先日から、マイラノベ強化月間で「とらドラ!」をイッキ読みしていた。
いや面白かった。
同時に、アニメ版がいかに巧みな脚色をしていたかもよくわかった。
ラストシーンが大きく違っているのは有名だが、あえてとりあげたいのは標記のシーン。24話「告白」で、実乃梨が竜児への別れに、拳に口づけるシーンである。これは原作にもある名シーンの一つだが、アニメ版には2つ、違いがある。
1つは実乃梨の動作そのものの違い。原作では自分の拳にキスしてから竜児にパンチをかますが、アニメ版では逆に、先に竜児にパンチして、竜児が立ち去った後自分の拳に口づける、という情感あふれる描写になっている。
もう1つの違いはあまり指摘されていないようだが、このシーンそのものの位置である。
この一連の場面は空き教室→@→廊下→2-C教室→昇降口→保健室→Aと、めまぐるしく舞台が変わる。
原作では@にジャイアントさらばがある。アニメ版ではAに変わっている。
この変更の理由は2つ考えられる。
1つは、感情の流れ。
読者の意思で前後に行きつ戻りつできる文章表現と違って、時間芸術である映像表現は、感情の流れを殺さないことがより重要になる。
とりわけこの場面のような、感情の高揚がそのまま「走る」というアクションになっているときに、「別れの儀式」をやっていたら、それ自体の効果も薄れてしまうし高揚感、疾走感を損なってしまうだろう。
そしてもう1つの、より重要な理由は、ヘアピンの一件である。原作ではこのシーンよりもっと前(9巻81ページあたり)に、「クリスマスのできごとをなかったことにしようとした」ことを竜児に謝罪する実乃梨の描写がある。アニメ版では、これが保健室のシーンに変更されている。ここでようやくすべてが清算されたので、晴れてジャイアントさらばができるのである。
これが、映像化の醍醐味というものだ。
ついでだけど、大河の生徒手帳にはさんだ写真の伏線、原作では回収忘れてない?(いちいち書かなくても察しはつくが)
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