更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2014年8月28日(木)
インタビュー訓練の件

夏コミで買った氷川竜介先生の同人誌に、面白い記述があった。
インタビュー技術の教育の話である。
インタビュイーとのコミュニケーション術を鍛えるのかと思いきや、「頓挫しかけたパナマ運河計画を建て直すため、責任者の更迭後にアメリカから送られてきた人物が、成功までに行った実務」をトレースし、解決のキーポイントを浮かび上がらせるという課題だった、と言う。

まず、チームにはランダムに最初の三枚が渡されます。まったく論理構造が見えない三枚の紙を並べ、チームで討議する。議論の内容は、「次の三枚を取るための先生への質問」を抽出すること。
『ロトさんの本Vol.33 アニメ文章術』59ページ。


実は私も、これに似た訓練を受けたことがある。品質管理関係の仕事をしていた頃、ISO9000の監査官講習を受ける機会があった(業務に関係があるので勉強として受講させてもらっただけで、資格を持っているわけではない、念のため)。ISO9000は、事業所が品質管理体制を有するかどうかの規格である。ISO9000の規格に合格した事業所の製品なら、確実に品質管理がなされているとみなしてよい。
その講習の最終試験が、事業所役の教官に対し、学生が監査官として監査を行い、事業所の品質管理体制に問題がないかをチェックするというものだった。
試験として行うからには何か問題があったはずなのだが、何しろせいぜい2、3日の促成栽培だから、何を質問しても百戦錬磨の教官にのらりくらりとかわされてまるで歯が立たなかった。
そういう意味では今も悔いが残る。

今の私の本業である学問の世界の合言葉は、「問いを見つけろ」である。論文に必ず要求されるのが、問いと答え。問うにふさわしい問い(Reserch Question)を見つけたら、その研究は成功したも同然とよく言われる。
「正しい答えを得るには正しい問いを発さなければならない」のである。

以前紹介した『木を見る西洋人 森を見る東洋人』には、西洋人の思考様式を説明するこんなくだりがある。

文章技法(レトリック)
西洋の文章技法は、科学レポートから施政方針にいたるあらゆる文章の基本である。これには通常以下のような形式がある。
●背景
●問題
●仮説または命題の提起
●検証の方法
●証拠
●証拠が何を意味するかについての議論
●予想される反論の論破
●結論と提言

西洋人ならほとんど誰に聞いても、この形式は普遍的なものだと言う。これ以上明快かつ説得的に、自分が発見したことや提言したいことを人に伝える方法があるだろうか。いや、自分のやっていることを自分で考えるときでさえ、これ以上に有用な方法があるだろうか。
しかしながら、現実には、こうした直線的な文章技法は東洋においてはまったく一般的ではない。私自身が指導しているアジア人学生を見ても、直線的な文章技法を身につけることは一人前の社会科学者になるための最重要課題である。

リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』ダイヤモンド社、2004年、218-219ページ。


院生時代、私はこのページをコピーして机の前に貼っていた。というのも、この文章技法とはいわゆる「論文の書き方」そのものだったからだ。
つまり西洋人にとって、論文とはわざわざ書き方を教わるようなものではなく、思考の筋道そのものなのだ。

科学の大原則は、因果関係と再現性である。
物事には必ず原因があり、それに応じた結果がある。そして条件が同じなら、ある原因に対して常に同じ結果が出る。
「正しい答えを得るには正しい問いを発さなければならない」という格言も、こうした思考様式から自然に導かれたものに違いない。

なお、私が文章を書くとき気をつけているのは、一にも二にも誤字脱字がないことである。文章の質なんてのはそうそう変わるものではない。たくさん書いていればそのうち上達する(かもしれないし、しないかもしれない)。だが誤字脱字の根絶は、気をつけさえすれば誰でも、すぐにできることだ。

2014年8月11日(火)
「流星」の風防

日本海軍の艦上攻撃機「流星」。

逆ガル翼の日本機離れしたスタイルに、松本零士の戦場まんが「流星北へ飛ぶ」の主役を張ったことで、生産機数の少なさ・活動期間の短さの割には人気も知名度も高い。私も大好きな飛行機だった。
現存する実物は、世界でもスミソニアンの倉庫に眠る1機だけと考えられていたのだが、このほど、日本国内でそのキャノピー一式が発見された。
詳細な経緯は『丸』8月号別冊に詳しいのでここでは述べないが、その本物キャノピーが九州は熊本県玉名市歴史博物館「こころピア」で、8月の一ヶ月間だけ一般公開されると聞き、矢も楯もたまらず行ってきた。



まず印象的なのが、保存状態の良さ。古い飛行機はガラスが白く濁ってしまっていることが多いのだが、これは昨日作られたように透明なまま。一部割れているが、おかげでガラスの意外なぶ厚さもわかる。



キャノピーだけとは言え、本物を見なければわからないディテールというものがあり、特に感心したのが操縦席可動風防のスライド部。上の写真の左が可動部、右が固定部で、固定部下側にスライドレールがある。中央の錆びているのがレール内を移動するガイドピンだが、ガイドピンの基部が可動風防外側についていて、しかも可動風防の下辺全体に伸びている。枠の補強のためだろうか。
また、スライドレールの末端が下に曲がっていて、可動風防を閉めるとガイドピンがここに落ち込んで風防が密閉される仕組みになっている。簡単な仕掛けだが、他の大戦機ではあまり見た覚えのない機構である。



キャノピー後端の回転風防。戦闘時にはこれを横に回転させて収納し、後方機銃を露出させる。小学生時代にプラモデルを作ったとき、ここの処理がわからずさんざん悩んだ。当時は実機はもちろん資料もなかったのだ。

展示は8月30日までで、流星の風防だけなら見学無料。歴史の重みに、是非直接触れて頂きたい。どうせ行くなら、玉名歴史博物館の常設展示の方もおすすめする。戦国時代のフランキ砲の実物が見られる。


なお、上の画像は私が撮影してきたものですが、本稿への掲載に当たってはくまもと戦争遺跡・文化遺産ネットワークの了解を頂いております。

2014年8月6日(水)
今年も狂気の夏がやってくる

いや有明にではない。甲子園のことである。

以前、夏の甲子園大会優勝投手のその後という記事を書いた。
甲子園で活躍した投手は、プロではほとんど実績を残していない。あの大会の過酷な連投は間違いなく、投手に悪影響を及ぼしている-という趣旨だったのだが、先日、「平成17(2005)年の優勝投手は松橋投手ではなく田中将大である」という指摘を頂いた。

恥ずかしながらこの部分は参考資料そのままで、自分で裏を取っていなかった。折しもその田中がヒジの靱帯部分断裂を発症したところでもあり、改めて調べてみた

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