Eggを掘る
Egg Deram/Nova SDN14 DN14(stereo/mono) 1969

 最初に買ったのは1975年夏 高校生の頃だった。キングから出たブリティッシュロック秘蔵盤シリーズで日本盤だった。クラシックっぽい演奏スタイルがオイゲン・キケロのようですぐに好きになった。オルガンとトーン・ジェネレーターというシンプルな演奏で、ロックっぽくないヴォーカル、奇数拍子を難なく叩き出すドラムも魅力だ。いまだに聴けるというのはやはり内容が素晴らしいということでしょう。飽きのこない名作だ。 
 


UK cover back (2nd issue) 

Back notes (UK 2nd issue) 
UK back titles (1st issue)
UK 1st issue(pasted over)
日本盤裏notes
日本盤曲クレジット
UK stereo

UK mono

 最初に買ったのは日本盤 20年以上これが愛聴盤だった。数年前にオレンジレーベルのUK盤を買った。音はやはりオリジナルの方が鮮度が高い。ああよかったね。ちゃんちゃん。フツーはここで終わる。はずだが、ジャケ裏がなんかヘン。左側の説明文が貼り付けてある。なんか印刷ミスでもあったのか?へんなの と思いながら、放置しておいた。 

 しばらくしてカンタベリーミュージシャンと因果の深いエーハブ船長から情報が入った。船長によると、幻の第三楽章というのがあるらしい。なんじゃそりゃ?謎を解くカギはジャケットクレジットにあるという。改めて英盤の貼り付けられたクレジットを読んでみると、第三楽章は版権の問題でオミットした と書いてある。なんだこれは?なぜ今まで気がつかなかった?

 よく見ると曲名のクレジットに一行空欄がある。ここにMovement 3と入っていたのだろう。しかし、知らなかったとはいえ、何故今まで誰も話題にしなかったのか? 

 で、日本盤を見てみる。しげしげと見たのは20年振りだ。なんと、クレジットの内容が違うではないか。日本盤のクレジットには Movement 3はストラヴィンスキーの春の祭典をモチーフにした曲とある。それに曲目には英でオミットされた Movement 3が記載されている。ここでも日本盤の版下は極めて初期の版が使われていたことが判明。英でさえ、貼り付けしていない無修正のジャケットは発見されていない。日本盤の秘蔵盤シリーズが発売されたのは英リリースから5年以上経っているのに... 

 で、英初回のマトリクスは2W/2Wだ。ということは、B面が1のものにはMovement 3が残っているということか?あったら大変だ。探してみよう... 

 しかし、なかなか見つからない。さもあらん。こんな話、知ってるやつの方がレアだ! 

 見かけたものを片っ端から問合せしてみたが、どれも2W/2Wばかり。クレジットが貼りつけられていないのも買ってみたが、これは修正された内容がジャケットに反映された二版だった。モノにも手を出した。こちらもB面は2で同じ。レーベルのクレジットにM3がある盤もst/monoともにある。が、当然M3は入っていない。やはり発売前に修正してたのだろうな。あるわきゃない.... 

 と、ebayにクラシックのDECCA盤を出してたセラーがたまたま、このテストプレスを出品していたのを発見。説明によると、発売されているものを聴いたことがないので内容が違うかどうか知らないという...そりゃロックなんざ聴かないんだったら知るわけないよな。しかし、違うかもしれない という思わせぶりな・・ 

 問合せは特にしなかった。M3があろうとなかろうと、このアルバムのテストプレスは聴いてみたい。もしかしたら入ってたらラッキーくらいのつもりだった。で、拍子抜けするような値段で無事落札。やはりEggは英でも人気ないのかね?(ほんとか?) 

 で、2週間ほどで届いた。うやうやしく書留で。あけてみると、マトリクスは2W/1Wだ。B面はレーベル付近まで溝が切ってある。こりゃぁひょっとして...あ あった〜 

 ありましたよ。春の祭典。しっかり入ってました。いや〜びっくり。しかし、なんじゃこのアレンジは...そのまんまじゃないの。これじゃストラヴィンスキーの遺族は怒るかもな〜(ちょっとまて!追記参照↓)悪く言えばEggらしくない。Eggのカラーがあまり感じられない。原曲そのままといった演奏で、これならオミットされても仕方あるまい。 

 それはいいとして、このB面の1Wは音質が素晴らしい。初回マトリクスだけのことはある。音色、鮮度が際立っていて、これだけでもテストプレスの価値は十分にあった。A面のマトリクスは同じだが、やはりテストの方が音が荒れていない。 

 というわけで、晴れて謎だったM3を聴くことができた。しかも、予想外にカネがかからなかったのが何より幸運だった。 
 


     UK test press(Factory Sample) 
 

12/9追記
M3がオミットされた本当の理由
 原稿を書いた時点では版権の問題がクリアにならなかったのが理由だと考えていました。リマスターCDに記載されてたDECCAの上層部がクレームを恐れてストップをかけた というのは何を恐れていたのか? これについてストラヴィンスキーについて詳しい方からご指摘を頂きましたので、紹介します。

 まず、ストラヴィンスキーが亡くなったのは1971年4月で「遺族が怒る「というのは間違い。69年はまだ生きてたわけです。というわけで、これは訂正してお詫びします。

 次にDECCAが恐れたのは単なるもめごとではなく、莫大な著作権料 だったようです。ストラヴィンスキーという人は東側には珍しく商売の才覚ある人で、一例ではアメリカで「火の鳥」の著作権料が入って来ない(作曲してから年数が経っていた)のが不満で、著作権料をせしめるために意味もなく(?)何度も改版した くらいの人なんだそうです。

 もしEggがこのままM3を出していたら、それこそ目の飛び出るような著作権料を版元から請求されたであろことは明白で、リリース直前にDeccaの上層部が発見して間一髪で止めた というのが真相であろうと考えられます。情報を頂いた渡邊様、どうもありがとうございました。
 
2007.10.20
 修正クレジットが貼り付けられていない英盤ジャケットを入手した。日本盤と比べてみると、同じようにMovement 3と春の祭典の記述がある。

 The Polite Force Deram SML1074 1970

 これも1stと一緒に買った秘蔵盤シリーズで聴いた。A1がとびきりの名曲。ホーンセクションをフューチャーしたA2、より実験的なコラージュのA3、そしてB面の大作 どれもが1stの数倍素晴らしい。スコアをしっかり作って精緻な演奏で聴かせる。誰が何と言おうと英国最高のプログレッシヴロック。コーティングのジャケットのセンスも抜群だ。なんでこれが名盤にランクされない? 
 


UK cover back 


UK 1st issue

 


 最初に聴いた日本盤は悪くなかった。これしか聴いたことがなかったので、こういう音だと思っていた。シンバルがいまちシャキっと伸びない。バスドラとベースもなんだかモッサリしている。録音自体は悪くないようだが。 

 英盤を買ってみると鮮度が高く、ふっくらと柔らかい低音が言葉を失う心地良さ この演奏にはこの音質がよく合っている。あ〜もうたまらん〜 マトリクスは1W/1W 

 ところが、テストプレス(DECCAではFactory Sampleと呼ばれる)は同じマトリクスなのに更に鮮度が高くナチュラルな音。これを聴いてしまうと市販盤は粗く聞こえる。芯もしっかりしている。レコードが全てこの調子だと買う意味がなくなってしまう... 
 
 
 

UK test press
The Civil Surface Caroline/Virgin C1510 1974

Egg解散後 Daveがハットフィールド在籍時に発表した再編Egg(オリジナルメンバー)の作品。ゲストも渋い。Virgin傘下の廉価盤レーベルCalolineからリリースされた。内容は相変わらずというか、更に精緻に渋く、これぞEgg!といった演奏を聴かせる。録音も良く、ファンにはたまらない内容だ。
 


UK 1st issue


EJDay credit on back 1st,2nd issue

 初回のジャケットには白丸のステッカーが貼ってある。1.46ポンドか 安いなぁ・・当時のレートからしても十分安い。マトリクスはEMIのものでC1510 A-1U/B-1Uだ。人気があったのか、再版されている。次の版ではCBSのマトリクスで C1510 A2/B2となる。レーベルもリム沿いにCOPYRIGHT表示が付加されていて、色も薄くなっている。

 ジャケットは初回のものは裏の左下にEJDの表記があるが、2版ではEJDがなくなっている。

 音質は初回のものが鮮度が高く、クリアーで芯がしっかり出る。
CBSのものも悪くないが、1Uを聴いてしまうと物足りなってしまう。

 東芝時代にヴァージンジャパンからCDが出た。音は悪くなかったが、普段聴くのはやはりLPだった。CDは柔らかさが出ないんだよな。

 ビクター時代の日本初回LPは悪くない。カッティング機材は日本の方がいいものを使ってるような気がする。ビクターのカッティングは優秀なものが多い。芯がしっかりしていて、締まっている。カッティングアンプのパワーに余裕があるような鳴り方をする。

 先日出た紙ジャケットは音は聴いていないが 期待もしていない。(できるか!Greenslade参照
 


Seven Is A Jolly Good Time
See For Miles SEE47 1985


Seven Is A Jolly Good Time
Deram DM269 1969


Egg same Remasted CD inc. 3 bonus
Eclectic Discs ECLCD1014 2004/10/28


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Liner notes part of Symphony No.2
by Mark Powell


 85年に出た See For Milesの編集盤。ファーストにシングルの両面2曲を加えたもの。シングルの2曲はモノ収録。音質はパっとしないが、シングルの2曲だけは最内周にもかかわらずわりといい音だ。

 いつかシングルが欲しい・・
と思っていたが、最近やっと入手できた。期待通りの素晴らしい音質。曲も素晴らしい。売れたはずがないと思うけど。いきなり変拍子をイントロにもってきたアレンジは変態!Seven is ..は7拍子は楽しい!とでもいう意味なのか?こんな変態なシングルは他ではあり得ない。うーむ Egg 渋過ぎる・・・

 来年の1月にユニバーサルからNovaのタイトルが多数紙ジャケットで出るらしい。Eggも出るようだ。

 が、問題はボーナストラック これが+シングル2曲なのか更に第3楽章が付くのかよくわからない。最新リマスターではシングルの2曲に加え、第3楽章付きで陽の目を見たが、是非この最新リマスターで出してほしいものだ。かなり初期のマスターを使ったと思われるので音質も期待できる。まさか今更85年の
 See For Miles版じゃあるまい(?)これじゃ1stのトラックは音が台無しだ。

 今出すなら最新リマスタ版以外考えられないが、権利の点でユニバから出せるのだろうか?しかし、ここはムリしてでもなんとか最新リマスターで出して欲しいものだ。

 このシングル+第3楽章入りの最新リマスターCDは出てすぐに発売元のレーベルEclecticに直接注文したが、未だに送られてこない・・送料が安かったので船便だろうとは思ったけどもう3ヶ月だぞ?? ふざけてる・・

10/29追記
 先日来日したキャラバンのマネージャー Mark Powell氏(Eclecticの一連のリマスターCDを監修してるそうで)によると「今やっとプレス中」とのことでリリースが遅れているらしいです。(船長情報どうも)道理で届かないわけだわ・・・

 Eclecticのwebsiteによると10/28リリース済みと追記がありました。

11/20追記
 本日Eclecticからやっと届いた。
Mark Powell氏のライナーノートによると、M3がボツになったのは、親会社のDECCAはクラシックで有名なレーベルであるため、イギリスでストラヴィンスキーの版元ともめるのを恐れてストップをかけた ということだ。また、このリマスターCDに収録されたM3はマスターテープからではなく、状態のよいテストプレスが音源だそうで、(マスターは破棄されたらしい)(左下参照)テストプレスと比べるとイマイチ鮮度がないぞ(あのな〜)と言いたくもなるが、本編とシングルについては素晴らしいリマスターだ。レンジを欲張らずに素直で大変丁寧に仕上げられていると思う。以前のCDよりも格段に良い。久々に良い音のCDを聴けた。
 しかし、この盤面の印刷はブート並みのひどさだ。もう少しなんとかならなかったのか?

 インナーの末尾にオリジナルのジャケ裏のクレジットが収録されているが、M3をオミットした修正版だった。(ひょっとして無修正の日本盤の存在をPowell氏は知らないのかも?)

 今度出る紙ジャケットは、下記の仕様でお願いしたい。

1.ラミネートジャケ丸穴付き

2.裏クレジットは英でオミット
  された日本初回版を使う
 (日本盤から転写すればいい)
  このクレジットじゃないと
  M3が入ってる意味ないですよ

3.オレンジ(もしくはペール)
  NOVAレーベル+インナーバッグ
  表と裏で青/赤ならなお良し

4.音源は第3楽章+シングル2曲
  のEclectic版

 これでこそコダワリのリイシューというもんでしょう。Powell氏が腰抜かすようなの作れるのは日本の紙ジャケだけです。

 どれが欠けてもバランスが悪く片手落ちになっちゃいます。誰も3楽章の音がイマイチだから録り直せなんて言いませんから。本気見せてほしいですね。

2005.02.27追記
 今日やっと紙ジャケットを入手した。ジャケット裏のクレジットにはM3があるものの、説明文は修正版の「オミットされた」もの。残念。

 丸穴は印刷で対応してあった。どうせなら穴あければよかったのに。音質はEclecticと比べると幾分音圧が高い。Eclecticの方が解像度が高く感じるが、音そのものは悪くないと思う。

 問題のM3はよく聴くとモノだ。今まで気がつかなかったがEclecticも同じ音源のようで、(ノイズが乗るところまで同じ)こちらもモノ。要するにモノのテストプレスが音源のようだ。(ステレオのテストプレスに収録されているM3はもちろんリアルステレオです)状態の良いステレオテストが見つからなかったということか?残念。

ジャケは丸穴と説明文の差し違えで80点。音源としてはM3がモノで90点といったところ。

Polite Forceも同じ傾向で幾分音圧が高いマスタリングだった。レーベルは見事にNOVAとDERAMが再現されていてこれは満足度が高い。
 

Digging the Records

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最終更新日: 2008年 1月22日 23時50分