藤原編集室の2006年


2006年、藤原編集室はこんな仕事をしてきた。

1月 ノーマン・ベロウ 『魔王の足跡』 (世界探偵小説全集/国書刊行会)
9月 マージェリー・アリンガム 『屍衣の流行』 (世界探偵小説全集/国書刊行会)
9月 若島正 『殺しの時間』 (バジリコ)
10月 ジャック・リッチー 『10ドルだって大金だ』 (河出書房新社)
11月 ジェラルド・カーシュ 『壜の中の手記』 (角川文庫)
12月 柴田宵曲 『明治の話題』 (ちくま学芸文庫)
12月 マイクル・イネス 『アララテのアプルビイ』 (河出書房新社)
12月 バーバラ・M・スタフォード 『ボディ・クリティシズム』 (国書刊行会)

前半はまったく本が出ず、9月以降で帳尻を合わせたかたちの一年だった。その最大の要因は諸般の事情による 《晶文社ミステリ》 の突然の中絶だったわけだが、さいわい、版元を河出書房新社に移して、新シリーズ 《KAWADE MYSTERY》 として再スタートを切ることができた。クラシック・リヴァイヴァルは完全に定着し、すでに新たな段階にはいっているが、そのなかで生き残っていくためには、やみくもに出していくのではなく、やはりそれなりの知恵と工夫が必要だ。《世界探偵小説全集》 が黄金時代ミステリの再発見を促し、《晶文社ミステリ》 がカーシュ、A・H・Z・カー、スタージョン、イーリイ、リッチーらの短篇集によって 〈異色作家〉 復権の一翼を担ったように、今度の 《KAWADE MYSTERY》 も新しい驚き、楽しい出会いを数多く提供することができればと思う。とりあえず来春早々の法月綸太郎編/ロバート・トゥーイ 『物しか書けなかった物書き』 をお楽しみに。
スタフォードの大作 『ボディ・クリティシズム』 は数年来かかえこんでいた難物で、なんとかぎりぎりで年末に間に合わせることができた。各章がそれぞれ優に1冊分に値する驚異的な密度と速度をもつ凄い本。
『殺しの時間』 や 『明治の話題』 も楽しい仕事だった。今後は翻訳物以外の企画も増やしていきたいと思っている。

(2007.1.2)

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