5月19日の組合ビラで暴露した。会社は当初、このビラは嘘であると言い張ったが、結局事実を認めざるを得ず、5月22日の工場朝礼の場で、ネスター・タデオは「申し訳ありません」と全従業員に謝罪した。TMPCWAは再度6月3日の組合ビラで、「会社は就業規則に則り、関係職制を懲罰するべきである」と訴えた。それに対し、フィリピントヨタはこのPT会議の告発者であるTMPCWA組合員も含めて参加者全員に対して懲戒処分(TMPCWA組合員も軽微な処分)をしたが、ネスター・タデオに対しては処分の詳細は不明であるが月曜集会で謝罪したことを理由に解雇されることなく働き続けている。フィリピントヨタは自主的な労働組合には233名の解雇という『断固たる処分』を行うが、自主的な組合の破壊者に対しては信じられないほど優しいのである。


TMPCWA攻撃の不法状態が職場の秩序を破壊した

 グローバル企業トヨタの職場で就業時間中にこのような行為が行われたのは決して偶然ではない。それは起きるべくして起きたのである。私たちの調査によれば、フィリピントヨタの管理職従業員はフィリピントヨタの取引業者との付き合いで会社の外でではあるが同様のことを行っている。つまり、フィリピントヨタの管理職従業員は取引業者に供応を行わせ、彼らは女性をもその供応の道具として使った。それだけではないフィリピントヨタ管理職従業員はフィリピントヨタの従業員を御用組合へ誘うために従業員との外での付き合いでそれと全く同様なことをしてきた。

 ここから私たちが世界のトヨタではかなりの程度でこのようなことが行われていると想像することは考え過ぎだろうか。いやそうではあるまい。このようなことが普通になっているからこそトヨタの北米のトップがセクハラで告発され、フィリピントヨタでのストリップショウ事件も解雇することなく済ますことになったと私達は考えざるを得ない。むろん、会社内で個人的にセクハラを行うのと職場で部下を呼びつけてストリップショウを行うのは大きく異なっている。フィリピントヨタでは、加えて、会社内で公然と違法行為をやっても平気な風土がTMPCWAへの攻撃の中で作り上げられていた。

 フィリピントヨタは労使関係の問題でTMPCWAの勢力を弱くし御用組合を育成することを最大の課題にしてきた。そのために管理職はPT会議を最大限利用した。PT会議のPT とは Personal Touch of Boss の略で、労働者に対する管理職の対人的触れ合いということを意味するが、実際は管理職がTMPCWAの組合員を切り崩し、御用組合を強化するためにこの会議を利用してきた。そのほかにフィリピントヨタでは労使協議会と監督職組合がTMPCWA攻撃と一般職御用組合(TMPCLO)育成のために使われてきた。彼らの指導部はTMPCWA組合員の切り崩しなどの活動を勤務時間内に会社施設を使って行うことを認められていた。時間外活動や社外活動さえも残業として認められ、中には150時間の残業代を支給される者もいた。さらに、監督職組合委員長は会社の車を使った飲酒運転で事故を起こすとか、会社の野外パーティーで労働者に銃を向けたり、暴力を振るうという違法行為を行っても会社から大目に見られて来た。

 つまりフィリピントヨタはTMPCWAを弱め、御用組合を育成することを時間内に会社施設を使って行うことを認め、違法行為すら容認していた。そのことが社内風紀を堕落させ、管理職従業員に職場でストリップショウをやっても良いのだと思わせたのである。その大元にはフィリピントヨタとトヨタ自動車のTMPCWAとの団体交渉拒否という不当労働行為があったのであり、手段を選ばないTMPCWAに対する攻撃があった。


労働者を貧困に叩き込み、不法状態を作り出すトヨタは恥じない?

 トヨタは恥かしげもなく「内外の法およびその精神を遵守し」(『トヨタ基本理念』第1項)「あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む」(同第3項)と述べているが、事実は全く異なっている。

 トヨタはトヨタ車の生産に直接間接携わるほんの一握りの労働者に確かに相対的に高い賃金を払い豊かな消費生活を可能にしている。しかし、このほんの一握りの豊かな消費生活は過密・長時間労働による過労死・精神疾患や家庭・地域生活の破壊と同居している。また、トヨタは非正規労働者の導入によって日本社会の中に真面目に働いても明日に希望の持てない大量の労働者を生み出した。その賃金は子供を産み育て教育するには安すぎ、かつ仕事は将来にわたって保障されない。いや、トヨタの下請け労働者の中には親に頼ることなしには自分自身すら再生産できない貧困にあえぐ労働者すら生み出した。つまり、トヨタは下請企業との取引条件を切り下げることで労働者の貧困化を徹底的に推し進めた。それは下請企業に違法派遣、偽装請負、違法出向、残業割増・社会保健・年金未払い、有給休暇不支給、労災隠し、違法解雇、そして事実上の強制労働といった不法を強制するものであった。

 トヨタは自分が企業競争で勝利するために、1兆円を超える利益をあげるため、労働者を貧困に叩き込むこと、不法状態を作り出すことを平然とやってきたのであり、死者さえも生み出し続けている。トヨタの在職死亡は毎年60名を超えるといわれている。「法の遵守」「豊かな社会」など何処にもない。このようなトヨタが職場でストリップショウを行っても何の不思議もない。

 トヨタは襟を正すだろうか。トヨタは世界的な不買運動でもやらない限り事態を理解できないのであろうか。