【E・C・R・ロラック作品】
ジョン・ブラウンの死体 悪魔と警視庁 鐘楼の蝙蝠 曲がり角の死体

【鐘楼の蝙蝠】
Bats in the Belfry (1937)

E・C・R・ロラック
藤村裕美訳

親族の葬儀の後の集いで、「死体を始末する良い方法は何か」 という不謹慎な話題に興じた夜、作家ブルース・アトルトンは、ドブレットと名乗る男から電話があったと執事に知らされ、顔色を一変させた。どうやらブルースはこの外国訛りの怪人物に付きまとわれているらしい。彼の身を案じた友人の頼みで、新聞記者グレンヴィルはドブレットの住む荒れ果てた建物を突きとめるが、戸口に現れた髭と眼鏡の男に追い払われてしまう。翌日、無人となった建物に入り込んだ彼は、地下室でブルースのスーツケースを発見する。一方、パリへ旅立ったはずのブルースはそのまま消息を絶っていた。通報を受けた警察が件の建物、ベルフリー(鐘楼)・スタジオの調査に乗り出すと、壁の中から首と両手を切断された死体が……。二転三転する事件の謎を追うマクドナルド首席警部の活躍。

◆創元推理文庫 2014年3月刊 本体860円 [amazon]
◆解説=駒月雅子


【悪魔と警視庁】
Devil and the C. I. D. (1938)

E・C・R・ロラック
藤村裕美訳

濃霧に包まれた休戦記念日の深夜、ロンドン警視庁へと車を走らせていたマクドナルド首席警部は女性がひったくりに遭うのを目撃した。車を降りて犯人を追いかけ、バッグを取り戻したマクドナルドは、本庁に車を置いてそのまま帰宅したが、翌朝、その車の後部から悪魔メフィストフェレスの扮装をした男の刺殺死体が発見される。捜査の結果、前夜、車を停めた場所の近くで開かれていた退役軍人支援の仮装舞踏会にメフィストフェレスに扮した人物が数人いたこと、参加者のひとりで引退したオペラ歌手の車に 《ファウストの劫罰》 の楽譜とナイフが残されていたことが判明。身元不明の死体の謎を追って舞踏会の関係者を訪ね歩くマクドナルドの前に、やがて第二の事件が……。魅力的な発端と次々に深まる謎、英国ミステリ出版の老舗、コリンズ社 〈クライム・クラブ〉叢書の人気作家だった本格派ロラックの代表作。

◆創元推理文庫 2013年3月刊 本体840円 [amazon]
◆解説=森英俊

写真:David Savill / Getty Images
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ


【曲がり角の死体】
Death at Dyke's Coorner (1940)

E・C・R・ロラック
藤村裕美訳

豪雨の夜、ダイクス・コーナーと呼ばれる危険なカーブで発生した衝突事故。大破した車の運転席で男の死体が発見されるが、死因は一酸化炭素中毒、事故の一時間以上前に死亡していたことが判明、警察の捜査が始まる。被害者モートン・コンヤーズは現代的なチェーンストアのオーナーで、その強引な出店計画は土地の商店主たちの反撥を招き、また私生活でも多くの問題を抱えていた。様々な疑惑が渦巻くなか、事件当夜の被害者の車の軌跡を追うマクドナルド首席警部が辿り着いた真相とは……。英国探偵小説の醍醐味を満喫させるロラックの代表作。

◆創元推理文庫 2015年9月刊 本体1140円 [amazon]
◆解説=林克郎

装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ

E・C・R・ロラック (1894-1958)
イギリスの探偵作家。キャロル・カーナック名義とあわせて70冊以上の長篇を発表。巧みなプロットとストーリーテリング、魅力的な風景描写に定評がある。