はやわかり日本経済
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しおり


1.日本経済の現況(08.08.21)


2.米国経済の現況

(参考1)

1.日本経済の現況

<08/8/19 日銀総裁の会見要旨> (8月21日更新)

市場調節方針決定の背景

(第一の柱について)
わが国の景気はエネルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化などを背景に停滞している。
交易条件の悪化による所得形成の弱まりなどから設備投資は横ばいとなり、個人消費は弱めとなっている。先行きは当面、停滞を続ける可能性が高いが、設備、雇用面の過剰を抱えているわけではないため、国際商品市況高が一服し、海外経済も減速局面を脱するにつれて緩やかな成長経路に復していくと予想される。
  物価面では
消費者物価がプラス2%程度と高い伸びとなっている。先行きは当面、上昇率がやや高まったあと、徐々に低下していくと予想される。このようにわが国経済は物価安定のもとでの持続的な成長路線に復していくとみられる。

(第二の柱について)
リスク要因をみると、国際金融資本市場は不安定な状態が続いている。米欧金融機関の損失拡大や世界的な景気後退懸念などを背景に信用スプレッドは高めの水準が続き、株価も不安定な動きを続けている。
米国経済は停滞しており、世界経済には下振れリスクがある。国内民間需要については国際商品市況の動向を反映した所得形成の弱まりから下振れリスクがある。設備、雇用面での調整圧力がないとはいえ景気の面では下振れリスクに注意する必要がある。
 物価面では国際商品市況高を背景に世界的にインフレ圧力が続いている。国際商品市況が反落しているが、この傾向が定着するかどうかは不透明だ。わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など上ぶれリスクに注意が必要だ。この間、
景気の下振れリスクが薄れる場合には緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。

(景気判断について)
「停滞」と表現を変えたが、日本銀行として景気の判断を大きく変えたわけではない。4月に「景気は減速」という表現を使って、7月は「景気はさらに減速」とした。「さらに減速」という状態を「停滞」と表現すべきかどうかについては、その時点では十分なデータがそろっていたわけではなかったので次回以降議論していこうということだった。また
「停滞」といっても、景気が大きく落ち込む可能性は小さいと判断している。

(国際商品市況について)
最近の原油価格の下落の背景には、一つは世界経済の原則を受けた需要の減少、二つ目は投機的要因のはく落などが指摘されている。現時点ではこうした要因のいずれが支配的なのか特定することは難しい。原油価格の低下は日本にとって交易条件の悪化を緩和するものだから景気にとってプラスに働く。ただ
足元の原油価格の下落が世界経済の減速によるものならば、日本の輸出を減少させることにもなる。

(米国経済について)

米国の金融市場、金融システムは1年間の動きを踏まえると少しずつ性格が変わってきているように思う。昨年夏の段階で流動性危機が発生し、その後に信用収縮が明確化、最近は金融システムと実体経済のマイナスの相互作用が懸念されるという状態だ。こうした相互作用がいつどのように収束するかは、なお帰すうが見えない状況と判断している。
米国の成長率は2008年前半は減税の効果もあり数値的には予想比より若干高かったわけだが、この下期にかけては停滞というのが一般的な見通しだろうとみている。

(景気底抜けの恐れについて)

1990年代、2000年代の初頭は設備、在庫、雇用で日本経済は大きな過剰を抱えていた。今回は設備についても雇用についても、現在調整圧力を抱えていない。在庫が少し足元で増えているが、大きな調整圧力を抱えているわけではなく、
景気が大きく落ち込む可能性は小さいと現状では考えている。

(景気の調整期間について)

今回、足元が停滞ということがデータで確認され、この先も停滞が続くという見通しを出した。今日の議論の印象では、
最終的に経済が回復してくる時期のイメージは、従来から足元が低下している分だけ先ずれしているということだったかと思う。

(注目ポイントについて)
資源・エネルギー価格、食料品価格の上昇
は、その背後にある世界経済全体の成長ということからすると日本の輸出にとってプラス要因になるが、非常に高い上昇は持続可能ではない。価格上昇が安定することが世界経済の安定的な成長にとって一つの大事な要素だと思う。もう一つ世界経済にかかわる要素はサブプライムローン問題に端を発する金融市場、金融システムの問題である。これも重要な要素になると思う。以上(8/20 日経新聞 一部略)


<08/6/13 日銀の基本的見解
*6月12日、13日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定。

わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している。
・輸出は、足もと幾分鈍化しつつも増加を続けている。
・企業収益は、交易条件の悪化等を背景にこのところ減少している。
・設備投資は増勢が鈍化している。
・個人消費は、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、底堅く推移している。
・公共投資は低調に推移している。
・住宅投資は緩やかに回復している。
以上のような内外需要のもと、生産は横ばい圏内の動きとなっている。

景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後緩やかな成長経路をたどると予想される。
・輸出は、海外経済が減速しつつも拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。
企業収益は、当面減少を続けるが、エネルギー・原材料価格の上昇が緩やかになるにつれて、増益基調に復すると予想される。
・雇用者所得は緩やかな増加を続けるとみられる。
・設備投資や個人消費は底堅く推移する可能性が高い。
住宅投資は、回復の動きが徐々に一巡していくと予想される。
・公共投資は、減少傾向で推移すると考えられる。

生産は当面横ばい圏内で推移するが、その後増加していくとみられる。
海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響などに、引き続き注意する必要がある。

国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。
消費者物価の前年比は、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで、石油製品や食料品の価格上昇などから、プラスを続けていくと予想される。

企業金融を巡る環境は、緩和的な状態にある。民間の資金需要は緩やかに増加している。民間銀行は総じて緩和的な貸出姿勢を続けている。



<08/5/1 「経済・物価情勢の展望(全文)

(経済・物価情勢の見通し)
わが国経済は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している。前回(2007 年10 月)の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した見通しと比べると、住宅投資や設備投資は下振れた一方、輸出が上振れたため、2007 年度の成長率は、見通しに概ね沿って、潜在成長率並みとなったとみられる。

先行き2008 年度から2009 年度を展望すると、概ね潜在成長率並みの緩やかな成長を続ける可能性が高い。すなわち、2008 年度前半は、住宅投資が次第に回復に向かうものの、米国を中心とした海外経済の減速やエネルギー・原材料価格高の影響などから、景気は減速を続けるとみられる。その後は、海外経済が次第に減速局面を脱し、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れてくるとみられるため、成長率は徐々に高まっていく可能性が高いと考えられる。

その結果、
2008 年度の成長率は前回見通し対比で下振れ、1%台半ば程度になるとみられる。また、2009 年度の成長率は1%台後半程度になると考えられる。ただし、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響など景気の下振れリスクがある。

こうした先行きの経済の姿は、以下のような前提やメカニズムに基づいている。
第1に、
海外経済は、減速はするものの、新興国を中心に成長を続け、そのもとで輸出は引き続き増加する可能性が高い。

第2に、
企業部門は、設備・在庫・雇用などの面で調整圧力を抱えていない。こうしたもとで、設備投資は、中長期的な需要を見据えた投資が続くことから、大企業を中心に引き続き増加するとみられる。もっとも、原材料価格高等を背景に企業にとって厳しい収益環境が続くことや、資本ストック循環という観点からみると、これまで数年にわたって設備投資が高い伸びを続けてきたことから、伸び率は緩やかなものとなるとみられる。

第3に、
家計部門では、雇用者所得が緩やかに増加するもとで、個人消費は底堅く推移するとみられる。企業の人手不足感は強く、雇用者数は増加を続けると考えられる。賃金についても、労働需給がタイトな状況が長期化することから、じわじわと上昇圧力が加わっていくとみられる。もっとも、中小企業を中心に収益が伸び悩むもとで、人件費抑制姿勢は根強く続き、賃金の伸び率は緩やかなものにとどまると予想される。

第4に、緩和的な
金融環境が、引き続き民間需要を後押しするとみられる。短期金利は、潜在成長率や物価上昇率との関係からみて、引き続き極めて低い水準で推移している。国際金融資本市場の動揺が続いているが、欧米に比べ、信用スプレッドの上昇は総じて小幅であり、金融機関への影響も限定的である。こうしたもとで、金融機関の貸出姿勢は総じて緩和的である。ただし、中小零細企業や非製造業の一部で金融緩和の程度は幾分後退しており、この状態は当面持続する可能性が高い。

こうした経済の見通しのもとで、
物価を巡る環境について、まず、労働や設備といった資源の稼働状況をみると、現在、過去の平均的な水準からみて需給がほぼバランスしている状態にある。先行きについても、成長率が概ね潜在成長率並みで推移するもとで、資源の稼働状況は横ばい圏内の動きとなると考えられ、マクロの需給ギャップも概ね現状程度の水準で推移すると予想される。ユニット・レーバー・コスト(生産1単位当たりの人件費)は、なお低下を続けているものの、賃金が緩やかな上昇に向かうにつれてマイナス幅は縮小していくとみられる。民間経済主体のインフレ予想は、各種サーベイ調査では、購入頻度の高い品目の価格が上昇していることや上昇品目の数が増えていることに伴い上振れており、先行きにかけて物価が上昇していく形となっている。物価指数に即してみると、2007 年度の国内企業物価指数は、国際商品市況の上昇を背景に、前回見通し対比上振れ、1989 年度以来の上昇率となった。

先行きについては、原油などの商品市況や為替相場にも左右されるが、上昇を続けるとみられる。その結果、2008 年度の上昇率は、前回見通し対比で上振れるとみられる。消費者物価指数(除く生鮮食品)は、2007 年度は、石油製品や食料品の価格が上昇していることから、前回見通し対比で幾分上振れた。先行きは、需給ギャップが概ね横ばい圏内で推移する中、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品の価格上昇テンポを反映して、2008年度央までは1%台前半で推移し、その後はやや低下するとみられる。その結果、2008 年度は前回見通し対比で上振れて1%程度、2009 年度も1%程度の伸び率となると予想される。

(上振れ・下振れ要因)
以上述べた見通しは、前述の前提やメカニズムに依拠した上で、相対的に最も蓋然性が高いと判断される見通しについて述べたものである。したがって、先行きの経済情勢については、以下のような上振れまたは下振れの要因があり、特に不確実性が高い状況においては、こうした要因に十分留意する必要がある。

第1に、海外経済や国際金融資本市場の動向である。
国際金融資本市場では、米国サブプライム住宅ローン問題に端を発する動揺が続いており、不安定な状態にある。こうしたもとで、実体経済面でも、
米国では、住宅市場における調整の強まりや金融環境の大幅な悪化などを受けて、景気の減速傾向は一段と強まっており、足もとは停滞している。今後、住宅市場の調整や金融資本市場の動揺がより深く、長くなる場合には、景気は下振れる可能性がある。この場合、貿易取引や国際金融資本市場等を通じて、その影響が他地域に波及し、世界経済全体としても下振れるリスクがある。欧州経済については、減速しつつも成長を続けているが、国際金融資本市場の変動が金融環境に及ぼす影響次第では、下振れるリスクがある。中国では、力強い拡大が続いており、固定資産投資などの内需の動向次第では、見通し期間中の成長率が上振れる可能性がある。一方、インフレ圧力の高まりを背景とした引き締め政策強化の影響や米国経済減速の影響が予想よりも大きい場合には、成長率が下振れるリスクもある。資源国は、資源高を背景に、インフラ投資など積極的な支出活動を行っており、世界経済に対する上振れ要因となりうる。海外経済や国際金融資本市場などを巡る下振れリスクが顕現化した場合、日本経済に対して、貿易取引や企業収益、金融市況の変化などを通じて影響を及ぼすリスクがある。

第2に、エネルギー・原材料価格の動向である。
見通しでは、原油をはじめとする国際商品市況については、新興国を中心とする需要に支えられて、高水準で推移すると想定している。国際商品市況が想定以上に上昇した場合には、各国でインフレ圧力の高まりにつながるリスクがあり、その後の景気下振れ要因となるおそれもある。また、日本にとっては、海外への所得流出が増加することにもなり、企業や家計の支出活動にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。

第3に、企業の成長期待の動向である。
見通しでは、経済が減速する中でも、中長期的にみた需要に対する企業の成長期待は崩れることなく、企業の設備投資は緩やかに増加することを想定している。しかし、こうした企業の成長期待が低下する場合、設備投資を中心に見通しが下振れる可能性がある。一方、現在、上記のような様々な下振れリスクが意識される中で、今後、それらが顕現化せずに推移すれば、企業の成長期待が上振れ、見通しが上振れる可能性もある。

第4に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が大きくなる可能性があることである。現在、経済の減速によって、企業や家計、金融機関の行き過ぎた行動が生じる可能性は以前より低くなっているとみられる。もっとも、緩和的な金融環境が長く続き、今後も維持されると予想されるもとで、経済主体の期待の変化によって、その行動に行き過ぎが生じ、それが長い目でみた資源配分の歪みにつながるおそれは引き続き存在する。

次に、物価上昇率の先行きについても、上振れ・下振れ両方向の不確実性があることに留意する必要がある。経済活動水準の変動について上述のような上振れ・下振れ要因が顕現化した場合、物価にも相応の影響を及ぼすとみられる。
物価に固有のリスク要因としては、

第1に、
家計のインフレ予想や企業の価格設定行動が挙げられる。
消費者の購入頻度の高い財・サービスの価格上昇などを背景に、消費者のインフレ予想はさらに高まる可能性がある。また、企業においても、原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが広範化する可能性がある。これらの場合、物価は予想より上振れる可能性がある。一方、競争環境が厳しいもとで、企業のコスト削減努力などにより価格上昇が想定ほど進まない可能性もある。

第2に、
原油をはじめとする一次産品の価格動向には上下両方向に不確実性が大きい

上振れ・下振れ要因は、以上のように整理しているが、相互に関連するものであることにも留意する必要がある。すなわち、海外経済や国際金融資本市場を巡る下振れリスクが薄れる場合には、企業の成長期待は上振れ、その期待との対比でみた金融環境の緩和度合いは強まる可能性がある。これらは経済・物価の上振れにつながる可能性がある。また、エネルギー・原材料価格については、上記の下振れリスクが薄れる場合には、需要見通しの上振れにより価格上昇圧力となる可能性がある一方で、投機資金の流出による価格下落の可能性もある。

(金融政策運営)
日本銀行は、物価安定のもとでの持続的成長を実現するため、「中長期的な物価安定の理解」(金融政策運営に当たり、各政策委員が、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率)を念頭に置いた上で、経済・物価情勢について
2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理することとしている。「中長期的な物価安定の理解」は、消費者物価指数の前年比で0〜2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は、大勢として、1%程度となっている。

まず、第1の柱、すなわち先行き
2009 年度までの経済・物価情勢
について最も蓋然性が高いと判断される見通しについて、政策金利に関して市場金利に織り込まれている金利観を参考にしつつ点検する。
上述した通り、わが国経済は、当面減速するが、見通し期間全体では、概ね潜在成長率並みで推移するとみられる。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、均してみれば1%程度で推移する可能性が高い。こうした動きは、「中長期的な物価安定の理解」に概ね沿ったものと評価できる。このように、わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高いと判断される。

次に、第2の柱、すなわち、
より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する。
前述の通り、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響など景気の下振れリスクに最も注意する必要がある。ただし、企業部門や金融システムの頑健性が高くなっていることから、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクは小さくなっていると考えられる。

物価面においては、エネルギー・原材料価格のさらなる上昇や、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化により、物価が上振れるリスクがあるが、「中長期的な物価安定の理解」から大きく乖離する可能性は小さい。長期的には、低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するなど、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクは、引き続き存在し、特に上記のような下振れリスクが薄れる場合には、その重要性は増すと考えられる。

金融政策運営については、これまで、@短期金利は、潜在成長率や物価上昇率との関係からみて、極めて低い水準にあり、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長軌道を辿るのであれば、金利水準は引き上げていく方向にある、A引き上げのペースについては、予断を持つことなく、経済・物価情勢の改善の度合いに応じて決定する、という考え方で進めてきた。

実際の政策運営においては、昨年2月に政策金利水準を0.5%に引き上げ、その後は、これを維持した。これは、蓋然性の高い見通しとしては、物価安定のもとでの持続的な成長という見通しが維持されたが、そのペースは、住宅投資の落ち込みやエネルギー・原材料価格高の影響などから減速したことや、リスクの面でも、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響など、下振れリスクが高まったことなどを考慮したものである。

こうした経済の減速や下振れリスクの高まりを背景に、金融市場における先行きの利上げ見通しは後退し、対応する期間の金利は低下している。現在のように不確実性が極めて高い状況のもとで、先行きの金融政策運営について予め特定の方向性を持つことは適当ではない。この先、下振れリスクが薄れ、物価安定のもとでの持続的な成長を続ける見通しの蓋然性が高まるのか、あるいは、下振れリスクが顕現化する蓋然性が高まるのか、よく見極めていく必要がある。日本銀行としては、経済・物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく方針である。

金融政策が効果を発揮する上で金融市場の安定性を維持することが必要である。金融市場の安定の面では、日本銀行は、十分な流動性供給体制を有しており、市場機能の維持に努めている。昨年夏以降、米欧金融市場の動揺が続く中で、金融市場調節を通じて、適切な流動性の供給を行ってきた。その結果、短期金融市場は落ち着いた動きを続けている。今後とも、市場動向を注意深くモニターし、適切な金融市場調節を行うことで、市場の安定に努めていく所存である。以上


<08/4/9 白川日銀総裁代行記者会見(4月14日更新)

・わが国の景気はエネルギー、原材料高の影響などから減速。
・生産、所得、支出の循環メカニズムの足元は弱まっている。
・金融市場はリスク再評価の過程。時間を要する。
戦後、例を見ない。水準は違うが、30年代の大恐慌以来。
・向こう2年間の経済を丹念に分析し展望レポートに提示。
・金融政策は常にフォワードルッキング。
・経済物価見通しの蓋然性と上下のリスクを点検し適切に運営。


<08/3/21白川日銀総裁代行記者会見> (3月23日更新)

・「景気は踊り場」という政府の認識と大きな違いはない。
足元は住宅投資の落込やエネルギー原料高の影響から減速。
・一定の減速局面を経た後は、緩やかな拡大が続く。
・実質の短期金利はゼロ、潜在成長率は1%台の半ばから後半。
・現在の金融政策は非常に大きな緩和方向の力を発揮。
実質短期金利と成長率の関係だけからは政策を評価しない。
短期金利はベンチマークとして意識。
・米国は、FFレート3%低下の半面、信用スプレッドが大きく拡大。
・このまま放置すれば、実質的な金融引き締まりが進行。
・イールドカーブ全体を加味した民間金利を総合的に判断する。



<08/3/7 福井日銀総裁記者会見(3月11日更新)


・日本経済は生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持され、緩やかな拡大が続く。
・足元は住宅投資の落ち込みやエネルギー原材料高の影響などで減速。
・世界経済や国際金融資本市場などを巡る不確実性も大きい。

・見通しの蓋然性とリスクを見極めたうえで適切に政策判断。

<海外>
・米国を中心に世界経済のダウンサイドリスク強まる。
・国際金融市場は不安定な状態。証券化商品市場は機能が低下。
・株式市場や為替市場は世界的に振れの大きい展開。
・外需は米国向け輸出で弱めの動き。新興国など幅広い地域に向けて輸出が増大。

<国内>
・企業収益が伸悩み。水準は高く、設備投資は増加基調。
・住宅投資は回復の動き。水準は低い。
・一人当り賃金はやや弱めの動き。雇用者数が増え雇用所得は緩に増加。
・個人消費は底堅く推移。

<生産・物価>
・生産は横ばい圏内の動き。在庫と出荷はバランスとれ、生産は増加の見込み。
・国内企業物価は国際商品市況高などを背景に当面は上昇。
・石油製品や食料品の価格が上昇。消費者物価指数は長い目で見るとプラス基調。

出所:日本経済新聞


2.米国経済の現況

<08/4/2 バーナンキ米連邦準備理事会議長議会証言> (4月3日更新)

・米経済は非常に難しい局面。
・経済や金融の必要な調整は年後半や来年の成長を支える方向。
・米経済の長期的な見通しには自信。短期的な経済見通しは弱くなっている。
08年前半の実質経済成長率はマイナスの可能性。後半は政策効果により経済活動は強まる。
・09年は持続的な成長ペースを予想。見通しの不透明性は高く下ぶれリスクは残る。
・輸出が米経済活動の下支え。

出所:日本経済新聞