『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』については、言及したことがなかった。別に避けていたわけではなく、ちゃんと観ていたが何となく発言する機会がなかったのである。放映が終わったら2期があることが発表されたのでなおさらに。
が、先日『ガンダムエース』で長井龍雪監督と岡田麿里のインタビューを読んだので、気になったところを摘記。
-印象に残っているエピソードは?
長井 5話「赤い空の向こう」、7話「いさなとり」ですね。5話は初めての宇宙戦闘で、ベテランの大塚健さんに絵コンテとメカ作監を担当してもらい、宇宙空間での戦闘の描き方を教えてもらいました。7話はさらに戦艦が出てきて、西澤晋さん、寺岡巌さんに入ってもらいました。こちらも戦艦戦の描き方を見せてもらい、とても勉強になりまいた。印象に残ったというよりも、どちらも勉強させて頂いたエピソードですね。
確かに、7話の空間戦闘は凄かった。宇宙戦闘に限らず、本作は「戦わないガンダム」と言われていたらしいが、その分いざ戦う時のアクションシーンは凄まじい迫力だった。この頃、西澤晋の絵コンテ回がやたらと多かった記憶がある。本作のみならず、毎週1、2回はこの人の名前を見かけた。
(クーデリアの変化について)
長井 鉄華団と深く接したことはもちろん、フミタンの死が大きかったんだと思います。あれを乗り越えるには変わらざるを得ず、今まで理想だけだった行動に覚悟が生まれたと思います。そういう意味で、終盤は鉄華団のジャケットを着せたりもしました。
フミタンはストーリー運びのために後から作ったキャラなんですが、結果的に非常に大きな役割を果たしてくれましたね。
本作への不満は二つある。
ひとつは、三日月が主人公である限り、ドラマの行く先はオルガとの関係をいかに解消するかにならざるを得ない(決断を完全にオルガに委ねているという関係が健全なわけがない)、にもかかわらず、話がその方向に向かわないという点。
オルガとメリビットとの関係が消化不良な点も含めて、2期で解決してくれるといいのだが。ぶっちゃけて言えば、メリビットはオルガの筆下ろししてくれる役だと思っていた。
もうひとつは、フミタンの死という中盤のクライマックスがいま一つ盛り上がらない点。イベント自体に問題があるのではなく、その背景である、コロニーの暴動鎮圧にともなう流血の惨事という事件になんだか切迫感が感じられないのだ。理由はよくわからないのだが、画面の情報量とか密度感が足りないためかもしれない。
岡田のインタビューを読むと、「家族」というキーワードを必ずしも肯定的にとらえていない、という点に感心した。やたらと家族を連呼する作品て私嫌いなのだが、本作も確かに観ていて居心地が悪かった。
‐(前略)メカ演出で意識したことはありますか?
長井 やっぱりビームがないことによる見せ方ですね。その分、逆にこの縛りを生かして新しいことを試していこうと、今までの『ガンダム』とは違う見せ方をやってみました。斬るのでなく吹っ飛ばしたり、装甲が剥がれてフレームが剥き出しになったり。作画の方々には相当負担を掛けてしまいましたが、おかげさまで迫力のある絵になったと思います。後はなるべくギミックを見せるようにというところですね。
‐23話で、バルバトスが涙を流しているように見えるなど、メカの表情芝居には目を引かれました。ああいうのは絵コンテで指示しているのですか?
長井 メカの表情芝居はほぼ作画の方々のアイデアです。自分なんかより数段メカへの思い入れが深い方ばかりなので、細かい指示は必要ないというか。絵コンテからシーンを読み取って、見せたい表情というものを汲み取ってくれるんです。キマリストルーパーの変形時にパキンと紫色の光が飛び散るんですが、ああいうのも格好いい演出ですよね。メカに関しては本当に勉強になることばかりでした。
「長井龍雪監督インタビュー」『ガンダムエース』2016年6月号160ページ。強調は引用者による。
つい先日、縁あってまんだらけの『資料性博覧会09』パンフレットに寄稿させて頂いた。最近注目している演出家について書いたのだが、上のインタビューなんか読むと、アニメ作者の個性について語ることの難しさを痛感する。
『資料性博覧会』の話題が出たので、ついでに。
私が採りあげたのは、川面真也、安藤正臣、それに当サイトの読者にはもうおなじみの咲坂守の3人。特に咲坂は、アニメ作者としてこうした場に名前が出るのは初めてではないかと自負している。
川面は最新作『田中くんはいつもけだるげ』も快調な中、心配なのが安藤である。『最弱無敗の神装機竜』がどうにもこうにも、なんでまた今どき「シャルのいない『インフィニット・ストラトス』」みたいなものを作らなきゃならなかったのやら(言い訳してしまうが、原稿執筆は『神装機竜』の放映前)。無理やりに原稿の内容にこと寄せて書くと、「日常の隙間にのぞく闇」を描くことに長けた安藤には、最初から全開で非日常の異世界ファンタジーは向かなかったのかもしれない。
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