更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2022年6月3日(金)
『犬王』

車で1時間半かけて、3つ隣の市まで観に行った。凄いとは思ったが、あまり私の好みではないかな。
ロックオペラにせよミュージカルにせよ、歌ったり踊ったりしてる間は物語が停滞してしまう。

犬王は芸を極めることで呪いを祓い、身体を取り戻す。ところが、その結果得た若く美しい肉体は、抜け殻に過ぎなかった。五体満足の青年として生まれ変わった犬王は権力者にへつらい、芸道を見失い、歴史に何一つ残さず忘れ去られた。犬王の芸の本質は、呪いにこそ宿っていたのだ。エピローグで友魚の亡霊を迎えに来たのは、もちろん犬王の肉体から解き放たれた呪いの方である。

……え?そういう話じゃなかった?


『どろろ』を連想するという意見を散見したが、最後まで観るとむしろ『火の鳥 鳳凰篇』の方が近いかも知れない。

2022年4月25日(月)
『SPY×FAMIRY』 MISSION:3

今季のアニメでは、『ダンス・ダンス・ダンス-ル』と『SPY×FAMILY』がずば抜けている。

特に『SPY×FAMIRY』の第3話、「MISSION:3 受験対策をせよ」。

娘役のアーニャに、母役のヨルが加わり3人家族の体裁を整えたロイド。受験対策の合間に街を散策し、偶然ひったくりを捕まえてわずかばかり絆を深める。
その様子を表現しているのが、ココアのカップ。



前半で登場したとき、クッキーの方に目が行きがち-おそらくはそれも演出上の計算のうち-だが、よく見るとココアの色が三者三様に異なる。砂糖とミルクのためだが、これが3人が内心に含むものの違いを表している(砂糖とミルク両方を入れているアーニャが、実は全てを知っている)。

一方、ラストカットでは3人ともにカップを手に取って、空になったソーサー3つが映る。



考えていることは別々でも、今は家族として一つになっていることを示す、まことにもって粋な演出だ。
いずれ必ず破綻する関係であることを思えば切なくもなるが、物語はこの先どこへ向かうのか。

絵コンテ:古橋一浩
演出:片桐崇

ところで『ダンス・ダンス・ダンス-ル』で思い出した(MAPPA制作で、キ○ガイじみた動き)が、『ユーリ!!! on ICE』の劇場版企画ってどうなったの?

それと、意外なほど面白いのが『パリピ孔明』。実は原作をちょっとだけ読んでやめてしまっていたのだが、アニメ版だと、実際に音楽がついたことで孔明が英子の歌に心動かされる様子に強い説得力を与えている。お堅いP.A.WORKSがこんな肩の力抜けきった作品作ってるのも頼もしい。

『やがて君になる』の加藤誠監督の新作『群青のファンファーレ』も、登場人物それぞれにスポットが当たって面白くなってきた。
前期が『平家物語』しかなかったのに比べると楽しみの多い一週間。
なお、その『平家物語』は、凄すぎて語る言葉がない。

2022年4月18日(月)
『ヒューマニエンス』から得た雑学

以前、「なぜ欧米のカートゥーンはリップシンクロに異様にこだわるのか」を初めて明らかにしてくれた『ヒューマニエンス』。
その後も次々と目新しい知見を提供してくれているので、印象的だったものをトリビア的にメモ。

○ ポリグラフ(嘘発見器)は記憶の保持、認知を調べるもの。脈拍や発汗等の身体の反応は、質問された事項を重要な記憶と感じて情報収集に集中したときに現れる。
ポリグラフの実演をTVで紹介するときなどに、全ての質問に「いいえ」と答えさせるのはただのパフォーマンスで、全て「はい」と答えても、それどころか無言であっても反応が現れる。
「隠したい心理」とか「嘘をついた罪悪感」は、まったく無関係というわけではないが重要ではない。従って、本当に全部忘れていたら反応しない。
現在、ポリグラフの正確さは90%。
人が嘘を見抜く可能性は54%で、まぐれより少しましな程度。

○ 動物の脂肪はほとんど皮下脂肪なのに対し、ヒトの内臓脂肪は、霊長類の中でも際だって多い。これは、脳に迅速にエネルギーを送るため発達したもの。

○ イヌって、なんか後ろめたいことがあると上目遣いで人の顔を伺うじゃないですか。あれは、眼瞼筋(がんけんきん)という筋肉があるのでできるのだが、オオカミにはこの筋肉がない。つまり、イヌがヒトと付き合う中で手に入れた能力なんだそうで。

○ ほとんどの哺乳類の雌は、閉経するとまもなく寿命を終える。閉経後も長く余生を生きるのはヒトだけ。その理由は、ヒトは幼児期間が極めて長いため、孫の育児に関わることで生存競争を有利にできるからではないかと考えられている。これを、「おばあちゃん仮説」という。

○ 最新の内耳埋め込み式補聴器は、ブルートゥース機能がついていて音楽が聴ける。

2022年4月10日(日)
影の一族

先日完結した法廷政治主婦ドラマ『グッド・ワイフ』の主演女優を、ジュリアナ・マルグリーズという。

さて、たまたまスーパードラマTVで観ていた『四次元への招待』のカメラマンがウィリアム・マルグリーズ。さらに、『ルーツ』のプロデューサーにスタン・マルグリーズという名前を発見した。

さてはと思ってIMDBで「margulies」を検索してみたら88人もヒットした。

役者、プロデューサー、作曲家、カメラマン、ライターと多士済々。
その一方で多くは何とかcrewとあるので無名のスタッフだろうが、それにしても。
「self」というのがずいぶんあるのは何だろう。
マルグリーズというのは珍しい名字だと思っていたのだが、案外そうでもないのか。それとも、影で映画産業を支配している一大勢力なのか。コッポラ一族じゃあるまいし。


……と思いついてこれも調べてみたら、コッポラ一族は199人ヒット(ニコラス・ケイジ含む)。アレックス・コッポラはすでに5代目までいる。初代はadditional crewだったが、2代目は役者、3代目はプロデューサー、4代目は編集者で5代目はまた役者と順調に出世しているようだ。おや、フランク・コッポラは4代目は映画産業から足を洗ったらしい。

なるほど、本当に赤の他人もいるのかも知れないが、親族にハリウッドスターがいるとわれもわれもと集まってこうなるのが普通なのかも知れない。因果なものだ。

2022年2月26日(日)
雑記

○『ひまわり』('70)
 「第2次世界大戦によって引き裂かれた男女の悲しい愛の物語」とyahooの映画紹介にはあるが、大嘘である。
ソフィア・ローレンの狂気が炸裂のサイコホラーと言うべきだ。ローレン演じる、夫の戦死を信じない主人公は誰に対しても攻撃的。何しろ、氷雪のロシアで動けなくなった夫を泣く泣く置いてきた戦友を、「ひどい人」と難詰するんだぜ。おかげで、どっこい生きてた亭主(世界一のニヤケ男、マルチェロ・マストロヤンニ)が現地妻との間に子供こさえてても、まるで同情する気が起きない。

何より、ソ連の田舎に乗り込んでイタリア人兵士の夫を探してまわる厚かましさ。お前、ナチスの尻馬に乗ってソ連を侵略した側じゃないか。それに親切に応対してやるロシア人の善男善女の、なんと懐の深いことよ。
ご存じの通り、ファシズム発祥の地イタリアは枢軸国の側で第二次世界大戦に参戦したが、ヤバくなるとあっさり連合国に寝返った。終戦時イタリアは、後半戦は連合国として戦ったから戦勝国の立場を主張したが、認められなかった(当たり前だ)。
私は、これは無理を承知で主張するしたたかな外交姿勢だと思っていたのだが、この映画を観ていたら、イタリア人は案外本気でそう信じていたのかも知れないと思い始めた。公開当時、本国ではどういう受容をされたのか興味がある。


○世界の秀作アニメーション特集
WOWOWで世界の秀作アニメーション特集があったのでまとめて観た。
特に、タリバンの支配するアフガニスタンで少女がサバイバルする『ブレッドウィナー』がとても良かった。空想の物語が現実の恐怖に立ち向かう力を与える、という思想が素晴らしい。
それにしても。
北朝鮮の強制収容所の実態を暴いた『トゥルーノース』といい、ポル・ポト政権下のカンボジアを描いたアニメ版『キリング・フィールド』こと『FUNAN』といい、優れたアニメーションがこうそろいもそろって過酷な現実を扱っていると疲れる。
やっぱり、異世界に転生したら無職だったりスライムだったりハーレム展開だったりする程度が、平和でいいのかもしれん。


○『ご主人様のしかばね』
私的に昨年最大の収穫だった『好きな子がめがねを忘れた』の作者、藤近小梅の過去作。よくあるバトルメイドさんものかと思いきや、思いもよらぬダークな世界と意外な展開。
そしてこの奇妙なタイトルが本当にそのままの意味だったと判明する頃には、完全に作者の手のうち、作品の魅力にとりつかれている。
蛇足ながら、成長期の少年と、青年の肉体をちゃんと描き分けている。一見シンプルな絵柄だが、大変な画力と見た。



○『ザ・カセットテープ・ミュージック』
昨年は、大分乗り遅れながら、『ザ・カセットテープ・ミュージック』を観ていた。その中でスージーさんがクレヨン社の「痛み」という曲を紹介していたのだが、なんだか聞き覚えがあった。
オレのことだからどうせアニメ関係に違いないと、一生懸命考えたら思い出した。『エンゼルコップ』のエンディングだ!
板野一郎氏の数少ない監督作品の一つ。DVD化はされていない。あんまりにも安っぽすぎるユダヤ陰謀論の話なので、ポリコレ的にきっと無理だろうな……と思っていたら、北米版が出ていた。アメリカって凄い!


○『KU-RU-KU-RU Cruller!』
『ラブライブ!サンシャイン!!』の新曲PV。と言ってもだいぶ前ですが。本編は観ていなかったのだが、TVで見たCMの映像があまりに良くできていたので、耐えきれずに買ってしまった。



手描きにしか見えないのに、スタッフを観ると大半がCGアニメーター。一体どうやって作画しているのかと思っていたのだが、ググってみたらあっさり謎が解けた。CGをプリントアウトして、上から紙で修正をのせているんだって。


なるほどねえ。動きも手描きアニメーターがコントロールしているんだろうか?あまりCGっぽくない、パキッとした動きに見えるが。
『ラブライブ!』は以前からアップは手描き、全身像はフルCGという割り切った使い分けをしていたが、いかに技術が進歩しても質感の違いはいかんともし難かった。しかし本作の方法だと、ほぼ完全になじんでいる。これが最適解、終着点かも知れない。


○『劇場版 呪術廻戦0』
一応観た。作品自体はまあどうでもいいや。パンフレットから、平松禎史のインタビュー。
禪院真希のデザインのポイントについて
「芥見先生の女の子の描き方が、0巻と本編では少し変わっているんですよね。0巻のときの方が、女の子がちょっと肉付きがいい感じで描いてあるんですよ。真希もそうですし、菜々子や美々子もそういう印象です。特に太ももあたりがガッチリしていて肉感的なんですね。そのあたりの印象は反映させようと思いながら描きました。」
さすが日本三大脚メーター。


○『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』
なんかもうCDは過去のものなんだそうで、最近は主題歌も配信オンリーでCDが発売されないことが多い。『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』のオープニング曲「Mr.フィクサー」も、私好きだったんだけどCD化はされなかった(正確にはBD-BOXに同梱のみ)。
ふと思い立って動画検索してみたら、ありました。しかもえらい出来のいいPV付きで。

時代は変わったなあ。
私のガラケーも、最近は発信するとまず「年度いっぱいで使えなくなる」という警告が流れやがる。さすがに潮時か。

2022年1月19日(水)
『サンダーバードができるまで/スーパーマリオネーションの軌跡』

『サンダーバード55/GOGO』の公開記念で、いろいろな企画をしているスターチャンネル。これはその一環で放送された、放送50周年記念制作のドキュメンタリー。当時のスタッフが、老朽化で解体間近のスタジオを訪れて思い出話を披露してくれる。

中で一番印象深かったのが、『サンダーバード』の後番組『キャプテン・スカーレット』の人形をめぐる証言。

『サンダーバード』では頭でっかちだった人形が、『キャプテン・スカーレット』ではより人間に近い頭身に「改良」されたのだが。

『キャプテン・スカーレット』監督・脚本レオ・イートン
「人間の頭身に近づけたことで皆喜んでいたのを覚えている。だが人形師は別だ。コントロールできずに嫌がっていた。頭がクルクル動くんだ」

監督ケン・ターナー
「リアルになったことで制約も増えたんだ。人形には許されるバカげた動きが全く許されなくなった」

『スーパーカー』人形制作&操作・特撮ロジャー・ウッドバーン
「ジェリー(アンダーソン)へ常に言ってた。“人形は人形だ。人間のフリは厳禁”。リアリティを求めようとするからだ」
人形の強みはデフォルメできることだ。そこをジェリーは分かってなかった」

ジェリー・アンダーソンの息子ジェイミー・アンダーソン
「人形との仕事を父は嫌ってた。だがもし父が人形の仕事を恥じてなければ、あのクオリティには到達しなかったろう。負の感情がプラスに作用したんだ」

「人形は人形だ」を「アニメは絵だ」に入れ替えても通用する警句だろう。
リアリティを求めるばかりが進歩ではない。

今年は昨年よりも頑張って更新していこうと思います。
皆様、今年もよろしく。

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