【奥の部屋】

ロバート・エイクマン
今本渉 編訳

子供の頃、誕生祝いに買ってもらった人形の家には、外からは見ることができない部屋があった。月日が流れ、大人になった私は徒歩旅行の途中で道に迷い、あの人形の家そっくりの屋敷にたどりつくが……不穏な気配に満ちた 「奥の部屋」。婚約者の両親を田舎に訪ねた女性が、森の中の魔の領域に足を踏み入れる 「髪を束ねて」 ほか、謎めいた暗示と象徴、魂の奥処をゆさぶる戦慄によって、幽霊不在の時代における新しい恐怖を描く、モダン・ホラーの極北、エイクマン傑作集。増補文庫化。

国書刊行会版に 「何と冷たい小さな君の手よ」、「スタア来臨」 (新訳) を追加収録。

◆ちくま文庫 2016年1月刊 950円(税別) [amazon] [honto]
◆装丁=妹尾浩也

◆装画=フェルナン・クノップフ 『私は私自身に扉を閉ざす』

【収録内容】
学友
髪を束ねて
待合室
何と冷たい小さな君の手よ
スタア来臨
恍惚
奥の部屋
 訳者あとがき  今本渉
 ロバート・エイクマン著作リスト

ロバート・エイクマン(1914-1981)
イギリスの作家。祖父に怪奇長篇 『黄金虫』 (1897) を書いたリチャード・マーシュをもつ。運河の保存を目的とする内陸運河協会の設立に関わり、協会の秘書をしていたエリザベス・ジェイン・ハワードとの共著で作品集 We Are for the Dark (1951) を出版。1955年にシンシア・アスキスの怪奇小説アンソロジーに収められた 「鳴りひびく鐘の町」 は、このジャンルの名作として高い評価を得る。Dark Entries(1964) を皮切りに、作品集を次々に刊行、そのストレンジな味わいの短篇はモダンホラーの書き手たちにも衝撃をあたえた。


今本渉
1961年生まれ。訳書にL・P・ハートリー 『ポドロ島』、エリオット・ポール 『不思議なミッキー・フィン』、マイクル・イネス 『アララテのアプルビイ』 (以上河出書房新社)、ジョン・フランクリン・バーディン 『死を呼ぶペルシュロン』 (晶文社) などがある。