『獣兵衛忍風帖BURST』が初公開されると聞いて、30年越しの川尻ファンとしては矢も楯もたまらず行ってきた。
体力的に厳しいので、オールナイト自体が学生時代以来20年ぶりになる。しかし、川尻監督自身が「今夜は寝かさないぜ(意訳)」と仰ったとおり、40男が一晩戦い抜いた!
氷川竜介氏の司会によるトークショーも時間がたっぷり取ってあって、聞きごたえがあった。印象的だった部分をメモ。以下は発言通りではなく大意。
『獣兵衛忍風帖BURST』は、1本4分の短編が3本の形式。
セリフはなしでいわゆる「息の演技」のみ。そのため、当初は必要なら川尻監督自身が演じるつもりで練習していた。
その後、声優学校出たての新人さんを使おうということになったが、音響監督の三間雅文氏(記憶によれば確か)と打ち合わせをしているところにまったく偶然に山寺宏一氏が通りかかり、挨拶がてら事情を話したところ獣兵衛を演じてもらえることになった。息だけなのに!
箕輪豊氏(『獣兵衛忍風帖』キャラデザイン・総作画監督)曰く「天才山寺氏のもっともムダな使い方」。
それでも三間氏は、「今のは40代の息。20代の息をしろ」と容赦なくリテイクを出したという。
川尻監督は、当初は『夏への扉』などで少女マンガ的・叙情的な絵を描く人と見られていた。
私は『妖獣都市』から入ったので少し意外だった。
『走る男』のアイデアは、ウォルター・ヒル監督の『ザ・ドライバー』から。
『妖獣都市』ではなぜか音響監督がおらず、兼務するはめに。専門用語がわからなくて苦労した。永井一郎氏が現場を仕切ってくれて助かった。
音楽をもらったのはダビングの前日。
おまけに音響効果担当の方が日常的な作品(寅さんのような)を主に手がけており、『遊星からの物体X』を観たことがないと言うので、まず『物体X』のビデオを観せるところから始めた。
銃声は『ブレードランナー』のようにしたかったので、3~4時間かけて作ってもらった。
箕輪氏「それであの作品ができちゃうのが驚異」
たぶん、蜘蛛女が断末魔に痙攣するシーンも『ブレードランナー』の引用。
フィルムは自然に空気感が出るのが良い。『バンパイアハンターD』で、吸血鬼は鏡に映らないという設定だがダンピールのDをどうするか考えた結果、半透明に映るということにした。この頃にはフィルムの感度が上がっていたので表現できた。
元々黒ずくめのDを半透明にしたので、テレビでは補正されてしまってわからないはず。劇場でよく確認してほしい。
Dが鏡に映るシーンなんてあったっけ?と思ったら、貴族の避難所を調べるシーンだった。確かにDの姿が透けて背景が見えている!
帰宅した後、WOWOWのHD放送をBD録画したものをプロジェクタで確認したら判別できたが、これまで気付かなかったのが不覚。
なお『D』は英語版の上映。日本語版で観たかったが、考えてみれば劇場公開したのは英語版だから、日本語版のフィルムは存在しないのか。他の2作とは、画面の美しさもさることながら音響効果が桁違いだった。VHS時代のOVAと比較するのも気の毒だが。
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