アンナ・カヴァン
山田和子訳

異常な寒波のなか、夜道に迷いながら私は少女の家へと車を走らせた。核兵器の使用がもたらした地球規模の気候変動により、極地から漂い出した氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような 〈高い館〉 で絶対的な力を振るう 〈長官〉 と対峙するが……。刻々と迫り来る氷の壁、地上に蔓延する略奪と殺戮。恐ろしくも美しい世界終末のヴィジョンで読者を魅了し、冷たい熱狂を引き起したアンナ・カヴァンの伝説的名作。

◆バジリコ  2008年6月刊 本体1800円 絶版 ※文庫化=ちくま文庫
◆装丁=妹尾浩也(iwor)

◆ブライアン・W・オールディスによる1970年版序文を併録。
◆サンリオSF文庫版 (1985) を全面改訳。


アンナ・カヴァン (1901-1968)
イギリスの作家。フランスのカンヌ生まれ。ヘレン・ファーガソン名義で長篇数作を発表後、『アサイラム・ピース』 (40) からアンナ・カヴァンと改名。不安定な精神状態を抱え、ヘロインを常用しながら、不穏な緊迫感に満ちた先鋭的作品を書き続ける。世界の終末を描いた傑作長篇 『氷』 (67) で注目を集めたが、翌68年に死去。他の邦訳に短篇集 『われはラザロ』 『ジュリアとバズーカ』、長篇 『愛の渇き』 『あなたは誰?』 (文遊社)がある。