【郵便局と蛇】

A・E・コッパード
西崎憲 編訳

虎の皮を被ってライオンと戦うはめになった男が、見世物の檻の中で出会ったのは……ユーモラスな展開の中に人生の深淵を垣間見る 「銀色のサーカス」、その沼には世界に仇なす蛇が封じられ、最後の審判の前日に解き放たれるのを待っていた……「郵便局と蛇」、母の乳房、心臓の鼓動、鼠捕り、砕かれた両手……精緻で謎めいたイメージが交錯する 「アラベスク――鼠」、電信柱と柳の木の奇妙な恋の物語 「若く美しい柳」 など、日常の裏側にひそむ神秘と怪奇、啓示と奇蹟を詩情ゆたかに描く、孤高の作家コッパードの珠玉の短篇集。編者によるコッパード小伝を付す。

国書刊行会版に新訳 「アラベスク――鼠」 を追加収録。

◆ちくま文庫 2014年9月刊 880円(税別) [amazon]
◆装丁=妹尾浩也 装画=ハリー・クラーク


◇牧眞司氏評(NEWS本の雑誌
読売新聞短評

【収録内容】
銀色のサーカス
郵便局と蛇
うすのろサイモン
若く美しい柳
辛子の野原
ポリー・モーガン
アラベスク――鼠
王女と太鼓
幼子は迷いけり
シオンへの行進
 A・E・コッパードについて  西崎憲
 A・E・コッパード書誌
アルフレッド・エドガー・コッパード (1878-1957)
イギリスの作家・詩人。ケント州の港町に生まれ、早くに父親を亡くし、メッセンジャーボーイ、商店の店員、運送屋、工場の会計係などの職を転々とする。優れた短距離走選手でもあった。40歳近くなって短篇や詩の執筆をはじめ、やがてまとめられた作品集 『アダムとイヴとツネッテ』 (1921) で高い評価を受ける。生涯で20冊以上の作品集を遺した短篇の名手。
西崎憲
1955年生まれ。作家、翻訳家、アンソロジスト、音楽レーベル主宰。2002年、『世界の果ての庭』 で第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。著書に 『蕃東国年代記』 『ゆみに町ガイドブック』 『飛行士と東京の雨の森』、編訳書に 『短篇小説日和』 『怪奇小説日和』 『ヴァージニア・ウルフ短篇集』 『エドガー・アラン・ポー短篇集』 『ヘミングウェイ短篇集』 ほか。