【ゴースト・ハント】

H・R・ウェイクフィールド
今本渉・倉阪鬼一郎・鈴木克昌・南條竹則・西崎憲訳

「ラジオをお聴きのみなさん、ゴースト・ハントの時間がやってまいりました……」 建築以来三十人もの死者を出したという幽霊屋敷訪問を実況中のラジオ番組リポーターの恐怖体験を描いて鬼気迫る 「ゴースト・ハント」。川辺に建つ古い館を借りた画家親子を襲う “緑のもの”、恐怖と戦慄の名篇 「赤い館」。雪が降ると人々はその山に登らないという。土地の伝説を一笑した二人の旅行者の運命は……山岳怪談 「ケルン」。実在の魔術師アレイスター・クロウリーをモデルにした怪人物をめぐって凄絶な呪術戦が展開する 「“彼の者現れて後去るべし”」。インドを舞台に、子供の魂を狙う邪霊がひそむ魔所を精妙な筆致で描いた 「チャレルの谷」。前任者の不慮の死によって名誉ある地位に就いた数学者が周囲で勃発する怪現象に追い詰められていく 「不死鳥」……。伝統的な幽霊譚から新境地をひらいた晩年の傑作まで、M・R・ジェイムズ以来の英国怪奇小説の正統を受け継ぎ、その頂点をきわめた怪談の名手H・R・ウェイクフィールドの傑作全18篇を収録。

創元推理文庫 2012年6月刊 本体1200円 [amazon]
◆装丁=中島かほる
◆装画=北川健次

『赤い館』 (国書刊行会)収録作9篇に、本邦初訳5篇を含む9篇を大幅増補。

【収録作品】 赤い館/ポーナル教授の見損じ/ケルン/ゴースト・ハント/湿ったシーツ/“彼の者現れて後去るべし”/“彼の者、詩人なれば……”/目隠し遊び/見上げてごらん/中心人物/通路(アレイ)/最初の一束/暗黒の場所/死の勝利/悲哀の湖(うみ)/チャレルの谷/不死鳥/蜂の死/解説:最後のゴースト・ストーリー作家(鈴木克昌)
H・ラッセル・ウェイクフィールド (1888-1964)
イギリスの作家。オックスフォード大学卒業後、新聞社主の秘書、軍隊経験を経て、出版社に勤務。執筆に手を染める。怪奇小説集 『彼らは夕暮れに帰る』 『老人の顎鬚』 『棺の中の男』 『時計は12時を打つ』 他やミステリ長篇がある。抑制のきいた文体で簡潔に物語を展開し、最大限の恐怖効果を演出する、レ・ファニュ、M・R・ジェイムズとつづく英国怪奇小説の正統を受け継ぐ最後の作家。