つい先日、日本の貧困率が16パーセントに達したとの報道があった。実に6~7人に1人が貧困層だという。いささか衝撃的。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110712-00001074-yom-soci
全国民の中で、所得の低い人がどのくらいの割合でいるかを示す「相対的貧困率」が2010年調査で16・0%と、前回(07年調査)より0・3ポイント悪化し、過去最高となったことが、厚生労働省が12日公表した「国民生活基礎調査」でわかった。
同省は、所得の低い非正規労働者や、高齢者の増加が要因とみている。
今回の調査で「貧困」とされたのは、09年の年間所得が112万円未満の人たち。国民の6~7人に1人が貧困状態であることを示している。1986年調査の貧困率は12・0%で、年々悪化傾向にある。経済協力開発機構(OECD)の00年代半ばの調査では、加盟30か国の平均は10・6%だった。
やっぱりそうなのかと思いきや、一方でこんな分析も。2010年2月の記事だが、
http://miyajima.ne.jp/index.php?UID=1265600640
2005年頃の日本の貧困率は14.9%だ。先進国平均(10.6%)よりも高い。先進国の中で4番目に高い水準となっている。(OECD統計より)
しかし、ここにもカラクリがある。ここでいう貧困率とは、相対的貧困率のことで、その定義は「世帯所得の中央値の、さらに半分以下の所得の世帯比率」というものだ。日本の場合は、世帯所得250万円以下が目安となる。
一方、絶対的貧困率を見ると、日本は先進国の中で最も低い水準である(Pew Global Attitudes Projectという国際世論調査2002年版より)。絶対的貧困とは、食料、医療、被服などの生活必需品を調達できないレベルの貧困を意味する。
さらに、所得格差の大きさを示すジニ係数についても、リンク先ではこう言う。
日本で格差社会が広く話題になったのは、大手メディアが2006年から格差社会キャンペーンをはったからだ。その際に、格差拡大の根拠としてあげられたのが、2002年に所得のジニ係数が0.4983になったというものである。この数字だけを見ると、25%の富裕層が所得総額の75%を得ている計算になる。この20年間で大幅に上昇し、2005年には0.5263にまで拡大した。
ところが、0.5263というジニ係数は、当初所得が元データとなっている。この当初所得には、年金収入や医療費給付などの社会保障給付が含まれていない。つまり、極端な話、高齢者の所得がゼロとして計算されるので、高齢化が進む日本では格差拡大の指標としては役に立たない。
同時期のジニ係数を元データを変えて見てみると、可処分所得のジニ係数は0.314で、先進国平均と変わらない。可処分所得は、社会保障給付などを再分配した後に家計が自由に使えるお金である。可処分所得のジニ係数は2000年代に入って減少傾向にある。つまり、「小泉政権下で格差は縮小した」というのが真実だ。
こうなると、もう素人の私には判断つかないので、とりあえず両論併記。ただし、リンク先でも資産格差はともかく世代間格差の存在を否定してはいない点に注意。
ついでに最近読んだ本。小池和男『日本産業社会の「神話」-経済自虐史観をただす』(日本経済新聞出版社、2009年)。
統計資料を基に、長らく日本企業の特徴とされてきた、労働者の企業への忠誠心、終身雇用制度、年功賃金及び企業別組合は、べつに日本特有のものではないと論証した本。
真実は一体どこに?
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