更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2008年9月23日(火)
タンパベイ・レイズ

メジャーリーグ・アメリカンリーグ東地区で、タンパペイ・レイズがプレーオフ進出を決めた。

MLB公式ホームページのニュースより。
『「9=8」のスローガンとともに レイズ初のPOへ
2008年9月21日 (日) 14:28 MAJOR.JP

【セントピーターズバーグ20日=Bill Chastain / MLB.com】
ひとりのファンが、三塁側ダッグアウト後ろの席でサインボードを掲げていた。そのボードに書かれていたのは「私の頬をつねって」というメッセージ。1998年の球団創設以来、ア・リーグ東地区のどん底がほぼ指定席だったタンパベイ・レイズが、ついに初のプレーオフ進出を決めたのだ。

 この日のミネソタ・ツインズ戦、9回2死からツインズのジョー・モウアー捕手が打ったファウルフライをグラブに収め、歓喜のウィニングボールを手にしたルーキーのエバン・ロンゴリア三塁手は「普段と何も変わらなかったけど、捕った後に気がついたよ。プレーオフに行くんだってね」と、はずむようにコメントした。

 先発エース格のスコット・カズミアー投手は、春季キャンプの時点でレイズのプレーオフ進出を断言していた。そのカズミアーが球団史に残る歴史的なゲームで6イニングを零封、今季12勝目を挙げたのはまさに適役だったと言える。「(カズミアーの発言は)うれしかったね。その彼が、この大事な試合でよく投げてくれた」と、ジョー・マドン監督は語っている。

 そんなマドン監督はこの春、「9=8」というスローガンが書かれたTシャツを選手全員に配ったが、その意味を試合後ついに明かした。9人の選手が9イニングを全力で戦えば、メジャー全体で8チームだけに与えられるプレーオフ出場権を手にすることができるというものだ。「9=8というセオリーと現実が、一体となった」マドン監督が微笑を浮かべると、「チーム全体がスローガンを信じてやってきた」と、ロンゴリアも同調した。

 シーズンを通じ、投手力、守備力、そして勝負強い打力と三拍子揃った戦いぶりをトレードマークとしてきたレイズ。この日の勝利にもその3つが反映された。「バットが振れてきているしタイムリーも出たが、うちの強みはやはり投手力と守り。先発陣がよく投げ、バックが守ってくれるから勝てるんだ」と、マドン監督は締めくくっている。』


私は、一昨年の秋、岩村明憲選手がタンパベイ・デビルレイズに移籍することが決まったとき、こんなことを書いている

私の心配は杞憂に終わり、チームは長期的な戦略に基づいて岩村選手を獲得したようだ。日本での優勝経験を生かして、、ベテランとしてチームをまとめ上げ引っ張る役割を期待されたのである。岩村は1番打者として今シーズン147試合に出場、91得点は立派な成績である。

貧乏なデビルレイズは高額年棒の選手を雇えないので、自力で発掘した無名選手を地道に育て上げてきた。ようやくその努力が実を結んだというわけである。実際、専門家の間ではレイズはいずれ最強のチームになるという予測が数年前からなされていたという。

http://number.goo.ne.jp/baseball/mlb/column/20080822-1-1.html
http://number.goo.ne.jp/baseball/mlb/column/20080415-1-1.html
http://number.goo.ne.jp/baseball/mlb/711/20080904-2-1.html
http://number.goo.ne.jp/baseball/mlb/column/20070702-1-1.html


リンク先の記事によると、レイズの年棒総額はヤンキースの2割にも満たない。そのチームが下馬評をひっくり返して優勝したのだから、近年まれに見る痛快事である。ぜひこのままワールドシリーズを制覇して欲しい。

10/2追記。
ちょっと訂正。「無名選手を発掘」というくだりはちょっと事実にそぐわない。と言うのもMLBのドラフトは完全ウェーバー制で、成績の悪いチームが優先的に指名権を得るので、最高の素材は常に最低のチームに入ることになるのだ。
つまりレイズは万年最下位だったからこそ、毎年有望な新人が入団してきたわけ。
もっとも完全ウェーバー制の下でも、パイレーツやオリオールズ、レンジャースなど一向に浮上してこないチームが数多くあることを考えれば、レイズの戦略の確かさはやはり賞賛されるべきだろう。
そして、優勝したりFA権を取得すると年棒が一気に高騰するため、有力選手がごっそり移籍してしまってあっという間に凋落するのも、メジャーの常だ。
マーリンズとかダイヤモンドバックスとかな。

2008年9月21日(日)
「鉄腕バーディ DECODE」

久々に時事ネタ。
いよいよオーラス前の「鉄腕バーディ DECODE」12話。
黒幕シャマランがいよいよ本性を現し、TVに演説を流す。
下はそれを聞いた室戸が、シャマランの真意が人類の選別=ジェノサイドだと悟るシーンだが、背景に注目。



何気なく通りかかる家族連れと妊婦さん。

「選別される」のは、まさにこれから生まれ来る命であることをさりげなく見せて、その恐怖を印象づけているのだ。
これが、「映像で語る」ということだ。

脚本:山文彦
絵コンテ:渡辺信一郎(!)
おまけに作画監督が松本憲生、の超豪華版。

山脚本は、今回もシャマランの客船「LOST BIRD」のロゴを手がかりに使ったり、リュンカが狙いを人間に絞ったことと引っかけたり、小道具の使い方はもう天才的。

「BIRDY」とつとむとの絆が失われてしまったこととも引っかけてるのかも。


何だか、久しぶりにアニメの話書いた気がするな。

2008年9月17日(水)
英国情報部

最近の読書から。

中西輝政先生の「国まさに滅びんとす」を読んだ。大英帝国の歴史から我が国を憂うる、というタイプの本なのだが、007の国・英国の情報活動についてこんな記述が。

『情報の収集は、イギリス的な発想では何よりも機知の発露でなければならず、「コモン・センス」こそウィットの母なのである。専門家はとかく「常識」に乏しくウィットに欠ける、ということは、我々ですら日常繰り返し感じることの多い事実である。(中略)イギリス情報部はこうしたアマチュアとして、文化人を多用する伝統を有した。
イギリス情報部の祖といえる上述のウォルシンガムは、詩人のベン・ジョンソンやクリストファー・マーローなど、多くの文人をスペイン無敵艦隊の情報収集に投入した。そしてこの伝統は、その後十八世紀初めのダニエル・デフォーや、十九世紀「パクス・ブリタニカ」時代の詩人として有名なラディヤード・キップリングを経て、周知のように二十世紀においてはサマセット・モームやグレアム・グリーンといった作家、レスリー・ハワードやグレタ・ガルボなどの俳優が受け継ぎ、イギリス情報部の有力なエージェントとして活躍した。ノエル・カワードもその一人であったが、彼はその回想の中で、「私は誰からもよく知られた有名人であったため、【スパイとなるには目立ちすぎる】という考えを人々の中に起こさせるよう、ことさらに努めた。講演のたびに秘匿のための【最上の方法】として情報活動の知識をひけらかすのをつねとしていた」と語っている。』

もうずっと昔、映画「ロシア・ハウス」('90)を観たときのこと。ショーン・コネリー演ずる主人公の作家が、情報部にスカウトされてスパイをする羽目になるのだが、そのパンフレットで、「なぜ彼がすんなりスパイを引き受けてしまうのか分からない。英国人の友人に聞いたら、『それがイングリッシュネスだ』との答えが返ってきた。『イングリッシュネス』を英国人気質と訳してみてもピンとこず、詳しく聞いたらだんだん難しい話になってきて、結局分からなかった」という話を誰だかが書いていたのを、今でも良く覚えている。

何のことはない、有名人をスパイに仕立てるのは、あの国の伝統芸だったのですな。

2008年9月10日(水)
フォークランド紛争

最近の勉強から。

フォークランド紛争は、1982年4月から6月にかけて、南極圏の小島群フォークランド諸島の領有権を巡って、イギリスとアルゼンチンの間で行われた紛争である。

アルゼンチン軍の侵攻に対して、イギリスは本国から13,000キロも離れた絶海の孤島を守るために機動部隊を派遣し、「鉄の女」サッチャー首相は大いに面目を施した。
しかし、当時世界唯一だったVTOL戦闘機ハリアーの活躍ばかりが喧伝されるこの戦いにおいて、アルゼンチン空軍は果敢に戦い、イギリス機動部隊に大きな損害を与えた。
沈没艦が数隻ですんだのは、命中した爆弾のほとんどが不発だったからで、全てが爆発していたら機動部隊は全滅していたかもしれないと言われる。

この不発の理由というのが、あまりに超低空で投弾したので爆弾の安全装置が外れる前に命中したためだった。

ここまでは割と有名な話。

今日初めて知ったのだが、そのアルゼンチン空軍を指導して基礎を築いたのは、旧ドイツ空軍の大エース、ハンス・U・ルーデル大佐であった。

スツーカを駆ってソ連戦車500台以上を撃破した伝説的人物である。
そりゃ超低空攻撃にもなるというものだ。

奇しくもルーデルの没年は'82年である。


なお、アルゼンチン空軍はフォークランド侵攻にあまり乗り気でなかった。
一番積極的だったのは海軍である。
ところがいざ開戦すると、景気のいいことを言っていた海軍は、イギリスの原子力潜水艦の跳梁を恐れて一度も港から出撃せず、何の役にも立たなかった。
空軍は、当初の思惑がどうあれ、開戦後はもっとも勇敢に戦ったのである。

この実に時代錯誤で古典的な戦争で、アルゼンチン空軍は敗れたとは言え、見事一花咲かせたのであった。

2008年9月3日(水)
「一球の心理学」

野球の話。

サブタイトルに、「勝負を分ける微妙なアヤを読み解く」とある。何となく、マウンド上で投手は何を考えているのか、打者はバッターボックスで何を考えているのか、といった本を連想するが、さにあらず。
統計学を駆使した、本物の学問としての心理学の本である。
例えば、こんな具合だ。

「伸びるボール」は、速度の錯覚による
打者の目は、ボールの接近速度を正確に検知できないため、落下軌道の予測に錯覚を生じる。これが、「伸びるボール」の正体。
私は、「マグナス効果により生じる浮力」の説を採りたいが、本書では触れていない。

「2年目のジンクス」は、「平均値回帰の原則」による
時間とともに変動するデータは、あるピークの次は必ず全体平均に近づく。統計学上これを「平均値回帰の原則」という。つまり、1年目に大活躍した選手の2年目の成績は、その選手がよほど突出した才能の持ち主でない限り、必ず平凡なものになる(リーグの全体平均に近づくため)。
研究されて、前年の武器が通用しなくなるためとかいう意見を完無視しているのが潔い。

「好不調の波」は、単なる確率の問題
連勝連敗とか、連続ヒット試合数、逆に連続ノーヒットといった記録は、好不調ではなく単なる確率で説明できる。13試合連続安打は、運だけで起こりうる。それどころか、これまで大リーグで記録された連続安打記録は、全て運で説明できる。
ただし、ただ一つの例外がジョー・ディマジオの56試合連続安打記録。
計算によると、この記録が1度だけでも起こりうる(50パーセント以上の確率)には、1000試合以上出場した通算打率.400以上のバッターが最低4人、または通算打率.350以上のバッターが52人必要。現実には、通算.350以上打っているバッターは3人しかいない。
それゆえに、これだけは絶対に更新できない記録と言われている。

とどめがこれ。

野球選手は、どうしてフライを捕球できるのか
そんなもん、落下位置を予測して動くからに決まってるじゃないかと思うだろう。ところがちょっと考えてみると、落下位置を予測するには、打者が打ち上げたボールの初速と角度を「正確に」測定しなければならない。人間は目視でそんなことはできない、とすぐにわかるだろう。さらには風の影響もある。
では、どうやっているのか。
モデルを考案した研究者がいる。
視界の中のボールの動きが常に同じ割合で上方向に動くように野手が動けば、ボールも野手も同じ地点に同時に到達する。これをOAC(Optical Acceleration Cancellation)モデルという。しかしこのモデルで説明がつくのは、ボールがまっすぐ野手の方へ向かってくる場合だけである。
経験のある人はすぐ分かると思うが、まっすぐ飛んでくるボールの捕球は、むしろ難しいものである。
そこで新たに考案されたのがLOT(Linear Optical Trajectory)モデルというもの。野手は飛んでくるボールの軌道がまっすぐに見えるような方向に動き、軌道が曲がれば、走る方向やスピードを変えて軌道をまっすぐに見えるよう修正する。そうすれば、ボールと同時に落下点にはいることができる。ボールが野手の位置から前後どれくらいに落下するのか、左右どのくらいの距離に落下するのか、2つの角度を同時にコントロールするので、あらゆるフライに対応できる。
れっきとした物理学者が、大学でこういう研究をしているのだ。

のどかだなあ、と思うなかれ。本書によると、この研究はNASAの科学者からも注目されている。

何でかというと、弾道ミサイルの落下軌道予測に応用できるからだ。科学というものの波及する範囲は、これほどに広いのである。


かねてからの懸案だった、サイト内検索設置しました。

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